独自の存在同士の共鳴が生む混沌。 (sic)boy&KM『CHAOS TAPE』インタビュー

アルバム『CHAOS TAPE』について、(sic)boy、KMの出会いなど“眠くない街”東京を駆ける2人に話を聞いた。
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2020.11.18 10:00

Written by Tomohisa Mochizuki


インタビューの後、(sic)boyとともに神宮前を歩いた。「普段は地元の中高の友達といることが多いです」。東京の私生活から生まれる近しい人たちへの愛が、(sic)boyがいちばん大切にしているというリリックに繋がっている。端正な顔立ちで金髪を揺らしながら、タバコを吸う仕草にも色気があり、大振りなレザージャケットを羽織る姿は人混みの中でもスタンドアローンな存在感を放つ。しかしその実、東京で生きる一人の繊細な若者であることを感じさせてくれるほどに、素直であどけない人物だった。


「生意気に書いておいてください」KMは笑って言った。プロデューサーKMはヒップホップの枠組みを越えてさまざまなアーティストやクライアントと音楽を生みだし続けている。自身が培ってきた感性を武器に、謙虚ながら歯に衣着せぬ物言いは凄みを感じる。積み重ねてきた実績と経験、自信の顕れでもあるだろう。KMもまた東京に置いてスタンドアローンな存在である。


そんな孤高の2人が手を組んだプロジェクトは破竹の勢いだ。最新アルバム『CHAOS TAPE』はラウド、エモ、オルタナを内包したミクスチャースタイルを踏襲しながらKM由来のヒップホップサウンドを軸に、(sic)boyのボーカル・ラップ、持ち前の文学性が混沌と入り混じる新機軸の音楽をパッケージしている。JUBEE、vividboooy、LEX、Only U、個性豊かな客演も見事にその世界観に溶け込み、さらなる混沌を生み出す。新しさと懐かしさが同居しつつ、今は異形に映る(sic)boyとKMによる音楽は、これからのスタンダードになるかもしれない。個人的な淡い期待を寄せつつ、混沌とする東京の街を、ノーブレーキ・ノーリミットで駆け抜ける2人に話を聞いた。






(sic)boy・KMスタンドアローン同士が生み出す新たなる混沌『CHAOS TAPE』インタビュー


—『CHAOS TAPE』リリースの反響はいかがでしょうか?


(sic)boy:しばらく会ってなかった人からも「聴いたよ」って連絡もらえたのが嬉しかったですね。


KM:1週間だからまだ何とも言えないけど、レーベルはとりあえず喜んでくれてますね。プレイリストもヒップホップだけじゃなくて、New Music Wednesdayのカバーに選んでもらったりとか。ヒップホップのマインドで作ったアルバムではあるけど、『CHAOS TAPE』に含まれたいろいろな要素がプレイリストという形で反映されたことはすごく嬉しいし、同時に驚きもありました。


—KMさんはジャンル関係なくもっと自由に音楽をやりたいと以前から言っていましたが、狙い通りなんじゃないですか?


KM:狙っているわけではないんですけどね。逆に狙わないとそうなるのかも。


—『CHAOS TAPE』の制作プロセスについて教えて下さい。


KM:基本はsid(※(sic)boy)から送られてくるデモのボーカルデータからトラックを作っていきます。それをsidに返して、sidがトラックに合わせてより細かく作り込んだり、新しいモノに作り替えたり。トラックとボーカルデータを2〜3往復して仕上げます。「Set me free」と「走馬灯」に関しては曲が先にできました。「(sic)’s sense」もそうかな。そういうのは「こういうのもやってみたら?」って僕から提案するとき。


—ボーカルが先か曲が先か、(sic)boyさん的にはどっちが作りやすいです?


KM:それ俺も聞いてみたいわ。


(sic)boy:曲が先の場合はKMさんのトラックを1回自分の中で消化しなきゃいけないんで、そういう作業がない分、ボーカルが先の方がやりやすいって言えるのかな。




「ヒップホップから逃げたくない」カオスな状況から生まれる(sic)boyの文学性


—「Set me free」と「走馬灯」のトラックを最初に聴いたときの印象はどうでした?


(sic)boy:「Set me free」は難しいトラックだと思いました。


KM:「全然浮かばねえ」って言ってたもんね。


(sic)boy:ギターのアルペジオを足してもらって、そこからフックを先に書き始めました。バースも書いてたんですけど、KMさんがJUBEEくんを紹介してくれて。


KM:それで2人でレコーディングのときに構成を詰めてもらった感じです。



—「走馬灯」は対照的にラップしてますよね?


