SebastiAn待望の最新アルバム『Thirst』制作秘話を本人とコラボレーターの日本人ラッパー、Lootaが語る

アルバムのアートワーク、話題になったMV、豪華コラボレーターなどフレンチエレクトロファンが知りたい制作秘話を伺った。
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2019.12.17 09:00

フレンチエレクトロにおける重要プロデューサーの1人であるSebastiAnが、前作のデビューアルバム『Total』以来、8年ぶりとなる2ndアルバム『Thirst』を今年11月にリリースした。



”フレンチエレクトロの今様”を感じるSebastiAn最新アルバム『Thirst』 


近年はFall Out Boyを始め、Frank Oceanや母国フランスのポップアイコンであるCharlotte Gainsbourgなどロック、R&B、ポップスなどジャンルレスに音楽プロデューサーとしても活躍するSebastiAnだが、最新アルバムとなる本作は、フランス映画界の鬼才、ギャスパー・ノエがMVの監督を務め、その映像ともリンクする圧倒的に暴力的なエレクトロであるタイトル曲「Thirst」で幕をあける。  


ロンドンのアップカミングなロックスター、Bakarをフィーチャーした「Sobar」のようなSebastiAn印の”トーキングベースライン”曲が収録される一方、Justice以降の王道フレンチエレクトロのフィーリングを基調としつつも4/4のイーブンビートに限らず、多様なビートフォームを採用した本作では、多くのゲストシンガーが迎えられている。



The InternetのSydのシルキーな歌声が印象的なエレクリックソウル「Doorman」、前作『Total』でもコラボしたMayer Hawthorneとのドリーミーなインディポップ風チューン「Better Now」、Kanye West作品にも参加するラッパーのAllan Kingdomとの荒れ狂うエレクトロ「Yebo」、Charlotte Gainsbourgのウィスパーボイスと激しく歪むシンセのコントラストが映える「Pleasant」、今春初来日を果たしたSevdalizeとの妖艶な「Sev」など、ゲストシンガーたちの特性を活かした多数の歌モノエレクトロは、先述の音楽プロデューサーとしてのキャリアが存分に活かされたSebastiAnの進化を感じる部分でもあり、単一シーンだけで完結せず、近年はヒップホップを始めとした様々なジャンルのアーティストたちと交配を続けるフレンチエレクトロの今を感じる部分でもある。



また本作には日本人ラッパーのLootaがゲストとして迎えられており、ノイジーかつベーシーなSebastiAn解釈によるヒップホップトラック「スィート Sweet」は、日本語によるLootaのラッブによってアルバム中で異彩を放つ1曲になっているところも本作における押さえておくべきポイントのひとつだろう。


全体的にこれまでのキャリアで培ってきたものを発展進化させることで”フレンチエレクトロの今様”を感じるアルバムとなった『Thirst』だが、今回、block.fmではそんなアルバムについて、SebastiAnにメールインタビュー。さらに本作に参加した唯一の日本人アーティストである先述のLootaにもコラボに関するインタビューを行った。



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--アルバムのタイトル曲「Thirst」のMVは映画監督のギャスパー・ノエが手がけましたが彼を抜擢したきっかけは? 


SebastiAn(以下、S):まずギャスパー・ノエは、僕にとってフランスに限らず世界最高の映画監督なんだ。あと彼はプライベートでも友人だということもあって、アルバムが完成した際に自宅に招いて、音源を聴いてもらった。その時、彼は映像のアイデアとして”テストステロン(男性ホルモンの一種)”のような何かとてつもなく力強いイメージが頭に浮かんだようで、すぐに僕らはMV制作に取り掛かったんだよ。



--アルバムのカバーアートはファッション写真家兼ミュージックビデオディレクターのJean-Baptiste Mondinoが手がけています。前作アルバムでは自分自身をギリシア神話の美少年ナルキッソスに見立て、キスを交わすものになっていましたが、今回は砂漠で自分自身を殴る描写になっています。自分自身を投影させる図式は同じですが、今回そのようなものにした意図は?


S:今作のカバーアートワークは、前作の回答になっているんだよ。最初のキスから「現在」の世界への進化を表現するといったね。”ナルシシズム”は自分勝手な愛情から憎しみ、自分への過剰な愛情を含んでいる。いうなれば君たちがいつもソーシャルメディアで目にしているのがそれだね。前作のカバーアートワークの頃にはすでに僕らはFacebookを使っていたけど、その発展は人々をつなぐとか、何かポジティヴな要素があった。


でも、8年がたった現在、僕らはInstagramやTwitterなんかのSNSを使っているんだけど、SNSはもはや以前とは違う何か別モノになってしまった感がある。今みたいにSNSでただ自分のエゴをさらすのはもはやクールじゃないし、空気的にも重い雰囲気になっているよね。だから『Thirst』のカバーアートワークは、自分のことをあまりに愛しすぎるのは良くないということの戒めにしたかったから、ああいったものにしたんだよ。






--本作には前作にも参加していたMayer Hawthorne、あなたがプロデュースを手掛けたこともあるCharlotte Gainsbourgといった縁のあるアーティストのほかにもThe InternetのSyd、 Sevdaliza、Bakarのようなエッジィなゲスト、さらには日本人ラッパーのLootaが参加するなど客演曲が目立ちます。なぜ、彼らをコラボレーターに抜擢されたのでしょうか?


