【ライブレポート】サマソニ20年目の衝撃。The 1975が魅せる“ロックンロール2.0”

サマーソニック2019・DAY1、マリンステージに登場したUKロックバンド、The 1975のパフォーマンスをレポート。
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2019.08.29 08:30

The 1975はUKチャートで1位を獲得した『The 1975』をリリースした2013年にSUMMER SONICに出演。翌2014年と、2ndアルバム『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』をリリースした2016年、そして今年とSUMMER SONICには4度目の出演となる。サマソニ常連だが、ライヴを観るのは初めてだ。ほぼほぼ毎年サマソニに行っているのにと、自分のアテにならない感覚に落胆しつつも、やっとThe 1975を観ることができて大満足である。





サマソニ1日目、ポップロックの最新系The 1975によるマリンスタジアム熱狂のライヴをレポート


「UKのポップバンドだよね。TOOTIMETOOTIMETOOTIMEいいよね」。ミーハーな僕が抱いていた、The 1975のイメージだ。キャッチーなメロディ、Matthew Healy(マシュー・ヒーリー)のオートチューンボイスで連呼される印象的なサビ。昨年リリースの「TOOTIMETOOTIMETOOTIME」は日本のラジオでもガンガン流れていたので最近知った人はThe 1975=この曲、という人も多いのではないだろうか。ダンスホールとハウスを融合したような陽気なビートはダンスミュージックが好きな人とも親和性が高く、音楽好きはもとよりこの曲でロック、ポップ好き以外の幅広い層に知られることとなったように思う(僕を含め)。




結論から言うとThe 1975のライヴはいい意味で期待を裏切るものだった。前述したポップなイメージを打ち破る、自由な振る舞いはロックスターさながらの風格と、時代を象徴するニューヒーローとしての表情、その両方を兼ね備えていた。マンチェスター出身の幼馴染み4人組っていうところもいい。


2018年リリースの3rdアルバム『A Brief Inquiry Into Online Relationships』に収録されたセルフタイトルトラック「The 1975」(毎回アルバムの最初は同タイトルの楽曲が収録される)でステージが開演。疾走感のあるエレクトロロックチューン「Give Yourself A Try」で登場すると、オーディエンスの大歓声がマリンスタジアムを包んだ。


ステージ上にはThe 1975の過去作品で印象的なモチーフとなっている額縁のようなスクエアの巨大なセットがドラムを囲むように設置され、スタンド席から観たスタジアムはパンパン。ボーカルのMatthewがすでにヨレてるのが遠目に見ても分かった。日本へのサービス精神かMatthewはPlayStation®のロゴが入ったキャップとブルゾンを着用。


3曲目にして「TOOTIMETOOTIMETOOTIME」が披露されると会場の熱気が一気に高まる。ステージ上にダンサーも登場。3曲目にしてすでにクライマックス感すらある。Matthewも僕らもノリノリだ。スタンドから海に陽が沈む様子が見え、トロピカルなチルいメロディがイイ感じにマッチしていた。



©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.


Matthewがブルゾンを脱ぐと、UKバンドの先輩RIDEの『NOWHERE』Tシャツがお目見え。そうか。RIDEも確か4人組だったな。これサマソニ後にネットで探した人が多かったんじゃない? 一緒に行った友達も一生懸命探していたけど。


続く「Sincerity Is Scary」ではMVまんまのウサギのような、ピカ●ュウのようなデカイ耳がついたニットキャップとバッグパック姿で登場。Matthewに黄色い声援が飛び交う。カワイイ。ズルいよMatthew。スローテンポでゴスペルチックなブラスの音とコーラス、左右に身体を揺らしたくなるドラム、そしてMatthewの歌声がたまらなく気持ちがいい。演奏の最後にはキャップをオーディエンスに向かってポイっと投げた。あれキャッチできた人うらやましいなあ。







既存の価値観を打ち砕くニューヒーロー


演奏の合間、Matthewの喉を潤していたのミネラルウォーターではない。SAKE(日本酒)だろうか。豪気にラッパ呑みである。ヨレヨレの原因はコレか(笑)。MVだとどこか優等生的にも映るが、ライヴだとボンクラ感マシマシでイイ感じ。


Matthewの両親はUKの俳優でバックボーンに対する批判がデビュー当時はあったという。ドラッグに溺れた経験も楽曲やメディアのインタビューで語られている。そんなネガティヴな意見や過去を実力で吹き飛ばして世界で活躍するビッグバンドのボーカルとなったMatthew。本人はスター然とするのが嫌いでナチュラルに振る舞うのが好きなようだが、それでも様になってしまう。フジロック’18で観たPost Maloneに共通するロックスター感がある。(Post Maloneもお酒飲んでパフォーマンスしてたし、音楽性についてしばしば批判されてきた。“スター”をやるのは大変なんだな)。