(sic)boy:「走馬灯」のトラックは最後にKMさんから来た曲で、ヒップホップから逃げない、逃げたくないっていう思いがあります。意気込んでラップしているわけではなく、納得のいく形で挑戦してますね。


KM:オルタナティヴな曲が続いたときに、アルバム全体で言うと息抜きになるような曲調をやった方がいいんじゃない?って話しました。Lo-Fi HIPHOPの文脈のモノを取り入れて作りたかったし。そしたらすぐに返してくれて。たぶんほとんどフリースタイルなんじゃないかな。


—楽曲によって出来上がるスピード感は違いますか?


(sic)boy:楽曲によってというよりも、そのときの自分のペースとかマインドによるものが大きいかも。


—「眠くない街」「Heaven’s Drive」「Pink Vomit Interlude」はアルバムの中でも特にストーリー的な繋がりを感じる部分でしたが、意識して作詞した部分だったんですか? 


(sic)boy:意識したわけではないですが、捉え方によっていろんな解釈ができるように作詞しています。


KM:アルバムに入ってないデモの中にも“眠くない街”、“駆け抜ける東京”っていうキーワードは入ってました。「眠くない街」はそもそも「Heaven’s Drive」の幕開け的な楽曲と捉えてます。ただ、sidは曲順を想定して書いてない。



(sic)boy:それぞれの曲の世界観について作るときは意識してないんですが、振り返ってみると繋がってるなという感じですね。特に今年はアルバムリリースを目指してスタートダッシュの年と思ってたんで、マインドセットも影響しているかもしれない。今の詩の世界観がこれからも続くのか、また次は違う世界観になるのかは自分でも分からないです。


—『CHAOS TAPE』の制作に関連して(sic)boyさんがインスピレーションを受けたものってありますか?


(sic)boy:制作にはあまり関係ないけど、アニメは『鬼滅の刃』を観てみたらやっぱり面白かったです。あと『炎炎ノ消防隊』とか。


—(sic)boyさんはアニメのテーマソングとかもイケそうなので個人的には期待したいです。


(sic)boy:やりたいっすマジで。あと、制作にインスピレーションを与えてくれたものだと、酒かな。


KM:勝手な想像だけど、酩酊状態で書いてそうなのはいくつかありましたね。


(sic)boy:最近は休肝日が続いてますけど、制作のときはグワーってイキます。飲んで書いたり、2日酔いで書いたり。『CHAOS TAPE』はけっこうカオスな状況で書いたかも。


ーいちばんカオスな状況で作ったのはどの曲でしたか? 


(sic)boy:「Pink Vomit」ですね。1日中飲んでる中で録りました。



KM:日本語だと“ピンクのゲロ”ですからね。僕はあまり意味的なことは考えてなかったし、タイトルの響きはイイなあって。そんな状態で書いたにも関わらずリリカルだと思いましたよ。「拝啓神様 Nice to meet you」とか。そんなに苦しかったんだって(笑)。その状況で出てくる文学性がすごいと思う。




KM「コンセプトは“俺が聴きたい音楽”」土着的な愛が場所を問わず共感を呼ぶ


—酒浸りで書くのは往年の文豪って感じがしていいですね。逆にKMさんがインスピレーション受けたものは? 


KM:「U&(dead)I」に関しては、sidのリリックとは関係なしに、当初からアンドロイド的な世界観というか、テレビ版の『新世紀エヴァンゲリオン』の影響を受けてますね。“少しづつ消えて行くわたし ちぎれてく両手両足”ってところで音がバグっていくところとか、崩壊していく世界感がモロに出てます。



KM:僕が他のアーティストをプロデュースするときは、僕に求められている部分、USのヒップホップに引っかかるように作るんですね。自分的にはリミッターをかけている部分でもあるんですけど。それを今回はやってない。『CHAOS TAPE』は自分の中の感性をそのまま入れた作品です。


シンプルに俺が聴きたい音楽をやりました。「同じように聴きたいヤツ100人くらいはいるだろ」っいう気持ちがsidとやる上でのスタート地点になってます。前作や「Heaven’s Drive」で反響があって応援してくれる人の声も多くなってきたので、今回安心してリミッターが外せましたね。


