8週連続全米1位のラッパー Lil Nas Xが小学校でのサプライズライヴを行った理由とは

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Lil Nas X(リルナズX)がアメリカの小学校を訪れ、サプライズでライヴを行ったことが話題になった。実現に至るまでには学校愛溢れる校長先生とのやりとりと、学校と子供たちが企画した素敵な行事があった。
「Old Town Road」に沸く小学生たち。Lil Nas Xのサプライズ訪問が実現した理由
6月1日付のBillboard チャートでも1位をキープし、これで8週連続トップを飾ったLil Nas X(リルナズX)。バンジョーを取り入れ、カウボーイについてを歌った「Old Town Road」はカントリーか否かというジャンル論争にまで発展。社会現象になっている。
TikTokによるバズを経て、Miley Cyrus(マイリー・サイラス)のパパ、偉大なるカントリーシンガーBilly Ray Cyrus(ビリー・レイ・サイラス)をフィーチャリングに迎え一躍スターダムへとのし上がったニューエラ・カウボーイは、先週アメリカ・オハイオ州クリーブランドのランダー小学校を訪れ、サプライズでライヴを披露した。
子供たちはノリノリで「Old Town Road」を大合唱。その様子を目の当たりにして思わず笑顔をこぼす、Lil Nas Xの姿がCOMPLEXによって報じられ、SNS上でバズ。メディアもこの微笑ましい一幕をハッピーなニュースとして報じている。
COMPLEXがこのサプライズに密着して制作したドキュメンタリーのフルバージョンでは、クリーヴランドに行くまでの道中の様子や、子供たちに配った馬のぬいぐるみを買う様子が映し出されている。
Lil Nas Xはなぜランダー小学校を訪れたのか
Lil Nas Xがこの小学校を訪れたのは、この学校の校長であるFelecia Evance先生がポストしたTweetがきっかけとなっている。「私はこの仕事を愛している」とキャプションを添えたTweetには「Old Town Road」を大合唱している動画がポストされていた。クラブでもこんなに盛り上がるか、というくらい元気いっぱいだ。
この動画はいかに「Old Town Road」がアメリカに浸透しているかを物語るに充分な内容で、このTweetが世界中に拡散された。このとき、Felecia先生はLil Nas Xにもメンションが付けられており、Lil Nas Xがすぐに反応した。
Felexia先生はLil Nas Xに「いつクリーヴランドに来てくれるの? 」とリプを返すと、Lil Nas Xは気前よく、「実現できるように調整するから、メールして」と返事をした。これには校長先生もまさかと思っただろう。
When are you coming to Cleveland?? @LilNasX https://t.co/l3DQcHmLjl
— Felecia Evans (@EduLeadingLady) 2019年5月23日
そんなやりとりのわずか5日後に、Lil Nas Xはクリーヴランドの地を訪れ、ランダー小学校でのライヴを実現した。
小学生によるタレントショー
Lil Nas Xを本当に招致するきっかけとなったこの動画は、ランダー小学校の5年生による「Lander's Got Talent」のときの動画だという。かの有名な、才能を持った人々を発掘する、オーディション形式のリアリティーショー「America's Got Talent」のパロディ企画である。
「Lander's Got Talent」は5年生のキッズたちがタレントのように身を扮し、生徒たちにそれぞれの一芸を発表する場だ。この日はRihanna(リアーナ)の「Diamonds」が披露され、それにノリノリな女の子がいたり、赤いバンダナを巻いていかにもラッパー風の身なりでステージに立つ男のコがいたり(6ix9ineのようにはなっちゃダメだぞ)とバラエティに富んだラインナップで行われた模様。
Shine bright like a diamond?!! This is how I was feeling at our 5th grade talent show today too!!??#LanderLove??@LanderElem pic.twitter.com/rYQbNWUDRM
— Felecia Evans (@EduLeadingLady) 2019年5月23日
So proud of our 5th graders who were brave enough to get on stage in front of the whole school for our 5th grade talent show!! ?#LanderLove?? @LanderElem pic.twitter.com/TzVuaw8zqM
— Felecia Evans (@EduLeadingLady) 2019年5月23日
そして、フィナーレとして全員で歌われたのが、Lil Nas Xの「Old Town Road」だったのだ。
I love my job. We ended our 5th grade talent show today with the whole school dancing and celebrating...together!! #LanderLove?? @LanderElem @LilNasX ??? pic.twitter.com/pzS1id79mu
— Felecia Evans (@EduLeadingLady) 2019年5月23日
