【後編】今、注目のプロデューサーSweet Williamが☆Takuに語る、音楽キャリア、盟友Jinmenusagiとの邂逅

m-floのリミックスも手がける、今絶対知っておいた方がいいプロデューサーに☆Taku Takahashiがインタビュー。Jinmenusagiとの噂のコラボアルバムにも迫る。
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2018.09.05 10:05

2017年に沖縄出身のMC・唾奇とともに発表したアルバム『Jasmine』や、m-floのremix集「BACK2THEFUTURE」シリーズに収録された「How You Like Me Now?」のリミックスで反響を巻き起こした新進気鋭のプロデューサー、Sweet Williamのインタビュー。【前編】では、これまでの彼のキャリア、m-floのリミックス、そのアーティスト名の由来などを語ってくれたが、【後編】となるこのインタビューでは、彼のサウンドに関する哲学、そしてファンが最も気になっている盟友・Jinmenusagiとのコラボアルバムの制作プロセスなどを明かしてくれた。


【前編】今、注目のプロデューサーSweet Williamが☆Takuに語る、音楽キャリア、盟友Jinmenusagiとの邂逅




日本人の良さっていうのは、ビートに落とし込めるもの


T:僕、Sweet Williamさんのサウンドって、日本の新しいHIPHOPのアイデンティティの一つなんじゃないかなって感じるんですよ。インターネットでのバズり方っていうのと、メインストリームとは違うけど、ちゃんとファンベースがしっかり出来上がってる、いわゆる一つのムーブメントになってるっていうか。僕らの時代はやっぱりフィジカル出して、ラジオ出て、雑誌出てって感じだったのに対して。


S:嬉しいですね。そうですね、そんなにメインストリームを意識したこともあんまりないし、海外っぽいとも言われないと思うので。僕ももちろんわかってるし。日本人の良さっていうのは、ビートに落とし込めるものだと思ってて。目指してる方向性が自分のビートにもちょこっとずつ出てるのかなぁとは思いますけどね。


T:ちょっとさかのぼるけど、そこから生まれてる根源っていうのは、自分が作りたいものを本能的に作ってるっていう…。


S:そうですね。自分が聴きたい曲、こういう曲あったら聴きたいなみたいなのを作るようにしてるので。作った後にずっと聞いても飽きない楽曲。自分が大好きになれる楽曲を作るってことだけ意識してますね。


T:遊びに行く場所って、東京だとどんな場所?


S:結構ファンクバーとか、ソウルバーとかに行くことが最近は多いですかね。僕の兄貴もDJだったので、飲み行く時とか、音楽聞ける場所がいいなって事が多いです。


T:なるほどね。


S:後は、昔ダンスやってたから、たまーに身体動かしに、下北沢のJAZZY SPORTSに行ってダンスやったりとか。後は近くに友達が住んでるんで、遊びに行ったりとかは結構します。


T:やっぱり音楽の趣味が近い人たちがいるところに行くのが好き?


S:そうですね、音楽的に話があう人とか。自分が好きなサウンドに理解がある人との方が落ち着けるというか、安堵感はあるんで、そういう場所に行くことの方が多いかもしれないですね。


T:さっき、日本語ラップをいっぱい聴いてたって言ってましたけど、アメリカのサウンドはあんまりチェックしなかったんですか?


S:海外は、中学生のときぐらいから聴き始めたんですかね。僕ら男三兄弟なんですけど、当時全員HIPHOP大好きで。その中で協定みたいなのがあったんですけど(笑)。兄が「お前は日本のHIPHOPしか聴いちゃダメ」みたいな…。


T:え? どういうこと?(笑)


S:で、兄が「俺は海外聴き始めるわ」って。


T:お兄ちゃんが海外をディグすると。


S:そうです。お前は日本のHIPHOPをディグしろ、俺は先に海外をディグするから、それまで海外のやつ聴くな、みたいな(笑)。


T:謎な協定(笑)。それで自分らがディグったもの「これいいよ」って勧めあったりするんですか?


