Written by TJO (Takeru John Otoguro)「来月ノルウェーでKygoのプレミアム・ライブがあるんだけどレポートして来てくれないか？」そんな急な話をもらったのが4月末の出来事だった。EDM以降のサウンドが昨今さまざまな形で提示される中の一つに「トロピカル・ハウス」というムーブメントがあって、その中心として活躍しているアーティストとして、Marvin GayeやSyn Coleの「Miami 82」のリミックスを聴いたのがKygoとの最初の出会いだった。(トロピカル・ハウスについての記事もぜひチェックしてください→ http://block.fm/news/tjo_tropical_house_dig.html )その後もリリースする楽曲はチェックしていたし、放っておいても数々のメディアで騒がれるので彼の存在を見ない日はなかった。個人的には映画「We Are Your Friends」のコラム寄稿のために一足早く作品を観た時に、劇中でSeinabo Seyの「Younger (Kygo Remix)」が青春映画の1シーンにとてもマッチする使われ方をしていて、その時から彼の世界感にハマり、そして決定打は今年のマイアミ「ULTRA MUSIC FESTIVAL」でのDJプレイ。巨大なメインステージでもブレる事なく、マイアミの夕焼けをバックに彼のテイストに沿ったBPM120前後の気持ち良いハウスで観客をロックし、自分にとってのベストアクトの一人になった。(詳しいレポはこちらから→ http://block.fm/news/tjo_ultra2016_report.html )。そんな彼への注目が世間的にも個人的にも高まる中でのこのオファーは大変ありがたいものだった。今回のツアータイトルは「Destination Cloud Nine」、何でも関係者や選ばれたファンやインフルエンサーなど、世界から100人のみが参加する事が許されるという本当に超プレミアムな企画だ。日本を出発し、およそ12時間かけてヘルシンキ経由でオスロへ。オスロで一泊した後に飛行機でさらに向かったのはノルウェー沿岸の港町オーレスン。オーレスン行きの飛行機内では、Kygoクルーによる撮影が始まっており、見ると乗客のほとんどがKygoのライブを観に来た人々で関係者だらけの様子。機長による「Destination Cloud Nineフライトへようこそ！」と気の利いたアナウンスや着陸して飛行機から降りる際のBGMがKygoの「Stole the Show」だった時は本当にビックリしたと共に、自分がスペシャルな空間にいるんだという実感が湧いてワクワクが止まらなかった。そして空港に着くと荷物受け取り場でKygoのアルバムデザインが施されたスクリーンが大きく掲げられ、外に出ると出迎えてくれたのはKygoのラッピングバス！

TJO (Takeru John Otoguro)さん(@tjo_dj)が投稿した写真 - 2016 5月 11 9:24午前 PDT

バスに揺られ到着した場所にあったのは外観もバーもルームキーまでもがKygo仕様になったホテルという徹底っぷり。

Ultra Music Japanさん(@ultramusicjp)が投稿した写真 - 2016 5月 11 8:53午後 PDT

夕方になるとホテルからライブ会場に向かってバスが出発。ここオーレスンは「一生に一度は訪れたい絶景」としていろんなメデイアで常に紹介されるほどの人気スポットで、澄み切った空気の美しい港町をバスの中から堪能する事ができた。およそ30分して到着した会場は人気のほとんどない海に面した「Ocean Sound Recordings」と呼ばれるスタジオ。

TJO (Takeru John Otoguro)さん(@tjo_dj)が投稿した写真 - 2016 5月 12 2:32午前 PDT

岩場の上にシンプルな小屋、側にはヤシの木が生え、時間は20時を過ぎようとしてるのに海面に美しい夕焼けを映していた。

TJO (Takeru John Otoguro)さん(@tjo_dj)が投稿した写真 - 2016 5月 12 2:37午前 PDT

およそ100名の来客をシャンパンや北欧の海鮮でこしらえた寿司が出迎え(これがどれも美味しい！)みんな、時間まで様々にリラックスして過ごしていた。少しするとスタジオの前に人だかりが出きていて、見るとなんとそこにKygo本人がしれっといるではないか！

TJO (Takeru John Otoguro)さん(@tjo_dj)が投稿した写真 - 2016 5月 11 11:50午前 PDT

人だかりと言っても100人規模の集まりの中なので、Kygoも会場の雰囲気のようにとてもリラックスした面持ちでファン達と写真などを撮っていた。

TJO (Takeru John Otoguro)さん(@tjo_dj)が投稿した写真 - 2016 5月 11 11:27午後 PDT

21時を過ぎ、時間になってもライブが始まる様子がない。いくら真夜中近くまで日が出ているとしてもライブ後にはアフターパーティーまで用意されているとの事で時間がないのでは？と焦っていた中、スタッフの声がかかり、いっせいにスタジオ内に入る。ライブの部屋も100人も入ればいっぱいになるぐらいのサイズで、窓から射す夕焼けの光がとても美しかった。

