ロンドンで活動するプロデューサー、Makotoに訊く“UKドラムンベースシーンの再燃”

【インタビュー】Hospital Recordsからアルバム『Tomodachi Sessions』をリリースしたMakotoに、UKシーンの現状から、アルバムで豪華コラボが実現した背景まで語ってもらった。
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2019.09.06 10:00

日本からUKに拠点を移し活動するプロデューサー/DJのMakotoが、名門レーベル「Hospital Records」からアルバム『Tomodachi Sessions』をリリースした。収録される15曲はすべて彼の“Tomodachi”とのコラボ曲だ。MC ConradやDJ Marky、S.P.YやDanny Wheelerといった日本でも人気のプロデューサー、MC、シンガーがフィーチャーされており、なんとも豪華なアルバムに仕上がっている。


block.fmでは、2018年より拠点をロンドンに移したMakotoにメールインタビューを決行。UKのドラムンベースシーンについてやアルバム制作について貴重な話を聞くことができた。





「ドラムンベースは第2黄金期。昔からのリスナーも若いリスナーも共存している」



ーまずは、ロンドンでの活動についてお聞かせください。2018年からロンドンに移住されましたが、移住を決めたきっかけは何だったのでしょうか?


Makoto:20代の頃から漠然と「移住できたら」と思っていたんです。でもなかなか勇気が出なかったのと、自分の活動に合ったビザを取るのが難しいと聞いていたので半分諦めていて。ところが3年くらい前に友達からの紹介で、イギリスのイミグレーション専門の弁護士にダメ元で相談してみたら、行けるかもっていう話になったんですよ。


Hospital Recordsと契約してからヨーロッパでのDJがかなり入るようになって、半年ロンドン、半年東京みたいな生活を数年してたんです。でも、東京でなにか始めても中途半端になるし、ロンドンでなにか始めても日本に帰るためにまた中途半端になる。あとは時差の関係で、イギリスのレーベルやブッキングエージェントと日本時間の夜に連絡を取るのがすごく嫌になったというのもありました。ここ数年のイギリスでのドラムンベースの再燃を見たことや、自分の年齢的にも移住するなら最後のチャンスかなと思って決断したんです。


ー実際に移住していかがでしょうか。刺激を受けたことや苦労したことなどありますか?


Makoto:移住する前から何十回も来ていたし長く滞在していたこともあったので、苦労したことはあまりないんですが、やはり音楽的にレベルの高いところに自分を置くっていうのがかなり刺激になっていると思います。DJでイギリス国内やヨーロッパ各国へ行くと他のアーティストとも頻繁に会えるので、その中で音楽に関するいろいろなことを話す機会が格段に多いし、やはりネットを通して話すのと実際に会って頻繁に話をするのとではかなりの差があると改めて実感しました。あとは、DJする機会が格段に増えたので、平日に曲を作って週末に耳の肥えたクラウドの前でテストして、それをまた手直しする環境はすごく助かります。




ー昨年末のイベント「Human Elements」で、渡英後のMakotoさんのDJプレイを初めて聴かせていただきました。以前に増してダイナミックになった印象で、青山Zeroのフロアがまるでフェス会場のように盛り上がっていました。活動の拠点を移されてから、実際にDJプレイの面において意識的に変化させたことはあるんでしょうか。


Makoto:自分ではあまり意識してないんですが、やはりHospitalのイベント「Hospitality」とかになると数千人の規模だったりしますし、そこでも通用するDJセットとなると、どのタイミングにどの曲を入れるかというのが重要になってくると思うので、それが出ていたのかもしれません。ただ、盛り上がる曲は国やパーティーによっても違ってくるので、そこは探りながらという感じです。


あとは、ロンドンに来てから他のアーティストのセットを聴く機会が格段に多くなったので、そこで聴く発売前の曲をいち早く入手して自分のセットに組み込む努力も、日本いた時とは比べものにならないくらいするようになりました(笑)。 


ー「ドラムンベースの再燃」というお話がありましたが、UKのドラムンベースシーンは今どんな様子でしょうか?


