対談|Porter Robinsonが白濱亜嵐に語る、最新アルバム『Nurture』制作秘話

世界的なエレクトロニックミュージックプロデューサーであるPorter Robinsonと、GENERATIONS、EXILE、PKCZ®として活躍する白濱亜嵐の対談が実現。Porterのファンでもある白濱亜嵐に語った、7年ぶりの新作『Nurture』を生み出す過程とは。
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2021.04.26 01:00

English version here


アニメ制作会社「A-1 Pictures」からアニメーションビデオのリリース、別名義Virtual Self(ヴァーチャル・セルフ)のグラミー賞ノミネーション、自ら出演アーティストをキュレーションした音楽フェスティバル「Second Sky Festival」の開催まで、この数年間ノンストップにファンを驚かせるような活動を展開したPorter Robinson(ポーター・ロビンソン)。そんな彼が7年ぶりとなる待望のアルバム『Nurture』をリリースした。


アルバムに収録された楽曲は一聴するとポジティブなサウンドに聴こえるが、実のところPorterがこの数年間、音楽を作ることができないほどの鬱病と戦い、様々な苦労を乗り越えて作り上げた作品なのだ。


「愛と日本のおかげで音楽をまた作れるようになり、ネガティブな感情を持つことも当たり前なんだと気付けた」とPorterは振り返る。


今回、長年Porterのファンである白濱亜嵐とオンラインでの対談が実現した。Porterの友人でもある白濱亜嵐にだからこそ明かした『Nurture』の制作課程や、アーティストとして活躍する2人のクリエイティヴへのアプローチ、お互いへのリスペクトなどたっぷりと語ってもらった。


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(YouTubeの設定で日本語字幕をオンにしてご覧ください。動画はインタビューの一部のみ配信、フルバージョンは以下のテキストにて。)


Alan Shirahama(以下Alan): Hi Porter!


Porter Robinson(以下Porter): 久しぶり!


Alan: 新しいアルバム『Nurture』についてインタビューするのを楽しみにしてたよ!もう知ってると思うけど僕は長年ポーターのファンなんだ。そして友達でもあるんだよね。


Porter: そうだね!久しぶりに会えて嬉しいよ。アルバムも聴いてくれてありがとう。アランが書いてくれたアルバムの感想を読ませてもらって、今日のインタビューを僕も楽しみにしてたんだ。


(※亜嵐さんによるアルバムの感想は当記事の最下部に掲載しています。)


Alan: アルバムからポーターの本当の姿と新しくチャレンジしたことが伝わってきたよ。全曲通して聴いて、この作品は後世に残すべき芸術作品だし「音楽はなんて素晴らしい芸術なんだろう」って思わせてくれた。1枚のアルバムを「まるで1本の映画を観たようだ」という表現がよくあるけど、このアルバムは「1人の人間が産まれた瞬間から死ぬまでを24時間365日観た感覚」と言えると思う。ポーターと友達でいられて、本当に嬉しいよ。


Porter: 優しい言葉をありがとう!このアルバムには日本の音楽に影響された部分がたくさんあるから、アランのような日本人の友達にそう言ってもらえると本当に嬉しい。アランが書いてくれたアルバムの感想に「コード進行とその上に乗るトップラインがかなり日本人好みなんじゃないかと思った」と書いてあるのを読んだけど、まさに日本のコード進行にインスパイアされたんだよ!日本の曲には“4, 3, 6, 2, 3, 4, 5…”というコード進行がよく入ってるんだけど、そのコード進行に鳥肌が立つほど感動したんだ。僕もそうやって感動させる音楽を作りたかったから、アランの感想を聞いて「やったあ!」という気持ち。本当にありがとう。


Alan: アルバムが最高すぎて音楽制作を辞めようかと思ったくらい(笑)。


Porter: 僕が思ってた真逆のリアクションでウケる!!僕は、他の人が音楽を作るインスピレーションになるような作品を作りたかったんだよね。僕のヒーローは僕の好きな音楽を作る人たち。彼らの音楽を聴いて「もう辞めたい」って複雑な気持ちになることも確かにあるけど、「いつかこういう音楽を作りたい」と思うこともあるよ。


Alan: ポーターに「いつかこういう音楽を作りたい」と思わせたアーティストは誰?


