「今の自分を表現できる音楽をとことん追求した」期待のシンガー、西恵利香が開く新境地

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ソロシンガーとして音楽活動を重ね、その歌声はRHYMESTER・宇多丸氏も絶賛したという期待のアーティスト、西恵利香がblock.fm初登場。最新アルバム『Love Me』はDATS・MONJOEやPARKGOLF、Shin Sakiuraら気鋭のトラックメイカーを迎え、“自由に歌って踊って楽しめる”作品に仕上がったという。作詞・作曲にも携わり、30歳という節目を迎えた今の自分を存分に表現したというアルバム制作についてたっぷりと語ってもらった。
西恵利香
2014年からソロシンガーとしての活動を開始。 今までに5枚のミニアルバム、1枚のシングルをコンスタントにリリースし音楽活動を軌道に乗せながら、 マルチなキャラクター性から FM-FUJI「EVENING RUSH」の水曜日レギュラーDJに抜擢されタレントとしても幅広く活動。2017年レーベル移籍第一弾配信シングル「LAST SUMMER DRESS/AFFOGATO」をリリース。 後に2018年ネクストブレイクアーティストとしてAWAに取り上げられた。同年12月フレンズひろせ、G.RINA、DÉ DÉ MOUSE らを作家に迎えた1stフルアルバム「soirée」をリリー スし自身初のワンマンライブを渋谷WWWで開催。 その勢い冷めぬまま2018年5月、初の東名阪ツアーを開催。ツアーを終えた7月には配信+会場限定EP「DAY」をリリース。 ディープなトラックに相反するポップスメロディを掛け合わせた楽曲が小出祐介氏(Base Ball Bear)、宇多丸氏(RHYMESTER) など著名人からも好評の声が上がった。ライブ活動は全国展開、下北沢SOUND CRUISING、YATSUI FESTIVAL などの大型イベントにもラインナップし、正統派で圧倒的な歌唱力とフレキシブルなステージでその空間を彩る。 近年では冨田ラボ、tofubeatsなどの楽曲へのコーラス参加やMV、WEBCMなどへのモデル出演でも起用されるなど各所からの信頼も厚い。そんな彼女がソロ5周年となる2019年10月、2nd Full ALBUM「Love Me」を完成。
「ソロとして5年。今が一番自由で楽しい。」
ーまずは簡単に今までの活動を振り返っていただきたいのですが。最初に音楽を始められたきっかけは何だったんですか?
西恵利香(以下、N):小さい頃からピアノを習っていて、歌うことも好きだったんです。学生時代も音楽ばかりやっていて。高校生の時にスカウトされたんですけど、それは蹴って別のオーディションに自分で応募して芸能界に入りました。小さい頃から漠然と「歌が歌えたらいいなぁ」と思っていたんですが、はっきりと「音楽をやろう」って思い始めたのはこの世界に入ってからですね。
ー昔から聴いてるアーティストや好きな音楽はありますか?
N:母の影響で子供のころから竹内まりやさんが好きです。子供ながらにすごい歌詞を書く人だなって思ってました。
ー小さい頃から竹内まりやさんの歌詞の意味を考えて聴いていたとは。
N:なんとなくですけど、すごいことを歌う人だと思って聴いてましたね。大人になって改めて歌詞の意味を考えながら聴くとさらにすごいなって思いますし。もともと読書が好きだったこともあって、昔から歌を聞く時は歌詞を読むのが癖なんです。今またシティポップブームで、竹内まりやさんの曲が海外の方にも聴かれてるってすごいですよね。
ー最近ではどんなものを聴かれますか?
N:最近は聴く音楽が以前とはガラッと変わりましたね。小さい頃は洋楽にあまり親しみがなかったんですけど、2年前ぐらいからいろんな音楽を聴き初めて、海外のアーティストの曲もよく聴いてます。もともと山下達郎さんとかまりやさんの流れでちょっとファンクっぽいものが好きで、Brand New Heaviesなんかを聴いてたんですが、最近はR&Bとかヒップホップ。特に韓国のアーティストのヒップホップとかR&Bがすごく好き。あとは今作を作るうえでとても参考にしたんですけど、Ariana GrandeとかUSのR&Bも聴くし、ハウスやディスコっぽい曲も好きですね。
ー聴いてる音楽がどんどん変わってるんですね。
N:そうなんです。今は自分の周りのアーティストの作品もチェックするし、Spotifyのプレイリストを聴きながら新しいアーティストも探します。いろんな音楽を聴きながら、自分がかっこいいと思うものを自分の音楽にどう反映させるかっていうのも考えちゃいますね。自分は何を一番やりたくて、どんな音を入れたらかっこよくなるだろうって、勉強しながら聴いてる感じです。今すごくいろんなことを吸収してる時期かもしれない。
ー新しい音楽と出会うのはやっぱりSpotifyが多いですか?