Makoto:UKのドラムンベースシーンは今、第2黄金期を迎えていて全体的にものすごく盛り上がっています。ロンドン市内の公園で毎年9月にやっているHospitalのフェス「Hospitality In The Park」は、ドラムンベースだけで5、6個テントがあって1万2000人くらいの人が来ます。毎週末ロンドンのどこかで必ずドラムンベースのパーティーがあるし、土曜の昼間や日曜日にも開催されていたりもします。




90年代からずっとドラムンベースを聴いてる30代後半〜40代の人と、今の20代の若い子が混じっているところはロンドンならではで面白いですね。アルバム制作で忙しかったので、ドラムンベース以外のクラブカルチャーはあまりチェックできてないんですけど、UKジャズの再燃や他のUKベースミュージック同士がお互いに良い影響を与え合っていて、全体的にかなり良い感じだと思います。


ーこの夏はたくさんのイベントに出演されたと思いますが、どのイベントが特に印象的でしたか?


Makoto:クロアチアのティスノというところで開催された「Hospitality On The Beach」というホリデイフェスが特に印象的でしたね。海辺の小さな街で5日間に渡って開催されるんですけど、そこは毎年夏になると、Defectedとかいろんなジャンルのフェスが行われる場所なんです。ビーチステージが1つ、他のステージが2つ、それからボートパーティーという、規模は少し小さくて5000人程度のフェスなんですが、みんなヨーロッパ中から休暇を取ってこのフェスのためだけに来るんです。もうクラウドの弾け具合が普段のクラブナイトとは比べ物にならないんですよ。みんな次の日何もないので(笑)。


毎年9月にイタリアのサルデニア島で開催されている「Sun & Bass」もすごいです。「Hospitality On The Beach」よりも小規模で2000人くらいのイベントなんですが、街全体でやっていて、オープンエアーのバーやプール、ビーチ、野外ステージのあるクラブで7日間に渡って開かれます。中々日本では味わえない感じですよね。しかも全部ドラムンベースという(笑)。





「一人では止まっていた曲も、コラボによって思いもよらない形になる」



ー今回のアルバム『Tomodachi Sessions』は全てコラボ曲で構成されていますよね。コラボ曲でアルバムを作ることになった経緯を聞かせてください。


Makoto:前作の『Salvation』を出した後ロンドンに3ヶ月位いたんですが、自分の機材を持ってきてなかったので、他のアーティストのスタジオでコラボを数曲作っていたんです。その1曲をHospitalに送ったら、トニーから「コラボだけで次のアルバムを作ったらどうかな?」と言われて、そこから始まりました。


ーアルバムに参加してもらうアーティストの人選はとても大変かと思うんですが、どうやって決めたのでしょうか?


Makoto:コラボアルバムを作ると決めてから、HospitalのA&Rと人選リストを作って決めていきました。実際、声をかけてこちらからアイデアを送っても、相手が忙しくなかなかタイミングが合わなかったり、曲を始めてみてボツになったコラボもいくつかあります。


ーでは、収録曲についていくつかお聞かせください。まずは「Shine On Through」のトラックは大阪のプロデューサーMountainとのコラボですが、どういった流れで彼とコラボすることになったのでしょうか?


Makoto:アーティストの人選をするときに幅広い世代のアーティストとコラボがしたいと考えていて、日本で頑張っている若い世代のひとり、Mountain君とコラボしようということになりました。


ー歌は『Salvation』収録の「I don’t Wanna Wake Up」「Wind Of Change」でもヴォーカルを務めた、Karina Ramageですね。


Makoto:最初はMountain君から送ってもらったリフとドラムだけのアイデアからインスト曲のつもりで作業していていたんですが、進むにつれてヴォーカルを入れたいなと思うようになって。あまり深く考えずにKarinaに送ったら本人がすごく気に入ってくれて、すぐにヴォーカルが返って来ました。Karinaはいつもすごく作業が速いのでコラボしやすいっていうのもあります(笑)。




ー「Kosa」でコラボしたKeenoはオーケストラサウンドをドラムンベースに融合させるプロデューサーですよね。今回の制作で印象に残ったことはありましたか?


Makoto:この曲は僕がツアー中に作ったコード進行が元になっています。そのコード進行にシンセやキーボード、サンプルなどを足して、半年くらいそのままになっていたんですけど、それをKeenoに送ってみたら数日後にメインのメロディーとそれを元にしたオーケストレーション、ドラムが返ってきて。僕もそこからかなりインスピレーションを受けて、ベースを入れたりヴォーカルサンプルを入れたりして、数時間でほぼ完成してしまいました。


自分だけだったら途中で止まっていた曲も、こうやって他のアーティストとコラボすると思いもよらない形になったりするので、それもコラボの醍醐味のひとつだと思います。


ーMC Conradとの共演は「Golden Girl」以来で、喜んでいるリスナーも多いと思います。彼とは定期的にコンタクトを取っていたんですか?