Porter: 1人挙げるとするとBon Iver(ボン・イヴェール)というバンドのJustin Vernon(ジャスティン・ヴァーノン)。僕の弟が癌と診断されたとき(彼はもう元気なんだけどね)すごく落ち込んだけど、Bon Iverのアルバム『22, A Million』に励まされた。ローファイでザラザラしてる、間違えて収録されたのかと思うような質感のサウンドを聴いた初めての経験だった。でも、その音楽はとても美しかったんだ。低音質のmp3のようなサウンド、もしくはカセットテープにボーカルを録音して、そのテープを引っ掻いてスピードを変えて再生したように聞こえたよ。


Daft Punk(ダフト・パンク)の『Discovery』とKanye West(カニエ・ウェスト)の『Graduation』にもインスパイアされた。世界の色合いを明るく感じさせてくれる曲がこの世にあるからこそ、僕も音楽を作っていると思う。1枚のアルバムやある1曲のおかげで世界は少し美しく見えるし、そこに音楽を作る意味があると思うんだ。


Alan: 『Nurture』というタイトルをつけた理由は?他にもタイトルの候補はあったの?


Porter: とてもいい質問だね。まだ聞かれたことがないよ。『Only Hope』というタイトルがもうひとつの候補だったけど、一番フィットしたのが『Nurture』だった。英語の言い回しだから説明するのが少し難しいんだけど、人格を形成する上で先天的な要素については「nature(ネイチャー・生まれつき)」、後天的な要素は「nurture(ナーチャー・育成)」と表現するんだ。例えば、人の性格がどのように出来上がるかを調べる心理学の研究では、別々の家庭で育てられた双子を調査する。人の性格は先天的なものやDNAで決まるのか、もしくは育ってきた環境や経験で決まるのかを調べるんだ。それを英語では「nature versus nurture(生まれか育ちか)」と言う。こういう言い回しがあるから、「nurture」という言葉は間接的に「nature」という言葉も想像させるよね。僕はそこが好きなんだ。何かに苦しんでいるとき、人は自分の生まれ持った性質(nature)を変えることはできないけど、成長する課程で身につけるもの(nurture)によってその苦しい状況を変化させることができる。こういった考えに影響を受けて、アルバムタイトルを『Nurture』と名付けた。“生まれつき”を感じるのと同時に、僕らは自分自身に対する考え方を変えられるし、自分たちを向上させることだってできると感じてほしかったんだ。


Alan: アルバムを作るときは最初にコンセプトを考える?それとも完成した曲を並べてからコンセプトを考える?日本ではいくつかシングルを先に出して、その曲をまとめてアルバムとしてリリースするから、カルチャー的に違う部分があるのかなと思って。


Porter: 僕の尊敬するアーティストたちは、ひとつのコンセプトを完璧に表現する方法としてアルバムを作っていると思う。アメリカには商業的に成功するために音楽をリリースするアーティストがいる。アルバムを売るためにビッグヒットになるようなシングルを書くんだ。もちろん僕もアーティストとして大規模なツアーをしたいしミュージックビデオにも予算が欲しいから、同じようなリリース方法を使うこともある。ただアルバムに関しては、僕はどの作品であってもそのアルバムの世界に入り込めるようなものを作りたい。CDやヴァイナルのカバーを見るだけでそのアートワークの中に入りたくなるような作品。僕は1枚のアルバムで1つの世界を表現したいから、そこに何を入れるかにはすごく気を使う。『Nurture』の構想初期、2015年に高木正勝さんが音楽を手掛けた映画『おおかみこどもの雨と雪』で初めて高木さんの音楽を聴いたんだけど、そのことが僕の人生を変えた。アルバム『Worlds』を作っていたときは、遠くて触ることができないものこそ美しくて情緒的だと思ってた。でも高木さんの音楽を聴いて、近くにあるものやパーソナルなものでも美しさを表現することができると初めてわかったんだ。高木さんの音楽は草原や花畑に横たわっているような気持ちにさせる。だからこそ『Nurture』は夢のような美しさではなく、より身近で触ることができるものに存在する美しさを感じさせる作品にしようと思ったんだ。



『Nurture』アルバムアート


Alan: 「Look at the Sky」のインタラクティブサイトのコンセプトはどうやって考えたの?サイトを見ていて、芸術的でエモーショナルで素晴らしいと思った!