S:その答えはとても単純で、僕が彼らのことを最高だと思っているからさ。それに僕は彼らのことが大好きなんだ。そもそも僕は音楽でコラボする場合、人間味があることをコンセプトに掲げている。つまり一緒に音楽を作るだけじゃなく、一緒に楽しんだり、物事を共有したり、意見交換したりする必要があるのさ。だからネットを通じてファイルを交換するだけのことを僕はしたくないんだよ。


--前作はそれまでのエレクトロハウスの隆盛の中で確立されたエディットして作るようなインパクトのあるフレーズが、ディストーションが効いたものと同じように目立っていた印象があります。今作もエレクトロらしい荒々しい攻撃的な部分はもちろん感じるものの、以前よりもスケールが大きい、攻撃的なだけにとどまらない音楽的な深みや広がりがあると感じました。


S:以前やったことを何度も繰り返すだけの音楽は作りたくないんだ。だから、今作ではここ数年の間に培った自分の全てと新たに受けた影響を詰め込んでみたよ。まあ、摂取と消化を続けてきたから頭の中がいっぱいいっぱいになって一種の錯乱状態にはなったけどね。


--前作リリース以降、先述のCharlotte GainsbourgやFall Out Boy、Frank Oceanといったアーティストたちのプロデューサーとしてのキャリアを重ねてきました。最近ではエレクトロのアーティストがヒップホップやほかのジャンルのアーティストのプロデュースを手がけることが増えてきましたが、こういった動きについてどうお考えですか? 特にフレンチエレクトロのアーティストはヒップホップ/R&B方面のプロデュース仕事でも知られる機会が増えてきているように思います。


S:僕は元々はヒップホッププロデューサーとしてキャリアをスタートさせたということもあって、エレクトロニックミュージックには色々なジャンルがあるけど、そんなに違いはないと考えているんだ。制作手法に関しても、素材、方法はほとんど同じだし、その過程も決まりきっている必要はなく自由なんだよ。例えばヒップホップが生まれたあと、TR-808でビートを作ることが基調になったよね? それはそのあとに生まれたほかのエレクトロニックミュージックにも見られたことなんだ。そして、今は、ジャンルの垣根を越えて多くの人々が音楽にコネクトしているし、新しいサウンドに対してもオープンになっているし、そういったものに以前よりも好奇心を持っていると思っているよ。





--Lootaさんは、そもそもSebastiAnとはどのように知り合ったのでしょうか? コラボすることになったきっかけや流れを教えて下さい。 


Loota(以下、L)クリエイティブディレクションをしていただいているKIRIさんを通じて知り合いました。 


--「スィート Sweet」はどういったコンセプトをもって制作されましたか? 


 L:自分がアルバムを制作をしている期間にビートが届いたのもあって、いつもと同じようにスタジオで過ごしている中で出来上がりました。アルバム制作前にKIRIさんとパリに行く機会があって、Ed Bangerの人達と遊ぶ時間が多かったんです。そのタイミングではSebastiAnとは会っていないんですが、その時パリで過ごした時間は今回の曲に作用していると思います。



-- 楽曲制作での印象的なエピソードなどありましたら教えて下さい。 


L:制作後にパリに行く機会があったので、SebastiAnとコンタクトをとって、彼のホームスタジオにお邪魔しました。完成間近のアルバムを聴かせてもらったのはとてもエキサイトしたし、お互いの音楽や国のことを話したり、刺激的な時間を過ごさせてもらいました。  


-- 日本語で世界にコネクトするラッパーが増えてきていると感じていますが、Lootaさんは日本語の持つポテンシャルをどのように考えていますか? 


L:それについては正直よく分かりません。音楽の上での言葉の聴こえに関しては、だいぶ垣根が無くなってきたんじゃないかと感じています。日本語を勉強している外国の方に“日本語は難しい”といわれることがよくあります。感じていることはなんとなく分かりますし、自分も逆の立場だったら同じように感じると思います。その“難しい”ポイントが自由度や奥行きにも繋がるんじゃないかとも思います。



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【読者プレゼント】


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■プレゼント詳細


・SebastiAn『Thirst』Tシャツ(バックプリント)&トートバッグ:1名様


■応募方法


①block.fmのTwitterアカウント(https://twitter.com/blockfmjp )をフォロー

②SebastiAnのインタビュー記事のツイートをリツイート


■応募期間


2019年12月17日18:00〜2019年12月27日23:59

※当選者の方にはblock.fmのアカウントからDMにてご連絡させていただきます。


 【リリース情報】


SebastiAn『Thirst』


発売日:2019年11月08日

アナログ デラックスエディション(完全生産限定ピンク・カラー・ディスク2枚組+CD):

価格:3928円(税込)

https://store.universal-music.co.jp/product/2543956/


デジタル & ストリーミング:

https://edbanger.lnk.to/LPThirst



lead sentence by Jun Fukunaga

interview by Jun Fukunaga(SebastiAn), Moemi(Loota)




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