インターネットが自由に使えないことから生まれたサービスが人々に音楽を与えている

<p><strong>Written by Jun Fukunaga　<autobr />Photo by <a href="http://free-photos.gatag.net/2015/02/25/160000.html" target="_blank" rel="noopener">GATAG</a></strong><autobr /><autobr />「ミレニアム世代」、「デジタルネイティブ」などと呼ばれる若い世代にとって、インターネットを介して、様々なものに触れることはもはや日常的なもので、音楽、映画、アート、フード、カルチャーに関することはもちろん、政治、経済、その他、世間で今起こっていることの情報のほとんどは、手元でスマートフォンを開けばすぐに手に入る。<autobr /><autobr />音楽に関して言えば、デジタルダウンロード、ストリーミング、SoundcloudなどのプラットフォームにSNS… ちょっと前までには存在しなかったこのようなサービスは、今ではイレギュラーなものではなく日常に深く入り込んだものとなっており、それらを介して人々は「音楽」を共有することが当たり前になっている。<autobr /><autobr />しかし、ここ日本と違い、遠く離れたカリブ海の島国キューバの音楽シーンを取り巻く事情はこのような現代の”スタンダード”とはかけ離れたものになっており、それ故に確立された”オルタナティブ”な方法を用いて「音楽」を日常生活に取り込んでいるようだ。<autobr /><autobr /><a href="http://wired.jp/2017/05/18/lisette-poole-reggaeton/" target="_blank" rel="noopener">WIRED</a>によれば、現在、キューバで高い人気を誇っているのが「レゲトン」。2000年代初頭に同国で流行り出したこのジャンルはそれ以降独自の発展を遂げ「Cubaton」と呼ばれるほどに確立されたものになったそうだが、2012年以降、その性的かつ攻撃的な歌詞が多く含まれているという面が問題視され、政府によって禁止されることになり、その結果レゲトンのアーティストは国営テレビ、ラジオの番組から締め出されることになったという。<autobr /><autobr />しかし、その後もレゲトンすでに確立されたジャンルとしての強みからか、人々の間では未だに高い人気を誇っているようだ。<autobr /><autobr /><center><div class="iframe-wrap"><iframe loading="lazy" width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/Z5P7Hnc0znM" frameborder="0" allowfullscreen></iframe></div></center><autobr /><autobr />では、先述のように公のメディアから姿を消さざるを得ない状況に陥ったレゲトンはどのようにしてそれ以降も人々の間で”共有”されているのだろうか？<autobr /><autobr />普通ならインターネットという答えが出てくると思う。例えば、中国ではインターネットは検閲対象となっており、FacebookなどのSNSは普通なら使用することができない。しかし、人々はVPNを使って検閲をすり抜けながらWEBサイトを閲覧したり、SNSを使用し、音楽、映画などカルチャー関連の情報をある程度自由に送受信しているということはよく知られた事実だ。<autobr /><autobr />だが、キューバのインターネット事情は中国よりも酷い。アクセス可能(厳しい検閲あり）なのは、国民のわずか30%程度。平均月収25ドルという金銭事情に対し、1時間あたり約1.5ドルもかかるという通信料。とても一般人が気軽に使うことができる類のものではないことがよくわかる。<autobr /><autobr />このようにオールドメディアもダメ、ニューメディアでもダメという状況は一見すると音楽を広めていくには八方塞がりな状態に思える。しかし、キューバの人々はそのような状況をすり抜けて、音楽を楽しむ方法の答えを見つけたようだ。<autobr /><autobr />その答えとなるものはハードディスク(HDD）を使った「<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/El_Paquete_Semanal" target="_blank" rel="noopener">El Paquete</a>」という定額制サービス。これはSpotifyやApple Music、Netflixなどのネットを介して行われる定額配信の類ではなく、音楽や映画なdのデジタルコンテンツが詰まったHDD自体を決まった金額を支払った利用者に毎週届けるという、いわば、「デジアナ」な人力による定額配信とでもいうべきもの。<autobr /><autobr />サービス開始当初は政府非公認のため、アンダーグランドなものであったそうだが、今ではその評判も草の根で広がり300万人の利用者を獲得するまでに至っているようで、これを介して人々はオフラインで、新たにレゲトンのデジタルコンテンツを手に入れているというわけだ。<autobr /><autobr />なんだかひと昔前のようにデータ化したDJ Mixや自作曲のプロモ音源をCD-Rに焼いて、友人やプロモーター、レーベル関係者に手渡していたあの頃を思い出してしまった。<autobr /><autobr />今ではその行為もファイルストレージサービスにアップロードして、リンクをメールするだけで可能になってしまう時代となり、それらのことはどちらかといえば全時代的なものになったが、これもネット環境、PCなど機材の進化というテクノロジーの発展の結果に他ならないだろう。<autobr /><autobr />例えば最近のVR、ARが導入された音楽コンテンツやガジェットなどわかりやすいものから、CPUの処理速度、メモリ、HDDの容量増加など地味ながらも大きな意味を持つものまで、テクノロジーは確かに日々「音楽」を進化させている。その進化した環境は、音楽をキュレーションしてくれるデジタル媒体、プレイリスト、それら様々な情報を送受信するためのSNSなど、これにまでになかったものを生み出し、今もその恩恵を音楽ファンに与え続けている。<autobr /><autobr />しかし、もし、本当に人が音楽を愛してやまないというのなら、どのような環境下においても音楽を共有、拡散して楽しむ方法を見つけ出せるということをこのキューバの音楽事情は教えてくれる。<autobr /><autobr /><em>“テレビやラジオ、インターネットがなかったとしても、魅力的な文化はいくらでも生まれうるのだ。そこに志ある若者たちがいるならば。”</em><autobr /><autobr />とはWIREDの弁。<autobr /><autobr />音楽に限らずとも、カルチャーが生まれるということそういうことなのだと再認識させられる文言だ。<autobr /><autobr /><autobr />参考:<autobr /><a href="http://wired.jp/2017/05/18/lisette-poole-reggaeton/" target="_blank" rel="noopener"><a href="http://wired.jp/2017/05/18/lisette-poole-reggaeton/">http://wired.jp/2017/05/18/lisette-poole-reggaeton/</a></a><autobr /><a href="https://en.wikipedia.org/wiki/El_Paquete_Semanal" target="_blank" rel="noopener"><a href="https://en.wikipedia.org/wiki/El_Paquete_Semanal">https://en.wikipedia.org/wiki/El_Paquete_Semanal</a></a></p>


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使用されるのはHDD。オルタナティヴな共有サービスが支えるキューバの音楽事情

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