「今の自分を正直に表現したい」SIRUPの背景にある、アーティストとしての“強さ”の理由

今一番勢いのあるシンガー、SIRUP。5月29日にリリースされた1stアルバム『FEEL GOOD』についてインタビューを行った。歩んできた背景にある、アーティストとしての強さを紐解く。
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2019.05.30 06:00

ベタな言葉かもしれないが、“人気急上昇”という言葉が今一番当てはまるシンガーはSIRUPではないだろうか。元々はKYOtaroという名義でソロシンガーとして活躍する中、様々なクリエイターとのコラボを目的として「SIRUP」がスタートした。気鋭のクリエイターたちとの楽曲はその完成度の高さからあっという間に火が付き、昨年リリースされた「Do Well」がCMソングとして起用され大きな話題を呼んだことも記憶に新しいだろう。そんなSIRUPが初のフルアルバム『FEEL GOOD』をリリースするということで、block.fmではアルバム制作についてインタビューを敢行した。




SIRUP
R&B/Soul、HIPHOPなどのブラックミュージックをベースに様々なクリエーター/ミュージシャンとコラボしていくシンガーソングライター KYOtaroが立ち上げたソロ・プロジェクト「SIRUP (シラップ)」。変幻自在なボーカルスタイル、五感を刺激するグルーヴィーなサウンド、そして個性的な歌詞の世界観でリスナーを魅了する。2017年にリリースしたデビュー作「SIRUP EP」が主要音楽ストリーミングサービスを賑わせ、2018年8月には2nd EP「SIRUP EP2」をリリース。2019年夏に開催される初の全国ツアーも、チケットが即日Sold Outになるなど現在話題沸騰中。



聞き手:☆Taku Takahashi(m-flo)


ー去年から今年にかけて、ご自身のEPを出しながらも並行して、他アーティストの楽曲への客演もすごく積極的に参加していた印象があります。


SIRUP(以下、S):客演に関しては、現場でいろんな人と会って意気投合して一緒に曲作ろう!っていうのを積み重ねたらあれだけの数になった感じです。あとは、一緒にやりたいなと思ってた人からオファーをいただいたり。


ー数えてみたら、カバーも入れて12曲ですもんね。SIRUPさんと飲み友達にならないと一緒にできない?(笑)


S:全然関係ないです(笑)。でも、一緒にやる人とはコミュニケーションをしっかり取りたいタイプですね。


ー極論トラックだけもらって自分で書くこともできるし、書く人を呼んで歌うだけっていうのもできる。そういうやり方もある中、コミュニケーションを大事にしているのはどうしてなんでしょうか。


S:人と人とがグルーヴしてないといい曲が生まれないな、っていうのを経験上感じることが多くて。時間をかけて話したりすることが音に出るなって思うんです。1つのトラックに対して、そこから広がる可能性って無限じゃないですか。だからこそ、トラックメイカーの方がどういうイメージでこのトラックを作ったかを理解しておきたいんです。楽曲を作る過程でそれを理解するとなると、それがゴールになっちゃう感じがするんですよね。そうではなくて、何を求められてるか理解した上でさらにその先を目指したいというか。見えてるものをさらに超えた何かを作りたいって思ってます。


ーそうなると、すでに関係性があったほうがより良いものを目指せますよね。


S:そうですね。あと自分でも面白いなと思ったのが、一緒にやりたいって感じる人と音楽の趣味がめちゃくちゃ合うんです。しかもちょっとマニアックなジャンルとかアーティストで。そういう人とは、映画とか漫画とかでも好きなものが同じってことも多くて。そういう感性みたいなところが合うのは安心しますし、音楽の中にグルーヴとして出てくると思ってます。


ーどれも作ってるのは人間ですからね。これだけフィーチャリングしてて、ご自身のアルバム進行は遅れなかったんですか?


S:本当は夏に出す予定だったんですけど、スタッフと今年のスケジュールを話し合って行く中で発売を早めることになって。絶対ムリって思ってたんですけど、意外と1月〜2月で一気に作れたんです。


ー作詞を手がけてるKYOtaroさんっていうのは…?


S:KYOtaroって僕のことなんですよ。


ーえ、全然知らなかった!(笑)別人格なんですか?