いいことだらけのハッピーな出来事
この小学生たちによる手作りのイベントが、Lil Nas Xを動かした。自主性を持つ子供たちに対し、できるだけ間口の広い表現の機会を学校や大人が作ってあげるというのは、すごくいい試みだと個人的には思う。ヒロイックに解釈するとあまり目立たない生徒がここで発表することによって自信を身に付けるかもしれないし、中には自分を表現するのが不得意な生徒もいるだろうが、見るだけでも、ポジティヴな影響を受け何か楽しめるものを見つけて打ち込むキッズもいるかもしれない。
そもそもLil Nas Xのライヴ自体がCOMPLEXとの企画で決まっていたかもしれないとか、馴染めない生徒やLil Nas X「Old Town Road」を知らない生徒にとっては地獄。とか、穿った見方もいくらでもできるが(実際、動画内ではキョトンな生徒もいる。心配)、筆者はこのニュースをポジティヴに捉えている。
日本で言うと、あいみょんとか米津玄師(よねづけんし)、はたまた星野源(ほしのげん)がいきなりやってきてみんなで楽曲を歌うような感じだろうか。そんなことが幼少期にあったとしたら、爆アガりだっただろうし、早い時期から音楽の作り手を目指していたかもしれない。
僕は学校の授業以外の場所で、同級生や年上の人たち、だれかをマネて何がイケてるか、自分に似合うか否か、何が好きかを照らし合わせてきた。最初は何も分からないけど、とりあえず感覚でマネしてみるのだ。そこから、自分にとって必要か不要かを決めればいい。というスタンスで、とにかく好奇心のおもむくままに生きてきたし、今もそんな感じだ。クソミーハーである。
こうして学校のオフィシャルな取り組みで、エンターテイメント性のあるイベントを開催したり、校長先生が生徒たちのためにLil Nas Xを招致するために動いたり。子供たちの感性をインスパイアする、される何らかのきっかけづくりを学校が行ったことが正直すごく羨ましいなと思った。
そもそもこのFelecia先生が校長先生っていうのが日本の、田舎の公立小学校出身の僕にとってはカルチャーショックだ。日本のテンプレ的な校長先生像とはあまりにかけ離れている。先生、カントリーハットまでかぶっちゃってノリノリ。
Thank you @LilNasX for coming to @LanderElem!! We love you!! #Landerlove?? ? ? pic.twitter.com/CIrhkNXq1g
— Felecia Evans (@EduLeadingLady) 2019年5月29日
いかにもアメリカらしい、エンターテイメント性に富んだ事案である。今の日本の小学校、中学校は分からないが、僕らの時代は没個性こそ大正義であり、少しでも自分らしさをだそうとするとすればすぐ「不良」にカテゴライズされてしまっていた。
全部とはいわないが、こういった事例のいい部分を検証し、見習って日本の教育がより豊かで寛容になればいいなと思う。
ヒップホップは音楽として幼稚だ。とか言う人が令和になった今でもいるし、ジャンルで雑に印象を語る人もけっこう身近にいたりして、なんだか寂しいなと思うことがある。そういう人に限って、音楽を作っていないリスナーの立場だったりする。
“ジャンル”という概念が少しづつ希薄になっているなかで、“ジャンル”は作り手にとっても聴き手にとっても必要だとは思う。記事を書いたりするのに、何かと“ジャンル”があると説明しやすいし便利である。しかし、一方で“ジャンル”が肝心のアーティストにとって障害になったり、批判を生む要因になってしまうのは本末顚倒だ。
Lil Nas Xに対する批判も同様、こんなのヒップホップじゃねえ、カントリーじゃねえ、などというジャンル論争は本当にくだらなく思える。(だとするとテンプレにハマらない全く新しい音楽を作ってしまった、Lil Nas XとYoung Kioは賞賛されてしかるべきだ)
ニュースで伝えられている以上のことは正直知ることはできないのだが、ランダー小学校の生徒、先生、そしてその期待に迅速に応えたLil Nas X の行動は素晴らしいと思う。音楽性にもよるが、多くの子供たちが楽しげに曲を歌えるというのはアーティストとしてのひとつの成功指標といえるのではないだろうか。
A Day In the Life With @LilNasX: 'Old Town Road' Takes #Cleveland. Check out the exclusive full coverage from @Complex showing his visit to @LanderElem #LanderLove??https://t.co/4HtlukoSN2 via @YouTube pic.twitter.com/upDt27zqxW
— Felecia Evans (@EduLeadingLady) 2019年6月1日
written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki
source:https://www.complex.com/music/2019/05/a-day-in-the-life-with-lil-nas-x-old-town-road-takes-cleveland
https://mashable.com/article/kids-dancing-to-old-town-road/?utm_medium=twitter&utm_content=culture&utm_campaign=mash-com-tw-main-link&utm_source=social
photo:Felicia Evans Twitter