【りんごレポート】水カン、tofubeats、U-zhaan、stillichimiya、m-floら出演者約200組。10年目のりんご音楽祭に豪華アーティストが集結

9月22日、23日に行われた『りんご音楽祭』は過去最高の来場者数とのこと。
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2018.10.01 09:00

dj sleeper(スリーパー)こと古川陽介氏のもと、長野は松本市・アルプス公園で行われているりんご音楽祭。年々来場者を増やし、今やりんご音楽祭はローカルフェスを代表するフェスとして成長を遂げ、全国各地の音楽好きがりんご音楽祭を目指すまでになった。今年で10年目を迎え、9月22日(土)、23日(日)に開催されたりんご音楽祭をオフィシャルフォトとともにレポートする。




U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS、m-flo、tofubeats、水曜日のカンパネラ、Awich、stillichimiya、充実のラインナップで開催された2日間



Photo:Taro Denda


松本駅からシャトルバスで20分ほど。市街地を見下ろす見晴らしのいいロケーションが来場者を出迎え、一気に開放的な気分にしてくれる。緑豊かな松本市アルプス公園内にはいくつかのステージが用意され、約200組のアーティストたちが2日間にわたってライヴやDJを行う。さながら小規模なFUJIROCKといった雰囲気。しかし、FUJIROCKほどしっかりアウトドアの準備をしなくてもフラっと行って1日だけ楽しむといったライトな遊び方ができるのも魅力的。そのため老若男女、幅広い世代が『りんご音楽祭』を訪れ、ファミリー連れも多い。



Photo:古厩志帆


国内アーティストのラインナップが充実


10年前に主催者である古川陽介氏によって個人の主催で産声を挙げた『りんご音楽祭』。今でこそ古川氏を中心に実行委員会が組織され、『りんご音楽祭』は行われているが、アーティストのキュレーションにおいては古川氏が直々にライヴを観て、いいと思ったアーティストのみを招致しているという。そして“今”観たい、聴きたいツボをガッツリ押さえたラインナップが、胸を躍らせてくれる。ジャンルを問わず、国内の良質なアーティストのライヴを一挙に観ることができるのも『りんご音楽祭』の魅力なのだ。


THREE1989、唾奇 × HANG (glitsmotel)、ゆるふわギャング、注目アーティスト続々



Photo:齋藤暁経


2日目の「りんごステージ」に登場した元・テラハメンバーのSHOHEY(しょうへい)が所属するTHREE1989(スリー)。番組内に出演していたこともあってか、早めの時間帯だったが注目度は高くたくさんの人が集まっていた。

ライヴ前、DJのDatch(ダッチ)が数曲挨拶代わりにプレイしたのだが、織り交ぜるスクラッチとグルーヴィーな選曲が良かった。


SHOHEYの登場で会場は沸き立ち、「りんごステージ」に美声を響かせた。コーラスをゲストメンバーに加えたバンドセットで、ソウルフルなサウンドが心地イイ。「僕、長野に住んでいたこともありまして空気うまいっすよね」とテラハネタを盛り込み、オーディションから選出され出演が実現した「りんごステージ」を盛り上げた。


2日目の「そばステージ」では勢いのあるアーティストが続々登場。MPCサウンドを駆使して数々のアーティストとコラボするSTUTS(スタッツ)のステージにはCampanella(カンパネルラ)、C.O.S.A. × KID FRESINO(コサ×キッドフレシノ)などが参加し、9月にリリースしたばかりのアルバム『Eutopia』の世界観を再現。


続くのはSTUTSのアルバムにも参加し、東海地区から全国にその名を轟かせるCampanellaや変幻自在の四つ打ち魔術師Seiho(セイホー)とタッグを組むKID FRESINO、前日の中夜祭でも注目を集め松本の夜をアツくさせた唾奇(ツバキ)はHANG(ハング)とともにgritsmotelとして登場。新進気鋭の次世代アーティストたちが「そばステージ」を席巻した。



Photo:折井康弘



Photo:渡邉和弘


スキルフルな共演に圧倒されたU-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS



Photo:齋藤暁経



タブラ奏者U-zhaan(ユザーン)KAKATO(カカト)ととしても活動を共にする環ROYと鎮座DOPENESS。タブラとラップ。リズムと言葉。それぞれのスペシャリストたちの夢の共演だ。1日目のまだ日も高い午後イチの時間帯にりんご音楽祭最大収容人数を誇る「りんごステージ」は超満員となった。

ルーパーを巧みに操り、その場でダンサブルなトラックを築きあげるユザーンのビートに、軽快に韻を載せる環ROYと鎮座DOPENESS。少々のトラブルなどお手のもの。柔軟に対応し、それすらエンターテイメントしてしまう様は観ていて痛快だった。「Tabla'n'Rap」、 「七曜日」お菓子メーカー『ギンビス』のアンオフィシャルサポートソング「ギンビス」、極めつけに「サマージャム'95」でウダるような暑さの夏に観客を引き戻してくれた。間違いなく1日目のハイライトのひとつとなったステージだった。


Kick a Show、FNCY [ZEN-LA-ROCK×鎮座DOPENESS×G.RINA]、Awich、stillichimiyaの登場におやきステージ大爆発! 