S:そうですね。いい楽曲を見つけてきたもん勝ち、みたいな精神があって。昔、なぜか。で、多分僕が一番最初に洋楽で買ったのはJurassic 5で。




T:なんかでもSweet Williamと共通点ありますよね、サウンドの。


S:海外のやつでも、一番最初に聴いたのはああいうブーンバップの匂いが残ってる楽曲だったんですかね。


T:うんうん。それこそあの、なんだろう、Jurassic 5が出てきた時も、Sweet Williamさんのサウンドに近いものが僕の中であって。Jurassic 5も、当時のメインストリームのサウンドがあって、オールドスクールのラップのフロウで、それで違う感じのを出そうっていう。


S:確かにそのニュアンスはわかります。


T:まぁ出そうとしてるっていうより単純に好きだったからだと思うんだけど、ユニークな存在・サウンドだっていうところで、Sweet Williamに通じるものがある。


S:ありがとうございます。嬉しいですね。洋楽をずっと追いかけてたというよりも、日本の音楽の方が好きで。日本のHIPHOPの方が割合は大きかったのかなと思いますね。


T:日本のいいラッパーたち、日本の好きなラッパーたちとどんどん一緒にいい音楽作っていこうっていう風に…。


S:そうですね。


T:海外の楽曲をあまり聴かなかったなか、当時、海外のあの人のトラックかっこいいな〜! みたいなのは?


S:後追いなんですけど、海外のやつも吸収しまくってた時期があって。


T:やっぱり海外のサウンドの影響も?


S:もちろんありました。高校ぐらいから、海外の90年代の音楽を聴き漁るようになって。


T:その時はもう2000年代ぐらいに入ってたよね?


S:そうです。結構後追いだったんですけど、「あぁ、(DJ)Premierってひととか、Pete Rockってひとがいるんだ」みたいな。




T:(笑)。


S:後追いで。そしたら「日本のHIPHOPも、多少同じ匂いがするぞ」って思って。もちろん全てではないですけど「この人たちがいたから、(日本のHIPHOPも)こうなったんだ」っていうのを、自分の頭の中で整理するようになったって感じですかね。


T:今って機材何使われてるんですか?


S:今はMaschineですね。それまでは2000のXLをずっと使ってて。


T:ハードウェア?


S:そうです。AKAIのMPC。結構やっぱり見た目に憧れるところがありましたね。SP-1200もPVとかいろんなところで知ったし、MPCもいろんな人が使ってるし。



「お前の作る楽曲はおじさんゴコロくすぐるよ」って



T:ちょっと個人的な質問になっちゃうんですけど、m-floの「How You ~」のリミックスをやってくれたじゃないですか。歌モノになるとキーとか出てくるじゃないですか。あのリフでキー合わせるのっていうのは、感覚ですか?


S:あれはもう感覚ですね。僕はコードとか全然わかんなくて。けどピアノをやってたから、楽譜を読めるぐらいの知識しかないんですけど、大体自分の好きなメロディーの落とし方とかは決まってて。


T:で、絶妙に合ってるじゃないですか。


S:ありがとうございます。


T:しかも絶対このトラックにハマんないだろうっていうフレーズ、ギターのリフ、だけど気持ちいいっていうのが僕の印象だったんだけど…。


S:ありがとうございます。


T:これ言われて嫌かもしんないけど、おじさんホイホイなんですよ(笑)。


S:結構言われます。大先輩に、「お前の作る楽曲はおじさんゴコロくすぐるよ」って。


T:でも実際のファン層は、おじさんゴコロくすぐりつつも、若いファンが多いじゃないですか。


S:そうですかね。


T:おじさんたちはその感覚を元々知ってて好きで、若い人たちはそういうの関係ないじゃないですか。そこで若い人の心もしっかりくすぐれてるのがすごいなぁって。


S:ありがとうございます。


T:どうやってやるのか聞きたいなぁって(笑)。


S:もちろんビートに絡まるラップっていうのも重要だと思うし、唾奇との共作は、唾奇の良さと、いい意味でダメなところが落とし込まれてて、非現実感に浸れるようなリリックが入ってるんじゃないですかね。Jinmenusagiだったりすると、彼はずっと東京で過ごしてるので、東京のいいところ・悪いところ、あと自分がどう変わって行ったかみたいなことをすごく面白くリリックに落とし込める人で。それをサウンドで持ち上げるというか。さらに魅力を出せたらなと思ってラップものはいつも作ってるんですけど。





やっぱり海外と日本でのHIPHOPの許容のされ方も全然違うと思うんで



T:東京に出てきて音楽を本気でやってる人たちがいるのを体感されてるというのと、自分のサウンドが好きな人たちとか、全く違う人たちとか、いろんなデモグラフィーというか派閥というかチームがあるじゃないですか。そんな中で自分は自分の好きなものをやることを徹底してるじゃないですか。日本のシーンを見てて何か感じることってありますか?


