「プロデューサーたちは常に新しいものを生み出そうとしている」Mydが語るフレンチエレクトロの最前線

【インタビュー】王道のエレクトロからよりフロアフィールなハウスへ。Mydのサウンドの変遷や現在のシーンについて話を聞いた。
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2019.11.18 03:00

キャリア初期にはフレンチエレクトロの重要人物であるPara OneとSurkinが設立したレーベル「Marble」に所属。その後、Brodinskiが主宰する「Bromance Records」では看板ユニット、Club Chevalのメンバーとして活躍し、現在は、Justiceらが所属するフレンチエレクトロの総本山「Ed Banger」の主軸を担うプロデューサー/DJとして世界を飛び回るMydが先月、東京・SOUND MUSEUM VISIONにて開催されているイベント「EDGE HOUSE」出演のために来日した。


王道のフレンチエレクトロのほか、インディーポップを経由した歌モノエレクトロハウスといったサウンドでこれまでクラブミュージックファンを魅了してきたMydだが、今年リリースした最新EP『Superdiscoteca』では、フレンチタッチのお家芸ともいえるディスコをベースによりフロアフィールでテッキーな“ハウス”を表現。これまでのフレンチエレクトロを発展進化させるような新たなアプローチにも果敢に挑んでみせたことは記憶に新しい。


そんな彼に自身のサウンドの変遷や現在のフレンチエレクトロシーンの最前線についてインタビューを行った。





ー今回の来日ではポストEDMとして人気になりつつある“テックハウス2.0”とでもいうべき音楽を東京で発信するパーティ「EDGE HOUSE」に出演されましたが、実際に出演してみてどうでしたか? 


Myd:東京に来れたのは僕がすごく信頼している友人のDJ DARUMAのおかげなんだ。自分がプレイしたい音楽をプレイできたよ。EDMというワードが出てきたけど、そういった音楽は僕の音楽スタイルではないし、自分の原点はやっぱりハウスなんだ。そもそもハウスというものはレジェンダリーなものでグルーヴを重視する音楽だし、そういう意味ではパーティ自体の雰囲気もすごく良かったよ。


ー「Marble」に所属していたキャリア初期は王道のフレンチエレクトロ、「Bromance」所属期にはラッパーをフィーチャーしたムーンバートン「No Bullshit」、そしてEd Bangerに移籍してからは「The Sun」、「Muchas」といった曲などインディー・エレクトロポップ色を強めた曲もリリースするなど、様々なスタイルで音楽を表現してきました。今年リリースした最新EP『Superdiscoteca』ではさらに音楽性が発展し、トレンドの新しいテックハウスにも通じるフロアフィールな作品になっていると思います。こういったスタイルの作品をリリースした理由は?


Myd:特にひとつのスタイルにこだわっているというわけではなく、自分がやりたい音楽をその時々でやっているという感じなんだ。リスナーとしてはたまに混乱することもあるかもしれない。だけど、そのコアの部分には自分の音楽があるからスタイルは違えど、メローな音楽が基調だということには変わりないよ。仮に昔の曲と今の曲をDJミックス的につなげてもテイスト自体は同じだし、違和感を感じることは少ないと思う。細かいディティールではなく全体的なヴァイヴスの部分を重要視しているんだ。これまでのキャリアもあるし、現在はどんな音楽を作ったとしても僕のファンはきっと気に入ってくれるはず。そういうことに気づくことができたのはすごく良かったよ。




ー今、フランスのエレクトロシーンのプロデューサーはエレクトロハウスだけでなく、ヒップホップのプロデューサーとしての側面も目立ってきています。あなたもメンバーの1人でもあるClub ChevalやBromance Records周辺のSam Tibaはヒップホップにも造詣が深く実際に日本のラッパー、KOHHの「Paris」リミックスを発表していたりします。フレンチエレクトロとヒップホップがクロスオーバーする関係性は過去にはTeki LatexらのTTCの音楽にもみられたかと思いますが、こういった状況をどのように捉えられていますか?


Myd:フランスはエレクトロニックミュージックが、レジェンダリーなものになっている特別な国なんだ。だからインディペンデントの音楽シーンは人気だし、その界隈のプロデューサーたちは常に新しい音楽を生み出すことに挑戦しているんだよ。例えばJusticeなんかはジャンル同士をクロスオーバーさせている代表的な存在だし、そういった土壌が僕らのシーンにはしっかりと存在している。ラッパーとのコラボにしても両者がお互いにそれぞれの音楽が好きだということがまず前提にあるし、今、ヒップホップは世界中で人気がある音楽ジャンルのひとつだ。それにクリエイティヴなジャンルだと思うし、音楽プロデューサーとして気になっているのに、頑なにそういった音楽を作らないというのはバカげた話だと思うんだ。


ーフランスのダンスミュージックというと日本ではDaft PunkやEd Banger周辺のフレンチエレクトロのイメージが強いです。あなたが拠点とするパリのクラブシーンは多様なジャンルの音楽が聴けるかと思いますが、最近あなた自身がこれはパリっぽいと思うようなローカルな盛り上がりを見せているシーンはありますか? 