Photo:齋藤暁経


『りんご音楽祭』には各ステージ、長野名物の名前が付いている。1日目の「おやきステージ」には注目アーティストが続々と登場。平成最後のロマンティック歌謡シンガーKick a Show(キッカショウ)は「One Night Stand」などのソロ曲に加え「Insanely Boy (feat. 田我流)」や「Buchiaga Lit (Feat. Caryn10 & reverv kueen)」を披露。この曲では覆面シンガーCaryn10(カリントウ)として、所属するproperpedigree(プロパーペディグリー以下:prpr)によるblock.fmプログラム「INF SOUND」ナビゲーターをのお馴染みMARZY(マージー)をフィーチャー。残念ながらMARZY(Caryn10)の登場はなかったが、今後の活躍がさらに楽しみになるLitなパフォーマンスだった。


そんなKick a Showと「Cleopatra etc.」でフィーチャリングしたG.RINA(ジー・リナ)、ZEN-LA-ROCK(ゼンラロック)に、鎮座DOPENESSを加え今年7月にデビューしたばかりの注目の新ユニットFNCY(ファンシー)も「おやきステージ」に登場。「Silky」、「AOI夜」などディスコとベースミュージックを良い具合に混ぜ合わせた、歌って踊れるフューチャーディスコティックナンバーを次々投下し盛り上げた。



Photo:Takanori Tsukiji


その勢いに続くのはYENTOWN(エンタウン)の“クイーン”Awich。「WHORU? 」でガッチリロックし、頭の上にお団子状に結っていた髪の毛がほどけた際には「お前らがやばすぎるせいだろ! 」とお叱りを受けた(嬉)。もはや女王様にマウンティングされた下僕(オーディエンス)たちは言われるがまま。Kojoe(コージョー)との「BoSS RuN DeM Feat. AKANE, Awich


Remember feat. YOUNG JUJU」では「歌え! 」「りんご飛びまーす」と繰り出されるAwichからの指令に全力でレスポンスした。亡き夫を想い愛娘Yomi Jah(ヨミジャー)と共演した楽曲「Jah Love」で、Yomi Jahの登場はなかったもののAwichとともに会場は大合唱。合間のMCや、ステージング、表現の幅広さにあらためて沖縄、そして東京を拠点にストリートから音楽シーンを牽引するAwichの凄みを体感することとなった。


AwichはChaki ZuluプロデュースのダブルEP『Beat』と『Heart』を10月10日(水)に同時リリースする。先日自身のInsta Liveで新曲をサプライズ発表したばかり。また、全国5公演を予定している彼女のワンマンツアーチケットも発売中だ。同じくYENTOWNファミリーの一員であるMARZYらが所属するprprの「INF SOUND」に出演する可能性もあるかもしれないので期待したい。




熱狂の渦をさらに混沌の世界へと誘ったのがDay1 「おやきステージ」のトリを務めたstillichimiya(スティルイチミヤ)である。長野の隣県、山梨在住にしてタイやラオスなど東南アジア圏にもその活動域を広げる、山梨が誇るラップゲリラエンターテイメント集団だ。

8月に「Vapor Wave」を発表しニューアルバム制作がアナウンスされた田我流、MVや映画作品も手がける映像制作ユニット、スタジオ石のMMM(トリプルエム)とMr.麿(ミスターマロ)を擁し、ラップ、DJ、作曲の三刀流で進化し続けるミヤ(※山梨県笛吹市一宮町、stillichimiyaの名前の由来となるメンバーの出身地だ)のブレーンと屋台骨Young-G(ヤング・ジー)、Big Ben(ビッグ・ベン)の5人からなる。



Photo:折井康弘


これどこまで書いていいのかわからないけど、オープニングとエンディングは、X JAPAN(エックスジャパン)をオマージュ。

両者に関連性はないがFUJIROCKFESTIVAL’18 でYoshikiとコラボしたSkrillex(スクリレックス)が脳裏を過ぎった。限りなくローカルに根ざしながら、やはりstillichimiyaの目の付けどころと感性はワールドクラスである。


参考記事:【フジロックレポート】Kendrick Ramar圧巻のステージから、知られざるSkrillexとYoshikiの共演エピソードまで。サプライズ満載のFUJI ROCK FESTIVAL’18


