「日本人が家から一歩も外に出なくていいテクノロジーってハッピーですか?」ナイアンティック川島優志さん、「外」へ出るための持論を語る

『ポケモンGO』を作ったナイアンティックで活躍する川島さんが、屋内に閉じこもりがちな日本人が行動を起こすため、できることを語ってもらったぞ!
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2017.11.28 02:00

▷テクノロジーを使うことが最終目的にはならない。

川島:ナイアンティックは、現実世界の体験をどれだけ高められるかっていうところを追求してる。そこがあればどんなものであっても進める。音楽を使ってこういうことをしたいんだっていう考えがある人は、スタイルだけにこだわってると、「ちょっと思ってたのと違うんじゃないか」ってなる時もあるのかな〜って思いますけどね。僕はプロのミュージシャンじゃないのでわからないですが、個人の根っこにあるものが物を言うんじゃないかなって気がしますけどね。


どうなんですか、実際。音楽なんてトレンドがすごく変わるじゃないですか。ファッションでも、去年すごくカッコいいって言われてたものが今年着てるとちょーダサいとか。


▷作り手側で大事なのは2つあって。1つはトレンドが何かっていうのをどれくらい理解できるかっていうことと、もう一つは自分は何が好きかっていうことだと思うんですけど。あとトレンドに乗っかるか、トレンドを作るかっていうところもすごくあると思うんですけど、今僕はすごくメランコリックなんですよ。2000年初頭のサウンドがすごく面白かったりとか、80'sのサウンドが面白かったりとか。日本がアメリカとちょっと違うところがあって、日本って今メランコリックになることに対して、アレルギーがあるというか。


川島:へえ、そうなんですか。


▷「後ろ向きだ、良くない」ってなってるんですけど、僕自身は別にいいじゃんって。なんでそうなるかっていろいろ考えたんですよ。日本って、時代が進んでないことのほうが多いんですよ。川島さんはアメリカに住まれてるから見え方がちょっと違うと思うんですけど。


川島:違いますね。


▷例えば、日本のバラエティ番組の背景とか、オブジェを置いてる90’sの番組作りって、今だにやってるんですよ。アメリカのバラエティを過去と今で見比べると、変わってる。変化がアメリカは起こっている。変化がない国が後ろを向いちゃうと良くないと思うんですよ。


川島:変化がないことに気づいてしまうということですか?


▷そう。進化せずに後ろに言っちゃうんだっていうマイナスなことを言われる。


川島:ただでさえ最新化してないのに?!


▷アメリカはどんどん進化してるから、過去を振り返ると「何これ? 新しい! 面白いじゃん!」ってなれる。それは僕よくわかるんだけど、でもメランコリックなものがカッコいいって思えるのいいじゃん、フューチャーメランコリックなものを作ればいいじゃんっていうふうに、そういうモードになってる。僕いろんなものを聴くタイプってさっき言ったじゃないですか。その中で聴いて面白いものが最近は少なくなっている。で、自問自答します。〈これは自分がおじさんになってるからなのか〉(笑)。やっぱり年重ねるとそこは考えないといけないじゃないですか。


川島:なんでなんだろう?(笑)


▷それか、違うのかっていうのを自問自答しながら。やっぱり当時のままの体験じゃダメなんだけど、そこの時代の狂気っていうのがあるんですよ。今は狂気が少ないんですよ。だったら俺まだ若いなと。狂気って言葉を使うのが若いか若くないかは置いといて(笑)。


だけど日本ってちょっと違ったミレニアル感があって、グローバルミレニアル感と違うんだけど、グローバルミレニアル感を日本に持ってきたいなって思っていて。それを表現して、それがトレンドになってほしいな。そしたらもっと楽しいなっていうふうに。答えになってます?


