渋谷ミュージック・バー探訪|Vol.1 渋谷花魁

渋谷で日々、人と人との出会いの交差点となっているミュージック・バーを紹介する連載企画。第1回目は道玄坂に店を構える「渋谷花魁」を訪れ、オーナーでプロデューサーのカワムラユキに話を聞いた。
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2021.09.21 08:00

English version here


常に新しいカルチャーが生まれ続ける街、渋谷。そんな渋谷で日々、人と人との出会いの交差点となっているミュージック・バーを紹介する連載企画「渋谷ミュージック・バー探訪」をスタートする。第1回目となる本記事では、道玄坂に店を構える「渋谷花魁」を訪れ、オーナーでプロデューサーのカワムラユキに話を聞いた。


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ー「渋谷花魁」のオープンはいつですか?


カワムラユキ:2010年の5月にプレオープン、6月がグランドオープンでした。


ー2021年で11周年ということですね。この11年はいかがでしたか?


カワムラユキ:辛いときでも毎日わりと楽しかったかな。このお店があったから自分も元気に過ごせているんだと思います。


ーお店のコンセプトを教えて下さい。


カワムラユキ:この花魁がある渋谷・道玄坂は、ライブハウスやクラブ、映画館やバーがたくさんある場所です。もともと私がイビサ島に行った時、クラブへ行く前にみんなが集まって今夜の予定を情報交換する場所、「ウォームアップバー」という存在に感動したんですよ。当時、東京にはそういう場所が全然なくて、こんな場所を東京に作りたいなと思ってこのお店を作りました。


「ウォームアップバー」と呼んでいますが、クラブに行く前の人だけでなく、例えばライブの打ち上げや映画を観終わって余韻に浸りたい人なんかも来れる場所。クラブに行く前の人とライブや映画を観終わった人が交差できるミーティングポイントなんです。化学反応が起こる場所にもできるし、普通にお仕事の後に来てチルしてもらってもいい。


私は元々チルアウトのDJなのでリラックスする空間を作りたいと思っているんですが、ただ単にリラックスするだけではなくて、ホームパーティーでにぎやかにしているのを眺めながらお皿洗いをしている感覚というか、そういうチルもあると思うんですよね。そういった普通の生活に寄り添ったチルを感じられる場所でもあってほしい。


オープンした後、2011年に震災があって。渋谷花魁はまだ1年目だったんですが、日本や東京、遊んでいる人たちを元気にしようという意味合いもプラスされて、「渋谷をウォームアップしていこう」という思いで続けてきました。








ーそういった「ウォームアップする時間」「余韻に浸る時間」があるからこそ、次に行くクラブがより楽しくなったり、ライブの後まで含めて思い出になったりする相乗効果がありそうですね。


カワムラユキ:そう。現実世界のお仕事や学校からいきなりクラブという空間に行くのには戸惑っちゃう人もいると思うんですよね。あとは「今夜どこ行こう?」って情報交換ができる場所になればいいとも思うし。クラブだとゆっくり話せないから、久しぶりに会って1時間くらいゆっくり喋ってからクラブに行ってもいいでしょ。この場所で誰かに会って、誘われて行く予定じゃなかったパーティに行ってみるとか、そういう夜の嬉しい誤算も演出したいですね。


もちろんクラブ音楽に興味がなくても、この場所でゆっくり飲んで、ここに集まる人たちと楽しく過ごして帰る方もいるし。観光と観光の間に来てくれる海外から来たお客さんや、DJする前に来てくれる友達なんかもいます。





ーお店のデザインのこだわりについて教えてください。


カワムラユキ:パリだと古い建物ほど不便でもすごく価値があるでしょ?私も、古いものをリメイクして新しい感覚にすることが自分の活動のコンセプトだと思っているんです。親の世代はスクラップ&ビルドで、建物は新しいほど価値があるから全部壊して新しくしてしまえ、という価値観が主流だったと思うんですが、それにずっと違和感を感じていました。


このお店を作る時、ちょうどリーマンショックで建て直せない物件が残っていて。そのことが逆にチャンスだと思えて、古民家をリノベーションして作ったのがこのお店です。DJブースとスピーカーの位置を最初に決めてからリノベーションしました。特に海外から来てくれたお客さんは、渋谷にあまりこういう場所がないから喜んでくれますね。




あとこだわりと言えば、メインカラーの目が覚める赤、パッションを感じる赤。ただの赤じゃなくて、ちょっと朱色というかディープなレッドで、情熱を掻き立てるような空間にしたくて。




ー確かに、ヨーロッパだと古い建物は基本石造りのものが多くて、一方日本は木材の建物が多いので残すのがすごく難しい中、こういう古民家の雰囲気を残し続けるのは大変なことですよね。


カワムラユキ:そう、結構手入れが大変なんだけど、スタッフも丁寧に物を使うことが好きなので。オープン当時は「サステナブル」という言葉はなかったけれど、10年経って価値観が変化して、リサイクル、リノベーションという言葉や感覚も一般化してきていますよね。音楽もそう。古い音楽をサンプリングしたり、コラージュしたり、オマージュして新しい音楽を作るような流れもあると思います。


