Oneohtrix Point Neverがアルバム制作に使った機材を販売。ツールから作品の発想を探る

OPNことDaniel Lopatinが『R Plus Seven』などで使用した自らの機材を販売。機材リストから見る作風の変遷
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2019.05.10 04:00

Oneohtrix Point Never(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)が、自らの音楽機材コレクションの一部を、中古楽器販売サイトReverb.comにて売り出すことを発表した。専用の販売ページが公開中(既に販売済みの商品も含むページはこちら)。


Oneohtrix Point Neverがアルバム制作に使った機材を販売


Oneohtrix Point NeverことDaniel Lopatinはアメリカ在住のミュージシャンで、アンビエントやIDMから影響を受けた実験的なサウンドを作り出している鬼才。『Replica』『R Plus Seven』などのアルバムは高い評価を得ている。また2009~2010年にChuck Person、KGB MANと言った名義でリリースされた作品はヴェイパーウェイヴの祖とも言えるサウンド/スタイルを提示しており(Macintosh Plus『Floral Shoppe』は2011年)、その作風は一筋縄ではいかない独特の存在感を放っている。シリアスなサウンドに対して、アートワークや映像に顕著な、露悪的かつ皮肉っぽいユーモア(『Still Life』のグロテスクなミュージック・ビデオはYouTubeでもVimeoでも即日削除されてしまった)を持ち合わせている所など、エイフェックス・ツインとも比較される……そんな存在だ。






そんなOPNが、過去アルバムの制作やライブで使用していた機材を手放す……ともなれば、そのミステリアスなサウンドの秘密を知るまたとないチャンスでもある。Reverv.comにて販売されている機材は、意外にも相場の価格とそれほど変わりなく、既に多くのアイテムが購入されているが、このリストを見ながら過去作を振り返るのもまた、そのサウンドを研究するまたとないチャンスではないだろうか。以下、過去の作品とOPN本人のコメントを元に推測していきたい。





使用機材から見るOPNサウンドの秘密




Photo:Reverv.com


まず最初に紹介したいのがRoland SP-555。先日の404dayも記憶に新しい、近年人気のSP-404を擁するBOSS~Rolandの低価格サンプラーシリーズの最終系で、テルミンのように手をかざして操作するDビーム機能や、シリーズ最大のパッド数などゴージャスな作りになっているが、SP-404に比べるとあまり使用されている場面を見かけない(Mndsgnは制作に使用しているようだが)。OPNは『Replica』での制作とライブに使用したらしく、今回販売されるSP-555には『Replica』で使用したサンプルをいくつか収録しているとの事(収録曲『Up』の印象的なボイス・サンプル──『シンプソンズ』のホーマー・シンプソンのギャグに似ている──も含まれているが「これはホーマーの声ではない」とOPN自ら否定している。たしかにSPシリーズでこのように声をピッチアップする加工は難しいだろう)


またアルバム『Zones Without People』制作の際に購入したSP-404も販売された。こちらもライブで使用していたとのことだが、SPシリーズのデジタルで効きの荒いエフェクトは、OPNの過激なサウンド、極端な構成に相性がいいのではないかと予想される。


マニアックなシンセサイザー



Photo:Reverb.com


シンセイサイザーとしてはWaldorf Microwave XT、Alesis IONと低~中価格帯のものも気になるが、Alesis Andromeda A6に注目したい。90年代後半に発売されたアナログシンセサイザーで、OPNの過去のインタビュー記事でのスタジオ写真にもJuno-60と並んで登場していたが、OPNが「オーバーハイム社のシンセがエイリアンになったようなマシーン。UIも独特なので(使うなら)覚悟してほしい」と語るように、見た目通り個性的なシンセサイザー。DisclosureやBicepも使用していたとか。OPNの作品としては2015年『Garden of Delete』で使用とのこと。ちなみに今回最も高額なのがこちらのシンセサイザーで、まだ買い手は決まっていないようだ。(※2019年5月8日現在)


Technics SX-WSA1という、これもまた渋いチョイスのシンセサイザーもリストアップされている。TechnicsはSL-1200初めターンテーブルやオーディオ機器のイメージが強いが、90年代にはいくつかのシンセサイザーやキーボードを製作している。SX-WSA1は「バーチャル・アコースティック・シンセ」とも形容されるシステムを持ち、アコースティック楽器をモデリングして音色を作る(もちろん70年代のシンセなどは元々そのようなものが多いが)。現在ならよりリアルな響きのシンセサイザーはいくらでもあるが、このどこかレプリカめいた質感は、2019年の現在に聴くとまた違った味わいがある。


シンセサイザーによる"架空"の楽器音


「シンセサイザーで和楽器の音などを作ると、〇〇年代のこの流派の琴の音、と言ったものでなく、特定のものでないバーチャルな琴の音になるのが面白い」と坂本龍一はかつて語ったが、OPNは「R Plus Seven」リリース時のインタビューで「(琴の音が登場することについて)SFドラマのBGMの中で、エイリアンの登場シーンで鳴らされている琴をイメージしていて、実際の琴は見たことも触ったこともない」と語っており、そのある種屈折した世界観/センスはこう云ったシンセサイザーの機能性にも通底しているのかも知れない。OPNがこのシンセサイザーを『ユニコーン』と称しているのも、そのバーチャル性に由来していると思われる。


先述のインタビューでも「自分はあまりハードウェア機材に感傷的な愛着を持たないので、売る時はどんどん売ってしまう」と語っていたように、アルバム制作に使用した楽器も売りに出してしまうOPN。それもまた彼の先進的な作家性と結びついているのかも知れないが、これらの使用機材を見て作品の中のテクニックや発想の素を探るのもまた一興ではないだろうか。


Source : https://reverb.com/news/the-official-oneohtrix-point-never-reverb-shop-preview

Photo:BEATINK


Written by KOTETSU(STUIDO MAV)



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