N:はい。私の今回のアルバムもいろんなプレイリストに入れていただいたんですけど、そのプレイリストを聴いてまた新しい音楽を発見したりもしました。韓国のアーティストにハマったのもプレイリストがきっかけでしたね。
ーソロとして活動を始めてからの5年間ってどんな時間でした?一言では言うのは難しいと思うんですが。
N:濃い5年間でしたね。振り返るといろいろ経験してきたし。でも実は、今が一番やりたいことをやれて楽しく自由にいられるって感じてるんです。20代後半っていう大切な5年間をソロとしていろんなステージに立ってきて、今年で30歳。今が一番楽しいです。
ーターニングポイントだと感じるのはいつですか?
N:2年前、今のレーベルに移籍したときかな。移籍前の楽曲が好きだった方からすると今の私が表現してるものは以前と違うし、離れてしまったお客さんもいるんですけど。それでも自分がやりたいことをやるってことを選んだので。自由にやれるようになった分大変なこともあるんですが、自分がやりたいことを実現できてるのは楽しいです。やりたいことを聞いてもらえる環境にもいるので、それはありがたいなと思いますね。
ーなるほど。西さんは歌唱力が高いと言われることも多いので、そこもファンの方からすると魅力のひとつなのではと思うのですが。
N:“歌が上手い”って言ってもらえることはありがたいんですが、そこに若干のコンプレックスもあって。“歌が上手いお姉さん”ってだけじゃ満足できないなって思うんです。プラス、自分ならではのものがないと。
ー意外です。ライブも定期的にずっとやられてきたんですよね。
N:はい。近いシーンのアーティストとやる対バンも、全く知らない方との対バンも。いろんなライブに出るようにしていて、少しでも刺さってくれる人がいたらいいなっていう思いで歌ってます。今はいろんな音楽の聴き方ができるじゃないですか。CDでもレコードでもサブスクでも聴ける。それを飛び出して“生で聞きたい”って思ってお金を払って来てくれる人たちなので、その人たちにちゃんと生の声で届けたいっていう気持ちがありますね。最近ではライブで「この曲はこういう曲です」とか、「こういう思いでつくりました」っていうのをちゃんと伝えるようにしてて。音だけじゃ伝わりきらないものは自分から伝えていきたいなと。
ーご本人からそういうお話があれば、音楽的に変化してたとしても、ファンの方は一緒に進んでいきやすいですね。
N:そうやってついて来てくれるファンの方もたくさんいるので、それはありがたいです。過去の曲が好きだった人にも、ふと思い出したときに今の私の作品を聴いてもらえたらいいなぁとは思ってますね。
「今、私がやりたいことをすべて詰め込んだアルバム。」
ーでは今回のアルバム『Love Me』について聞かせてください。前作のアルバム『soirée』から、さらにクラブライクになった印象を受けました。
N:前作のアルバムもダンスミュージックを意識した音だったので『soirée』っていうタイトルにしたんですよね。夜のパーティーっていうイメージで作ったので、夜中にクラブとかで踊ってもらえたらいいなぁと思いながら。今回、その部分がさらにジャンルライクに深く追求できたかなと思ってます。
ー今回のアルバムのコンセプトは「今をありのままに愛して欲しい」ということですが、どうしてこの意味をもたせたんですか?
N:理由はいくつかあるんですけど。音楽性がガラッと変わっちゃってるので、出す前にすごくビビってたんです(笑)。どういう風に聴かれるんだろう、昔からのリスナーはどう思うんだろうって。でもこれが間違いなく今の私がやりたいことだったので、どうかそのまま、今の私を聴いて欲しいという意味で『Love Me』とつけました。あと、30歳になったことも大きかったですね。周りからは「30歳になったら楽になるよ」って言われてたんですけど、私は結構重く考えちゃって。小さい頃に想像してた大人と全然違うし、私はこの先どうなるんだろうって悩みました。そんなときにこのアルバムを作り始めて。歌詞も自分で書いたんですけど、自分で自分を励ましたいと思って書きました。普段はすごくマイナス思考なので、せめて歌では自分を励ましてあげよう。そういう意味での『Love Me』もあります。
ー“自分で自分を愛そう”っていう気持ちもこもってたんですね。
N:そうですね。自分が一番自分を褒めてあげないと、人生この先長いから(笑)。自分を励ます意味と、ちょっと欲張りかもしれないですが、他の人からも愛されたいっていう2つの意味です。同年代とかアラサーって言われている女の子たちに届けばいいなと思って作りました。
ーありのままを表現されたということですが、楽曲はピュアな恋愛の曲もあれば、ちょっとドロドロした曲もあるし、前向きな曲もあって、すごく幅が広いなという印象を受けました。
N:「Take it slow」や「Brighter Day」は自分を励ますような曲だし、「BITTER」はちょっと大人の不倫ソング。「Yours」はピュアな恋愛なんだけど、少し重い女の子の歌。ちょうど私ぐらいの年齢って女の子のいろんな面が出てくる年代だろうと思ったので。女の子にはもちろんですが、男性にも聴いてもらったら、女の子はこんな感じで毎日生きてるよってのが伝わるんじゃないかな。
ーダンスミュージック要素が増えているのは西さんのアイデアで?
