Shin Sakiuraインタビュー “変化の1年”の中、感じたことを書き溜めた『NOTE』

ソロだけでなくサポートやプロデュースなど幅広く活躍するShin Sakiura。変化の多かった2019年とその中で作り上げた3rdアルバム『NOTE』についてインタビュー。
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2020.03.25 08:00

ソロワークだけでなく、プロデュース、ライヴサポートと幅広い活躍を見せるトラックメイカー/ギタリストのShin Sakiura。100本以上のライヴと40曲以上の制作をこなしたという、激動の1年の中で完成させた3rdアルバム『NOTE』について訊く。




Shin Sakiura
東京を拠点に活動するプロデューサー/ギタリスト。バンド活動を経た後、2015年より個人名義でオリジナル楽曲の制作を開始。2017年10月に80KIDZ、TAAR等を擁するレーベルPARKより1stアルバム『Mirror』(2017年10月)、2ndアルバム『Dream』(2019年1月)、2枚のフル・アルバムをリリースした。エモーショナルなギターを基としながらも、HIP HOPやR&Bからインスパイアされたバウンシーなビートとソウル~ファンクを感じさせるムーディーなシンセ・サウンドが心地よく調和されたサウンドで注目を集め、SIRUPのライブをギタリスト/マニピュレーターとしてサポートし、SIRUPや向井太一、シットキングス、showmore、Rude-α、miwaの楽曲にプロデュース/ギターアレンジで参加するなど活躍の場を広げ、アパレルブランドや企業のPV、CMへの楽曲提供も行っている。



目まぐるしく変わる環境の中、自分に足りないものを吸収した1年



ー去年、アルバム『Dream』がリリースされたときのインタビューから、ちょうど1年ぶりですね。


Shin Sakiura(以下、S):1年ですか?体感だと5年ぶりくらいです(笑)。


ー去年のインタビューでは「2019年はアウトプットの年にしたい」と話していましたが、実際はどうでしたか?


S:すごく濃密な1年だったんですが、どちらかと言うとインプットが多かったように思います。SIRUPのサポートメンバーとしてツアーをまわったり、今までできなかったような規模でライヴするようになったり。あとは、自分がこれまでリスナーでファンだった人と一緒に音楽を作るようになったり。そういう環境の変化によって自分に足りない部分を感じることも多くて。そういう意味ではインプットが多い1年でしたね。


ーSNSで「2019年は100以上のライヴと40曲以上の制作をした」と書かれてたので、てっきりアウトプットの1年だったのかと思っていました。


S:新しいものをどんどん生み出すという意味では、確かに。とにかく変化の多い年だったので、その変化の一つひとつから学ぶことが多かったんですよね。自分に求められるもののグレードがひとつ上にあがったので、それによって考えることも変わってきて。例えばライヴサポートひとつとっても、今までは200〜300人くらいの規模だったものが、横アリとかで演奏させてもらえるようになると、1回のライヴにとてつもない人数の人と時間と予算がかかってるっていうのを実感する。


ー単純に観客の人数だけじゃなく、ステージを支える裏方の人たちがかけている時間も背負ってステージに立つと。


S:そうすると演者の緊張感もいい意味ですごく上がってくるんですよね。単純に音楽が楽しいっていう気持ちもあるんだけど、それだけじゃなく、より高いクオリティの音楽を届けるっていうことを考えるようになりました。ライヴでも制作でも。



ーそんな濃い1年の中で特に印象的だったことって何ですか?


S:12月に代官山UNITでやった自分のワンマンライヴですかね。僕の音楽ってたくさんのお客さんが集まるような音楽じゃないと思ってたんです…というか、今も思ってるんですけど。でも当日は350人くらいの人が来てくれて、「こんなに?」って感じでした(笑)。


ー本人が一番びっくりした(笑)。


S:そうそう(笑)。ワンマンの時期は寝る時間もないくらい同時にいろんな仕事をしてて、すごく忙しかったんですよ。シットキングスっていうダンスクルーのサポート、SIRUPのZEPPイベント、年末のフェスもいくつかあって、かなりバタバタしてて。仕事に追われてダークサイドに飲まれかけてたんですけど(笑)。そんな中でリハを重ねて、当日はお客さんにもたくさん来てもらって演奏もしっかり聴かせられて、形として成功させられた。それが自分にとって大切な通過点だったなと。ライヴはそのタイミングでその場所でしか起こり得ないことだから、その貴重さが自分の中ですごく残ってて。きついこともあったけど、楽しかったしやって良かったなと思います。



ー聞いてるだけでかなりの過密スケジュールだったんだろうと思うんですが、そういった中で楽曲を制作していくとき、インスピレーションとかアイデアはどうやって浮かぶんですか?


