Behringer VS Devil Fish !?クローン界の覇者とアンオフィシャル改造界の複雑な関係

BehringerがTB−303 Devil FishをモデルにしたTD-3-DF Murdered Outモックアップを公開。
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2020.02.12 03:00

発売されたばかりのTB-303クローンTD-3に新たなニュースがアナウンスされた。Behringerがウェブ上でTD-3-DF Murdered Outと言う真っ黒な渋い筐体のTD-3のモックアップを発表したのだ。-DFという名称からお気づきの方もおられるかもしれないが、こちらはオリジナルのTB-303改造モデルとして人気が高かったDevil Fishの使用を再現したもの。Behringerがいつもの通りFacebookで公開すると、それに対しオリジナルのDevil Fishの開発者であるReal World InterfacesのRobin Whittleが反応した。




TB-303 Devil Fishとは


まず今回話題になっているTB-303 Devil Fish modificationについて。ローランドの名機TB-303にはその人気から数多くのmodificationモデル等と呼ばれる、非公式改造モデルが出回っている。その中でも高い人気を誇るのがReal World InterfacesによるDevil Fishだ。オーバードライブを内蔵しフィルターやアクセント、IO系などが追加されていて、オリジナルの303では出来ないことや不便な部分が改善される。著名なアーティストの愛好家も多く、ただでさえ入手困難なTB-303だがDevil Fishのモディフィケーションはさらに希少な状態。ちなみに同社によれば現在のシリアルが304ということだったので、たったの300台しか流通していないということだ。

今回Behringerが発表したのはまさにこのDevil FishモデルのTD-3。



最初はお互いに好意的だった


クールなルックスに加えコアなファンの心を鷲掴み仕様なTD-3-DF Murdered Outは投稿後すぐに大きな話題となった。それを見たオリジナルのDevil Fishの開発者であるRobinが、ウェブ上で今回のBehringerの発表に対し「短く説明するとクソ」という書き出しで、好意的ではない感想とそこまでの経緯を公開している。


そもそもRobinと奥様TinaはBehringerがTB-303のクローンを発表したことを好意的に受け止めており、Devil Fish modificationを加えられるのではないかと楽しみにしていた(今は実機も入手していて実際にできそうとのこと)。BehringerのTD-3のニュースを知った少し後、なんと驚くことにクローン・トルーパー軍BehringerのボスUli BehringerがRobinへコンタクトしてきたのだという。その内容はTD-3のDevil Fishバージョンを一緒に作らないかという申し出だった。連絡があったことに興奮し、返事をしたが条件面で折り合いがつかなかったそうだ。


Robinからの要求は、機能やハードウェア的な要件、デザイン等について、Robinの承認を得るものとし、その上でDevil Fishのブランド使用やReal World Interfacesでの告知プロモーションなどから、マニュアル制作まで請け負うという内容。金銭的な面ではDevil Fishのデザインや機能等の使用について、販売金額に応じたロイヤリティー費用を求める内容のものだった。

しかしながらUliからの申し出は、Robinの想定に満たないオファーだった。単発で15,000ドル(約165万円)のギャラを支払うと内容でロイヤリティーは無しという条件だったと具体的な金額まで公開している。


これに対しUliも返答しており、今回のオファーについてはBehringerの安くて良いものをミュージシャンに提供すると言うビジョンからは逸脱した価格設定となってしまうため、条件を受け入れることができなかったと説明している。またこういった会話については公にするべきものでは無いとも言及している。





残念ながら喧嘩別れか・・


Robinの長い長い文章には、Murdered Outと言う製品名は攻撃的で醜いとか、暗い色が気にいらないなど、どっぷりと敵意バイアスに入ってしまっており、すぐに関係性を修復するのは難しそうな雰囲気になっている。特許を取得することができる部分はいくつかあるが、そのためには各所轄への申請を行い、弁護士を雇って国際的に特許の侵害を訴える必要がある。費用としては数千万円かかるため、法的にBehringerに対して何もできないであろうとも言及している。


お怒りの文章の中では以前にBehringerがModel Dを発表した時、Moog社が現行で販売しているMinimoogの回路をコピーしているにもかかわらず、何の許諾も得ずに販売していたことについて非難をうけたことも引き合いに出している。Robinが言いたいのはMoogやDevil Fishが現在も提供している製品をそのまま利用してビジネスをし、なおかつオリジナルの製造者の競合となっているという点だ。

完全に生産が完了してしまい中古市場で高値がつくヴィンテージ機材を、高いクオリティーで且つお求めやすい価格で販売すると言うBehringerの戦略はミュージシャンにとってもうれしいことだ。生産完了しているのだから、オリジナルのメーカーもこれ以上そこからの利益を期待はしていないと考えられる。特許権の切れた商品などの安価なリプロダクトが出回ることも家具や医薬品など普通にあることで、Behringerのやっていることも法的に問題はない。


とはいえDevil Fishという彼らの築き上げたアイディアと、アンダーグラウンドなミュージックシーンで育まれたブランド力や希少価値をBehringerが利用することになるのは事実で、思う部分があったからこそUliも最初にRobinにコンタクトしたのだろう。一方RobinからすればBehringerにDevil Fishをオフィシャルに安く販売させるのであれば、自身のDevil Fish改造のニーズは減る。現在1台10数万円という金額で改造を提供しているようだが、Uliの提示額は10台ちょっとの改造の金額であり、自身の今後のDevil Fishの出荷を犠牲にするには考える金額だっただろう。なお、Real World Interfacesウェブサイトでは独自にBehringer TD-3の改造を予定しているとのこと。


TB-303 Devil Fish modification背面


大きな会社が小さな会社のアイディアや築き上げたコミュニティを飲み込む製品やサービスを提供することは止められないし、ユーザーにとっては価格面のメリットもある。Robinはクラウドファンディングなどを利用して次のビジネスチャンスを探すべきタイミングだと考えられるかもしれない。一方でBehringerも、Robinが築き上げたブランドの価値を流用するにあたり、もう少し時間をかければ何か別の交渉の余地を見つけ、Robin、Behringer、ユーザーの全員がwin-win-winとなる方法が探れたかもしれない。みなさまはどう思われるだろうか。


2/15追記:

その後、BehringerのFacebookページでアップデートがあった。"Modded Out" and "Souped Up" TD-3というタイトルで書き出しで、まずは製品名のMurdered Outは自粛したようだ。「殺された」というような響きの悪さもあるし、オリジナルDevil Fishに対して挑発的ともとられうるタイトルだったので平和的対応と思われる。また機能面ではXOXBOX 303クローンへの改造なども含む、過去の303DIY改造系のアイディアを幅広く取り入れるということだ。そっくりそのままDevil Fishの機能を取り入れたことに対して、ネットではBehringerのような大きな会社が個人経営のDevil Fishのアイディアを搾取しているといった意見もあり、そんなユーザーの声に対応した形だろう。

ユーザーにとっては歴代の303改造をまとめたようなモンスター303が安価に買えるということですごいニュースとなりそう!ちなみにFBの書き込みには「開発の協力者はいつでも連絡を」とのこと。ただし「フェラーリは買ってあげられないよ」とも書き加えている。




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written by Yui Tamura


source:

https://www.facebook.com/behringer/

http://www.firstpr.com.au/rwi/dfish/

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