モーリー・ロバートソン、電子音楽との出会いを振り返る。自分の中の「マージナル」な部分を大切に。

【ラジオ書き起こし】モーリーが電子音楽との出会いを振り返る。ハーバード大でイワン・チェレプニン教授から学んだこととは?
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2018.12.28 10:00

毎週木曜日夜9時、block.fmで生配信中される、国際ジャーナリストでDJのモーリー・ロバートソンさんの番組『Morley Robertson Show』。今回の番組ではモーリーさんがハーバード大のイワン・チェレプニン教授から学んだ、メインストリームから離れた「マージナル」な電子音楽について話していました。


毎週モーリー・ロバートソンのラジオが聴ける番組は、こちらをチェック。


「Morley Robertson Show」


生配信:毎週木曜夜 21:00 - 22:30


モーリー:あけましておめでとうございます! はい、一足先に実はこれ、収録日は12月27日なんですけれども、お正月もまたいで流れるアーカイブになりますので、もう先に言っておきました。まだ現時点では私は全然、2019年に入ったという気がせず、クリスマスが過ぎて大晦日直前なんですけども。なんか、全然この忘年会とかをする、そういう気分にはなれず。繁華街で忘年会の一群の人たちはワーッ!って。しかも1年の最後だっていうことでハメを外して騒いだり。結構大声でプライバシーがバレるような話をしてにもかかわらず、そこを全然「あれー、うるさいな……」っていう感じでリュックとかを持ってそこをサーッと抜けている自分なんですね。みなさんと違うカレンダーで生きている、もう自分だけの世界にダイブ!



で、とは言いつつも世間と接点を持って仕事をし続けているので、一般の幸せを目指してる人たちと、自分が自分の中だけで目指している幸せっていうのはもう全然乖離している状態で。なんか時々ね、共産系の中で生きている気持ちだなって思うんですよ。ポエット(詩人)が……ソルジェニーツィンですよ。いや、もう『収容所群島』でいいわ。そういう中で、ソ連の時代は政治犯っていうのを「政治を弾圧している」っていうことを直接言うと国民が萎縮するんで、「精神が異常なものを隔離しています」という建前で、政治犯をまとめて精神療養施設みたいなところに、本当に心の病気を病んでいる人と一緒に隔離していたっていう時期があったらしいんですよね。


で、そういう中で、とにかく何か適当に病名をつけられて。要は国家にとって邪魔な存在の人たちを表世界から抹消しなくてはいけないので。その人にもう適当に割り振った病名を当てて、しかるべき……「もうしません」って言うまで隔離しておく、投獄するっていう、そういうソ連の時代に結局、そこに入りたくない人。毅然と西側のスタンダードで「共産主義っていうのは独裁で良くないことだ」って言うと、言った途端に終わりですから。言えずに、なんか間接話法で表現をするっていうのがあったんですね。


ですからたとえば、よく言われたのはソ連の映画を作る時っていうのは笑いが許されない。直接、スターリンであったりとかフルシチョフとか、そういうのいちばん上の人たちを小馬鹿にした演出ができないので何をするか?っていうと、代わりに不条理劇をやったらしいんですよ。で、要はどう考えても全く繋がらないセリフだったりむちゃくちゃな状況だったり、もう馬鹿げているようなことをあえて演じるっていうか。たとえば扉を開けるとなぜか全然違う世界に抜けるとかを、そこのSFとかそういう説明もなしに、いきなりやる。


そして、あの「話が繋がってないじゃん」みたいなことをやって、時々モノローグでですね、えらい異常に長くて。「あえて退屈を目指してるのかな?」っていうぐらいのセリフをずーっと、哲学的なことを言い始めるんですよ。で、それがまた古代のソビエトの革命の前の時代の名言だったりとか。そうやってとにかく、検閲をする側は「映画のこのシーンをカットしなさい」っていうことで、ちょっとでも「これは政治的すぎる」とか「ここは感情の起伏が激しいからダメ」とかっていう風にどんどん切られてくんで。最初から、もうどこを切っていいかわからないようにむちゃくちゃにやるっていう、一種の不条理論法というのかな? そういう戦略っていうのがあって。


ハーバード大で、電子音楽と出会う


その時代のソ連の映画っていうのは結構私、ハーバードで勉強してたんです。映像学科に入った時に。自分の詳しいキャリアなんて別にね、誰も興味を持たないけども、ちょっと30秒我慢して聞いてもらうと……私は日本の高校を出て、東大に入ったんですけど。まあみんなが(受験で)燃え尽きて気が抜けたようになっていて。自分も燃え尽きを感じたので、なんかその延長のお勉強はもう二度とやりたくない!っていうんで、早々に東大を休学して。で、実際に東大を退学したのはね、なんかね留年の費用が安かったので、それを毎年親に納めさせて。


