シティボーイ流ヒップホップが懐かしくも新しい。MGFの最新アルバム『Real Estate』をレビュー

EVISBEATS、Kan Sano、Shin Sakiuraらも参加のMGF 2ndアルバム『Real Estate』を考察。
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2019.04.09 03:00

3人組ラップグループMGF(エムジーエフ)が、2作目となるオリジナルアルバム『Real Estate』を3月28日にリリースした。同アルバムを引っ提げた自主イベント『Modern Groove Fashion』の開催も発表。




1010、Japssy、KSKが描くシティボーイ流、春の夜の夢。


MGF(エムジーエフ)は、1010(ヒトワヒトオ)、Japssy(ジャプシー)、KSK(ケーエスケー)の3人からなるラップクルー。昨年は「Le coq Sportif」とのコラボコレクションを発表したり、以前より雑誌『popeye』にメンバー全員がモデルとして起用されるなどファッションコミュニティとも密接に交わる。


昨年夏にデジタルリリースした「Dancing On The Moon」を皮切りに、計5曲を立て続けに配信。Kan Sano(カン・サノ)やDJ WATARAI(DJワタライ)、EVISBEATS(エビスビーツ)とのコラボも話題になった。


そんな彼らがアルバムをリリースするのは、人気曲「優しくしないで'94」を収録した『Float in the Dark』以来約2年半ぶり。最新アルバム『Real Estate』は、「湿った夜の儚き嵐」でプロデュースを手掛けたKan Sano、

「Contact Contact (EVISとPUNCH REMIX)」でチルなトラックを提供したEVISBEATS&MICHEL☆PUNCH、「忘れられなくて」でコラボが実現した話題のギタリスト/プロデューサー、Shin Sakiura(シン・サキウラ)と、強力なゲストたちが参加している。





HIPHOPトレンドと一歩距離を置いたサウンド


MGFをカテゴライズするとしたら(ナンセンスかもしれないが分かりやすくするためにあえて)、JABBA THE FOOTBALL CLUB(ジャバ・ザ・フットボールクラブ)や、TOKYO HEALTH CLUB(トーキョー・ヘルスクラブ)といったOMAKE RECORD出身、いわゆるオマケ系アーティストが好きな人ならスッと耳に馴染むはず。


さかのぼればスチャダラパー、RIPSLYME(リップスライム)、KICK THE CAN CREW(キック・ザ・カンクルー)の流れを汲んだ、メロウで、キャッチーなラップと、ローファイなヒップホップサウンドが楽しめる。


トラックはオーセンティックで、ジャジー。ラップは地声の良さ、3人それぞれの個性が原色のまま反映されている。




叙情的な珠玉の楽曲群


一見、アルバムアートワークやヴィジュアルだけ見るとおちゃらけた感じなのかな、と勘ぐってしまうけど、実際にはおふざけ感とシリアスなクールさが絶妙に共存しており、その世界観こそMGFのセンスの良さなのだと実感。


日常をそのまま反映したリリックを叙情的に歌い上げ、そこにKSKのトラックメイキングによって構築されたサウンドが相まって、ギュッと胸を締め付けるような切なくも心地の良い音楽体験をもたらしてくれる。


インタールードとなるアルバムタイトル「Real Estate」から、ジャジーなピアノの旋律が美しい「Dancing on the Moon」、アコースティックなトラックとイントロの歌声が印象的な「Hey Dude」へと続く。


HIYADAM(ヒヤダム)やJAZEE MINOR(ジャジーマイナー)らの作品でも注目を集めるNASTY MEN$AH(ナスティ・メンサ)が撮影/編集を担当した先行MVが好評の「Wonder Peace Creation」、Kan Sanoを迎えた「湿った夜の儚き嵐」では上質でスムースなジャジートラックで聴かせる。





夜の雰囲気から一転してあたたかい日差しを思わせる「Coco La Ca」、「Contact Contact (EVISとPUNCH REMIX)」ではEVISBEATSとMICHEL☆PUNCHのオールドスクールマナー漂うトラック上で、90’sリバイバルよろしくなラップをキックする。


Shin Sakiuraをフィーチャーした「忘れられなくて」は、出会いと別れの春に聴くと涙を流してしまいそうなド級のメロウチューン。新天地で新生活を始める人たちだけでなく、都市生活にも1人にも慣れた大人たちにも聴いてもらいたい1曲だ。


続く「時の流れのせいで」はタイムスリップしたかのような、ファンク色漂う1曲。フックで筆者は初期のRIPSLYMEを思い出した。耳馴染みのいい歌声はMGFの武器だ。


夕暮れの海岸線を流したくなるような「Interude」を挟んで、最後の「Bring Bring Woman」では昭和のムード歌謡を再構築したサウンドとメロディでネオ・ムード歌謡を展開する。これがたまらなくカッコイイ。往年の名歌手フランク永井もびっくりである。


約38分/全11曲というタイトな構成ながら、メンバー個々の強烈なキャラクターと、トラックメイカーKSKの高いプロデュース能力が冴えわたる。MGFの一貫した世界観の中で、バラエティ豊かな引き出しで聴く者を楽しませてくれるのだ。




楽しんだもん勝ち。酸いも甘いも噛み分けるリリック


彼らが綴る、各々の生活と性格が反映された、等身大の歌詞もMGFの魅力。



〈KSK〉

潔くなった様に見えるガキ

unluckyを回避してくれるダチ

わめき、なげき繰り返し気がつきゃ今年もまた終わっちまいそうだぜ

結婚なんてマジか お前は何だ

転勤かそっか これからだな ha

笑っちまうくらいに歳重ねた

mother f**ker

別々だがまだやっぱbrother


「湿った夜の儚き嵐」より


KSKによるこのような、歳月を重ねていくなかで誰しもが感じる、孤独感や郷愁の思いを綴るシリアスなリリックもあれば、「Wonder Peace Creation」では


ハッピーに行こうか素晴らしい

wonder peace creation! 