—“ジャンル東京”というコンセプトを掲げていますが、僕は山梨に住みながら東京を行ったり来たりしていて、地元にいる友達も「(sic)boyイイ」って聴いてるんですよね。(sic)boyのパッケージは東京的なんだけれども、田舎のマイルドヤンキーにも刺さる要素があるんだって思えて面白かったです。


(sic)boy:地方には地方のフッドスターがいて、地元をレペゼンしていると思うんですけど、僕が曲を書く上でも全く一緒なんですよ。同じように地元をレペゼンする気持ちで音楽を作ってる。根底にあるのはその土地で生まれ育った愛着とか、地元愛的なもの。そこに共感してもらえてるのかもしれないですね。


—もうひとつローカルとの親和性として、KMさんはダンスミュージックがルーツにあって、クラブでかかることを意識している部分はあると思うんですけど、クラブに行かない、言ってしまえば踊らない層、カラオケ好きで歌いたい層にも刺さるんじゃないかなと。


KM:sidめっちゃカラオケ好きだもんね。日本で育つと大多数的にそうなりますよ。だからわざわざUSっぽく作らなかったし、2人ともそれを隠してない。さらに日本語だから歌える。だからこそ、「Heaven’s Drive」が人気出たんだろうし、あれはsidのボーカルの才能だと思う。


(sic)boy:自分の曲はさすがにカラオケで歌わないけど。歌いたいって思ってくれたり、聴いてくれた人のアタマの中でリフが流れてくれてるとしたらめっちゃ嬉しいです。


—前作となるEP『(sic)’s sense』と『CHAOS TAPE』の制作にあたり変化した部分ってありますか? 


KM:コロナでの自粛もあったからね。


(sic)boy:ガッツリ食らったってのはないですね。ライブができないのがいちばんしんどいかな。それはヘコみました。


KM:俺はコロナ禍で結構食らってたかもしれない。世界中が大変な状況になって、もしかしたら音楽なんて見向きもされなくなる。そうすると音楽で生活ができなくなるんじゃないかって、漠然とした不安を抱えてましたね。それを打ち消すために制作に励んでた。俺だけじゃなくてみんなそうだと思う。解決はしないけど、生み出すことが精神安定剤になってました。


—そういったKMさんの当時の心境が反映された曲ってあります? 


KM:「no.13 ghost」とか、『CHAOS TAPE』だと「U&(dead)I」ですね。






KM「中古ショップで自分のCD見つけた」 (sic)boy「メルカリでCDをエゴサした」


—アルバム制作を通して印象的なエピソードがあれば教えてください。


(sic)boy:CDをプレスできたことは個人的に嬉しかったですね。初めてだったし、実物を見たときは感動しました。今CDってあんまり必要とされないのかもしれないけど、僕はやっぱりCDで音楽を聴いて、中古ショップに掘りに行っていろいろな音楽に出会ってきたから。自分の音源がCDになるのは嬉しい。


KM:自分のアルバムをそういうところで見ると...。


—それってちょっと複雑じゃないですか? 


KM:それが嬉しいんですよ! 一度は誰かが買ってくれたんだってなりますし。あわよくば値段は変わっててほしくはないですけど。


(sic)boy:僕ねえ、メルカリで見ちゃったんですよ。


—メルカリでエゴサ?(笑)心境としてはどうなんですか? 


(sic)boy:KMさんと全く同じ意見で嬉しかったです。発売してすぐに買って出品してくれてるんですよ。ストリーミングもある中でフィジカルを買ってくれて、ましてや転売とかでもなくて、ちゃんとした値段で出てました。コメントしたりとかはしないですけど。


KM:さすがに本人がコメントするのはマズいだろ。データとして欲しくて買ってくれたのかな。


—「Akuma Emoji(KM Back to 2002 Remix )」はCD限定ですからね。


(sic)boy:手放してほしくはない反面、またそれで違う人が買ってくれたら。


—リリース後にKMさんが「(sic)boyが全然プロモーションしない」ってボヤいてましたけど、あれは何だったんですか?僕的にあのやりとりは2人のバディ感がうかがえてほっこりしたんですけど。


KM:聞いたら月末で速度制限がかかってたみたい。やはり普通の感覚ではないなと思いましたよ。でも、アーティストって普通の感覚じゃない方がいいのかもしれない。SNSもあまり得意じゃないみたいだし。


—逆にアーティスト然としているというか、僕ら世代がCDを聴いて憧れてきたアーティスト像って感じがします。そもそものお二人の出会い、本格的に一緒に音楽制作するまでにはどんな経緯があったんですか? 