S:僕の以前の名義ですね(笑)。SIRUPから知ってもらった人には知らない人も多いかもしれません。シンガーのKYOtaroが立ち上げたプロジェクトとして「SIRUP」が始まったので、制作と歌い手でクレジットを分けたほうがわかりやすいかなと思って、クレジットはKYOtaroにしてます。


ーSIRUPさんはKYOtaroさんをすごく信頼して任せてるんだなって思ってました(笑)。KYOtaro名義の時のサウンドと、今はどう違うんですか?


S:SIRUPでは“共作”のイメージで曲を作ってるんですけど、KYOtaroのときは脳内に「こういう曲」っていう決まったイメージがあって、トラックメイカーにそれをそのまま作り上げてもらう感じでしたね。


ーそのアンチテーゼがSIRUPとしての1曲目「Synapse」なのかな、って今ハッと思ったんですけど。


S:まさにその通りですね。「Synapse」はメロディーまで書いてもらったので。SIRUPを始める少し前から、ディレクションされることで新しい自分に出会ったり、違う引き出しを出せるっていう楽しみに気づいたんですよ。そのほうがかっこよくなることもあったりして。


ー大沢伸一さんも同じことを言ってました。そういう「大喜利」があるとまた面白いものが出てくることがあるよねって。お題があるのは制約で、自由度が抑えられてる可能性はあるんだけど、そこから新しいものが生まれたりする。だから必ずしもネガティブじゃないんだっていう。


S:大喜利と言えば以前、DRAMATIC SOULっていうイベントをやってたんですけど、「お題セッションバトル」っていう、その場でお客さんにお題をもらって歌を作るバトルをそのイベントでやってたんですよ。


ーへぇ、すごい!


S:毎回すごく試されるんですが。始めた頃はダジャレというか、フレーズの中にお題になってる言葉が入ってればいい感じだったんですけど、回を重ねるごとにお客さんがその場のドラマを求めだすんですよ。フリースタイルダンジョンみたいにラップでどれだけ綺麗に韻を踏もうが、「綺麗だね」で終わったら負けるんです。何もできてないけど盛り上がったら勝ちとかもあって。そこでめちゃくちゃ鍛えられましたね。


ーそれ見に行きたかったなぁ。心臓と胃に悪そうな、でもめちゃくちゃ面白そうなイベントですね。もうやりたくない?


S:うーん…多分もうやらないと思います(笑)。





ーその話を聞いてなるほどと思ったのが、SIRUPさんは歌詞のリズムへの乗せ方が独特だなと思っていて。そういう大喜利の経験を積んでるからなんでしょうか。


S:確実にその影響はあると思います。適当な英語をトラックに乗せてリリックを作っていくんですけど。例えば「Do Well」だと、何パターンか歌ってるうちに出だしで「変に」っていう単語が突然口から出るんですよ。そのまま続けてると「変に構えて」って出てきて「あぁ、こういうことが書きたいんだ」っていうのがだんだん自分でもわかってくる。サビは最初から「Da la ta ta ta〜」っていう適当な言葉だったんですけど、その中に「do well」っていう単語が入ってたのでその意味を考えたら「こういうことが歌いたいんだ」ってまた理解が深まって。できるだけ自分が感じるまま正直にリリックをはめていくというか。




ーなんか、ラッパー脳とシンガー脳が混ざってる感じがするな。SIRUPっていう名前もSing とRapですもんね。歌とラップ、どっちが最初だったんですか?


S:歌が最初です。R&Bとかネオソウルを意識してずっとやってました。


ー元々は大阪にいたんでしたっけ?ネオソウル、周りに聴いてる人いました?


S:たまたまですが周りには結構いましたね。今も一緒に活動してるSoulflexっていうクルーのメンバーもネオソウル界隈がすごく好きで。クルーを組んだきっかけも、リーダーのMori Zentaroっていうトラックメイカーが、The SoulquariansやErykah Badu、D'Angeloとかの感じでやりたいっていうことから始まってて。


ー僕らの時代は「ニュー・クラシック・ソウル」っていう言葉で紹介されてたんですよね。ちょうどその頃ってみんなエレクトロに移行してるタイミングで、4つ打ちとかそういった音のほうがメインストリームになりつつある頃だと思うんですが、ネオソウルとかを聴いてるシーンみたいなものはありましたか?


