【レビュー】Bandcamp/Soundcloud発、注目のヒップホップリリース

BandcampとSoundcloudからリリースされた気になる新譜を紹介。Roddy Ricch、Virghost & KingPin Da' Composer、Knxwledge.をピックアップ。
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2020.02.03 10:00

インターネットが音楽の主戦場となり、メジャーやインディーといった境目は限りなく薄いものになりつつある中、それでも独自のバイブスを保ち続ける良質かつディープなプラットフォームであり続けるSoundCloudと、インディー音楽販売サイトのBandcamp。


当記事では、そんな2つのサイトにおける最近のリリースから、有名無名問わずおすすめの楽曲を紹介する。ちなみに筆者である私自身は音楽制作機材の記事を担当しているので、ビートにも主眼を置いて選曲している。

 

SoundCloudのチャートでも強いRoddy Ricch


まずはすでにブレイク中のRoddy Ricch(ロディ・リッチ)から。SoundCloudはすでにヒップホップ・シーンの主要メディアの一つになっておりヒップホップ・チャートでは有名無名が入り乱れる。2020年2月2日現在では、2019年12月6日にリリースされたRoddy Ricchの「The Box」がトップに輝いている。ちなみに2位もRoddy Ricchの「High Fashion (feat. Mustard)」。


「The Box」はビルボードチャートでも2020年1月に自身初のチャート1位となりヒット中ということで、すでに聴いている人もいるかと思うが、コアなリスナーの多いSoundCloudチャートでも人気を維持している。




不穏な声ネタのループがカッコいいThe Boxのビートを担当したのは、30 Roc(サーティ・ロック)。近年Lil Yachty(リル・ヨッティ)のセカンドアルバムへの楽曲提供やCardi B(カーディ・ビー) feat 21 Savage(トゥウェンティーワン・サヴェージ)のシングル”Bartier Cardi”のプロデュースなどで実力を示している注目のビートメイカーだ。808ベースはやや控えめながらリバースと思われる音を使うことで存在感を出している。ちなみにイントロからループしているストリングスは、Ciaraのヒット曲 “Love Sex Magic.”のサンプリングと思われていたが、本人がインタビューでからのサンプリングではないと明言しており、こちらは定番ソフトシンセOmnisphereという音源を使用しているということ。



メンフィスよりVirghost & KingPin Da' Composer「Summer In September III」


続いては、Bandcampからは2019年9月29日リリースのVirghost(ヴァーゴースト) & KingPin Da' Composer(キングピン・ダ・コンポーザー)による、アルバム『Summer In September III』。


 

ラッパーのVirghostとビートメイカーのKingPin Da' Composerは、共にテネシー州のメンフィス出身。Virghostはラッパーの他にも、スポークンワードアーティスト、ソングライターと多彩な活動をしているようだ。メンフィスは言わずと知れた南部ヒップホップ重要都市の1つで、Virghostのプロフィールからは同じくメンフィスをレペゼンするThree 6 MafiaのJuicy Jとのつながりも伺える。


南部といえば独特のダークで重いサウンドを思い浮かべるが、このアルバムではどこかNY的な洗練された質感と、南部的黒さが同居した独自性が感じられる。南部ヒップホップの重心の低いビート感をベースにしながらも、南部のサウンドの特徴である、機械的に刻まれるハイハットや808系のビート感は抑えられ、抑揚とグルーヴが重視されている。ドラム以外の音色も、シンセサイザー系は心地いいベース音くらいで、全体的に柔らかい感じの生音やコーラスが中心。ソウルフルなサウンドだが、しっかりと「黒っぽい」カラッとした空気感が個性を放っている。南部系のサウンドをあまりチェックしていなかったという方へもおすすめの内容。

 

Virghostの海外記事を読み解くと彼は、地元アーティストからの影響だけでなく、Nas(ナズ)やMos Def(モス・デフ)を重要なアーティストに挙げている。曲中にはA Tribe Called Quest “Oh My God”がサンプリングされているなど、KingPin Da' Composerのサウンド感とVirghostの流麗なフロウは、イーストコースト・ヒップホップへのリスペクト精神が映し出されていると考えて間違いなさそうだ。


とはいえ1曲目のタイトルが「Bluff City National Anthem」で、そのサウンドは労働歌やゴスペルの要素を基調とした重厚なサザンソウル的サウンド。Bluff City(絶壁の都市)はメンフィスの愛称で、メンフィス近くのミシシッピ川沿いには絶壁が多いからなのだとか。イーストコーストからの影響以前に、自分たちのアイデンティは南部であると示し、自分たちのこのアルバムがメンフィスの新しいアンセムなのだという意気込みも感じられる。 


 

STONES THROWのビートメイカーKnxwledge.「終了していません」


最後に紹介するのはフィラデルフィア出身で、1988年生まれLA在住のビートメイカーKnxwledge.(ノレッジ)のリリース。その名も日本語タイトルで、「終了していません」と言うアルバム。


 

Knxwledge.は2009年以来Bandcampで、なんと80以上ものタイトルをリリースしており、2018年にはLA最重要レーベルSTONES THROW(ストーン・スロウ)のジャパン・ツアーでビート・ジャンキーズのJ.Rocc(ジェイ・ロック)と共に来日も果たしている。Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)をはじめ、Joey Bada$$(ジョーイ・バッドアス)やAction Bronson(アクション・ブロンソン)などのプロデュースワークを聴いたことがある方も多いかもしれない。




そんな新世代をリードする、ビートメイカーの1人である彼の最近のスタイルは、アニメからカット・アップしたジャケット画像や、「終了していません」と言う日本語タイトルなど、日本からの影響と思しきものが感じられる。サウンドも90年代初期を思わせる「どこかバブル臭の残るちょっと昔の都会趣味?」とでも言いたくなるような、ドリーミーなVapor wave(ヴェイパーウェイヴ)系のシーンに寄ったサウンドでドラムも抑えめ。逆に今作ではこれまでのリリースにあった「ヒップホップ的なお約束」から少し離れているようだ。

これは彼の一時的な気まぐれで作ったサウンドなのかも知れないが、ビート感も抑えられているので、部屋でかけっぱなしにするには最適なアルバムになっている。


今回紹介したのは12月リリースのアルバムだが、1月に入ってからもインスト曲一つ、さらにMeek Millのアンオフィシャルなフリースタイルのリミックスなども投下している。気になったらKnxwledge.のBandcampに一度アクセスしてみよう。そのリリース・ペースの速さに飲み込まれてしまうかも?



written by Yui Tamura


source:

https://soundcloud.com

https://summerinseptember.bandcamp.com

https://knxwledge.bandcamp.com


photo:

https://www.roddyricch.com/

https://summerinseptember.bandcamp.com/

https://www.stonesthrow.com/

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