KM:そもそも俺とマネージャーはSoundCloudで聴いて知っていたんだよね。「たぶん彼とならこういうことができるから、やりたい」ってプランしていて、こっちからアプローチしたんです。それで焼肉屋で話して。




(sic)boy・KMその出会い。キーマン・高木


—どんな話をされたか覚えてます? 


(sic)boy:僕はKMさんが作っている曲を聴いていたので、最初はその話からですかね。


KM:kiLLaとか好きだったもんね。僕もKiLLaの曲作っていたので共通の話題ができて安心しました。kiLLaよりも年が離れてるし、話が合うか心配だったんですけど。


—共通の音楽が年代を越えて距離を縮めてくれたんですね。


KM:sidってとにかく音楽の知識の幅が広い。喫茶店で昭和歌謡のオルゴールバージョンがかかってて、その曲を言い当てたりとか(笑)。だから自然と共通の話ができるのは良かったです。


—(sic)boyさんはどうやってその幅広い知識を身に付けたんですか? 


(sic)boy:さっき少し話しましたが、サブスクが出るまではずっとCDを掘ってました。TSUTAYA、ディスクユニオン、図書館とかでも借りてましたし。


KM:若いのになかなか心温まるエピソードだと思うわ。


(sic)boy:ずっと一緒に音楽を共有している高木っていう友人がいるんですけど。聴きたいCDをそれぞれ10枚ずつ借りて、2人で借りれば20枚じゃないですか?レッチリとか聴いたことないから全部いっちゃおう!みたいなノリで。


KM:高木くんはsidにとってかなりのキーマンなんで。逆に俺、レッチリ全アルバム聴いてるかって言われたら聴いてないですから。


(sic)boy:今でも一緒に遊んでます。ライヴにも来てくれますし、ラジオも聴いてくれてますよ。彼は実際にディスクユニオンで働いていた時期もありました。1ヶ月会わなければ1ヶ月の間にリリースされた曲の話をしたり。今思えば、高木と費やした時間が音楽の感性を育んでくれた気がします。


—(sic)boyさんにとって、KMさんがプロデュースする前後でいちばん大きな変化って何でしょう? 


(sic)boy:やっぱり、自分のためにトラックをオーダーメイドしてくれるのはとてつもなく大きい変化ですね。自分の声、曲にあったトラックを小節ごとにアレンジしてくれる。Type Beatだともちろんそうはいかないし、最高です。


—逆にKMさんはいかがでしょう?サウンドメイキングやプロデュースワークにおいて(sic)boyさんが影響している部分はありますか? 


KM:目に見えて大きな変化は「Heaven’s Drive」以降ですね。メジャーレーベルからも仕事のオファーが来るようになりました。ラップ・ヒップホップの枠に囚われずに、選択肢や方法が広がりました。まだ決まってないけど、sidが作詞をして、俺が作曲をする覆面のプロジェクトも始動するかもしれません。




2人の描く“Tokyo”の音楽。KM「東京が世界でいちばんカラフル」


—J-ROCK(オルタナティブロック)を源流に持つ(sic)boyさん、日本的な感性や音にこだわるKMさん、お二人が考える“日本の音楽のアイデンティティ”ってなんだと思いますか? 


KM:Instagramのストーリーズのフィルターって世界の都市名が入っているじゃないですか。「Tokyo」ってモノクロなんです。あれって世界から見たわかりやすい例えで、残念ながら何もないんですよ。無機質でコンクリート、没個性的なイメージ。でも実際は違うじゃないですか。音楽だって、ファッションだって個性豊かだと思う。あのフィルター、一時期スゲェムカついてたんですよ。「世界でいちばんTokyoがカラフルだわ」って。


(sic)boy:日本語はラップに向いてない、韓国語の方が向いてるとか言う人もいるけど、それって結局比べる指標がUSトラップとかの話。US、K-POPも僕は大好きなんですけど、視点を変えてみれば日本語の響きは唯一無二になりえると思う。日本らしさを無理に出そうとしなくても、ちゃんと歌詞や世界観を作りあげていけばカッコイイ音楽になる。


KM:海外で勝負するために海外の基準に寄せる必要はないと思うし、sidは全くそういう意図を持っていないままそれをやっちゃってるんだよね。世界基準を目指してなくてもリリースした時点で世界を相手にしていることになるわけだし。極端な話、USのコレっぽいの作りたいって言った時点でアウトなのかもしれない。