S:ほぼないに近かったですね。めちゃくちゃ歌がうまいディーバ系の女の子が盛り上がってたシーンはあったんですけど、僕らとは別でした。僕らはカルチャーとしてもっと総合的に、レストランとコラボして食とライブのイベントをやったりとか、自分たち発信のイベントをやってました。


ー自分たちの発信するサウンドに合ったイベントがないから、自分たちで作っていくしかなかったっていう感じ?


S:そうですね。クルーで活動するにはイベントをやるしかなくて、僕自身のソロとしてはJ-R&Bのイベントとかに出てましたね。


ー好き嫌いとかじゃなくて、そこに分類されるのはどう感じてました?系統がちょっと違うじゃないですか。


S:違和感ゼロって言ったら嘘になるんですけど、めちゃくちゃJ-R&Bやってる中でめちゃくちゃソウルやってるみたいな感じで、少し浮いてたかもです。


ー浮いてたっていうのはいいことですよね。そこから東京に移ったっていうのはなにかあって?


S:一番大きいのが風営法で。元々クラブで歌ってたんですけど、クラブのシーンが全部なくなっちゃって。バンドでデイイベントにも出てたんですけど、僕らみたいなバンドを出したい人が全然いなかったので、イベントも自分でやる以外なくなってしまって。これじゃ広がらないと思って、自分の音楽を聴いてもらうためにデジタルで曲をリリースしたら、東京から呼んでもらえるようになったんですよ。それで東京に移った感じです。


ーデジタルでリリースしたことが、ある意味自分の人生を変えたっていう。


S:そうですね。CDも全国流通はするんですけど、結局デジタルで聴いてくれた人が僕を東京に呼んでくれたので。





ーストリーミング時代って、傾向的にプレイリストでコンピレーション聴くほうがメインストリームな感じがする。アルバム1枚出すより2枚にわけてEPにしたほうがSpotifyは効果的だったりするかもしれない。そんな中、今回はアルバムを出すって決めた理由はありますか?


S:アルバムとして出すことを前提に曲を作ってないので、ストリーミングに適してるかどうかっていうこと自体をあまり意識していないかもしれません。アルバムとしてリリースした中からピックアップされてプレイリストに入っていくのかなって。


ーと言いつつも僕はアルバムとして通しで聴いて、この流れで何度も聴きたいなっていう印象を受けました。でもそういうのをまったく意識せずに作ったってことですか?


S:そうですね。曲順と曲間の秒数はしっかり考えました。


ー自分の曲をプレイリストにしたって感覚ですかね。どういう感覚で曲を繋いでいったんでしょうか。なんでそれが気になるかというと、すごく気持ちよくて何度も聴きたくなってしまったので。


S:インパクト強い曲のあとはちょっとノリが違う曲にするとか、飽きないようには考えてますね。僕の曲って音数は少ないけど情報量は多いなって思うんですよ。そう感じる曲のあとは少し秒数をあけて次の曲にいけるように、とかは調整しました。アルバムが「Pool」で始まって「LOOP」で終わるって言葉遊びみたいになってるんですけど、元々は音楽的に考えたんですよ。「LOOP」でふわーっと気持ちよくなったあとは、刺激が欲しくなって「Pool」に行くかなって。そうやって並べてみて初めて曲のタイトルもリンクしてることに気づいたんです。


ー偶然と意図がミックスされたんですね。今までの話を聞くと、コンセプトがあってアルバムを作ったというより、作ってきた曲をぎゅっと詰め込んだという感じ?


S:そうですね。今の自分とSIRUPの感覚を詰め込んだ感じです。その時その時のフレッシュな気持ちを作品として出すっていうことがやりたいので。昔に完成してたものを今入れよう、みたいなことは今後もないんだろうなと思います。“今の僕”をパッケージにした感じですかね。


ー世代によってはわからないかもしれないんだけど、カメラで写真を撮って、本のアルバムに入れていった、そんな感覚に近そうですね。


S:あぁ、僕は結構やってました。「写ルンです」で写真を撮って。


ー音楽は「写ルンです」ほどパッと作れるものじゃないけど、その時の自分に戻れるようなアルバムになるのかなと思いました。


S:そうですね。「LOOP」も過去のある瞬間を歌ってるんですけど、いつでもその時の感情が鮮やかに蘇るような歌でもあるんです。「Rain」はすごくしんどい恋愛の歌なんですけど「昔はそういうこともあったな」っていう気持ちでは聴けないんですよね。今聴いたとしてもその時と同じ気持ちを感じるというか。




ーそれをライブで聴くのも楽しみですね。去年は韓国と中国でもライブされたと聞きましたが、オーディエンスの違いとかは感じました?


