NellyからTWICEまで──「Aaaah!」サンプルの魅力を考察

TWICE「FANCY」に登場する印象的な声ネタ「Aaaah!」の元ネタを探る
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2019.06.10 08:00

英米のクラブ/ダンス・ヒットをクラシックからトレンドまで巧みに、そしてかなり直接的に取り入れてクオリティの高いポップスに誂える。その手腕とプロダクトのセンスはK-POPの音楽的魅力のひとつだ。


TWICE(トゥワイス)の新曲「FANCY」を一聴して多くのリスナーが思うのが、印象的なヴォイス・サンプル(0:05)が、2002年にリリースされたNelly(ネリー)とKelly Rowland(ケリー・ローランド)によるR&Bクラシック「Dillenma」のサンプリングである点だろう。



Nellyの代表曲、いや2000年代を代表するR&Bヒット・チューンでもあり、日本でも当時この曲を着メロにしていたという人も多いのではないか。(Nellyって誰?着メロって何?という世代の人は、先日リリースされたRIRI(リリ)とJp The Wavy(ジェイピー・ザ・ウェイビー)による日本語カバーバージョンから聴いてみては……)







印象的な“Aaaah!” 元々はプリセット


実はこのヴォイス・サンプル、Nelly(と、そのプロダクション)が制作した音ではなく、もともとはRolandのシンセサイザーのプリセット、標準装備されたサウンドをそのまま使っているのだ。


95年に発売されたRoland M-DC1は正確にはシンセサイザーではなく、シンセサイザーに新たに音色/サンプルを追加するための音源モジュールで、ブレイクビーツやTR-909などの音色、シンセサイザーによるリフや効果音など、ダンス・ミュージックの制作に便利なループやワンショットの音源を多数収録したマシン。件のボイス・サンプルは169番「Aaaah!」というプリセット名で収録されている。(下記動画の56秒あたりから聴ける)



プリセットの音をそのまま使ってしまう大胆さは、ダンス・ミュージックにおいて珍しくないが(その最たる例が、カシオトーンのベース音をそのまま流用したスレンテン・リディムだろう)、このサウンドに目をつけたNellyの慧眼は流石と言えるだろう。


『Dilemma』の大ヒットに伴って、この「Aaaah!」もまた多くのプロデューサーが使い始めた(なにせプリセットなので、高いライセンス料を払わずとも機材さえ買えばヒット曲と同じサウンドを使えるのだから……という理由が推測できる)。


映画におけるウィルヘルム・スクリームのように、定番化したサンプルはもはやオリジナルの記名性を失い共有財産のように流通するものだが、ダンス・ミュージックにおけるこのような声ネタは、一種のトリビア・クイズめいてマニアックな楽しみがある。以下、この「Aaaah!」ヴォイスをサンプリングしたヒップホップ/R&Bの例をいくつかを紹介するので、是非この他にもこのサンプルを使った曲がないか探してみて欲しい。






Written by KOTETSU(STUDIO MAV/ピクニックディスコ)


image source:https://www.youtube.com/watch?v=kOHB85vDuow



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