—お二人の考える理想の音楽や理想のアーティスト像を教えてください。


(sic)boy:僕はhydeさんが好きで尊敬してるんですけど、それを僕の理想に置いちゃうのはまた違うし、そういう意味で理想像はないのかもしれないです。


KM:調整しない音楽が理想だと思いますね。こういうの作ればオシャレなヤツが反応するんじゃない?とか、チマチマやって、オマケにメディアも調整してトレンド的な扱いをしちゃう。そうして生まれたハンパなモノが、世界から見た日本のイメージ同様、無機質でモノクロで没個性的だったとしたら、物足りなさを感じる層はK-POPが楽しいって思うに決まってる。そもそも、無調整の日本人の感性が滲み出てるアーティストがもっと出てきやすいシーンになったらいいなとは思いますよね。でもそういう気持ちで作らないと、Type Beatが溢れてるからトラックメイカーの存在価値はなくなってしまう。


—トラックメイカーKMとして目指している音はありますか? 


KM:リスナーの予想をいつも裏切るし、超えて行きたいけど、聞いてると「これKMなのでは? 」って思わせるような音を作って行きたい。


—(sic)boyさんとKMさん、共通している部分と、一方で正反対な部分はありますか? 


KM:不安定なところは似ているかもしれませんね。認めたくないけど。機嫌悪くなったタイミングとか分かるんですよ。不安定というか感情に素直なのかも。


—ぶつかることもありますか? 


KM:一緒に作るものは嘘無くイイモノを作りたいと思っています。嫌われてもいいって思いながら、めちゃくちゃにした音源をsidに返す。僕は、「(sic)boyはこういうの好きだよね」っていうものは作らない。最高なボーカルデータをもらった以上は妥協したくない。


(sic)boy:デモを送って、それこそカオスな状態で返ってきたときは「アレ? 」って。あまりにも変化してるから。その時点ではデモ段階のトラックが乗っかってるだけであって、不正解では決してない。デモ以上にいいものを生み出すためにお互いやりあってます。それが嫌だったらType Beatでいいじゃんって話。だからKMさんと作った曲は全部イイって言い切れる。今ここで、ああしたかったこうしたかったってことはない。あればそれは世に出ていないですね。


—カオスな球を投げられても、キッチリ打ち返す。お互いが信頼し合ってるからこそですね。


(sic)boy:だからこそレコーディングのときは引き締まりますね。


KM:デモもカオスですけどね。四つ打ちなモノが来たり、マリリン・マンソン的なものが来たり。こういうのやりたいんだろうなっていうのはガッツリ分かるから、イキ過ぎてる部分はあえてダウングレードしたりとか、アルバムに入る用の音色にしたり。順序立てはしっかり意識してます。Billboardに届くまでを考えてるからこそ、手順を踏んでいます。お互い音楽的に共通している部分があって、それを持ち寄って楽曲に落とし込むっていうのはsidとの仕事ならではかもしれません。




アフター『CHAOS TAPE』。リリースパーティ、EP、KM名義のフルアルバム


—実際、もう次作に向けて動き出してるんですよね? 


KM:僕が『CHAOS TAPE』のマスター上げた次の日に、デモ送ってきましたからね(笑)。


(sic)boy:曲を作る手は止めてないですね。ふとしたタイミングそれができなくなるのが怖いっていうか。だからやめられない。レコーディングできないときでも、1日、何行でもいいから書くようにしてます。その積み重ねが『CHAOS TAPE』にもなってますから。


—KMさんは(sic)boyさんも所属する「add. some labels」によるラジオ番組「ADD. SOME RADIO」をblock.fmでスタートさせましたが。


KM:ラジオは、メディアが拾い上げられてない音源を紹介したくて始めました、一般的なメディアってSpotifyの配信が基本的な指標になってると思うんですよね。一方で詳細不明な音源、地方のアーティストだったりカッコイイものはたくさんあるのも事実。そこにスポットを当てたくて。昔からSoundCloudで謎のカッコイイ音源にLikeを入れるのが好きなんですよ。あとはレーベルに送られてきたデモの紹介をしています。


—渋谷VISIONでdooooさんとレジデントを務めるイベント「STEREO WAVE」についてはいかがでしょう。


KM:本当はもうDJやりたくなかったんですけど、VISIONさんからお話をいただいて。このタイミングでせっかく声をかけてくださったんで他のイベントとは違うことをしたいと思い、ビートメーカー・プロデューサーを集めて、自分のエクスクルーシブな音源をかけるような一晩がコンセプトです。海外ではよくあるイベントだし、solfaとかEBISU BATICAではビートライブ一晩とかコアなことをやってるんですけど、それをVISIONでやってみようって試みですね。やるなら今しかねえ的な。


—DJをもうやりたくなかったっていうのは? 