TJO (Takeru John Otoguro)さん(@tjo_dj)が投稿した写真 - 2016 5月 11 12:04午後 PDT

ステージに置かれたのはグランド・ピアノ。そして4人編成のストリングス隊。そうこのライブはアコースティック・ライブだったのだ。一切の打ち込みはなし、100人の期待が高まる中でステージ脇から上がって来たKygoがピアノを引き始める。1曲目に演奏されたのはKygoのピアノだけによる「For What It's Worth」と「Stole The Show」の美しいマッシュアップ。

Ultra Music Japanさん(@ultramusicjp)が投稿した動画 - 2016 5月 12 3:32午前 PDT

そして続いてKodalineのヴォーカルSteven Garriganをステージ呼び出し「Raging」を演奏した。KodalineはColdplayも引き合いに出されるアイルランドのバンドで、サマソニにも来日して、テレビ番組の「テラスハウス」でも曲が使われていた人気バンド。同行したソニーの担当さんがアルバムの中で1番好きって言ってて、その美しいメロディを聴いてから実際にしばらく頭からメロディ離れなかった1曲である。

TJO (Takeru John Otoguro)さん(@tjo_dj)が投稿した動画 - 2016 6月 1 8:08午後 PDT

次にアルバムの中でも好きな曲「Stay」を。ここでも実際に歌っているMaty Noyesを招き、さらにストリングス隊が参加した。Kygoのピアノソロから静かにスタートし、歌いだしたMatyの声がCDで聴くそのままだったもんで、思わず鳥肌が立った！

TJO (Takeru John Otoguro)さん(@tjo_dj)が投稿した動画 - 2016 5月 12 8:51午後 PDT

その後の「Not Alone」も男性シンガーRHODESの豊かな歌声が会場に響き渡り、この曲もアルバムの中でのお気に入りソングになった。特筆すべきは全てアコースティックで演奏しているので曲中のKygo本人によるバックピアノが本当に沁みる。

TJO (Takeru John Otoguro)さん(@tjo_dj)が投稿した動画 - 2016 5月 30 5:18午前 PDT

そして最後に披露されたのがKygo自身も「自分がここまで来れたのはこの曲のおかげ」と紹介した、彼の代表曲の一つでもある「Firestone」。残念ながら実際に歌っているConrad Sewellは来れなかったが、Kygoのツアーメンバーでもあるノルウェーの女性シンガーソングライターAnna of the Northが代わりに歌い、コケティッシュなヴォーカルが曲に新たな命を吹き込んでいた。そして動画を観てもらえると分かるのだが、Kygoのピアノとストリングスの絡みが美し過ぎて、このバージョンが普通に欲しくなるほどだった。彼女の足下を見るとそっとカンペの歌詞カードが置いてあったのが微笑ましかった。

TJO (Takeru John Otoguro)さん(@tjo_dj)が投稿した動画 - 2016 6月 6 1:30午前 PDT

「Firestone」の演奏が終わると共に鳴り止まない拍手と歓声でライブは幕を閉じた。世界から集められた100人の目の前で、本人のピアノにストリングス隊というシンプルな構成に、実際のfeat.シンガーを招くという豪華な5曲。時折り射し込むノルウェーの夕焼けが楽曲をさらに彩り、極上の時間を味わう事が出来た。本当に最高としか言いようがなかった。たった5曲の演目もそのこの潔さがむしろ心地良かったし、そのシンプルさに素直にカッコいいとシビレてしまった。アコースティックだからこそ余計な音もなく彼の楽曲の本来持つ美しさに触れる事ができ、トロピカル・ハウスやダンスミュージックという枠組みを軽々と超える、1人のミュージシャンとしての素晴らしいソングライティングやプロデューサーとしての力量がより伝わった気がする。そして何よりもKygoに招待されなければ一生に一度も訪れる事がなかったであろうこの地で、この素晴らしい体験が出来た事に感謝したい。まだ若干24歳でこのクオリティ。手法は違うのかもしれないが「次のAvicii」と称される所以もどこか理解できた気がした。彼自身、今後は自国ノルウェーで自身のフェスを開催したり、このライブの翌日もアメリカに渡りフェスやテレビへの出演と今後もさらに活躍の幅を広げていきそうだ。そんなすでに大忙しの彼だが、いつかここ日本にも来日しこの世界観をみんなに体験させて欲しいと思う。Kygoの今後の活動などの詳細はぜひこちらをチェック。http://www.sonymusic.co.jp/artist/kygo/【この記事に関連するおすすめはこちら】

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