そのまま「It’s Not Living (If It’s Not With You)」から「I Like America & America Likes Me」を演奏。銃社会に対する社会的なメッセージや、自身のドラッグ中毒の苦しみなどを孕んだ「I Like America & America Likes Me」は生で観るとよりシリアスに刺さる。Matthewはサマソニ直前のドバイ公演で、同性愛を禁止する法への抗議アクションとして男性ファンとキスをしたことでUAEへ入国できなくなるかもしれないという事態になっている。そんなMatthewがエフェクトを歪むほどかけたボーカルでシャウトする姿に胸を打たれた。The 1975の体制に対するカウンター精神や、多様性を感じることができた一幕だ。




「I Always Wanna Die (Sometimes)」では自らアコースティックギターを弾き、3rdから「Love It If We Made It」、一躍The 1975をスターダムに引っ張り上げた1stから「Chocolate」と大ヒットナンバーを次々にドロップ。会場は大興奮。同じく1stアルバム「Sex」ではMatthewがオーディエンスを煽りまくり。「いち、にー、さん!!! 」と日本語でカウントダウンしたのち、オーディエンス全員が曲に合わせて一斉にジャンプ。これはブチ上がる。曲が終わるとスクリーンにはモノクロで“ROCK N ROLL” “IS DEAD” “GOD BLESS” “The 1975”と映し出された。さんざんロックンロールしまくっといてこの粋な演出にうおお。と僕は小さく声を出してしまった。安易だがこれがThe 1975流のロックンロールか。と。ロック、ひいては音楽への愛を感じる。


終わっちゃったのかと思いきや、再び演奏が始まった。これが本当に最後の曲となる。「The Sound」だ。MVと同様にモニターにネット上でのThe 1975へのコメントが次々に浮かび上がる。「The Sound」は2016年の2ndアルバム『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』収録の楽曲だが、ステージ演出の世界観は3rdの『A Brief Inquiry Into Online Relationships』(邦題は『ネット上の人間関係についての簡単な調査』)と地続きなのだと思った。




ネット上の戯言をよそに演奏するバントと、盛り上がるオーディエンスが対照的で皮肉が効いている。演奏が終わると暗転し、そのまま即終了。さきほどまでの興奮が幻だったかのような唐突さに戸惑いながらも、会場には拍手が鳴り響いた。



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サマソニ、20年の節目に思う過去未来


てっきり、僕はこの日のトリを務めるB’zファンの地蔵が大量出現するかと思っていたのだが、ほんとごめんなさい。みんなThe 1975大好きって感じが伝わってくる熱狂だった。この景色はMatthewも嬉しかったんじゃないだろうか。そしてB’zを続けて観た人もいるだろうけど、音楽リテラシーの高い人たちがあの場に集まっていたんだろう。


初めて行ったサマソニは2003年。今から16年前。中学3年生か、高校生になっていたかくらいのころだ。ヘッドライナーは1日目がBlur、会場へ行った2日目はRADIOHEADだったと思う。SONIC STAGEのトリはSUM41だったのを覚えている。当時、まだ地方では珍しかったCDJを駆使して、ロックDJをやっていた親戚の姉にパンクな音楽教育を受けていた僕は、生で観るGood Charlotteに興奮していた。The 1975と同じマリンスタジアムのスタンドだった。The 1975のライヴはそのときの初期衝動を思い起こさせてくれるようなものだった。サマソニ20周年のエモさが凝縮されているような気がしてならない。


さておき、The 1975のポップな側面はその一端にしか過ぎないことを今回のライヴであらためて認識した。冒頭に書いた通り、イイ意味で期待を裏切ってくれたThe 1975。彼らが作りたいと思っている音楽性は別にして、よく比較されているRADIOHEADや同じくマンチェスター出身のレジェンドバンドOASISみたいに偉大なブリティッシュバンドとして語り継がれるかもしれない。The 1975がそんな未来を望んでいなかったとしても、数年後、数十年後に、居酒屋かどっかで「2019年のThe 1975、すごかったんだよなー」と、サマソニを振り返って音楽好きな若者相手に、自慢ウザいおじさんしてやろうと思えるくらいには。


block.fmでは、サマソニとともにThe 1975にオフィシャルインタビューを敢行している。block.fmらしいユニークな切り口で、彼らのパーソナリティに迫る。ぶっとんだパフォーマンスを見せてくれたMatthewはじめ、The 1975はその実、環境問題やLGBTQ、METOOなど社会の抱える問題や課題に関心を寄せ、アクションを行うインテリジェンスを持ちあわせたバンドでもある。そんな彼らの一面が垣間見えるインタビューになっている。




近々のリリースが予定されている『A Brief Inquiry Into Online Relationships』との連作、『Notes On A Conditional Form』のリリースは2020年初頭に決定しているのでそちらも楽しみに待ちたい。


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written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki


photo:©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.



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