結局大学3年までは正式に東大を退学していないんだよね。だから1学期だけ行って、2学期に1学期の試験を夏休み明けに受けなくちゃいけないんで、その勉強しなかったからタイミングよく東大を逃げてハーバードに行って。だから何も宿題をしないまま、学費だけを2年分余計に納めて。最後の最後に教務課から「さすがにいい加減にしてくれ」って手紙が来たんで。書面で、アメリカに。だから「わかりました。退学します」って言って。そういうことでこっちではモラトリアムをやりつつ、こっちではハーバードにもう正式に入学をしているんですよ。


それで、そこで1年間は普通に何をやっていいのかわからないから一生懸命勉強して、英語の生活に追いついたよね。ずっと日本語で生活をしていたんで。で、それはあったんだけど、要は音楽をやったんだけど音楽は普通にやってたんですよ。3歳の頃からピアノを弾いていて。だって先輩にヨーヨー・マがいるような学部にいたんですよ。だから「みんな、ヨーヨー・マのようになれ」みたいに。先生たちも「私はヨーヨー・マを教えていたことがあるのよ」とかキラキラ話すもんだから、超芸能ミーハーみたいに。ねえ。「このクラスから吉川晃司くんが出たんだ」とか「ここからSMAPのメンバーが出たんだ」っていうぐらいに完全にミーハーになるんですよ。


それを聞きながら「ああ、でも俺は3歳の頃からバイオリンとかチェロやっていないし、どうしよう? 音楽をやりたいんだけど……」みたいにすまなそうにやっていたんですね。本当にすまなそうにオタマジャクシを五線譜で見ていたんだけど。その1学期か2学期分の努力を全くフイにする出会いがあったんですよ。それが何か?っていうと、それは電子音楽なんですね。ロシアの宮廷音楽家の家系を受け継ぐイワン・チェレプニンというすごい長い名前の人がいて。そのチェレプニンのお父さん(アレクサンドル・チェレプニン)は戦前の日本にやって来て、伊福部昭の先生だったっていうのはこのblock.fmの私のプロフィールにも書いてあります。


それもまた全然面白い話なんだけど、要はすごくラディカルだったんですよ。もう1学期目というか、スタジオのある電子音楽録音スタジオ……このいまのblock.fmのスタジオと比べても本当にお粗末なアナログのテープレコーダーがいっぱいあるような場所だったんだけどね。そこにはモジュラーシンセとかがあって。で、そこに行くと、もう頭の中がおかしくなってくような、音楽もそのチェレプニンのお父さんだかおじいさんだかが、ロシア帝国の隅々まで行って。グルジアとかコーカサスとか、いまはチェチェンとか問題になっているじゃないですか。


ああいう、一応ロシアの文化圏の中にある、あまりにも違う少数民族の音楽をどうしたか?って言うと、採譜したんですね。採譜っていうのは五線譜に書くっていうことなんですけども。たとえば、日本の奄美大島とか、もっと小さな地図に載ってることを一般の日本人が知らないような島の、その島の歌っていうのが実は存続してきたんですね。で、それをそういうクラスの本当に一部……世界で600人しか歌えないような歌を、わざわざ書き留める。ところがですね、ドレミと違うんですよ。平均律で歌ってないんで、微妙に違うので。そこをなんとかいろんな、アノテーションって言ってこう文字で書き足したりしながら、なくならないように保存しておこう。採譜しようっていう動きをチェレプニンの家系の人たちがやってたんですよね。


それで、日本にチェレプニンのお父さんがやって来て伊福部昭を教えた時も、「日本の民謡を大切にしなさい」って若い日本人の弟子たちを日本中の各地方に送り込んで、そこにあった村の歌を歌って聞かせてもらって採譜するという作業してたらしいんですね。だから、何がなされてたか?っていうと、いわゆるそのモーツァルト、ベートーヴェン、バッハみたいなのは出来上がった主流の音楽なんですけど。その傍流にあるマージナル(marginal)な部分……今日はマージナルな話をしたくてしているんですよ。