続けざまに「うぇるかむ」「Hell Train」、「ズンドコ節」をあっけにとられているオーディエンスに畳みかける。圧巻はstillichimiyaのライヴでは恒例となったMr.麿のひとりオペラである。この後に待つのは、Mr.麿によるカウントダウンからクライマックスの「やべー勢いですげー盛り上がる」なのだが、10分弱近くにも及ぶ一人芝居に観客から「何やってんだ!? 」とツッコミが入り会場は笑いに包まれる。


今回、Mr,麿はJAXAで宇宙飛行訓練を経て、話題の某ファッションECサイトを運営する企業代表と月へ行く(という設定)。コックピットに着席してからロケットを操作するまでにガンダム、エヴァンゲリオン、アキラなど往年のSF作品のパロディを散りばめ、噺家さながら壮大なストーリーをマイク一本で演じきる表現力には脱帽せざるを得ない。このあと「おやきステージ」はモッシュピット状態となった。


田我流 feat.stillichimiyaがベストパフォーマンスとの声が多かった2012年のりんご音楽祭。この6年の間に、りんご音楽祭にも出演しながら、アルバムの発売や東南アジアへの旅路、メンバー各々の活動を経て進化し、『りんご音楽祭』に凱旋した。この日の熱狂を観るに、5人の存在感と人気は増していく一方である。しかし、そこにはいまだ結成当初から変わることのないミヤの血が流れているのだ。その勇姿と生き様に感動を憶えずにはいられなかった。



Photo:みやちとーる(ステキ工房)



tofubeats、水曜日のカンパネラ、りんご音楽祭常連のアーティストが粋な演出で魅せる



Photo:Taro Denda


2013年から『りんご音楽祭』の常連となっているtofubeatsと水曜日のカンパネラ。水曜日のカンパネラは現在のように大きな会場いっぱいに人を集め、海外のフェスにも招致される以前「りんごステージ」のサブステージで『りんご音楽祭』デビューを果たしている。2014年の「りんごステージ」でのstillichimiyaのライヴを横で見て、「りんごステージ」に立つことを夢見ていたと2016年の『りんご音楽祭』で夢を叶えた彼女は語っている。


水曜日のカンパネラ、コムアイは、2年振りの「りんごステージ」で開口一番に「ただいま〜!! りんご音楽祭! 」と声を挙げその姿を見せた。


コムアイの後ろでは、空気を送り込まれた布の球体がまるで生命体のように膨らみ動き回る。このステージ演出はサマーソニックの深夜帯、ミッドナイトソニックで見せたものとほぼ同様である。しかし、幕張メッセ内と、松本の自然の中で観るのとでは全く違ったものに見える不思議。



Photo:折井康弘



こちらもあわせてチェック:【サマソニレポート】NOEL GALLEGHER、BECK、m-floが魅せる会場大合唱の一体感。Chance The Rapperら新世代もアツかった『SUMMER SONIC 2018』



例のごとくコムアイはステージに降り立ち、「桃太郎」 をオーディエンスのど真ん中で歌った。ちょうど目の前まで来てくれたのだが、存在感がもはや“ラスボス”に近づいていっている。拡張する水カンワールドに今後も注目していきたい。



Photo:折井康弘


tofubeatsは生演奏とDJを融合したメガミックススタイルのNonstopなライヴを展開。「Don't Stop The Music feat.森高千里」 などの定番の人気曲や、「ふめつのこころ」など10月3日発売のニューアルバム『RUN』からの楽曲を次々と投下し、オーディエンスを踊らせた。



Photo:平林岳志(grasshopper)


前作 『FANTASY CLUB』から「LONELY NIGHTS」から最後は「水星 feat,オノマトペ大臣」 でイントロを生演奏。これはtofubeatsと親交のある、長野を故郷に持つスケートブランド、Diaspora Skateboards(ディアスポラスケートボード)を手がける小林万里(こばやしばんり)氏とその奧さんの新婚祝いに捧げたものだ。「あまりこういうことはやらないんですけど、聴いてくれている幸せな人たちのために」と10年目を迎えたりんご音楽祭で粋な計らいを見せた。tofubeatsさんイケメンすぎ! 


m-floが『りんご音楽祭』にやってきた! 



