Cornelius、Kyoka、Sapphire Slowsの新作に湧いた、デジタルアート☓音楽の祭典「MUTEK.JP 2018」 レポート

世界最先端のデジタルアートと電子音楽の祭典の日本版2日目を振り返る
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2018.11.07 08:00

11月2日(金)に世界最先端のデジタルアートと電子音楽の祭典「MUTEK」の日本版である「MUTEK.JP 2018」のDay2が行われた。




今年は11月1日(木)から東京都内の渋谷WWW、WWW X、代官山UNIT、日本科学未来館など複数の会場で行われたが、今回、筆者は、2日目に日本科学未来館とWWW、WWW Xで行われたプログラムに参加。その様子を振り返っていきたい。

MUTEK.JP 2018 Eveningプログラム


当日のEveningプログラムでまず目を引いたのが、国内外の人気レーベルからリリースを重ね、2015年にパリで開催されたRed Bull Music Academy卒業生で、その翌年にはバルセロナで開催されたSonarにも出演、最近も海外ツアーを成功させたSapphire Slowsだ。アトモスフィアリックなトラックとヴォーカルが、彼女がパフォーマンスを行なった日本科学未来館のメインステージである「Nocturne 1」でよく映えていた。



Photo: ©MUTEK Japan


また今回のMUTEK.JP 2018では、自身のライヴ以外に、Dayプログラムとして行われたパネルディスカッション「東アジアのエレクトロニック・ミュージック・シーンにおける多様性」に登壇したほか、翌日のAbletonが主催した「Creative Lab by Ableton」でもトラック制作に関するレクチャーを行なっていた。





実は昨年もそれまで自分があまりよく知らなかったアーティストに出会えたため、今年もそういった新たな発見に期待していたわけだが、この日の新たな発見は7階「Play 1」に出演していたSynth Sistersだ。このユニットは大阪を拠点にノイズ・シーンとクラブ・シーンをまたにかけ活躍するフィメイル・デュオ「CROSSBRED」のRIE LAMBDOLLとMAYUKoによる変名ユニットとのことで、当日はエクスペリメンタルなシンセが非常に瞑想的で深くたゆたうような音が心地よく、映像を担当していた100LDKとのコラボレーションもその雰囲気にマッチしていた。



Photo: ©MUTEK Japan


「Nocturne 1」のヘッドライナーとして登場したのが9月に最新アルバム『Ripple Waves』をリリースしたCornelius。前作『Mellow Waves』からは「いつか/どこか」「あなたがいるなら」など人気曲が披露されたほか、過去のアルバム『Point』から「Drop」、「Point of View Point」、さらに「Another View Point」なども披露。映像とリンクするバンド演奏が非常にダイナミックでアーティーだった。


Photo: ©MUTEK Japan


また「Another View Point」の映像は、最近のテレビ番組やニュースなど時事ネタを絡めたシュールなものになっていたのも印象的。音にあわせてサブリミナル的に登場する芸能人や”時の人”を何人も確認することができた。そんなライヴでは、先月好評のうちに幕を閉じた企画展「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」のために書き下ろされた『Audio Architecture』も披露されるなど、ファンにとっては非常に満足度が高いものになったことだろう。さらにファンの間ではおなじみのライブ前にInstagramで公開する恒例の往年の有名バンドのオマージュ写真というものがあるのだが、今回はThe Crampsを模したCorneliusバンドの姿が公開されていた。





そのCorneliusの裏では、硬質なインダストリアルサウンドで人気のKyokaが「Play 1」でライヴを披露。有機的だったCorneliusとは対称的にマシーンライクなテッキーなビートやノイズ、時に聴こえる暴力的な低音などに心奪われた。ちなみに彼女もまたMUTEK.JP 2018では、ライヴ以外にDayプログラムにも出演。インタビュー企画も行われていた(別日程11月3日)。



Photo: ©MUTEK Japan


MUTEK.JP 2018 Nightプログラム


そして、この日の科学未来館でのプログラムを終え、Nightプログラムが行われた渋谷WWW、WWW Xに移動。こちらでの「Nocturne 2」では、バルセロナを拠点にするFilastineとインドネシアを拠点にするNovaによるユニットFilastine & Novaの「Drapetomania」が非常に印象的だった。エレクトロニクスによるドープな表現もさることながら、最終盤に2人が打楽器を持って、客席に飛び出し、スーツケースから出した大きな布を観客たちに持たせて、即興的に作り出したテントのような”空間”の下でのパフォーマンスは大いに観客を盛り上げた。


Photo: Jun Fukunaga



日本の初音ミクとのコラボ経験もあるLaurel Haloは、今回はDJセットながら、深いテクノを軸にしたプレイを披露。前半のストイックなテクノサウンドから徐々にフロアを温めながら盛り上げていくプレイは陶酔感が強く、非常にダンサブルだった。そんな彼女は、12月に再び東京と京都にて、9月に行われたOneohtrix Point Neverのライヴメンバーとして来日していたドラマー/パーカッショニストEli Keszlerとともに来日し、ライヴを行うことが決定している。今回のDJセットとはまた違った一面を見ることができそうなのでそちらにも期待だ。


デジタルクリエイティブ業界における「多様性」に関するシンポジウム


今年のMUTEK.JPではDayタイムに行われたシンポジウムのDigi Labに代表されるように、デジタルクリエイティブ業界における「多様性」にまつわることが多く取り上げられていたことも印象的だった。特に音楽業界、クラブミュージックシーン界隈では、以前から「男性優先」になっていることが業界の問題点として挙げられている。Digi Labでは、ジェンダー不平、LGBTQ、東アジアのシーンにおける現状などが話合われていたことも非常に印象的だった。



Photo: ©MUTEK Japan


テクノロジーとデジタルアートの最先端に触れられること以外にもそういった業界が抱える問題を議論する最先端の環境を日本でも設けられた点や実際に女性アーティストの活躍が目立っていたことも感慨深い。



written by Jun Fukunaga


Photo: ©MUTEK Japan, Jun Fukunaga




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