で、そのマージナルっていうのはトランプ大統領が北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が主催する「サンタ追跡イベント」でかかって来た電話に出て、7歳の子供に「クリスマス、おめでとう」って。その電話の中で「君はまだサンタを信じているのか? お前の年齢で信じているやつはもう教室の中では端っこ(marginal)にいるようなものだろ?」って。それをそのマスコミの前でやったものだから「ひどい! 子供の夢を壊す!」とか「さすがトランプ!」みたいになっちゃったんだけど。そのマージナル……つまり主流と辺境。いまだに、7歳になってもサンタを信じているのは「マージナル」。だからつまり「いじめられるぞ」っていうちょっとまあからかったような言い方だったから、僕はそれだけをもってしてトランプは人非人とは思わないけども。


まあ、他にいくらでもひどいことやっているし。アメリカの国境まで行って、難民申請をして「入れてくれ」って言った親と子を引き離して、それでもう2人死んでいるんですよ。しかも、健康管理が杜撰で発熱と嘔吐で死んだとか言ってるから、もうひどいボーダーセキュリティーですけども。そっちの方がよっぽど憤りがあるんだけども。まあそれでそういうマージナルっていう言葉が出てきて、要は「みんなと違う子はいじめられる」っていう話だったんだけど、まさにその(アレクサンドル・)チェレプニン……イワンのお父さん。その偉大なるチェレプニン。クラシックの歴史の中でも、クラシック音楽を聞いている人は「チェレプニン」って言うと「おおっ、あれか!」って言うわけですよ。


で、その末裔のイワンっていう人に私は電子音楽を勉強させられちゃって。それでも「ああーっ!」って世界観がブワーン!ってなっちゃったんですけども。要は、その時から私はソ連に入北っていうことになるのかな? ああ、そうか。『マトリックス』でみんなが「普通だ」と思ってることから脱北するけど、それはみんなは眼鏡をかけてないから分からないから、自分だけが「みんなのおかしい」っていうことがわかるっていう、そういう赤い錠剤、赤いピルを飲んだ瞬間がそのチェレプニンだったわけ。




どういうことかっていうと、グルジアの音楽とかあとはそのブルガリアン・ボイスとかありますよね? あれを聞いてると、なんかちょっと不思議な節回しがあるっていうのは要は、主流となった音楽があるんだけど、キリスト教文明の中で、歴史の中で、中世ヨーロッパでだんだんと淘汰されていたアニミズム時代とかシャーマニズム時代、異教をとどめていた村人たち、農民たちの様々な採譜されないまんま口伝で伝えられていた音楽であったわけよ。で、これは何をなしてるか?っていうと、それぞれにお互いにインターネットがなかったので繋がってないんだけれども、なんかMIDI化したというか。


真ん中で中央と主流とオーケストレーションがあったとすると、そういうものに引っかからないヨーロッパの音楽っていうのが実はいっぱいあって。そこをルーツにモーツァルトやベートーヴェンみたいな人たちがそこを集約して都市国家型というか、帝国的な音楽を作っていって。ただ、そこで忘れ去られていく小さな声っていうのがあって。実はその小さな声が遠くから見るとギャラクシー、星雲、銀河系をなしていて、こんな美しいものはないんだよ。七夕のキラキラなんだよ。子供の頃に感じたあのお祭りのキラキラしてワクワク。それを忘れないでね!っていうことを音楽を通じて私、教わっちゃったんですね。


その結果、何が起きたか?っていうと、世界中の民族音楽と呼ばれるもの……ピグミーの「アゥアゥ~、アゥアゥ~♪」みたいな歌い方とか、もうアフリカのベナンとか。とっても小さな国の小さな部族たちの、ユニセフとかユネスコとかが録音してたような、UNが録音したやつをLPでひたすら聞いて。で、耳の中がどんどんどんどんヨガストレッチをした結果、いままで自分が聞いていたビートルズもクラシックも全部これはファーストフードみたいに真ん中に寄せられた、「こういう風に世の中を見なさい」っていう五感のフィルターを……イギリスの労働者階級の発音でフィルターは「フィルァッ」になるんですけど(笑)。「フィルァッ」をかけられていた。


だから本当に知らない間から、「むすんでひらいて♪」とか「咲いた咲いたチューリップの花が♪」とか、そういうのって全部ドレミで教わってるんだけど、その日本が近代化する前の時代って日本人はそういう音楽を聞いてなかったわけですよ。だから私たちはもう記憶すら忘れ去っていて、いわば日本中がアメリカのナバホ族とかホピ族とか先住民。本当にちっちゃなインディオとか、いろんな「インディアン」とか呼ばれた人たち、いたわけじゃないですか。でも「インディアン」っていう言い方自体が、コロンブスが新大陸にやってきてインド人と間違えてインディアンって言ったわけでしょう?