N:今主に聴いてるジャンルがダンスミュージックなので、私のアイデアです。本当は、歌うよりもラップしたいって思ってるくらい(笑)。でも全然できないから、歌詞を工夫してグルーヴが出るようにしたり、歌いあげるんじゃなくて言葉で気持ちよくなれるようなリズムを作りました。聴いて楽しければ手を叩いてもいいし、歌っても踊ってもいい。そういう風に楽しめるライブの場も作っていきたいですね。ダンスミュージックってそこが原点だと思うから。
ーこのアルバムにはいろんなトラックメイカーの方が参加されてますよね。
N:はい。一番一緒に作ったのは創介(Sosuke Oikawa)ですね。創介はCICADAっていうバンドのキーボーディストだったんですよ。私、もともとCICADAのファンだったんです。彼とは前作から一緒にお仕事させてもらってて、今回はボーカルディレクションも全部お願いしました。今年の夏、暑い中二人でずっとがんばって制作してましたね。
ー「やりたいことを言える」とおっしゃってましたが、お二人の意見は一致しますか?
N:音楽の知識も豊富だし、私のやりたいことをちゃんと理解して汲み取ってくれる人ですね。「オンリーユー」を作ってたときにAriana Grandeの「thank u, next」を聴いて、すごく影響を受けて。それで、コーラスワークやフェイクの感じを「thank u, next」みたいにしたいって相談して一緒につくっていきました。
ー「オンリーユー」にはSIRUPさんの楽曲も手掛けたChocoholicさんも参加されてますよね。
N:Chocoちゃんは「ROMANCE」のアレンジから一緒にやってもらってるんです。女性の作家さんと一緒にやりたいと思って、かっこいい音を作る女性を探した時にChocoちゃんの作品を知って。IMALUさんがLULU Xっていう名義で出してる楽曲はChocoちゃんが携わってるんですよ。それを聴いてめちゃくちゃかっこいいと思って、ぜひ一緒にやりたいってアプローチしました。
ー女性のトラックメイカーさんと一緒に作りたいと思ったのは何か理由があるんですか?
N:私のチームは女性が多いんですよ。現場マネージャー、カメラマンさんやPAさん、照明さんも女性だし。女の子の方が細かいところを気付いてくれたり、ニュアンスが伝えやすいこともあるんですよね。Chocoちゃんもすぐ気づいてくれて、私がやりたいことをちゃんと分かってトラックを送ってくれます。あんまり遠慮しなくていいし、お仕事なんですけどそこを越えて友達のような感覚で作れるのもありがたいですね。この先も女の子のクリエイターとどんどん一緒にやりたいです。
ー他にもMori ZentaroさんとDATSのMONJOEさん、Shin Sakiuraさんも参加されています。
N:Mori ZentaroくんはChocoちゃん経由で繋がりました。「Do Well」を作った人だ!ってなって(笑)。こちらからお願いしました。実は、大阪の方なのでまだ一度もお会いしたことがないんです。データとメッセージのやり取りで完成させたんですが、すごく丁寧な方で楽しかったですね。MONJOEくんも実はまだお会いしてないんですよ。もともとMONJOEくんが作ってる向井太一くんの楽曲とかも好きで聴いてたので、それでお願いして。まさか引き受けてくれるとは思ってなかったので、すごく嬉しかったですね。
ーご自身で聴いてる音楽から繋がることが多いんですね。
N:そうなんです。気に入った曲は誰が書いてるかとかを調べますね。前作を作った頃からそうしてます。
ーじゃあ、根底のところから西さんの好きな物が詰まってるアルバムなんですね。
N:本当に好きな人とやらせていただけています。いつもダメ元で頼むんですけど、みなさん引き受けてくださって本当ありがたいなと思いますね。
ー「本音」はPARKGOLFさんプロデュース。
N:はい。HONNEっていうバンドが好きで、最初はローマ字のタイトルにしてたんですけど、最終的には漢字にしました(笑)。
ーあの雰囲気の歌詞で、漢字で「本音」ってくるとすごくかっこいいなと思いました。
N:嬉しい!意味ありげなタイトルにしたいと思って、私の本音を歌った曲だったのでそうつけました。
ー歌詞も1曲以外は全部西さんが書かれたんですよね。
N:はい。この量を書くのは初めてだったのでめちゃくちゃ苦労しました。同時に3曲ぐらい書きながら、制作会議でみんなとディスカッションして進めましたね。どうしたらもっと自分のことを伝えられるかなって考えたときに、やっぱり歌うだけじゃなくて制作にも携わったほうがいいなと思って。今回は前作から2年経ってるので、その間に経験したことや思ったことを自分の言葉で伝えたいと思って書きました。
ー韻を踏んでる部分やリズムに乗せてるような部分もありますが、そういったところも苦労されましたか?