Porter: ありがとう!Active Theoryという、僕が好きなウェブサイトを作ってるデザイナーと一緒に仕事ができてとても幸運だったんだ。「look-at-the-sky.com」というドメインのサイトが作りたくて、2つのアイデアを持ってた。ひとつは、世界のどこかにいるランダムな1人と繋がることができるサイト。音楽を再生するためにはサイト上で繋がった相手の目をじっと見つめなきゃいけなくて、目をそらしたら音楽が止まっちゃう。インターネットは人を繋げるより分裂させる傾向があって、それが多くの対立と誤解を招いていると思ったからこのアイデアを考えた。直接顔を合わせて会話することが一番良いコミニケーション方法だから、見知らぬ人の目を見つめることで人と人との繋がりを感じて欲しかったんだ。でも運用にはちょっと問題があったんだよね…。もうひとつのアイデアは、携帯電話から空を見上げると音楽が聴けるARアプリ。アプリで空を見ると、懐中電灯のような光を空のずっと先まで送ることができる。時間が経つにつれて他にも同じように空を見上げている人がいることがわかる。最終的に完成したサイトはこのアイデアに近いものだったよ。サイトを訪れると、他の人達と一緒に空を見上げて歌詞を読むことができるんだ。空を見ると生きてることの尊さを思い出すことができるでしょ。未来や過去について考えすぎちゃうこともあるけど、今生きていること、今安全な場所にいること、全てが大丈夫だってことを思い出すのも大切だと思う。だから「Look at the sky, I’m still here. I’ll be alive.(空を見て、私はここにいるよ。私は生きているよ)」という歌詞なんだ。希望と安心のマントラのようなものだよ。


Alan: 今話してくれたようなアイデアはどうやって思いつくの?僕もグループのためにいろんなことを考えるんだけど、いいアイデアがなかなか出てこないときもあるんだよね。自然にひらめくのか、それとも時間をかけて考えるのか。


Porter: アランもコンセプトに関わっていることはすごいと思う。君の書いてくれた『Nurture』の感想を読んで、アランは本当に僕の音楽を理解してくれてると感じた。前から思ってたけど、アランは真のアーティストで音楽をすごく愛してることが改めてわかった。アートは自分が愛するものや大切なものを窓から見せるようなこと。だから作品を世の中に送り出す方法についていろんなアイデアを思いつく人は本当に尊敬できる。でも、自分がどうやってアイデアを思いつくのか説明するのは難しいね。問題を解決するように考えているのかも。例えば「Look at the Sky」のためにウェブサイトが必要という問題だったら、まず誰かに相談する。相談する中でお互いの考えを少し勘違いして理解しちゃうことも結構あるけど、そういうやり取りから新しいアイデアが出てくる。そうやって誰かと一緒に考えたりするかな。あとは大好きなものからアイデアが生まれることもある。好きなアーティストの作品を聴いたり観たりすると、自分の作品にもその一部が欲しくなるんだよね。少し自己中な考えかもしれないけど、本当に大好きなものに触れるとその世界に入りたいと思っちゃうんだ。


Alan: Secret Skyのセットも見たよ!僕もオンラインでパフォーマンスをしたことがあるけど、ファンのリアクションが見えないことに対して不安はない?