S:もちろん「全然浮かばない〜」みたいなときもありますけどね。まず納期までの時間を逆算するんですよ。「集中して作業する時間は◯時間、作業する前に考える時間は◯時間…」って考えて、その時間いっぱい散歩したり、曲を聴いたり、アイデアの元になりそうなものを吸収します。誰かのプロデュースだったらその人のライブ映像を観たり、会えそうなら時間作ってご飯に行ったり。作業するギリギリまでインプットして、あとは集中して作業、みたいな。SIRUPのツアー中も、1日だけ東京に帰ってきた日に3曲作らなきゃいけない、とかありました(笑)。でも、暇ができるよりやることが詰まってる方が性格的にはあってるなと思ってて。1年を振り返ってみても、自分にとって有意義だったなと思えます。


ー1日に3曲…。頭の切り替えとかはパッとできるものなんですか?


S:いや、できない…頑張ってます(笑)。10分だけ寝るとか。あとは、コンビニで甘いものたくさん買って食べて、「よっしゃ、やるぞー」みたいな(笑)。


ーなるほど〜。以前Shinさんが楽曲提供したシンガーの方にインタビューしたとき、ギリギリまで作り直してくれたからすごくいい曲になったという話を聞いて、忙しい中でも一つひとつにそこまでこだわってるんだ、とびっくりしたんです。


S:そうですね。時間があるときは、コミュニケーション取りつつ最後までブラッシュアップしていきたいと思ってて。最終的に全然違う曲になることって結構あるんですよ。だから作り直すことに抵抗はないですね。時間のある限り、より良くしたい気持ちがあるので。


ー自分の楽曲と提供する曲で、意識することはそれぞれ違いますか?


S:違いますね。自分の曲は自分が満足すればいいんですけど、誰かに書く曲はその人が気に入ってくれる曲を作らないといけないので。去年は色んな人とやらせてもらって、自分だけではできないことが他の人とならチャレンジできるなっていうのは感じました。自分から提案したことが実現できるのはすごく楽しいです。


ーさっきも話に出たダンスチームのシットキングスに楽曲提供っていうのは、シンガーさんに曲を書くのとは少し違うのかなと思ったんですが。


S:そうですね、劇伴を作ってるような感じでした。「ANOTOBI」っていう曲を作らせてもらったんですが、できあがるまでのコミュニケーション回数はすごく多かったですね。曲に対するコメントが「このタイミングでこういう動きをつけるから、そこに持っていく音を入れて欲しい」とか、ダンサー目線で。もともとシットキングスのファンだったので、一緒に仕事させてもらえるのが決まったときはすごくびっくりしたし、いざ一緒に仕事してみたらものすごいプロフェッショナルで。こうありたいなという仕事の仕方を勉強させてもらいました。


ステージにも一緒に出られたんですよね?


S:はい。僕と、キーボードの井上惇志くんとドラムのタイヘイくん、ベースの越智俊介くんと。大阪のときだけLUCKY TAPESのKeityがベースで。最高に楽しかったです。


ーシンガーさんのバックでやるのとは違います?


S:全然違いますよ。気持ち的にも、シンガーと一緒のときはその歌ってる音を聴いて自分の演奏がエモくなるんですが、シットキングスのときはダンサーが踊ってるところを見てテンション上がってくる。振りと音がバチッと合ったときはめちゃくちゃヤバいですよ。ステージは全部で5回やらせてもらったんですけど、毎回鳥肌立って泣きそうになりました。貴重な経験です。


ーぜひ生で観てみたいです。サポートに制作に忙しい1年を過ごされたと思いますが、そんな中で自分的な癒やしってありますか?