S:中国の人は新しい文化に対してすごくウェルカムな感じでしたね。新しい音楽もどんどん吸収したい、っていう印象を受けました。


韓国に関してはとにかく先に行ってるなって感じで。昼と夜のイベントに出たんですが、僕を知らない人たちはちょっと様子を伺う感じで聞いてたんです。「Rain」を歌った時、最初はメロウな感じなのでちょっと揺れながら聴いてて、サビで展開が変わった時に「あれ?変わったんだけど!」みたいにお客さん同士で反応してくれたんですよ。そこから「フゥ〜!」って感じですごくのってくれて(笑)。僕目当てで来てない人でもそういう反応をしてくれるっていうのが日本ではあまりなかったので、すごく新鮮で。だから音楽をちゃんと聴いてくれてるんだっていうのがわかりましたね。あとはタクシーがめっちゃ安いからなのか終電で帰るっていう概念がなくて、深夜も遊ぶ感覚が強かったりとか、色々カルチャーショックはありました。



ーアルバムが出たあとはいよいよ全国ツアーですよね。


S:生バンドなんですけど、マニュピレーターを初めて入れたので演奏の自由度が上がりました。Chance The Rapperとかがやってるようなシカゴ系のサウンドのバンド感を参考としてて。実現するのは結構難しいんですが、だんだん理想に近づいてます。前よりも「踊るだけじゃない感動」を出せたらいいなと思ってます。


ー今後の活動のイメージなどはありますか?


S:今の目標は、いろんな人と共鳴して曲を作り続けて、海外のアーティストとも自然な流れでコラボできたらと思っています。いつも言ってるんですけど、とにかくBrasstracksとやりたい。あとは、コーチェラに出ることも目標にしてます。どんなに小さいステージでもいいので、向こうから「出て欲しい」って言ってもらえたらなと。ボーダレスに色んな国の人と一緒に音楽を作って、それが自然に広がっていったらいいなと思ってます。



自身を取り巻く環境がどんどんと変化する中でも自然体で音楽を生み出せる、SIRUPのアーティストとしての強さが垣間見えるインタビューだった。これからもどんな音楽を届けてくれるのか、益々期待していきたい。


 


 

◆アルバム情報




 発売日:2019年5月29日

 アーティスト:SIRUP

 タイトル:FEEL GOOD


【収録内容】

 1. Pool

 2. Do Well

 3. Why

 4. Rain

 5. Evergreen

 6. Slow Dance feat.BIM

 7. Synapse

 8. CRAZY

 9. PRAYER

 10. SWIM

 11. PLAY feat. TENDRE

 12. LOOP


◆CD購入リンクはこちら

https://lnk.to/0529_sirup_feelgood


『FEEL GOOD』発売記念インストアイベント

6月3日(月)18:30 START @タワーレコード広島店 イベントスペース

6月6日(木)18:30 START @タワーレコード札幌ピヴォ店 イベントスペース


■内容

ミニライブ&サイン会


詳しくはSIRUPオフィシャルサイト https://www.sirup.online/

 

◆イベント出演情報

SUMMER SONIC 2019

大阪公演

2019年8月17日(土)大阪府 舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)

東京公演

2019年8月18日(日)千葉県 ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ


◆ツアー情報

【SIRUP「FEEL GOOD」TOUR 2019】

6月28日(金)大阪:梅田クラブクアトロ ※Sold Out

6月30日(日)名古屋:JAMMIN' ※Sold Out

7月5日(金) 福岡:FUKUOKA BEAT STATION ※Sold Out

7月10日(水)札幌:KRAPS HALL ※Sold Out 

7月12日(金)仙台:LIVE HOUSE enn 2nd ※Sold Out

7月17日   (水) 東京 : LIQUID ROOM ※Sold Out

7月18日(木)東京 : LIQUID  ROOM ※Sold Out 


◆SIRUP official HP:https://www.sirup.online/


written by Moemi



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