Porter: そうだね。ライブでリアクションをもらうことがファンとの繋がりを確認できることだから、アーティストはみんな、ライブでファンの反応を感じる瞬間を一番恋しいと思っているよね。Twitchでは絵文字の形で反応を見られるけど。しかも、DJはファンのリアクションによってプレイが変化するから大変だよね。『Nurture』の楽曲は、DJミュージックというよりバンドが演奏するようなメランコリックな音。アルバムが完成してからこの半年の間に毎日新しいライブショーの準備をしてるんだけど、ふんわりしたショーにしようと思っていたのに、すごく盛り上がるドロップをたくさん入れてる自分に気づいてびっくりしたよ。長いことライブができてないから早くパフォーマンスしたい。今回は悲しい雰囲気の曲が多いんだけど、みんなはエネルギーを欲してるからもっと盛り上がるパフォーマンスにしたいな。


Alan: いろんなオンラインショーを観ていて、テクノロジーのおかげでライブのクオリティーは上がってるけど、リアルなショーに戻ることも大切だと思っているよ。


Porter: 僕も同感。音楽を肌で感じる機会のない世界は想像できない。さっきも話したけど、僕にとって音楽は世界を少し明るくするもの。1年前と比べてクラブミュージックについて考えることが多くなった。ダンスミュージックやクラブミュージックを聴くと踊れるし、踊ることは何かを祝うような行為。最近はSpotifyでトラップやダンスミュージックを聴くことが増えてるよ。Tohjiというアーティストを知ってる?最近彼の音楽をよく聴いているんだ。ライブでしか体験できないエネルギーと楽しさが恋しいからそういう音楽を求めてるんだと思う。


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Porter: PKCZ®について少し教えてくれる?DJのコレクティブとして活動する中で感じていることや、ライブに関する部分はどうアプローチしているのか、楽曲制作のスタンスからもぜひ教えて欲しい。


Alan: 僕がPKCZ®に加入して初めての曲は、誰がボーカルなのかを隠してファンに予想してもらう企画を行ったんだ。リリースした後に僕がボーカルであることを発表した。VRでしか入れない空間でのライブ企画もあって、そこに参加した人には一足先に僕がボーカルだってことを発表したんだ。バーチャル空間でパフォーマンスやミートアンドグリートをしたり、PKCZ®はかなりプログレッシブなグループだと思ってる。こういう企画も初めてだし歌うのも初めて。PKCZ®に入って、今までとは違うアーティストとしての側面を見せられるようになったんだ。


Porter: アランがやっているような最先端の技術を絡めた企画を実現するのはすごいね。この1年間の外出自粛で僕もVRでいろんなナイトクラブを体験してる。「VRChat」っていうちょっとオタク寄りのゲームがあるんだけど、自分でアバターを選んで他の人と話したり友達になることができるんだ。僕も別の名前で入って声も変えてるから、誰にも僕だとバレずに遊んでるよ。人と触れ合う新しい方法はとても面白い。この半年の間にVRChat内で「HOM3」「Shelter」「Loner Online」というナイトクラブができて、そこで素晴らしい経験をした。ライブDJ、VJ、LD(ライティングディレクター)もいるし、クラブ内には100人しか入れない、知り合いがいないと入れないという決まりがあって、そういうところも本当のクラブのように感じる。アランが話してくれたVRパフォーマンスもそうだけど、最近は新しいテクノロジーやサウンドを経験することに興味を持つ人が増えたよね。ゲーム内のDJは聴いたことのないようなフューチャリスティックな音楽をかけているし、今まで行ったナイトクラブの中でもVRで経験した夜が一番楽しかった。だからアランも新しい企画を実現してるのはすごいと思うし、みんなもいろいろやってみるべきだよね。僕はPKCZ®をすごくビッグなアーティストだと思っているんだけど、こういった新しいチャレンジはアンダーグラウンドのアーティストが企画することが多い。だからPKCZ®のようなビッグアーティストが早くから新しいテクノロジーを使った企画を行うのはすごくクールだと思うよ。


Alan: VRは自分が生まれ変われるような場所だよね。性別やセクシュアリティーに関わらず誰でも入れるところだから、自分らしくいられるところかもしれないね。


Porter: そうだね、僕も自分の経験からそう思うよ。VRは参加してる人同士で思いやりを持ってお互いを理解し合っているところが面白いなと思う。例えばVR内で何人かと集まって話していても、その中の1人がしばらく喋ってなければ、その人が不快に思ってることが伝わってくる。人間として感知できていたことがSNSではどんどん出来なくなってきた一方で、VRはリアルな環境じゃないのに現実よりリアルに感じる時があるよね。


