【レビュー】SALU と巡る記憶の旅。最新アルバム『GIFTED』を聴く

アルバム『GIFTED』で巡るSALUとの記憶の旅路
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2020.01.17 12:00

written by TOMIO


僕はこのアルバムを年末年始、実家に帰った際に聴き直していた。今は家族の物置として使われている、放置された自分の部屋で昔の写真やCD、本などを軽く整理していたらいろいろな思い出がアタマを巡った。大切な家族が亡くなったときのこと。自身の幼少期のこと。音楽に熱を上げるも、ハンパに挫折したことなど、断片的ではあるがそれらのピースが組み合わさって今の自分があることは間違いない。誰しもが失敗や傷を負って絶望する。そしてそこから立ち上がる。その繰り返しが人生なのかと最近思う。漫画ドラゴンボールでサイヤ人が死にかけると強くなって復活するみたいなものだと前向きに解釈している。


記憶とルーツを巡る旅。SALUが家族と過去と向き合った『GIFTED』という物語


2012年リリースの1stアルバム『In My Shoes』を弟の部屋で見つけて聴いたときの衝撃は今でも忘れられない。聴いてきたHIPHOPのどれにも当てはまらないキャラクターとその声とラップに、ガッチリ耳をつかまれたのを覚えている。


一年戦争から現れたニュータイプ


そのサウンドを手がけたのはSEEDAが2006年にリリースしたアルバム『花と雨』(2020年1月17日、『花と雨』を題材にした実写映画『花と雨』が公開された)以降、国内のHIPHOPファンの間で神格化されたプロデューサー/トラックメーカーBACHLOGIC。SEEDAとその周辺のアーティストを追っていたキッズたちにとっては『花と雨』よりも前から知っていて当然だったわけだが、そんなBACHLOGICが2010年代の始めに立ち上げた「ONE YEAR WAR MUSIC」からの第1弾アーティストとして、SALUは現れた。(『In My Shoes』の4ヶ月後、アンダーグラウンドシーンやネット上でその存在感をメキメキと顕していたAKLOが第2弾アーティストとしてシングル「RED PILL」をリリース。同年9月にアルバム『THE PACKAGE』がリリースされ、こちらも国内HIPHOPシーンの大きなトピックとなった。)






それから8年の月日が経った。SALUは「ONE YEAR WAR MUSIC」から独立し、2013年TOY'S FACTORYからメジャーデビュー。コンスタントに作品を発表し続けたSALUはこの間に、『COMEDY』、『Good Morning』、『INDIGO』の3枚のアルバムと、SALU & the dreambandgunjo名義で『THE CALM』、SKY-HI × SALU名義で『Say Hello to My Minions』、同名義では『GIFTED』に先駆けて『Say Hello to My Minions2』を2019年にリリースと精力的に活動してきた。


2018年にはEXILEのSHOKICHIが主宰するKOMA DOGG/LDH MUSIC(2019年12月16日よりLDH Recordsに改名)へ移籍を発表している。移籍によりどんなSALUが見られるのか。特に古参のファン、リスナーは心配するところもあったかもしれない。その解答となるのが『GIFTED』だ。結論から言えば、外野の心配など杞憂だった。SALUがSALUのまま、より生々しく自分をさらけだし、自分の過去と向き合った意欲作となった。正直、今まで掴みどころがなく、飄々とした振る舞いで、リリックは現実と叙情的な世界観が入り混じる印象が強かったSALU。『GIFTED』はその正体とルーツに迫り、パーソナリティを作品として昇華したアルバムとなっている。


ラッパーSALUより前のSALUを知る「KURT」から「204」


「KURT」は、アルバムのイントロダクションであり核心に迫る楽曲だ。今まで語られてこなかった内省的なリリックが綴られる。その中で、SALUは盟友にシャウトアウトを送り、天才アーティストの名をほしいままにして引退した、2019年、ラストライヴ「葬式」を開催したぼくのりりっくのぼうよみの冥福を祈っている。続くラインには清々しいほどにシニカルだが正直な気持ちが綴られ自虐的にそのスタンスを明確にしている。