S:やっぱり友達とご飯行くのが一番ストレス解消になります。仲いい友達って似たようなことを感じてるから、話しててお互い共感できることが多いんですよね。去年いちばん一緒に酒飲んだのはGUCCIMAZEさんで。80KIDZのJUNさんに紹介してもらって仲良くさせてもらってるんですけど、2週間に1回くらいの頻度で飲んでるときとかありました(笑)。色々話を聞いてもらったり、一緒にベロベロになって。それでストレス解消してました。


ー話すのって大事ですよね。


S:そうなんです。僕、一人でいると結構ダウナーな感じになっちゃって、「あのときもっとこうすればよかった」とか考えちゃうんで。外に出て人と話すのは大事ですね。






理想の音になるまでひたすらに試行錯誤し続けて、完成したアルバム



ーでは今回のアルバム『NOTE』について聞かせてください。収録されてる11曲の中で軸となった曲はどの曲でしょうか?


S:今回のアルバムはフィーチャリング曲の比重が多いんですけど、軸になってるのはインスト曲ですね。去年1年間の中で感じたことや、かっこいいと思ったものをその都度曲として作り溜めてて。それをひとまとめにしたという意味で『NOTE』っていうタイトルにしたんです。


ー感じたものをすぐ作品に反映させてたんですね。


S:はい。その中でも初期にできてたのは「Be」と「Need You」。1年くらい前に作った曲で、この2曲はちょっと雰囲気が違う。やりたいことが自分の中でどんどん変わっていくので。他の曲は半年前くらいにできた曲です。


ーその2曲は前作のアルバムのニュアンスが残ってる感じですね。インスト曲の中でも「Everlasting」はルーツのオルタナに回帰した曲ということですが、意図してそうした感じですか?


S:どちらかと言うとそうですね。他の人とはブラックなバイブスがある曲を作ることが多くて。そういうものを作ってる最中に、めちゃくちゃオルタナティヴなものを作ったら面白そうだな、と思ってできたのが「Everlasting」です。


ーUKでもヒップホップの波とロックの波が交互に来るという話があって。今はまた徐々にロックが来てると言われているので、そういった意識もあったのかなと思ったのですが。


S:確かに、新譜とかはそういうテイストのものを聴くことが多かったかもしれないですね。ただ、ビートがブレイクビーツになってたりとか、ラップ的なカルチャーもオルタナの一部だという認識で作ってて。自分が今まで触れてきた音楽をまとめたらどうなるのかという気持ちで作った曲でもあります。自分のルーツを考えたときに、大きく分けるとロックとエレクトロとヒップホップだなと思っていて。それを合わせて「Everlasting」ができました。



ーなるほど。前作に比べてフィーチャリング曲が増えたのは、色んなアーティストと関わる中で自然と増えていったんでしょうか?


S:僕、歌モノ好きなんですよ。だから誰かと一緒にやりたいっていうのは常に思ってて。だから、声が好きな人、現場で関わったことがある人、シーンの中で近いところにいる人と「一緒にやりたいです」って相談させてもらって実現した感じです。


ー曲があってオファーするっていうよりは、オファーしてから作る感じですか?


S:どっちもありますね。AAAMYYYちゃんは「AAAMYYYちゃんといえばこれでしょ」って脳内で決めた曲を渡して、そこに乗せてもらいました。逆にKan Sanoさんは、打ち合わせさせてもらった後に作って。「この人はこういうテイストの曲が多いけど、僕だったらこういう方向でやりたいな」っていうのはどの人でも考えますね。例えばKan Sanoさんはキーボーディストなので鍵盤メインのことが多いと思うんですが、ギターメインの曲にしたら面白いだろうなと思って作ったりとか。


ーmaco maretsさんとはどうやって一緒にやることになったんですか?


S:maco maretsは、彼がやっているイベントに出演依頼をもらって、結局日程が合わず出演はできなかったのですが、一緒になにかやろうってことで打ち合わせがてらご飯行ったらめちゃくちゃ仲良くなったのが始まりです。同い年なんですよ。僕らは、今20歳前後のインターネットネイティブ世代でもないし、もう少し俯瞰的にシーンやカルチャーを見てきた30前後の世代でもなく、ちょうどその間なんですよね。どちらとも少し違うなっていう感覚があったんですが、彼も同じように感じてたみたいで。同世代で音楽やってて、同じような感覚持ってる人にあんまり会ったことがなかったんですけど、そこにすごく共感して仲良くなりました。


ーRyohuさんとは?


S:Ryohuくんはもともとアーティストとしてすごく好きで。大学でヒップホップにハマってたときにKANDYTOWNも好きで、めちゃくちゃ聴いてたんですよ。共通の友達が多かったこともあって、飲みに行って仲良くなってオファーしました。とにかく僕が一緒にやりたかったので。


ーじゃあ、実現したときは嬉しかった?