S:日本のシーンを見てて何か感じること…。ラップブームにはなってると思うんですけど、まだメディアの捉え方にチェケラッチョ感が抜けてないなとは思います。


T:社会のイメージ的に?


S:社会の。やっぱり海外と日本でのHIPHOPの許容のされ方も全然違うと思うんで。


T:すごいわかりやすい例でいうと、例えばTOP40あります、日本でいうオリコンチャートだったりとか、あとiTunesチャートになるのかもしれないけど、アメリカの場合そこに普通にHIPHOPが入ってるじゃないですか。日本だとそこまで私生活にHIPHOPが浸透してない。どの音楽も現実逃避の要素はあるけど、HIPHOPは特にそれが強いからかなと。


S:今は日本のHIPHOPをたくさん掘ってる訳ではないので詳しくはないんですけど、チャートに入ってくれたら嬉しいですよね。


T:僕も最近ちゃんと掘ってないんですけど、でも1位とったらわかりますよね、僕らも。難しいですけどね。


S:だれも聞いてないようなとこまで細かく聞いてる人と、表面でいろんな音楽聴く人ももちろんいると思うし。どっちの層にも受け入れられる音楽がオリコンに入ってたらもっと面白いのになぁとは思います。


T:これ、シーンだからみんなに当てはまることだと思うんだけど、なんかもっとみんなに知ってもらってもいい曲いっぱいあると思うんですよね。


S:そうですね、もちろん。


T:この曲いいじゃん、キャッチーじゃん!とか(笑)。だけどやっぱりそこまで広がってないっていうのが日本っぽいなっていう。広げるのも簡単なことじゃないし。なんかもっと…ね。逆に、日本で生活してて、海外に出て行こうとかそういう考えはあったりします?


S:もちろん海外にも行ってみたいし、自分の音楽がもっと広まったらいいなとも思うので、そうですね。ゆくゆくは海外でライブとかもできたら面白いだろうなって思います。僕は海外でまだ(ライブとか)したことないんで。



自分がかっこいいなと思った人と繋がれるといいなって



T:海外のMCともっと積極的に曲作って行こうとかは?


S:海外の人は… そうですね、最近ちょこっとずつコネクトし始めたというか。まだ楽曲はできてないんですけど、そういうお話をもらったりすることもあります。いろんな人に聴いてもらいたいっていうのはあるし。でもやっぱり自分がかっこいいなと思った人と繋がれるといいなっていうのは思いますけど。


T:そこすごいブレないですよね。日本人だろうがアメリカ人だろうが、誰だろうが自分がフィールする、いいなって思う軸をぶらされたくないっていう。


S:そうですね。大前提やっぱり自分が大好きになれる曲を作りたいなぁって思います。


T:1曲作るのにどれくらいかかる?


S:1曲作るのに2日間ぶっ通しでやることもあるし、たまに5、6時間で終わっちゃうこともありますかね。やっぱつくってる時ってすごい楽しいし、全然苦じゃなくて。「よし、いい曲作るぞー」って軽い感じでいつも作ってます。


T:いい作品をたくさん作っている中、それがハードルになることはあります?


S:多少プレッシャーみたいなのを感じることもありますけど、あんまり気にしてないですかね。


T:うんうん。ちょっとジメサギさんとのアルバム、何曲も作ってて、いろんなことやってる中、わりと考えたのか、それともノリでつくっちゃって、ポンと出そうって感じなのか、どっちなんですか?


S:今年に入ってぐらいから、一緒に作りましょうって話を彼からもらって、僕も彼と作りたかったし、「OKやりましょう」ってすぐ返事をして。あらかじめ内容をしっかり考えて作るってやりかたではなかったです。けど、なんとなく作りたい音のイメージは最初にすこし共有しました。


T:それは2人で決めて?


S:そうです、2人で話して決めて。全部ではないですが楽曲については僕がイメージづけすることが多かったですね。ある程度ラフを作って、タイトルも僕が考えて、それにイメージを合わせて彼がリリックを描いていく作り方、楽曲が多かったですね。今回の作品は。


T:とりあえずデモ作ってジメサギさんにお渡しします。それで「どう?」って感じなんですか? ひょっとして「俺浮かばないわ!」って言われることもあったりとか…。


S:それももちろんありましたけど、彼との今回の作品で行き詰まることはそんなになかったですね。すごくフィーリングが合うというか。そんなに支障が出ることはなく、気持ちよくいい楽曲を作れたと思います。


T:お互い打ち合うみたいな、渡してラップ書いてきてもらって、またイジっていって、みたいな。


S:HIPHOPってビートを作ってその上で歌ってくださいって作り方じゃないですか、それって結構特殊だなって。シンガーの方と楽曲をご一緒させていただく事もあるんですが、HIPHOPの作り方とは全然違うので戸惑わせてしまうこともありました。


単純にリフに中毒性と、自分の好きなコード感が入ってるビートを作ろうっていうのがあって



T:今回のアルバムのデモ段階の時のテーマってどういうふうに投げたんですか? タイトルが先に浮かんだ?