俺は自殺しないんだ

自殺の被害者 


タイトルの「KURT」は27Club(27歳で亡くなったロックスターたち)の代表格であるKurt Cobainに由来しているのだろう。彼はショットガンで自身を撃ち抜くという悲劇の死を遂げている。曲の後半ではファンを遺して、大切な人たちを遺して死んだりしないと、31歳のSALUは決意表明しアルバムの物語は展開していく。




ギターが鳴り響くイントロにお馴染みのサウンドタグ。「FALLIN'」のプロデュースはChaki Zulu。エモとトラップが絶妙のバランスでブレンドされたトラックの上をSALUは


今死んでもいいけど まだ死にたくないよ


とシャウトする。




ピアノとビートのシンプルなトラックによるSALU流のブルース「DON’T」ではみんな喜びを持って生まれてきたのに、なぜ悲しみを背負い、絶望してしまうのかを嘆いている。続く「204」は、日本のヒップホップムーヴメントいわゆる「RAP GAME」へSALUが参加するきっかけとなる背景が語られる。淡々とストーリーテリングするWON¥ENのラップがよりどこか不穏な雰囲気を際立たせる。ここまでの数曲を聴いただけでも、あらためてSALUについて知らないことは多かったのだとリスナーは思い知らされる。


運命を変えた2つの出会い「RAP GAME」と「COURTNEY」


『GIFTED』に先駆け、シングルでリリースされた「RAP GAME」はMVでの豪華なカメオ出演陣とKMプロデュースのビートで話題に。他アーティストのビートジャック曲を多数輩出しムーヴメントを巻き起こした。その中で


Interviewじゃ読めない 俺のBackground

まだ明かしていないことたくさん


とSALUがラップしているように今まで語られてこなかった姿が『GIFTED』にはパッケージングされている。Instagramではリリース前、すべてのポストを削除。自分の幼少期からの写真や、家族にまつわる投稿がされた。



さらにアルバムと連動した映像作品シリーズ「SALU/THE DOCUMENT "GIFTED"」が全7話で公開。これは曲中のリリックを補足する、SALUの素顔とルーツに迫ったドキュメンタリーである。この映像作品はアルバムの制作背景を映し出し、作品と対になって補完し合い『GIFTED』を完成させる重要なピースだ。


アルバムは過去と現在を往き来しながらSALUとSALUを取り巻く現状を描き出す。「COURTNEY」はタイトルから察する通り、冒頭の「KURT」と一対の作品といえるだろう。Kurt Cobainの妻であるCourtney Love。その名前をとった「COURTNEY」を境にアルバムの雰囲気は陰鬱なエモトラップな雰囲気から明瞭なイメージへと転換していく。僕だけの思いが綴られた「KURT」から僕たちの「COURTNEY」へ。妻の存在が、SALUの人生において大きな光が射した出来事だったことが感じ取れる。




新たなる希望「FRANCES」「MY LOVE」


JP THE WAVYとKOMA DOGGレーベルを運営するEXILE SHOKICHIを迎えた「GOOD VIBES ONLY」では闇を感じさせるどころか、太陽のもとで元気いっぱいだ。まるで暑い雨雲が去ったあとの夏晴れを思わせる。




続くのは我が子、おそらく娘について歌った曲「FRANCES」。もちろんこちらもKurt CobainとCourtney Loveの実子であるFrances Bean Cobainからとったタイトルだろう。妻との出会い、そのときの感情と続く「MY LOVE」とワンセットで我が子への大きな愛を歌い上げている。




SUNNY BOYを迎えムードたっぷりなR&Bを聴かせる「IN YOUR EYES」では、あらためて愛する人への愛と将来を誓う。「SALU/THE DOCUMENT "GIFTED"」でカメラの前で赤裸々に「もう結婚して子供もいるけど、プロポーズしたい」と言っていたように、『GIFTED』は愛する妻へのギフトでもあるといえる。最後は、NIKEのミューズとしても活躍する世界的なダンサー、シンガーであるRIEHATAを迎えた「GIFTED」を亡き母へ捧げ、アルバムは幕を閉じる。