KM:USの新譜をかけるってのも楽しくていいんですけど、僕は興味無くしてしまったんです。それで高いギャラ貰うの申し訳ないなって思って。だって、そういうのやったらオレより上手い人いくらでもいるでしょう。でもビートメイキングが切り口のパーティなら自分がやる意味があるんじゃないかと。ビートメイキングが切り口のパーティなら自分がやる意味があるんじゃないかと。遊びに来た子が「自分もやってみたい」って家に帰って機材とか調べ出したら最高だなって思います。


—最後に、今後のプロジェクトを教えてください。


(sic)boy:「STEREO WAVE」で12月12日『CHAOS TAPE』のリリースパーティをやります。他にも地方を回ります。千葉、名古屋が11月末ですね。次作EPも動き出しています。


KM:さっきもチラッと言いましたけど、俺が作曲して(sic)boyが作詞したJ-POPアーティストのプロジェクトが始動するかもしれません。あと、KM個人名義のアルバムがそろそろ出ます…って書いておいてもらった方がたぶんやると思うんで。来年の1月、2月とかかな? 出します! 


—きっとKMさん名義の作品にも(sic)boyさんが参加されると思うので併せて楽しみにしています。




▶『CHAOS TAPE』


アーティスト:(sic)boy KM 

リリース:2020年10月28日

レーベル:add. some labels


収録曲:

1.HELL YEAH

2.Set me free feat.JUBEE

3.BAKEMON(DEATH RAVE)

4.眠くない街

5.Heaven's Drive feat.vividboooy

6.Pink Vomit Interlude

7.Pink Vomit feat.LEX

8.Ghost of You

9.U&(dead)I

10.走馬灯

11.Kill this feat.Only U

12.Akuma Emoji

13. Akuma Emoji (KM Back to 2002 Remix) ※CD限定

 

配信URL:https://fanlink.to/CHAOS_TAPE

CD販売URL:https://tower.jp/item/5108234


リリースパーティー詳細

日時:2020年12月12日 22:00〜5:00

会場:渋谷VISION

Live:(sic)boy& KM、vividboooy、 JUBEE、Only U

DJ:オカモトレイジ、doooo(CreativeDrugStore)、No Flower(kiLLa)、and more





▶(sic)boy


オルタナティブ、エモ、ラウドロック の要素や日本のロックシーンに代表されるようなメロディアスな歌い回しをヒップホップに落とし込んだスタイルで注目を集める新鋭(sic)boy。Soundcloud 上で公開された楽曲の強度の高さが話題を呼び、活動をスタートさせてから1年余りにも関わらず合計再生回数は160万再生を突破。今年の2月にはANARCHY、SALU、BADHOP、kiLLaなどへの楽曲提供で知られるトラックメーカー/ プロデューサーKMとのコラボEP「(sic)’s sense」をリリースし話題を呼び、4月にリリースされた「Akuma Emoji」でヒップホップとJ -ロックの融合を見事に体現し両ジャンルにおい て注目の新鋭としての地位を確立、7月にリリースした「Heaven’sDrive feat.vividboooy (Prod.KM)」はリリースから1ヶ月でYoutube 再生回数60万回を突破、サブスク合計再生回数は200万を超え、2020年を代表するサマーアンセムとなった。


▶KM

音楽プロデューサー。

ヒップホップに根ざした音楽スタイルを保ちつつ、異ジャンルとの果敢なクロスオーバーを試みる制作姿勢が常に話題に。

ANARCHY、SALU、BAD HOP、田我流、ECD、SKY-HI、Taeyoung Boy、Gottz、Kvi Baba、YDIZZY、WILY WNKA、VIGORMAN など、すでに数多くの楽曲やRemix ワークを世に送り出している。

自身名義では「Lost (EP)」(2017)、「Fortune Grand (Album)」(2018)、2019 年11月、田我流とのEP「More Wave」をリリースしている。現在2nd Albumに向けて部屋篭り中。



photo:Ki Yuu





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