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Alan: アルバムの話に戻るけど、「Blossom」は他の曲とは違うサウンドだよね。この曲を制作してた時はどんな気持ちだったか教えて欲しい。


Porter: 確かに「Blossom」は他の曲と違うね。一晩で書き終えて録り終えた、初めてのラブソング。誰かを愛しすぎていることに気付いて、死ぬのが怖いと初めて思って書いた曲なんだ。本当に誰かを失うまで僕は死の恐怖を経験したことがなかった。そのことを考えるだけで涙が出たし、書いてるときも歌ってるときも泣いていたよ。少し恥ずかしいけど本当のこと。ある人への愛と感謝の気持ちを伝える曲を書きたかったんだ。14年間音楽を作ってきてラブソングを書くのは初めてだったのに、この曲は心から溢れてくるような速さで書けた。ある日3人の兄弟と一緒にアルバムを流しながらドライブをしていて、「Blossom」が流れたら車内が急に静かになった。「この曲が好きなのかな?嫌いなのかな?」と思って後ろを向いたら、みんな涙をこらえるのに苦労してたよ。家族が泣いてる姿を見るのはちょっと恥ずかしかった。バラードでギターを弾くために書いた曲だけど、繊細で心からの想いを込めて書いた曲だから、アルバム『Nurture』を表している曲だと思う。本当の自分の気持ちから曲を書くことは今までなかったから、このアルバムで僕は音楽を通してもっとオープンになりたかったんだ。


Alan: この曲を初めて聴いた時、自分に子供が出来たら産まれた瞬間から聴かせたいと思ったよ。


Porter: 素敵な言葉をありがとう!


Alan: 「dullscythe」はイントロが圧倒的で、制作してる時に何かがあったのかなと思った。


Porter: 僕はかなり感情的な人間だと思う。本当にハッピーな時はすごく明るいけど、悲しい時はかなり落ち込む。怖いときは逆に怒ることもあって、そういう自分が恥ずかしい。怒るのも怖がるのも嫌いだけど、このアルバムを通して人間が感じる気持ちを全部表したかった。このアルバムは全く整理されていない曲ばかりなんだけど、この曲は別の意味でめちゃくちゃなんだ。「大きなキックドラムと大音量で超ハードなのに、リズムが全く意味をなさない曲を作ったらどうなるか」って考えて作った。いろんな方向に引っ張られてるようなカオスをイメージした。僕の力や怒り、強さを反映できた曲だと思う。アルバムのほとんどは内気な自分を表現してるけど、もう一つのリアルな姿である反抗的な面を表現したかった。前作『Worlds』をリリースした頃、SNSに書かれている内容にすごく腹を立てていたときがあったんだ。いろんな人が、僕の音楽がひどくて以前の音に戻って欲しいと言っていた。僕のことを音楽の表現者ではなくただのDJだと考える人達にすごく腹が立った。だから、過去の曲はもうPorter Robinsonではないと言って自分の曲を切り捨てるようなこともしたよ。そういう自分をクールだとは思ってないけど、生きてきた中で経験したことのひとつ。ネガティブな感情を持つことは誰でもあるし、僕は暗い側面も表現したかったんだ。


Alan: このアルバムを制作している間、思い出に残っていることはある? 


Porter: 「Look at the Sky」は2018年に日本に遊びに行った時に書いた曲だよ。2016年に最初のメロディーを書いていたんだけど、当時は刺激がなくて音楽を作るのに苦労してたから、2018年に彼女と2ヶ月日本に滞在した。日本でコーラスと「Look at the sky~」の歌詞を書いたんだ。オートチューンをつけてスタジオの中で適当なメロディーや言葉を叫んで、でもそのときは何もメモしなかった。「Look at the sky, I’m still here」のリリックを書いた時はマネージャーが日本に到着したばかりで、その夜に聴かせたら「へ〜いいんじゃないか」としか言わず寝ちゃったんだけど、次の朝もう一度聴きたいと言われて「やばい!今まで作った中で一番の曲じゃん!」と言ってくれたんだ。すごくハッピーな思い出だよ。ずっと音楽を書けなかったんだけど、日本に行ったおかげでまた書けるようになった。


Alan: 「Look at the Sky」のミュージックビデオにいるゴーストは何を表してるの?