Makoto:Conradとはたまにギグが一緒になるくらいで、そこまでずっとコンタクトを取っていたわけではないんですが、またコラボしたいとずっと思っていたんです。インストを作った時に、「90年代のアトモスフェリックなドラムンベースサウンドの2019年アップデート版」というのが自分の中でテーマとしてあったので、これはConradしかないと思い送ってみたら、本人も乗ってきてくれ実現しました。


実はこの曲はアルバムの中で一番最後に作った曲で、締め切りまで数週間しかなかったのと、締め切りの日にヴォーカルが届いてかなり大変でした(笑)。 




ー「Miles Ahead」は、何度もコラボしているDJ Markyとの共作ですが、今回の楽曲はどんな流れで完成したんでしょうか。


Makoto:Markyとはアルバム制作を始める前から久しぶりにコラボしようっていう話をしていたので、その流れで始まりました。最初にMarkyからアイデアのループを数個送ってもらって、ファイルのやりとりをしたり、去年僕がサンパウロに行った時に一緒に作業して発展させていきました。もう2曲完成した曲があるんですが、それは今のところどうなるか分かりません。




S.P.Yとの久しぶりの共作「Tokyo 96」にも注目しています。以前彼とコラボした「Beautiful Things」は東日本大震災チャリティーアルバムの一曲でしたが、その当時はどんな反響がありましたか?


Makoto:チャリティーアルバムは当時、全世界からすごく反響があって多くのアーティストが協力してくれました。実は「Beatiful Things」はS.P.Yが当時作ってた彼のアルバムに入れたいと言っていたんですが、チャリティーアルバムを作ることになったのでそっちに入れさせてもらったんです。


ー今回はどういった流れでコラボすることになったんですか?タイトルの「Tokyo 96」にもなにか意味があるのかな?と思いました。


Makoto:今回のコラボは、1年くらい前にS.P.Yが東京に来たときにコラボしようっていう話になったのが始まりですね。僕の東京のスタジオでアイデアを数時間で作って、それを発展させたものです。タイトルは特に意味はないんですけど、東京で作ったのと、90年代後半のドラムンベースっていうのがテーマにあったので、“ナインティーなんとか”にしようみたいな感じでかなり適当に決めました(笑)。


ー総括してみて、今回のアルバム制作で苦労したことはありましたか?


Makoto:やはり相手がいることなので自分の思うようなペースではなかなか進まなかったですね。あとは東京を離れて、全部完結できる自分のスタジオがなくなってしまったので、基本的に自分のベットルームで曲作りをして、外のスタジオでミックスダウンするということに慣れるのが大変でした。外のスタジオに移動する時に、一度曲を客観的に聴くことができたので、結果的にミックスダウンの面では少し進化できたかなと思います。


『Tomodachi Sessions』アルバムリリースパーティーを日本で開催する予定はありますか?コラボしたアーティストの誰かと一緒に…なんて期待してしまっています!


Makoto:年末にツアーでオーストラリアとニュージーランドに行くので、その時に一度日本に寄って開催する予定です!内容はまだ未定です。


ー楽しみに待っています。最後に、海外レーベルからリリースするドラムンベースの日本人プロデューサーも増えていますが、海外で活躍したいと考えているプロデューサーにアドバイスやコメントをお願いします。


Makoto:最初は自分の作った音楽が一人歩きして世界に届いたりするんですけど、そこから先、契約の面、海外でのギグなどある程度英語が理解できないと難しくなっていくので、英語はすごく大事だと思います。僕も最初は全く話せなかったんですが、今では英語で喧嘩できるくらいになりました(笑)。


それから、今はソフトウェアがかなり進化してPC一台で全て完結できるようになり、サンプルもSpliceみたいにすぐにネットで手に入ったりと、そこそこのクオリティーの曲が誰にでもできてしまう時代になってしまったので、自分のアイデアがかなり重要になってきていると思いますね。


ーありがとうございます。日本でのギグを楽しみにしています!



【リリース情報】




Makoto『Tomodachi Sessions』

各種リンク: https://makoto.lnk.to/TomodachiSessionsaf


Makoto SNS

Twitter:https://twitter.com/Makoto_MusicJP

Instagram:https://www.instagram.com/makoto_humanelements/

Facebook:https://www.facebook.com/makoto.humanelements/


Written by Moemi




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