S:タイトルは後でしたね。あんまり深くは考えないんですけど、自分の好きなメロが出てるビートが好きなので、単純にリフに中毒性と、自分の好きなコード感が入ってるビートを作ろうっていうのがあって、それを一曲目に作りました。その曲を一番最初に作ってから、ポンポンできて行った感じ…なので一番最初の曲に関してはタイトルもついてなかったし、僕のイメージだけでビートを作って、「これに乗せてみてよ」って渡した作り方でしたね。


T:そこからガーッと勢いが?


S:そうですね、そこからサクサク進んだ感じですね。


T:作る時ってビート渡して聴いて、ラップとか録るときっていうのは、どこで録るんですか?


S:それは彼のよく行ってるスタジオがあって、そっちで任せましたね。ミックスは自分たちでやったんですけど、今まで宅録でもらったデータばっかりで。言ったら唾奇と作った『Jasmine』も全部宅録なんですよ。




T:えー!? ウソ?


S:そうなんですよ(笑)。


T:いつもどんな感じでライブするんですか?


S:ちょっと特殊で。DJでもないし…。


T:ねぇ。さっきDJちょこっとかじったぐらいって言ってたし。


S:ビートライブって言って、SP404っていうポン出しの機材にビートをぶっこんで、エフェクトをかけながら自分のビートを繋いでいくっていう手法がビートメイカーの中で存在していて。けど僕は自分の楽曲以外もかけたいし、ターンテーブルもSP404も持ってなかった。結局落とし所が、MaschineをMIDIコン代わりにして、Seratoをいじるっていう。


T:ほぉ~! ほうほう。


S:あれだったらエフェクトたくさんあるし、テンポも合わせられるし。


T:やっぱりパッドが落ち着くというか。


S:そうですね。パッドを触っていたかった。


T:自分を出せる…。


S:そうですね。たまにビートライブ、とかDJとか言われちゃうんですけど、なかなか定義が難しくて。要は自分の好きな形でプレイできたらいいなと思ってそういう形になったんですけど。


T:MC入らない時もあったりするんですか?


S:そうですね。自分のプレイだけで終わる時もあるし、ラッパーとやるときは、自分がプレイをした後にMCが入ってきてそのままライブする… みたいなことが多いですね。


T:今回ジメサギさんと一緒にツアー組む話とかは?


S:ちょいちょいしてます。ツアーもやると思いますね。





僕とJinmenusagiで一番気持ちいいところを取った、みたいなアルバムになった



T:いろんな質問させてもらいましたけど、アルバムのことでここ抑えといたほうがいいみたいなことってありますか?


S:やっぱり彼(Jinmenusagi)は彼で全然やってる音楽の系統が僕とは違ったりするんですよ。僕はそれも聴いたりするんですけど。


T:HIPHOPの中でもいろんなジャンルの人とコラボしたりしてますもんね。ちょっと違う毛色だな〜って人ともね。


S:HIPHOPの中でもやっぱり違うってところあるじゃないですか。そことのいいとこ取りっていうか、僕とJinmenusagiで一番気持ちいいところを取った、みたいなアルバムになったと思ってて。彼はビートへのアプローチの仕方がものすごく上手くて毎回驚きます。僕のビートと彼の作曲センスがうまく噛み合ってるとこを楽しんでもらえたらなって思ってます。


T:何かアルバムで伝えたいこととか、今の自分の心境とかはあったりしますか?


S:心境はあんまり変わらないです。好きな曲を作っていくのみなので、スタンスもあんまり変わんないんですけど。HIPHOPの醍醐味、サンプリングの良さみたいなものはまたしっかり出せたんじゃないかなと思ってるので、そういうところまで目が届いてくれたら嬉しいなとは個人的に思ってます。


T:ありがとうございます。楽しかったです!


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Sweet William

Twitter:https://twitter.com/LO_FRASCO

SoundCloud:https://soundcloud.com/sweet-william-eb


written by block.fm編集部




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