Myd:パリではテクノシーンが大きいかな。もう閉店したけど「Club Concrete」のような船上が舞台になったパーティは、現地の若い力のシンボルだったし、そこは多くのDJたちがプレイしたい場所になっていたね。ほかにもエキセントリックな「Very Bad」というクラブもあれば、その一方でオープンなハウスパーティもあるね。


パリでも去年はテクノが流行っていた印象があるけど、今はもっとトレンドが広がっている感じがするよ。パリのシーンは狭いのでみんな近い間柄というか、スタジオに行くと色々なジャンルのプロデューサーやミュージシャンを見かけるんだ。そういう環境だからすぐにジャンルのクロスオーバーが生まれてくるんだよ。




ー今の若いフランスのプロデューサーはどんな音楽に影響を受けてDJやプロデューサー活動を始めていると思いますか? ちなみにあなたの場合、これまで影響を受けたのはどんなアーティストですか?


Myd:最近の若いプロデューサーたちはひとつのジャンルの枠にハマりたいと思う人は少ない印象があるね。そういうことはあまり気にしていないし、彼らはすでにiPhoneでも良い音楽が作れることは知っているから高価な機材やそういったものがあるスタジオで音楽制作ができるひと昔前の“プロ”のような存在になりたいとも思わないんだ。


影響の面でいうと僕は10代の頃からUKのエレクトロニックミュージックに影響を受けている。フランスのダンスミュージックの肝はサンプリングにあるんだけど、UKの曲からサンプリングされていることも多いしね。僕がDJを始めたのは16歳の頃で、その時に買ったFatboy Slimの「Live On Brighton Beach : Big Beach Boutique」ライヴDVDには大きな影響を受けたよ。


ー近年の作品では『ALL INCLUSIVE REMIXES』(2018年)にフランスのクラブシーンで長年活躍してきたCassiusをはじめ、Canblaster、Moodoidなどフランスの人気アーティストがリミキサーとして参加しています。その中でMoophによる「The Sun」の8bitカバーは、ほかとはまた違ったスタイルで興味深いです。このアーティストはフランスのクラブミュージックでは、Vladimir Cauchemar「Aulos」、Uffie「Sadmoney」もカバーしていますが、なぜリミキサーに抜擢したのですか?


Myd:Moophに関しては最初、Twitterで見つけたんだ。『ALL INCLUSIVE REMIXES』の制作の話が持ち上がる前から彼の音楽が好きだったし、リミキサーに起用したいとBusy P(Ed Bangerのレーベルオーナー)に伝えてから、彼に連絡したよ。でも、彼から連絡はなかなか来なかった。そもそも彼はブートレグとはいえ、僕の曲をリミックスしてくれていたくらいだし、おそらくファンの1人だと思うんだけどマスター音源制作作業の2週間前にようやく返事がきたんだ。しかも「まあ、収録してもいいよ」くらいで反応としてはちょっと素っ気ない感じだったよ(笑)。僕だったらそういうことがあったらすごくうれしいと思うんだけど…。そのあたりはやっぱり今の若者という印象だね。




ーJusticeのアルバム『Woman』以降、今年のGesaffelstein『Hyperion』なども含め、近年EDMに人気を奪われていたエレクトロにも再びスポットライトが当たるようになってきました。今後、フレンチエレクトロはどういった方向に進んでいくと思いますか? また、今フレンチエレクトロで注目すべきプロデューサーやレーベルについて教えてもらえますか?


Myd:そうだね。僕自身は今後、どういった方向に進むかは明確にはわからない。でも少なくとも僕らのようなタイプにとって、近年の過剰なEDMブームが落ち着きだしたことは良いことだと思うよ。率直にいって、EDMはあまりにも商売っ気が強すぎるところがあった。それに魅力を感じているアーティストだってもちろんいるけど、その逆もまたしかりなんだ。例えば、GesaffelsteinだってThe Weekndのようなビッグネームとコラボしているけど、オリジナル作品では自分らしい作風を貫いているよね?


僕に限っていえば、インディーポップのテイストも取り入れた音楽を作っているだけにあまりにEDMがメインストリームすぎるとツアー中にロングセットを披露したところで、すぐにフロアが爆発するような展開がやってくるEDM的な音楽を期待するオーディエンスとはあまり噛み合うとはいえない部分は少なからずあるね。


それとこれから注目してほしいフレンチエレクトロのアーティストの名前を挙げるとするならやっぱりSam Tibaには注目してほしいかな。これからリリースされる彼の新作はすごく良いよ。あとレーベルでいえば、パリのCracki Records。ここはフランスのクラブミュージックが好きなら注目しておくべきレーベルだと思うよ。





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■応募方法

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■応募期間

2019年11月18日12:00〜2019年11月30日23:59


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Myd


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Interview & written by Jun Fukunaga

Photo by Ki Yuu





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