「事前録音したDJミックスをステージでプレイするのは果たしてリアルなDJなのか?」について大物DJ2人が自らの意見を語る

EDM系のビッグアーティストが、事前に録音したDJミックスをDJブースでボタンを押すだけで再生するのは果たして”リアルなDJ”なのか? という議論を耳にしたことがある人は決して少なくないと思う。そんな現在のDJ業界内でアリかナシかという2つの意見が分かれるこの問題について、大物プロデューサー/DJのレイドバック・ルーク（Laidback Luke）とアフロジャック（Afrojack）が議論する動画が非常に興味深い。
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動画でレイドバック・ルークがまず例として挙げたのが若手人気プロデューサーのゼッド。彼は基本的に人前でパフォーマンスを行う時は、いつも同じ内容のプレイリストに沿った事前にミックスされた音源をプレイするそうだが、これはレイドバック・ルークによると、彼はDJではなく、アーティストとしてライヴパフォーマンスを行っているという感覚として捉えているんだそう。そのため、こういうケースなら事前にミックスしたものを使うのはアリだとしている。確かにゼッドの場合は、DJというよりはパフォーマー込みの凝ったパフォーマンスや目を見張るオーディオ・ヴィジュアル・ライヴといったショー要素が強いもののイメージがあるので、レイドバック・ルークが言うことは一理ある気がする。
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それを踏まえてアフロジャックが語った意見はかなりユニーク。この議論に関して彼がとっている立場はちょうどレイドバック・ルークとゼッドの中間というもの。中間というのはどういった立場かと言うと、場合によっては事前録音したDJミックスをプレイする”押すだけDJ”というのもアリと認めているということだ。&nbsp;

アフロジャックが言うには、そのスタイルはTomorrowlandやUltraなどビッグフェスのステージなら自分の中ではアリな様で、実際に彼はそういったステージには事前に仕込んだDJミックスを使用しているとのこと。その理由は、1時間のステージでリアルタイムでのマッシュアップ、ループ、マイクパフォーマンスを駆使しながら、選曲をすることは不可能ではないが、ブース内で忙しすぎると観客を盛り上げるための曲をかけ損なう恐れもあるからだそうだ。&nbsp;

それだけ聞いていると正直、それを乗り越えるからこそ、”リアルなDJ”だという気がしなくもないが、アフロジャックやレイドバック・ルーククラスの大物で、しかも先述のビッグフェスに出演するようなDJなら、数万人規模の観客を相手どらなければならない。しかも、そのフェスはもちろん主催側が多額の資金を投じてプロモーションを行っており、出演者たちに支払われる出演料も大金だ。そのためアフロジャックには、彼にとってのお客さん、つまり、観客とフェスの運営側に対して、プロとして完璧なセットを披露する必要がある。その職務を全うするために事前に録音したミックスをプレイするのはアリと考えているようだ。また事前に録音しておくことで、フェスの舞台装置とも連携しやすくなり、パフォーマンスとしての質も高まることもアフロジャックは例として挙げている。
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さらにアフロジャックは、最近のDJ機材のハイテク化にも触れ、事前にミックスしておくことと、CDJやPCDJでキューポイントやループポイント、ロードするだけで曲のテンポがわかったり、自動でテンポを合わせてくれるビートシンクボタンを使うのはどれだけ違うのか?という疑問も持っている模様。確かにそう考えると事前ミックスとテクノロジーに頼った最近のDJスタイルではそんなに違いはないのかもしれないが、ただ、個人的にはそれを言い出したらおしまいな感じもしなくはない。&nbsp;

しかし、そんな風に大舞台では事前ミックスを使うと公言するアフロジャックも通常のクラブイベントではフリースタイルでDJミックスを行う模様。その時は4台のCDJを駆使し、3曲を同時にプレイ。それをアカペラやサンプル、ループとミックスしながら、マイクパフォーマンスも織り交ぜているとのこと。ただ、そこまでテクニックを駆使したパフォーマンスをやっても、プレイリストサイトにはその曲名が「Afrojack mashup」としか表記されないことに一抹の虚しさも感じているようだ。&nbsp;

アフロジャックの事前ミックスについての考え方は 「但しアフロジャッククラスの大物に限る」な話かもしれないが、彼の言っていることも一理あるなと思う。当たり前の話だが、イベントは規模が大きくなればなるほど集まる観客は多くなる。ただ、それが必ずしも普段からダンスミュージックに慣れ親しんだ人とは限らない。そんな人に対しても鉄板なセットで確実に盛り上げるというのは彼のプライドであり、ビジネスとしてDJを行うプロの姿勢だ。&nbsp;

確かに音楽を聴いている側からすれば、ビートがずれたり、ちょっとしたミスがあるより、綺麗というかシームレスな感じで繋がる方が心地よく踊れるのは間違いない。そういったズレとか人間らしい部分に味があるというのもまた間違った意見ではないが、そう思えるようになるにはそれなりのクラブ遊びの経験が必要なのも確か。アフロジャックの”中間”というスタンスは、プロフェッショナルなDJ像を追求した結果なのだろう。ただ、そういう考えがある意味正しいことだとはわかるものの、中にはそれでもリアルタイムで、オーディエンス、フロアの流れをコントロールしながらのフリースタイルなDJの方が好みだという人も相当数いることだろう。 &nbsp;

良い音楽が聴けて踊れればそれで良いという人もいれば、リアルタイムで刻々と変化していくようなフロアコントロールの巧みさを評価したいという人もいる。DJプレイは時と所、場合によって変わるTPOなものだと思っていたが、現代のDJにはそのスタンスさえもTPOで柔軟に対応していく必要があるのかもしれない。“押すだけDJ”と揶揄されることがある事前ミックスの裏側にもいろいろな事情があるようだ。&nbsp;

参考:&nbsp;
<a href="https://youtu.be/YAD1gCeYzoQ">https://youtu.be/YAD1gCeYzoQ</a>
 
Written by Jun Fukunaga&nbsp;
Photo: <a href="https://youtu.be/YAD1gCeYzoQ">Laidback Luke YouTube</a>&nbsp;
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レイドバック・ルークとアフロジャック、”事前録音のDJセット”のアリナシについて激論する

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