N:心地良く聴けるようにちょっとラップっぽくしたいと思って、韻を踏んだ歌詞にしたところも結構ありますね。リズムに乗せるのはかなり意識しつつ、ちゃんと意味がある物語になってる詞を書くようにしたんですけど、かなり苦労しました。
ー歌い方も変わりました?
N:歌い上げるよりもウィスパーみたいな感じで歌うことが増えました。力を抜いて聴いてもらえるように、私も力を抜いて歌うようになりました。無理なく出せる音域で、裏声を多く使って。
ー特に思い入れのある曲を選ぶとしたらどの曲でしょう?
N:思い入れがあるのは「5AM」かな。Shin Sakiuraくんと作ったんですけど、最初は全然別の曲だったんですよ。スムースなFuture Bassっぽい感じだったんですけど、仮歌を入れたときにShinくんが「もっと違う雰囲気のトラックの方が合う気がする」って言ってくれて。その後送られてきたのが「5AM」のトラックなんです。結果めちゃくちゃ良い曲になりました。すごく長い期間取り組んだ楽曲だったので、思い入れがありますね。最初の曲もすごくかっこよかったので、いつか機会があれば出せたらいいな。
ーその「5AM」と「Brighter Day」は西さんが作曲にも関わったんですよね。
N:はい。初めての試みだったので、悩みながら作りました。事務所でマイクを抱えて、トラックを何度も流しながら入れていった感じですね。
ー「Brighter Day」は2stepですけど、2stepを歌うのは初めてですか?
N:初めてです。制作過程でいうと「Brighter Day」は一番最後に録った曲で、めちゃくちゃ苦労しました。決まってからは早かったんですけど、完成のメロディーに至るまで、けっこういろいろと考えて。出来上がったときは達成感がすごかったですね。
ーご自身が携わった部分が増えている分、出来上がったときの喜びも違いますよね。
N:感慨深いです。2年間何やってたんだろうと思うぐらい、数ヶ月に制作がぎゅっと詰まってたので。今、次回作の話も出てるんですけど、全然手を付けられてないんです。もう出し切っちゃった分、次はどうしようって(笑)。実はデモがいっぱいあるので、少しづつ取り組んでいけたらと思いますね。今回の『Love Me』を基準に、ここからまた新しく作っていけたらいいな。
ーあとは、ワンマンツアーがもうすぐ始まりますね。
N:はい。福岡と大阪と東京でやるんですけど、福岡と大阪は初めてのワンマン。『Love Me』と前作の『soirée』の曲を歌おうと思ってるので、この5年間をまとめたようなセットになりそうです。それぞれの会場でバンド形態も変えるんですけど、福岡はギターと私の二人、大阪はドラムじゃなくてPadでリズムを出してもらって、東京はフルバンド。どの公演に来てもらっても楽しめるようなってます。
ー想いがたくさんこもったステージになりそうですね!最後に、30歳という節目を迎えて、これからの活動イメージを教えて下さい。
N:目の前のことに精一杯で先のことはあまり考えられてないんですけど、音楽だけは続けていきたいです。続けることが一番難しいと思ってるので。30代でこれからもいろんな変化があると思うんですが、歌だけは続けたいなって思ってます。音楽シーンも自分の気持ちも変化していくと思うので、常にそのときの自分を音楽に反映していきたいな。
【リリース情報】
西恵利香『Love Me』
2019.10 .02 wed. Release
¥2500+tax in
PDCR-014
1.Intro~You&I~
2.BITTER
3.オンリーユー
4.Take it slow
5.Palette
6.本音
7.Yours
8.ROMANCE
9.Brighter Day
10.5AM
【ライブ情報】
西恵利香 5th anniversary Oneman Tour -Love Me-
11.29 福岡bar brick
12.07 大阪 心斎橋CONPASS
12.10 東京 渋谷WWW
Ticket:http://eplus.jp/nishierika/
INFOMATION
Official HP:http://www.nishierika.com
Twitter:https://twitter.com/nishierika_111
Instagram:https://www.instagram.com/nishierika_0111
written by Moemi