【MUTEK.JP 2019レポート】レトロゲームサウンドを爆音で聴く。Yuzo Koshiro & Motohiro Kawashimaによる”ゲーム・レイヴ”

名作ゲーム『ベア・ナックル』の映像と音楽を用いたAVセットではテクノ、ハウスだけでなくガバなどレイヴ要素もあり、レイヴィーな音楽に会場が酔いしれた。
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2019.12.19 06:00

12月12日(木)にSHIBUYA STREAM Hallにて、MUTEK.JP 2019 2日目のプログラムのうちのひとつ、Nocturne 2が行われた。この日、出演したゲーム音楽クリエイターのYuzo Koshiro & Motohiro Kawashimaの2人が披露したライヴセットはまさにゲーム音楽によるレイヴ、”ゲーム・レイヴ”というべきものだった。




ゲーム音楽クリエイターデュオがMUTEK.JP 2019をゲーム音楽でレイヴ化!


90年代に人気を博したセガ・メガドライヴの格闘アクションゲーム『ベア・ナックル(Streets of rage)』シリーズの音楽を手がけた2人によるライヴセットでは、懐かしい同作のビジュアルが映像として映し出され、ゲームファン、とりわけレトロゲームファンにとっては夢のようなAVライヴとなったことだろう。


筆者は、大人になってからはテレビゲームをすることは正直ほとんどないものの、子供の頃はもちろん人並みにゲームに慣れ親しんできた身であり、『ベア・ナックル』に関しても友人宅でワイワイしながら遊んでいたこともあり、なんともいえないノスタルジーを感じた。


しかし、子供の頃は全く知識がなかったため、意識しなかったこのゲームの音楽はデトロイトテクノやシカゴハウスに影響を受けた2人が手がけていることもあり、今になって聴くと非常にダンサブルな要素が強いことに改めて気づく。また日本のテレビゲーム音楽といえば、現在、活躍している国内外の音楽クリエイターたちにも強い影響を与えており、近年はRed Bulll Music Academyによるゲームミュージックのドキュメンタリー・シリーズ『Diggin In The Carts』をきっかけに音楽面でも再評価されていることは、すでに多くの人が知ることだろう。






90年代ライクなシンセサウンドとテクノ、ハウス、ブレイクビーツで会場を盛り上げる


そんな『Diggin In The Carts』をきっかけにYuzo Koshiro & Motohiro Kawashimaのコラボレーションも再始動。海外でも話題を呼んだライヴセットを会場で聴いているとなるほど、これがデトロイトテクノやシカゴハウスに影響を受けた日本のゲームミュージックかと思わされる場面が多々あった。


ライヴセットでは今となってはレトロさが漂う現在の機材の進化によるリッチなサウンドとはまた違った、どことなくチープながらもギラギラした90年代のゲーム音色ライクなシンセの響きが印象的だった。またそういった音色で彩られたテクノやハウス、ブレイクビーツといったダンサブルなビートに身を任せ、曲が進む毎に会場に集まった観客の身体がゆらゆらと揺れだし、踊る姿が増えていく様子が見られた。


そんなセットでは先述のようなデトロイト、シカゴのサウンドを彷彿させるような曲が披露されつつも、強烈なTB-303風アシッドベースラインの曲も会場を沸かせていたが、個人的に最も印象的だったのは、90年代にレイヴ音楽として人気を博し、近年は海外ではGabber Eleganzaや、様々なアーティスト、コレクティヴの活躍によって人気が復権している当時、”ロッテルダム・テクノ”とも称されたガバ曲が効果的に取り入れられた瞬間だ。





ハイライトはスパイシーに歪ませて作ったガバキックが鳴り響く”ガバ”タイム


ガバといえば、ガバキックと呼ばれる強烈なガバキックとそのフレーズが曲を構成する上で重要な要素になっているが、彼らのライヴでも会場にガバキックが効果的に鳴り響き、そのスピード感あるリズムパターンが会場を盛り上げた重大な要因のひとつになっていたように思える。


またこのガバ曲について、Motohiro Kawashimaはライヴ後に自身のTwitterで、”ちなみにガバキックに聞こえるようにPCMの909キックにスパイシーな歪ませFMサウンド重ねてたんですよ。お料理と同じですね”と制作上の裏話を明かすコメントを残している。



さらに今回のライヴではレトロゲームサウンドを自宅のテレビのスピーカーではなく、しっかりとした音響設備がある会場で爆音で聴くことがポイントになっていたが、それについても、”当時何度かこれを爆音で聴いたらいけるなあと思ってたんですが、20年以上かかるとは。いや、今の時代に感謝します”とコメント。



そのことからゲーム音楽ファンだけでなく、作り手にとっても今回のMUTEK.JPでのライヴパフォーマンスはある種の夢の舞台になっていたことが窺い知れる。


その言葉どおり、Yuzo Koshiro & Motohiro Kawashimaの2人がプレイした爆音で聴く、ゲーム音楽経由のテクノ、ハウス、ブレイクビーツ、ガバといったレイヴミュージックはしっかりと機能しており、会場を本稿の冒頭で述べたとおり、”ゲーム・レイヴ”化させていた。




Sakura Tsuruta、Kode9らも会場を沸かす


さらにこの日はアップカミングな音楽プロデューサーのSakura TsurutaがAsagiを伴い、叙情的ながらもヘヴィーな重低音が聴いたベースミュージック由来の独創的なライブセットを披露したことも印象的だった。




加えて、先述の『Diggin In The Carts』以降にコラボレーションを行うようになったアニメビジュアル先駆者の森本晃司とのコラボAVライヴセットを披露したKode9のライヴセットでは、Ken Ishiiの名MV「EXTRA」や3DCGアニメ版『鉄コン筋クリート』など森本の代表作が使用されていた。




一方、Kode9も『Diggin In The Carts Remixes EP』にも収録された日本のゲーム音楽をベーシーにリミックスした音源を軸に会場のサウンドシステムをその超重低音で唸るように鳴らし、観客を大いに盛り上げた。

written by Jun Fukunaga


photo: MUTEK.JP





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