川島:すごく答えになってる。これテクノロジー業界でも一緒なんですよ。僕は日本は、2年くらい世界から遅れてると思ってるんですよね。


▷同感です。僕は5年くらいだと思ってるんですけど(笑)。


日本がグローバルプロダクト作りで後回しになる理由



川島:かつては先に行ってることもあったと思うんですよ。飛行機でアメリカの情報番組をいくつか見た時に、世界のポップカルチャーの歴史みたいなのをやってて。70年代80年代の時、ブームボックスを抱えてみんなが音楽を街に持ち出してやってるとか、ウォークマンを聞き出したとか。


その時の電化製品って全部日本のものなんですよ。本当にびっくりして。日本の番組じゃなくて、アメリカが世界のカルチャーの歴史を振り返った時に、そこにあったのは日本なんですよね。そういう、ずいぶん先を行ってた時代があった。


だけど今そんなこと全然ないじゃないですか。僕はアメリカでグローバルなプロダクトを作らざるをえない。『Ingress』だったら世界200以上の国と地域でやってますし、『ポケモンGO』もすでに世界150以上の国と地域で公開されてる。最初『Ingress』って英語しかなかったんですよ。これを多国語化しようって時に、どうしても日本って後回しになってしまうんですよね。


壁があるんですよ。英語でプロダクトを出すと、だいたいいろんな国の人たちがやってくれるんですよ、今って。例えば、アジアの国でも英語のプロダクトで遊んでくれる。中国も台湾でも。だけど、日本と韓国って英語のアレルギーがあるんですよね。


▷壁がありますよね。


川島:プロダクトをなかなか英語でやってくれない。っていうことは、ユーザー数が少ないってことなんですよ。ユーザー数が少ないってことは重要だと思われないんですよ。日本はすごく大事な国だけど、最優先にならない。それはユーザー数が少ないから。


英語のプロダクトだから、日本語にすればって思うけれど、日本語化ってすごく大変だったりして。そうすると、あらゆるものがそうなるんです。僕たちが作ったものだけじゃなくてグーグルグラスも結局日本では出なかったですし、Spotifyなんて8年くらいかかってますよね。


▷すごい時間かかりましたね。


川島:Facebookも2年くらいかかってたり、Twitterも2年くらい遅れたかな? でも、日本語版が出るのを待ってます、みたいな感じで、みんな大人しく座って待ってる感じなんですよ。大人しく待ってるんじゃなくて、英語で使っていくような、自分から歩み寄ってくような感じでどんどん外のものを使ってほしい。音楽だったらどうなんだろう。やっぱり世界で聴かれてる音楽っていうのを聴いてる感じはあんまりしないんですよね。


▷うん。正しいですよ。


川島:日本のチャートを見てても、昔はもうちょっと外国の音楽聴いてたんじゃないかって思うんですよ。


▷それこそ川島さんがアメリカに行った2000年の頃は、世界のサウンドを取り入れてもっと面白いことをやっていこうっていう時代で。この後は、どんどん海外との壁ができてきた。ナイアンティックは外に遊びに行きましょうって考えですけど、別の意味での外、インターネットの世界にも外があるじゃないですか。自国の言葉のランゲージバリアの外。日本は日本のネットの中で自ら鎖国してるところがめちゃくちゃあるんですよね。


川島:ありますよね。


▷情報も同じ。世界で面白いこと、音楽が生まれている。だけど、日本では報道されない。日本のニュースでは流れないっていうフラストレーションがあって、今インタビュー受けてもらっているblock.fmっていうのを始めたんですよ。


川島:なるほど。



壁の中の日本人、壁を超えるインド人




▷もっと知ればいいのに、もっと見ていけばいいのにっていう僕の願望もあるんだけど。「じゃあ日本語にするよ」っていう翻訳作業が今はあって。でもここのキーワードわかったらいろいろ楽しめるじゃんっていうきっかけまで作れたらいいなっていうふうに思っていたりして。


川島:すごく難しいところなんですけどね。面白いなって思ったのが、アメリカにインド人の友達がいっぱいいるんですよ。インド人ってすごく面白い。グーグルの社長もインド出身のインド人。マイクロソフトの社長もインド出身のインド人ですよね。これってすごいことだなって思っていて。実力で上回っても外国人はやっぱり社長になれないんだろうなとか、そういうふうに思っちゃうところが外国人自身にあったりすると思うんですけど。