Porter: ミュージックビデオの中で、ゴーストは木を切り倒し磨いてギターやピアノを作ってる。次に、岩を採掘し溶かしてコンピューターチップを作ってる。メインのコンセプトは、1人で音楽を作っていると思っていても実は1人で何かを成し遂げることはない、ということ。もし自分が人とコミュニケーションを取れない場所で1人で育っていたら、音符や音階、コードやメロディーのアイデアを考えることはできなかった。音楽は数万年かけて人から人へと受け継がれてきたもの。パソコンで音楽を作るときは、誰かがこのパソコンを作ってマイクロチップの使い方を考えて、音楽を作るソフトウェアを作って、ピアノやコンピューターマウスのコンセプトを考えたたんだということを思い出す。知らない人があなたの作り上げたものを使っているということは、死んだ後も自分の存在が残るということだよね。死んだ後もずっとコラボレーションしてることが死の美しいところだと思って、それを表現するビデオにしたんだ。



Alan: 最後の質問、次に日本に来るときは何をしたい?


Porter: あ〜!毎日彼女に「日本が恋しいよ。日本に遊びに行きたいよ」と言ってるんだ。さっき言った“何よりもライブパフォーマンスが楽しみ”っていうのはアーティストとしての答え。日本には大好きなことが多すぎて…。この質問が一番難しいなぁ!


Alan: 難しいよね!


Porter: ん〜なんだろうね。日本のカレーかな。前回は友達のガレットと一緒に東京でカレーツアーをして、毎日違うカレーを食べた。東京のファッションや東京で買い物することも恋しい。アメリカでは移動するのに車が必要だから、日本で歩いたり電車に乗ることも好きなんだよね。歩いてると体も喜ぶし。クラブにも行きたいし、やりたいことが多すぎる!いっぱい話しちゃって恥ずかしいけど、本当に恋しいんだよ!


Alan: 絶対に東京で会おうね!


Porter: もちろん!アランが友達で最高だよ。お互いに理解しあえるから、同業者の知り合いがいることは大切。アランから日本人としての経験も聞けてすごく嬉しいし、特にアランは僕よりビッグなミュージシャンで俳優としても活躍してるから、経験してることが違う。本当に僕らの友情を大事に思ってるよ。もう一回言わないといけないけど、アルバムについての感想も感謝してるし、アランのようにアルバムを理解してくれている人は他にいない。アルバムを気に入ってくれて嬉しいし、質問も準備してくれてありがとう。次は僕からインタビューさせてね!


Alan: こちらこそ今日はありがとう!