Photo:丹澤由棋


そして今年はm-flo(エムフロウ)が『りんご音楽祭』に出演。サマソニでは、ステージが満員で後ろの方からしか観られなかったが、アーティストとの距離が近い『りんご音楽祭』では目の前でm-floのライヴを観ることができた。アーバンでスペーシーなm-floが、『りんご音楽祭』の空気感にどうハマるのか楽しみにしていたが、さすがのパフォーマンスでバッチリ盛り上げてくれた。



Photo:平林岳志(grasshopper)


☆Taku Takahashi(タクタカハシ)とVERBAL(バーバル)で“Loves”時代の楽曲をミックススタイルで披露し、LISA(リサ)を迎え、m-floの3人が揃う。そしてこの日はもうひとり、ゲストが登場。長野県のゆるキャラマスコット「アルクマ」くんである。

m-floがステージ衣装として着ていたのはこの日のためだけに制作された、m-flo×アルクマ×りんご音楽祭のトリプルコラボ限定Tシャツ。これをじゃんけん大会で枚数限定でプレゼントするという。他のフェスでは観られないであろうスペシャルなサプライズだ。


☆Taku Takahashiは「ホントにじゃんけん大会がスムーズに進行できて成立すると思わなかった」と振り返るが、VERBALの見事なMCはLisaがステージ上で「あなた、進行上手ね〜」と感心するほど親切丁寧なものだった。グローバルファッションアイコンとして活躍するVERBALは、ゆるキャラとのマッチングもクールにこなす。意外にもローカル案件との相性がいいのかもしれない。



Photo:平林岳志(grasshopper)


20年目の再結成を遂げたマイルストーン的楽曲「No Question」、先日公募していた曲名が決まり、リリックビデオが公開された「Mars Drive」 を演奏。最後はお待ちかねの「Come Again」で〆。m-floのトライポッドスタイルは『りんご音楽祭』でも健在で、一体感のあるピースフルな空気を作りあげた。



Photo:平林岳志(grasshopper)


ピース感あふれるライヴ直後、「りんごステージ」横のサブステージでblock.fm のプログラム『Morley Robertson Show』を持つモーリー・ロバートソン氏が凶悪なブリブリBass Musicでアゲアゲしており、タイムテーブル組んだ人の“わかってる”感が最高だった。



Photo:齋藤暁経


ライヴだけじゃなくDJも楽しめる



Photo:平林岳志(grasshopper)


りんご音楽祭がアツいのはライヴアーティストだけじゃない。REDBULLが提供する「RED BULL MEGGA」では大きなSUV車両の上にDJブースを設置。時間毎に地元DJや国内から招致されたDJが登場し、ジャンルレスなラインナップが楽しめる。こちらのステージにDJとして登場したYonYon(ヨンヨン)はグルーヴ感のあるHIPHOPを織り交ぜつつ、好天の松本市・アルプス公園にグッドバイヴスなサウンドを響かせていた。


入り口からいちばん近い「きのこステージ」にも濃厚なDJアーティストがラインナップ。TOKYO NO.1 SOUL SET(トウキョウナンバーワンソウルセット)の川辺ヒロシ、block.fmでもお馴染み、しぶや花魁のヴィーナス・カワムラユキやLEF!!!CREW!!!(レフクルー)、ストリートカレーカルチャーの権威カレー屋まーくんことMr.マジック・バジャールなどドープな面々が多様な音楽を鳴らし、楽しませてくれた。


なかでも、block.fmプログラム『TREKKIE TRAX RADIO』を配信するTREKKIE TRAX(トレッキートラックス)とも親交の深いSeihoのプレイは圧巻で、Drum'n Bass、Jungleを中心とした中毒性の高いセットで踊らせてくれた。



Photo:折井康弘



Photo:折井康弘


1年に1度りんご色に染まる街



Photo:Taro Denda


楽しみ方の自由度も高いことで年々人気が高まる『りんご音楽祭』は、2日間(通し券を含む)で8500人近くを集客したという。当初の予想だった8000人を大きく上回る数字だ。出演アーティストの数は約200組。10年という歳月を重ね、今や関東近県でも有数のフェスとなっている。


シャトルバスやタクシーなど地元交通網との連携や、前夜祭、中夜祭、後夜祭と3日間、本祭とあわせ、市街のクラブでイベントが開かれるため、松本を訪れた人々が自然と街に繰り出して遊べる仕組みが作られているのも地域振興に大きく貢献している点だろう。


古川陽介氏を始めとした運営スタッフやボランティアスタッフの力によって、街に音楽が溢れ、全国各地から人が集まっている『りんご音楽祭』。その模様に密着したドキュメンタリー番組がNHKで放送される(残念ながら長野県内のみ)。


10月5日(金)19:30~19:57

知るしん 信州を知るテレビ(長野県内のみ)


長野県以外の人は、オフィシャルアフタームービーやライヴ動画の配信を心待ちにしていよう。


ローカル音楽フェスムーブメントを牽引する存在として、11年目、それ以後も更なる発展を期待したい。


りんご音楽祭実行委員会、スタッフの皆様と出演アーティスト、撮影チームに感謝を込めて。りんご色に染まった音楽漬けの2日間、お疲れ様でした。



Photo:Taro Denda


written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki


photo:りんご音楽祭オフィシャルフォト(Top:折井康弘)




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