ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー来日、「ポストモダン・バロック」の世界観に酔いしれた「M.Y.R.I.A.D.」ライブレポート

日本ではOPN初となるバンド編成で表現した最新ライヴセット「M.Y.R.I.A.D.」の圧巻のライヴを振り返る。
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2018.09.19 03:00

今年5月に最新アルバム『Age Of』をリリースした現代を代表する革新的音楽家と称されるOPNことOneohtrix Point Neverが、9月12日(水)東京・Shibuya O-EASTにて来日公演を行なった。


Oneohtrix Point Never待望の来日公演


今回の来日公演は、すでにニューヨークやロンドンで行われた最新コンサートセットである「M.Y.R.I.A.D.」を日本に持ち込んでのもので、OPNにとっては日本では初となるバンド編成でのライブとなり、そのアンサブルチームには、Aaron David Ross、Kelly Moran、Eli Keszlerといった腕利きのミュージシャンが加わった生の楽器演奏とエレクトロニクスが深く絡み合う圧巻のステージとなった。






OPNにとって『Age Of』は、2015年の前作アルバム『Garden of Delete』以来、3年ぶりとなるアルバムで日本では他の国に先駆けて先行販売されたことも記憶に新しい。アルバムの内容は、端的に言って非常にオーガニックになったという印象だった。OPNは、以前までは別名義でのVaporwaveのカルト作の生みの親であったり、前作まではフリーキーでノイジー、そして時にやたらと耳障りの良い甘いメロディーを組み込む偏執狂的なエディットスキルを持った地下世界のエレクトロニックミュージックの担い手という印象があったが、今ではFKA Twingsのプロデュースや、カンヌ国際映画祭でもサウンドトラック賞を受賞するなどオーバーグラウンドに接近。そのキャリアの進化の中で彼が取り組んだのが楽器演奏や自身の声で歌う歌モノをふんだんに詰め込んだ作品だったことは個人的に非常に興味深いことだった。






ポストモダン・バロックという世界観が目の前で表現された来日公演


そんな『Age of』の世界観は、「ポストモダン・バロック」と評されおり、それをどのように東京で「M.Y.R.I.A.D.」を通して、表現するのかにも筆者は来日が決定した時点から当日までずっと楽しみに待ちわびていた。そんな来日公演では、開場時間から入場を待つ、ファンたちが長蛇の列を作り、彼らのOPNに対する期待感がヒシヒシと伝わってきた。


当日、公演のオープニングは、メディアアーティストの真鍋大度が担当。彼がプレイするエクスペリメンタルかつベーシーなクラブサウンドは、OPN登場までの期待をさらに煽ってくるように感じた。




そして、以前から発表されていたそれぞれが独特の形をした複数のスクリーンが設置されたステージにOPNが、バンドメンバーを引き連れ登場。1曲目にOPN流の古典的なバロック音楽の解釈を彷彿とさせる「Age Of」が演奏され、一気に会場の注目が集まった。続いて、自らがボーカルを務める歌モノ多めの『Age Of』を象徴する「Still Stuff That Doesn't Happen」を披露。その静けさの中に響く歌声とクラシカルなオケの音に引き込まれた。さらに個人的に序盤のハイライトに思えた「RayCats」では、どことなくノスタルジーを感じるエモーションナルなメロディーとともに気鋭パーカッショニストのEli Keszlerのスキルが際立ち、圧巻のドラムソロを体験することができた。






また「Babylon」で再び、ボーカルを披露したOPNの余韻に浸りつつ、続く「Manifold」では、Kelly Moranの流れるようなピアノソロに耳と目を奪われた。また『Age Of」中、最もOPNらしいノイジーでグリッチなIDMトラック「We’ll Take It」が披露された際は、その強烈な轟音ノイズとグリッチなビートが、それまでの夢見心地のようだったライヴにとって強烈なスパイスのように感じられ、会場にいたファンの心を刺激したことだろう。


聴覚、視覚を刺激する「MYRIAD」の世界


ライブ本編の終盤では、混沌さを感じるデス声風ノイズとバロック音楽が融合した、まさに「ポストモダン・バロック」を象徴するかのような「Same」が際立った。轟音が空間に響き渡り、複数のスクリーンに映し出される奇妙な映像、その合間を縫うようにして光り輝く照明の組み合わせは、OPNの先鋭的なセンスが存分に発揮されていたように思えた。続いて披露された「Black Snow」では、かねてより海外での「MYRIAD」のレポート記事などでも紹介されていた謎のダンサーが登場。どのタイミングで現れるか楽しみにしていたところ、満を持してといった具合に、アルバムの先行曲としてMVも公開された人気曲でのフィーチャリングは、非常にニクい演出に思えた。






その後、『Age of』でもラストを飾る「Last Known Image of a Song」という終幕にふさわしい曲が披露され、こちらも海外でのライヴのレポートで報告されていたBill Fayのカバー曲「Never Ending Happening」で一旦、ライブは終了。OPNらは拍手に包まれてながらステージを去った。


そして、アンコールを求める拍手が鳴り止まない中、彼らは再びステージに姿を現し、OPNの過去作から2曲を披露。『Garden of Delete』からの細やかなエレクトロニカ「Child Of Rage」、少年合唱団の歌声をグリッチ色で染め上げた壮大なマシーンコーラスとでもいうべき『R Plus Seven』収録の「Chrome Country」は、今回のライヴの世界観にはよく合致した素晴らしい過去作からの選曲に思えた。


ポストモダン・バロックに酔いしれた一夜


『Age of』を中心とした「M.Y.R.I.A.D.」は、「ECCO」、「HARVEST」、「EXCESS」、「BONDAGE」の「人工知能が夢想する人類の4つの時代」をテーマとして掲げており、その中で人間がその4つの時代を巡るといった内容だ。時に物憂げで静かな場面もあれば、人間味のある温かみ、また人間らしい欲望や狂気によるまどろみのようなものが、今回の来日公演でも会場でその音楽やビジュアルの表現に耳や目を向けているとヒシヒシと伝わってきた。またそのライヴパフォーマンスを通じてOPNが志向し、形にするものが極めて先鋭的なものだと改めて再認識したファンは多いことだろう。


その点で言えば、今回の来日公演は、ポストモダンの最前線をひた走る、現代音楽の先駆者が標榜する「ポストモダン・バロック」という世界観に存分に酔いしれることができた貴重な一夜だった。






▶︎Oneohtrix Point Never「M.Y.R.I.A.D.」 at O-EAST セットリスト


Age Of

Still Stuff

RayCats

Eli Keszler Solo Interlude 

Toys 2

Babylon

Manifold

Kelly Moran Solo Interlude

We'll Take It

The Station

Love In The Age of Lexapro

ADR(Aaron David Ross) Solo Interlude 

Warning

Same

Black Snow 

Last Know Image of a Song

interlude

never ending happening


アンコール:

Child of Rage

Chrome Country

▶︎リリース情報:

Oneohtrix Point Never  - 『Age Of』

国内盤CD BRC-570 定価:¥2,200+税


国内盤CD+Tシャツ BRC-570T

定価:¥5,500+税

info: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9576



written by Jun Fukunaga


photo: Masanori Naruse



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