ージェネレーションの融合が起こるような。


カワムラユキ:そうですね。お客さんの年齢も下は20代から上は80代まで幅広くて。ここでいろんな世代の人と喋って楽しい気持ちになって、エネルギーをもらって帰れる、なんて言葉もよくいただきます。世代間を超えたコミュニケーションがお酒や音楽を通じてできているのは素敵なことだなと思っていますね。


ー初めて会った人でも楽しく話せる空間が出来上がっていますよね。


カワムラユキ:この場所でフェスのブッキングが決まったり、DJが次の活躍の場所を見つけたりなんてこともしばしばありますね。ただ、来ていただいてるお客さんには、心の片隅にエレガンスを持って来て欲しいなと思っています。




ーそれは以前から「誇りを持って遊びましょう」と常々おっしゃっていますよね。


カワムラユキ:ラジオでもずっと言い続けてますしね。自分自身もどれだけ出来ているかわからないけれど、そうありたいなとは思っています。


ー花魁ではどんな音楽がかかっていますか?


カワムラユキ:メロウな四つ打ちとチルアウト、ジャズやバレアリックなムードの音楽。平日と週末でも少し違って、平日はメロウ、週末は少しアッパーな雰囲気です。DJはスタッフやスタッフの友達など、ローカルなコミュニケーションを大切にしています。ブッキングとなると完成度やクオリティーを重視しなくちゃいけないけど、もっとカジュアルに、ご縁のあるDJにとってのスケッチができる場所にしたくて。そういう肩の力が抜けたものが生み出す嬉しいマジックタイムもあると思います。日によって音楽の雰囲気には違いがあるけれど、空間の力もあって絶妙にうまくまとめられているとは思いますね。






ーどの時間帯がおすすめですか?


カワムラユキ:初めて来る人には夜8時以降。8時から10時、11時くらいがちょうどいいかも。ホーム感もありつつ、深い夜にシフトしていく時間帯です。DJミキサーのフェーダーがスーッと変わるような、道玄坂での人々のテンションが変わってゆく景色を見られるのもオススメ。


ーおすすめのメニューを教えて下さい。


カワムラユキ:私だと最近は、国産クラフトジンで作るジンソーダかジンライムかな。スタッフのヨウヘイにも聞いてみてください。


ヨウヘイ:ノンアルコールだとCBD入りのフローズンカクテル。フレッシュフルーツを凍らせて、それをミキサーで攪拌して作っています。キャラメルフレーバーのCBDを入れたり、マンゴーフローズンに柚子フレーバーのCBDを入れて飲んだりもできますよ。温かい飲み物を飲みたい日にはラテも人気。お酒だとモヒートかな。ミントの葉をすりおろして作っているので、すごく香りが立つんです。あとは白ワインの自家製サングリアもおすすめ。桃とパインを入れて、お砂糖は一切入れずに作っています。








ーメニューへのこだわりはありますか?


ヨウヘイ:極力、添加物を使わないことですね。もし砂糖を使うなら蜂蜜に変えるとか。飲むなら体に良いものがいいじゃないですか。レモンも表面にワックスがついてるので、重曹で洗ってから用意するとか、気を使って作っています。


ーお店での特別な思い出を教えて下さい。


カワムラユキ:ここで出会ってその後に結婚した友達や、ここでお仕事が決まった人が何人かいるんです。この場所で人生が変わったお客様がいるというのは何より嬉しいですね。私は子供を産めないけど、私がいなかったらいない子供もいっぱいいるんだなと思っています。


そういう方たちは環境の変化で頻繁に来れなくなっても、たまに一緒に顔を出してくれるとすごく嬉しい。最近のコロナ禍でコミュニティーの大切さを改めて感じていて。孤独がどれだけ辛いことなのか、すごく身に沁みることがあるんです。渋谷花魁で出会った友達や、渋谷花魁を通じて縁が途切れないでいられる友達や仲間がいるから、厳しいコロナでもSNSなどで連絡を取り合って、元気でいられたのかなと思っています。




ーお客様にはここでどんな時間を過ごしてほしいですか?


カワムラユキ:こんなに厳しい時代だし、辛いこともいっぱいあるけれど、少しでも優しい気持ち、ハッピーな気持ちになれたり、ラッキーなことが起きればいいなと思います。私が人生で大切にしてることが「ハッピー」と「ラッキー」なんですよ。例えば、昨日落ち込んで一晩中泣いていても、ハッピーなこと、ラッキーなことがあれば少し変われるじゃないですか。だからこの場所で少しでもハッピーとラッキーに出会ってもらえたらいいなと思っています。


ー最後に、カワムラさんのおすすめの渋谷のミュージック・バーを教えて下さい。 


カワムラユキ:AOYAMA TUNNEL。よくDJもしますし、居心地がいいですね。あとはみんなノリがいいところが大好きです。


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【渋谷花魁】

東京都渋谷区道玄坂2-22-6

TEL 03-5456-8782

HP http://oiran.asia


※営業時間は店舗のSNSをご確認ください。

Twitter:https://twitter.com/oiran_shibuya


Instagram:https://www.instagram.com/oiran_shibuya/


【shibuya OIRAN warm up Radio】

毎週金曜20:00-21:00放送

https://block.fm/radios/17



Written by Moemi


Photos by Marisa





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