▷過去は実際ありましたよね。


川島:今も存在してるところはあると思うんですよ。だけどみんな壁を崩そうとして頑張ってるんです。アメリカで生まれたインド人だけじゃなくて、インドで生まれたインド人も同じ考えだと思う。


みんな英語もインド訛りなんですよ。でもどうしてこんなにインド人って英語喋るんだろうって思ったんですよね。いろんな理由があって、歴史的な背景とか、もちろんイギリスの影響もあるし。さまざまな背景の中で面白かったのは、学校は英語で勉強してる。理由の1つはインドってすごくたくさんの言語でみんな喋ってるので、英語が共通言語化してる。


ただ先生が英語で喋るといっても、「インドではどうやって先生がみんな英語で喋って授業ができるようになったの?」って聞いたんですよ。そしたら驚いたことに「先生の英語はめちゃくちゃだよ」と。


▷(笑)。


川島:おじいさんの先生なんてもう何を言ってるかわからない。だけど、みんな英語でやってるんだっていうのを聞いて、ああなるほどなと。きっと大変なんですよね。そうすると子どもの世代っていうのは、少しずつそれが当たり前になって、ついにはアメリカで人種の壁も越えて、社長を生み出すところまでたどり着いたわけですよね。


日本で振り返ると、英語で授業すると日本語の文化が失われるとか、そういうこと言われる方もいますけど、僕なんかは「いやいやいや、失われるはずないよ」と。家では日本語だし、学校だって国語もあるし、友達同士では日本語喋るだろうし。それで授業を英語でやったっていいじゃんってすごく思うんですよね。それくらいやったらちょっと日本変わるかもしれないって思ったりしますね。


外に出ないで楽させる方向に世の中のテクノロジーは進んでいないか?




▷日本が成功してるタイミングって、2回あると思うんですよ。明治維新以降の明治時代と、第二次世界大戦後の高度成長期。共通するのは、日本人が海外に目を向けてる時代だったことなんですよね。喋れないけど侍が咸臨丸乗ってサンフランシスコ行きましたみたいな。そこで、「大統領制度とかあるんだ、面白いな」とか「こういう機械があるんだ」って勉強してくる。高度成長期のタイミングも、「トランジスタあるんだ」とか「車ってこう作ればいいんだ」とか。気がつけばめちゃくちゃちっちゃいカセットを持ち運べる製品を作れたり、めちゃくちゃ燃費のいい乗りやすい車を作れたりしてきた。僕は、今の日本がなんでダメになってるかって考えた時、もちろん不景気になったっていうのもあるけど、単純に言うとiモードが悪者だと思ってるんですよね。


川島:なるほどなるほど。それすごい面白いですね。根っこの話になってきましたね。


▷docomoさんごめんないみたいな話になっちゃうんだけど。iモードっていうインターネットを使ってるのに、イントラネットみたいなものを作っちゃったっていう。


川島:独自の世界ですよね。


▷iモードの日本語の中の世界だけで止まってしまった。


川島:中国のグレートファイアウォールをバカにしてるけど、それがもともとあったみたいな感じですよね。


▷そうそう。自分たちで鎖国の道を選んじゃった。iモードがまた良くできてたじゃないですか。iPhoneがFacetimeできるようになりましたってアップルが云っても、そんなの日本が10年前からやってるわ!みたいな。ただ、どんなに技術が良くても中身が無いとダメ。そういったところで外に出なくなるきっかけを作っちゃったのかって。


川島:よく言われるじゃないですか、今の日本は外に出ることがいらないくらいだって。日本の中は何の不満もないから、みんな平均的に幸せで豊かで、外に出る必要なんて感じない。


僕が思うのは、そのきっかけをまた作ればいいじゃないかって。『Ingress』とか『ポケモンGO』とかをやってて、すごく印象深かったのが、車椅子の人の話なんですよ。自分は車椅子だから、街を移動する時もできるだけ短時間で行きたいと思ってたし、そもそも外に出ることが億劫だったと。だけど『Ingress』をプレイし始めて、どんどん遠くまで行くようになったと。