SALU新たなる夜明け「SALU THE LIVE 2019→2020 GIFTED」


『GIFTED』は今までの作品の中でも、SALUという人間と関係する人物たちを赤裸々に描いている作品だ。30歳を過ぎ、アーティストとしての箔と円熟味を増している今だからこそ、過去、家族、自分と向き会い、新たなる希望を見出す物語となっている。アルバムと同時期に、「スターウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」が公開された。プリクエル・トリロジー(新三部作)の完結編だ。この物語は主人公のレイ、そしてもうひとり主人公と対をなすレンが、互いの血、つまり“家族”について各々悩み、葛藤し、答えを見出していく物語だった。同様に『GIFTED』もSALUがSALUであるために、家族と自身のルーツと向き会い紡いだ物語なのである。


1月16日、ラッパーのKOHHは、KOHH名義での活動を次作を持って引退すると、LINE CUBE SHIBUYAで行われた「LIVE IN CONCERT」のステージで語られたことが話題となった。前述の「スターウォーズ」もそうだが、物事には区切り、節目というものが存在する。どのようなかたちになるにせよ、終わることによって何かが始まることになるのだ。今作『GIFTED』は過去のSALU(自分)に一区切りをつけた印象を受けた。ともすれば、新しいSALUの夜明けは近いのではないか。この原稿を書いている1月17日はSALUのアルバムリリースのワンマン「SALU THE LIVE 2019→2020 GIFTED」東京公演がZEPP TOKYOで行われている。そこでは『GIFTED』や「SALU/THE DOCUMENT "GIFTED"」で明かされていない、まだ見ぬSALUの新たな一面が見られるかもしれない。それをオーディエンス、ファン、リスナーへの最上級のギフトとして、パフォーマンスを通じてステージで語ってくれることだろう。




▶『GIFTED』


発売日:2019日12月4日(水)


収録曲:

KURT

FALLIN’

DON’T

204 feat. WON¥EN

LOST

K1500

RAP GAME

COURTNEY

BLACK SWAN

GOOD VIBES ONLY feat. JP THE WAVY, EXILE SHOKICHI

FRANCES

MY LOVE

BLESSING

IN YOUR EYES feat. SUNNY BOY

GIFTED feat. RIEHATA


配信URL:https://orcd.co/salu_gifted


【ECサイト限定盤】

CD+DVD+大判ブックレット

CD(全15曲)+DVD(MV4曲)収録

完全初回生産盤(7000円+税)

URL:https://www.exiletribestation.jp/products/detail.php?product_id=18926




▶SALU

2012年の衝撃のデビュー以降、数々の名曲を生み出し続けてきた彼を、国内のHiphopリスナーで知らない者はいない。

ソロ活動でコンスタントにアルバム、ミックステープのリリースを続け、SKY-HIとのコラボレーションアルバムや、清水翔太の楽曲に参加する等、様々なフィールドで活躍を続け、その勢いはとどまるどころか、年々勢いを増しシーンの最前線で、進化を続けている。

2017年にリリースした4枚目のアルバム“INDIGO”からのシングル”Life Style feat.漢,D.O” に加え、たった一曲で不動の地位を獲得したJP THE WAVY”Cho Wavy De Gomenne”のRemixへの参加等、 2017年は彼の年であったと言っても過言ではない。

また、彼が生み出すリリック、ワードセンスは多くのリスナーを魅了し続け、香取慎吾、木梨憲武、尾崎裕哉、若旦那、また韓国のスターiKON等、ジャンルの壁を越えたアーティストに支持され、作詞の依頼も絶えない。

2018年7月には、KOMA DOGG(LDH MUSIC)への電撃移籍を発表し、2019年12月には、5枚目となるアルバム”GIFTED”をリリース。ジャケット写真に、幼少期の写真を使用し、彼自身の生い立ちやバックグラウンドを明かす作品となり、大きな話題となった。

更なる注目を集めているSALUだか、アジア圏を含む、国内外でのパフォーマンスの依頼が絶えない理由は、彼のパフォーマンスを一度観たら、どんなリスナーも彼の世界観に魅了されてしまうからだろう。


SALU Instagram

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