だからもう白人の征服者側からの視点でしかなく、それを通じて「本物の音楽」と「その他の少数民族の音楽」みたいな。めっちゃ腹立たない? それって。おかしくないか?っていうことで、その支配関係や主従関係を全くなくして、あるがままの世界を見たらもう、「せせらぎから聞こえてくる音がそのまま音楽なんだ!」みたいに。それでワーッ!ってなっちゃったわけですよ。それで……あ、俺自分のキャリアの話をするのに10分以上かかっている。ごめんね(笑)。カルトのリーダー・ラジニーシみたいにブワーッと話していて。今日のこのアーカイブを聞いた日本中の10代の誰か1人の人生が狂うことを願って、その君のために僕は語っているんだ。


僕もケージに狂わされたから。イワンに狂わされたから。それで、そういう人と違う音楽を聞き始めるとなにが起きるのか?って言うと、もう全てわけがわからなくなって。「もう普通の音楽はできません!」って音楽部の偉い人に言って。「僕は普通じゃない音楽で学位がほしいんです!」って言ったら「ダメ!」って。「なんとかなりませんか?」「ダメ!」。じゃあ、仕方ないから辞めた。それで結局、ハーバードの映像学部に行ったら、そこだったらそういう前衛……前衛っていうのは「アヴァンガルド」って呼ばれていて、いまロシアが打ち上げた超音速ミサイルがアヴァンガルド(前衛)っていうんですけども。これは革命の前衛とか革命のフロントラインっていう意味なのね。


で、芸術の中でもそういう革命的な芸術っていうのが1900年代の最初の頃にはあって。前衛芸術って言われていたんだけどね。同じ意味なんですが。その前衛的な音楽を許容してくれるのは、サントラとしてやるんだったら、その映像をモンタージュといって編集する時に、音と映像を奇妙に組み合わせるっていう、こういう勉強をしていたんですね。それを勉強してる最中に、必修でやらされたのは共産圏の映像だったんですよ。共産圏の映像を論評する。分析・解析するっていうのがあって。で、そこで出てきたのが、いちばん最初にグルッと戻るんだけども。


その共産圏の中にいて、フォークギターで歌って録音したものをカセットでしか流通させられない人とか、いっぱいいたんですね。そういうシーンがあったの。だけど知識人とか若い人たちしか、そういうことは知らず。そういうのは持っていても罰せられるから。それで結局、何食わぬ顔で日常を生きてるんだけれども、頭の中ではその曲を、人前で歌えない歌をずっと聞いていたりとか。マージナルなんですよ。その共産圏の全体主義の中では、共産主義を批判することが許されない。そして笑うことも許されない。からかうことも許されない。


だから不条理なことをやって、それを笑わないようにじっと見ているっていうのが通の嗜みなんですよね。で、なんかね、人前で仕事してると、自分の中のリアリティーや価値観、美意識。自分が「望ましい世界」と思っている世界と、一般の日本のみなさんが思っている幸せとか守っているものがあまりにもかけ離れていて。「ああ、結局自分は収容所群島なのかもしれない」と。でもね、自分だけじゃないと思うんですよ。私もマージナルっていう自分を自覚しているんだけども、実は誰の心の中にもその原生林というか、駐車場になっていない、イオンが出店していない商店街とでもいうか。


お祭りでもテキ屋のいるお祭りですよ。怪しい、見世物小屋のあるお祭り。そういうものがあなたの心の中にもどこか、まだ残っていると思うんだよね。で、そこをね、なんか2019年に少しずつ繋いでいったら、マージナル同士が繋がって、そこにディープなフォレストができるんじゃないかな? なんていうようなことを考えました。はい。今年はあなたの中のその秘密の花園、大切にしてやってください。行くよ!


LAXX『High From It ft. Belle Humble』



番組情報



 「Morley Robertson Show」



https://block.fm/radios/28



生配信:毎週木曜夜 21:00 - 22:30




モーリーのアンテナがキャッチする波動は、ひと味違う。あなた自身が住んでいる「不思議の国」を味わってほしい。気が付いたら、地球防衛軍に入隊していたとしても、不思議ではない。ここでは毎日が入隊記念日。いろいろな旅をする人のための時間。いっとき、モーリーの視点から世界をのぞいてみてください。



written by みやーんZZ

photo by pixabay/kpr2

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