S:めちゃくちゃ嬉しかったですね。最初に送ったオケに入れてくれたのを聴いた時点で「やば、かっけー!」って。


ーそのときにはもう「気持ちがレイムじゃ…」のくだりも入ってたんですか?


S:そうそう。このサンプリングはやばいなと。流石すぎると思いました。ライヴでどんどんやりたい曲になりましたね。



ーアルバム全体を通して、ベースや鍵盤、ミックスも全て自分で手掛けたということですが。


S:前のアルバムはマスタリングまで全部自分でやって。今回もミックスまでは自分で、マスタリングは人にお願いしました。めちゃくちゃ音が良くなってるんですよ。


ー苦労した部分はありますか?


S:演奏面ではあまりないんですけど、ミックスは苦労しました。ミックスって色んな音のバランスを調整していく作業なんですけど、バランスだけじゃなくて、音の存在感の調整とかも死ぬほどやりました。何日もかけて作って、移動中とかに繰り返し聴いて、帰って直して、その繰り返し。泣きそうになりながらやってましたよ。「こんな細かい音、誰も聴いてないやろ」とか思って精神のバランス取ろうとしたこともありましたけど(笑)。でも、自分の思い通りの音になるまで試行錯誤しまくって、めちゃくちゃいい感じに仕上がったのがこのアルバムです。頑張ってよかったです。


ーギターの練習量も増やしてるって他のインタビューで読んだんですが、それも制作のためですか?


S:それはどちらかというと、ライヴのためですね。いろんな人と演奏させてもらうことが増えて、もっと上手くならないと自分が楽しめないなと。求められてるレベルにも到達してないと思って、今もずっと練習してます。自分はトラックメイカーだと思ってた部分が多いんですけど、それプラス、音楽を理解するためのツールとしてギターをもっと弾けるようにならないと、という意識ですね。


ーこのアルバムの曲をライヴで聴くのも楽しみですね。もうすぐツアーも始まる予定ですが、どういうステージになりそうですか?


S:UNITのワンマンでやったことをさらにブラッシュアップさせていくイメージです。それを色んな場所で聴かせたいと思ってます。


ー今は残念ながらライヴイベントが難しい時期でもありますよね。音楽がこういうときにできることって何だと思いますか?


S:そうですね、答えるのがめちゃくちゃ難しいんですけど。ネットがあるのでみんな音楽は聴けると思うんですが、こうやってライヴがなくなって始めて「ライヴを観るのも、ライヴをするのも好きだったんだな」って改めて思うことが多くて。ただ、こんなときだからこそ音楽は心の支えになる、寄り添えるものだと思ってます。


ーありがとうございます。最後に今後の目標やビジョンを教えて下さい。


S:「後悔しない1年にしたい」です。ベタですけど。去年はめちゃ濃密で、いきなりその環境になった中でも頑張れたとは思います。ただその中で、もっとやれたなと後悔するポイントもあって。だから、後悔のない1年を過ごしたいですね。






【リリース情報】




Shin Sakiura『NOTE』


Release Date: 2020.3.25.wed

Artist: Shin Sakiura

Title: NOTE

Label: PARK | SPACE SHOWER MUSIC 

Format: Digital


01. Intro

02. Slide feat. maco marets

03. Be

04. ほんとは feat. Kan Sano

05. このまま夢で feat. AAAMYYY

06. U

07. Walk Into The Night

08. Need You

09. More Life feat. Ryohu 10. Anxiety

11. Everlasting



【ツアー情報】


Shin Sakiura 『NOTE』Release Tour


◆4/19(日) 愛知・名古屋Live & Lounge Vio

Guest Act: showmore  DJ: SHOGO / DANIKI

OPEN 17:30 / START 18:00

https://www.sundayfolk.com/go/shinsakiura_note  


◆4/20(月) 大阪・梅田Billboard Live OSAKA

Re:flexion w/Soulflex

1st Stage: OPEN 17:00 / START 18:00

2nd Stage: OPEN 20:30 / START 21:30

http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=11879&shop=2


◆5/2(土) 東京・渋谷WWWX

With Special Guests

OPEN 17:00 / START 18:00

https://www.creativeman.co.jp/event/shin20/



photo by Ki Yuu

Written by Moemi





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