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白濱亜嵐によるアルバム『Nurture』の感想


1. Lifelike 

導入部分ぱっと受ける印象はカントリー。

しかし、カントリーながらもデジタルを頭から爪先まで被りつつまさしくゲームで言ったら一番初めの街で流れているような印象を受けた。

何かが始まるワクワクな感じを表現していてこのアルバムがとんでもないアルバムだなと予感させられました。


2. Look at the Sky

あえてだと思いますが、全体の音をクシャッと潰して耳に残るサウンドアプローチ。

サビのメロディーラインは秀逸でブリッジからのラストサビへの流れが聴いてる人の心を動かします。

この曲ヤバすぎる。感動です。

全てが面白すぎる曲。

こんな素晴らしい曲を作られたら作曲をやめたくなるほどです。

実際にこの曲を聴いてポーターの才能に衝撃を受けてパソコンを閉じました。


3. Get Your Wish

土台になってるサウンドは90年代の8bitのチップチューン(ゲーム音楽)を派生させたものだと思うのですがあくまで印象は「今」。

その「ポーター製チップチューン」に乗っかる歌のメロディーがエモーショナルな気持ちにしてくれます。


4. Wind Tempos

綺麗なアンビエントの上にノイズを被せたコントラストが心地良い。

3分待ってからのピアノの展開で完全にやられました。

ノスタルジックかつ何だかポーターの思い出を振り返り、思い出の場所を巡っているような展開。


5. Musician

これぞポーターロビンソンと思わせてくれる曲。

トラックのメロディーラインとボーカルのメロディーラインが全く違う進行なのに不思議と合わられるセンスがヤバイです。

普通のトラックメーカーが思いつかないようなサウンドアプローチ&メロディーだらけです。

こんな曲ポーターにしか作れない。

ポーター天才です。


6. do-re-mi-fa-so-la-ti-do

鳥のさえずりと子供の声が聴こえてきたと思いきや、ドレミファソラシドという日本人なら誰もが知っている音階の名前から広がるメロディーラインにキャッチーさを感じました。

後半キックが四つ打ちになったところからの駆け上がり方が一見、派手じゃないのにテンションが上がってきます。

楽しみな日の朝に聴きたい一曲。


7. Mother

ベースの音の「鳴り方」が前に存分に出てきていてクラブなど低音の映える環境で聴きたくります。

それぞれの音色がしっかり自分の居場所を与えられているような曲で、昼とも夜とも捉えられる曲。

他の曲に比べて落ち着いていて音の広がり方が心地よい。

単純に音をPanでLRに振っただけではない。

何かやっているはず。。。


8. dullscythe

音のチョップや無造作に左右に振られる音に芸術味を感じる。

この曲を作っている時ポーターに何かがあったはず。

何があったのか聴きたいです。(笑)

後半のアンビエントからビートが入ってくる辺りに微かな幸せが見えてくるような一曲。

いいなぁ!

僕も縛られずこんな自由に曲を作ってみたいと思いました。


9. Sweet Time

壮大で歌をしっかり聴かせてくれつつ、男性ボーカルと女性ボーカルのデュエットだからこそ感じる甘さが良い。

歌詞もじっくり読みこんだ上で聴きたい一曲。

そしてなによりコード進行とその上に乗るトップラインがかなり日本人好みなんじゃないかと思いました。


10. Mirror

パーカッションの音色が何使ってるの?どうやって鳴らしてるの?って思うくらい面白い音。

BPMが早いのにゆったりしていて、心地よく聴こえるトップライン。

ブリッジの展開が最高すぎます。

最後のkeep goingでいきなり励まされて今日も頑張れそう!な一曲。

少し落ち込んだ時に聴きたいです。


11. Something Comforting

フェスで聴きたい!!

とにかく全てが綺麗。

ビルドアップのところのstabのカットアウトが心地よい。

ピアノのメロディーが繊細でまるでピアノが話しているみたいで素晴らしいです。

フェスでポーターのプレイでこの曲が聴けたらそれだけでコロナ禍で感じたストレスを忘れられそうな一曲。


12. Blossom

自分に子供が出来たら産まれた瞬間から聴かせたいほど滑らか。

神聖で幸せなんだけどどこか儚い。

泣きたいけど泣く暇も無い人に聴いてほしいです。

泣きますから。

シンプルなんだけどポーターっぽさもしっかりとある一曲。


13. Unfold

水色。なんだかとにかく水色に感じる曲。

暑い晴れてる日に聴いたら暑さを忘れそうなほど水色。

トラックはストイックに音を鳴らしているからこそボーカルのハイトーンが更に映える一曲。


14. Trying To Feel Alive 

デジタルなアンビエントに乗っかるボーカルフェイクが気持ちいい。

ポーターが音楽で希望をくれている気がします。

最後の曲なんだけど終わりは始まりだと思わせてくれる一曲。

素晴らしい締め曲です。


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Porter Robinsonのアルバム『Nurture』配信中。

購入・再生リンク:https://lnk.to/PorterRobinson_Nurture


Interview by 白濱亜嵐

Text by Amy

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