わくわくトリッピー鉄道

wonder peace creation! 


とポジティヴにふざけとばしている。


〈1010〉

時間は決しては立ち止まらず

刻一刻過ぎるが流されずに

のんびり Just chillin'

あの川の小石のように


1010がラップすれば、続いてJapssyが


〈Japssy〉

遠くにあるものが近くに見えたり

大きなものが小さく見えたり

めっちゃ可愛い子が不細工に見えたり

めっちゃ不細工な子が可愛く見えたり

その場その時そのシチュエーション イマジネーション

言葉つまりはコミュニケーション コングラチュレーション


と輪をかけて楽観する。毎日、いろいろあるけれどとにかく楽しんだもん勝ち。そんな彼らのスタンスを表したリリックから、彼らのクリエイションの根底にあるのはまさに「Wonder Peace Creation」なのだと感じ取れる。


ジャジーでヒップでポップ。Steady&Co.との共通点


『Real Estate』が醸し出すアルバム全体の雰囲気、どこかで聴いたことあるなぁと思っていたんだけれど、Dragon Ash(ドラゴンアッシュ)のKJ(ケージェイ)とBOTS(ボッツ)、RIPSLYMEのILMARI(イルマリ)、SBK(エスビーケー/スケボーキング)のSHIGEO(シゲオ)によるSteady&Co.(ステディ&コー)が2001年にリリースしたアルバム『CHAMBERS』がいちばん近いかもしれない。


『CHAMBERS』は筆者が人生のベストアルバムを10枚挙げるとしたら必ず入ってくるであろう1枚だ。それほどに聴き込み、思い入れが強い1枚である。当時、さまざまな音楽ジャンルをまたいだミックスカルチャーなおしゃれサウンドはすごく都会的な世界観を表現していて、田舎に住まう筆者個人としては、かなりカルチャーショックだった記憶がある。


『Real Estate』を聴きながら、それに似た感覚を覚えた。ジャズ、フォーク、ヒップホップをかけ合わせたグルーヴ感、叙情的なリリックとキャッチーなメロディ。歌っても、リズミカルにラップしてもスマートにハマる。メロディアスなボーカル、セクシーなローボイスから、キーの高いラップまで、三者三様の個性を持ちつつユニゾンしても心地いい声。自身の思い入れの強いアルバムと共通点を見出すことができたのも筆者として嬉しい発見だった。


週末に山梨から湘南エリアにショートトリップした際『Real Estate』を聴かせてもらったのだが、この時期のドライヴにも最適な1枚だ。音に身をゆだね、風任せに口ずさむ。懐かしくて新しい。洒落ているけど、地に足着いたMGFのリアルを存分に味わうことができるアルバムである。


アルバムを記念したMGF自主企画イベント第2弾が開催


このアルバムを引っ提げた自主企画イベント『Modern Groove Fashion』が、渋谷ハーレムで開催されることが決定。昨年11月、Kan Sano、Dos Monos(ドス・モノス)らも参戦し大盛況に終わったイベントの第2弾となるが、今回のゲストアーティストは追って発表される予定。最新アルバムと共にイベントもぜひチェックしてほしい。




▶MGF「Real Estate」配信中

●iTunes Store

https://itunes.apple.com/us/album/real-estate/1456564222?l=ja&ls=1&app=itunes

●Apple Music

https://itunes.apple.com/us/album/real-estate/1456564222?l=ja&ls=1

●Spotify

http://open.spotify.com/album/1PXndpKlmjJxI7WDB4H7bt


▶MGF主催イベント『Modern Groove Fashion』

5月11日(土) Open 16:00 / Close 21:00予定

会場:渋谷HARLEM

出演者:MGF他(その他出演者は後日発表)




『Real Estate』


リリース:2019年3月29日(金)


トラックリスト


1.Intro(Real Estate)

2.Dancing on the Moon

3.Hey Dude

4.Wonder Peace Creation

5.湿った夜の儚き嵐 feat. Kan Sano

6.Coco La Ca

7.Contact Contact(EVISとPUNCH Remix)

8.忘れられなくて feat.Shin Sakiura

9.時の流れのせいで

10.Interlude

11.Bling Bling Woman


#1,2,3,4,6,9,10,11 produced by KSK(MGF)

#5 produced by Kan Sano

#7 produced by EVISBEATS&MICHEL☆PUNCH

#8 produced by Shin Sakiura




▶MGF


KSK, 1010, Japssyの3MCによるラップクルー。ささやかなユーモアと秘めたる闘志で退屈な日常を痛快に切り開いていく、モラトリアム群像劇を展開。


2015年6月に初の作品となるミニアルバムを自主配信。2016年の年明けにはこの自主音源をデモテープとしてROSE RECORDSに送付したところ、レーベルスタッフの耳に留まり、晴れてデビューが決定。2016年11月16日に12曲入りの1stアルバム『Float in the Dark』をリリース。


また、デビュー前にも関わらず雑誌「POPEYE」にてクルー全員がモデルとして起用されるなど、ファッションシーンにおいてもそれぞれの個性が輝きを放っている。


ドラマチックで華々しい人生よりも、他愛のない日常を等身大で音楽表現に置き換える。そんな何者にも侵されない縦横無尽なエンターテイメントクルーがいま始動する。


Twitter:https://twitter.com/mgftokyo

Instagram:https://www.instagram.com/mgf_tokyo/


Written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki








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