遠くまで行くだけじゃなくて、イベントに参加するために違う都市に行ったり、しまいには日本に来てしまったことを言うわけですよ(笑)。それで日本に来て、共通のゲームを通じてどんどん友達ができる。日本という外国で、一緒にどこかへ行ってくれる友達ができた。それってすごいなって。


自分の人生が変わったってことですよね。でも、家から1歩も外に出なくてもいいようにするためにはどうしたらいいだろうと考える方向に世の中のテクノロジーが向いている感じがすごくするんですよ。Amazonでポチればあらゆるものが届いて家から一歩も出なくても生活できるし。


▷実際僕も使っちゃいます(笑)。


川島:僕も使っちゃうんですよ。VRのヘッドセットをかぶれば、引きこもっていても世界どこへでも行けるみたいに、そういう方向にどんどん向かってるんですよね。だけど、本当にそれでいいのかなと考えます。


人間ってどういうふうにデザインされてるのか、もっと考えたほうがいいんじゃないかな。他の生物と比べた時に、唯一直立二足歩行ができる動物がヒトなんですよ。人間は、二足歩行ができたことで、脳がすごく発達してクリエイティブになっていった。その結果、今があるわけです。直立で歩くことで、ちゃんとすべてのことが廻るようにデザインされてきたんだなってすごく思ってるんですよね。


だけど現代人は、歩くっていうことを捨ててしまった。できれば、歩かずに生活できたら最高みたいな感じ(笑)。たぶん、それがいろんな問題の原因になってるんじゃないかなって思っていて。


『Ingress』とか『ポケモンGO』がどうしてこんなに世界に受け入れられたか。たぶん、「外って楽しいじゃん」と感じてくれたんだと思うんですよね。外で、何かを探したり発見したりするのがすごくいいなって感じて、習慣化したからだと思うんですよ。今もずっと続けてくれるおじいちゃんおばあちゃんがいます。1日30分でも外に出て太陽の下で全然違う世代の子どもたちと話をするきっかけになったりすれば、こんな良いことはないなって思っている。そこから、歩く習慣とか、ライフスタイルになってくるとさらに良いと思う。


だから、外に出る、動くきっかけは意識してデザインしていかなきゃいけない。ゲームにはそういう力がすごくあるんだなって作ってて実感しているんですよね。だから、あらゆるものが便利で何でも考えなくても構わないって感じ方は、音楽でもそういう方向へ行ってるんじゃなかなって気がする時あります。特に日本の音楽とか、ランキングとか見ててもびっくりしますよねー。


▷安易というか、安全な方向に行っちゃうんですよね。そこはまた話すと長いですよ、いろいろありますよ(笑)。今日は、ありがとうございました。


(前篇はこちら)


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川島優志 | Niantic, Inc. エグゼクティブプロデューサー兼アジア統括本部長


2015年10月にNiantic, Inc.(ナイアンティック社)の設立と同時に、アジア統括本部長に就任。2013年、Googleの社内スタートアップとして発足したNiantic Labsの UX/Visual Designerとして参画、Ingressのビジュアル及びユーザーエクスペリエンスデザインを担当。また、プレイヤーが現実世界でポケモンを探し、集める、スマートフォンゲーム『ポケモンGO』では、開発プロジェクトの立ち上げを担当しました。


早稲田大学を中退後、2000年に渡米。ロサンゼルスでの起業、デザインプロダクション勤務を経て、2007年にGoogle へ入社。アジア太平洋のウェブデザインチームを統括、日本人としては世界で初めて「Doodle(祝日や記念日に変更されるGoogleのトップページロゴ)」をデザインしました。東日本大震災時はクライシスレスポンスウェブチームを立ち上げ、その経験をTED x Tohoku などで講演。2011年より、米Google本社に移籍し、コンシューマープロダクトウェブデザインのグローバルチームの統括に従事しました。


Niantic Labs

川島優志(@mask303)


Top image:(左)川島優志 | ナイアンティック社エグゼクティブプロデューサー兼アジア統括本部長、☆Taku Takahashi | m-flo、block.fm

Interview by ☆Taku Takahashi

Edit by ☆Taku Takahashi & block.fm編集チーム

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