【レビュー】Kvi Baba『KVI BABA』現代詞とEMOトラップが紡ぐ美しき孤高の世界

全編BACH LOGICプロデュースのKvi Babaアルバム『KVI BABA』を聴く。
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2019.10.14 10:50

9月にリリースされたKvi Babaの1st Album『KVI BABA』をレビュー。





注目の新鋭ラッパーKvi Babaによるリリカルエモトラップアルバム『KVI BABA』をレビュー。ギターサウンドとトラップビートで紡ぐ、闇と光


2019年はKvi Babaにとって躍進の年となった。2017年頃からSoundCloud上へ音源をアップし配信。今年2月には屈指のビートメイカーでDaichi YamamotoやLEXといった新鋭アーティストたちにトラックを提供するトラックメイカー/プロデューサーKMと手を組んだ1st EP『Natural Born Pain』、立て続けに3月には2nd EP『19』をリリース。こちらはヒップホップリスナーで知らぬものはいないであろうBACH LOGICがプロデュースを手がけた。






2枚のEPを経て生まれた1stアルバム『KVI BABA』


『Natural Born Pain』、『19』ともにジャケットはイラストレーター/アーティスト Jun Inagawaが担当している。配信のみでリリースされてきた2枚のEPは雑誌 MUSICA『2019年超重要気鋭アーティスト』、Apple Musicでは『今週のNew Artist』、スペースシャワーTVの2019年度最注目新人アーティスト『SPACE SHOWER RETSUDEN NEW FORCE』に選出。数々のメディアの新人登竜門企画において軒並み高評価を得てきた。お膳立てはバッチリ、満を持してリリースされたのが、自らの名前を冠した1st アルバム『KVI BABA』である。


アルバムはLil’Peepなどに代表され世界的な音楽潮流のひとつ、ギターサウンドとトラップビートをかけあわせ、シャウトするように歌うボーカルが特徴的ないわゆるクラウドラップ、エモトラップ的な1枚となっている。それらのサウンドを踏襲しながらも、日本語で紡がれる詩的な歌詞、どこか情緒を感じさせるトラックがとても切ない。




EPからの流れを踏まえつつ、トレンドを模倣しただけではない、Kvi Babaの世界観、オリジナリティが詰まった作品となっている。あらためてライターがアルバム中、気に入った楽曲をピックアップしてレビューしてみたいと思う。





Life is Short


このアルバムのメイントラック。アルバム全体の世界観を示唆する重厚なギターサウンドを響かせる1曲目、「Crystal Cry」と地続きの力強いギターのリフが印象的。「Life is Short But Now I’m Good」と繰り返されるフック、「俺なら大丈夫」とは、誰に伝えているのか、それとも自分に言い聞かせているのか。曲中の“君”は馬鹿らしく笑ったという、「何のために 生まれて 何をして喜ぶか選べる」というKvi Babaの言葉は今を生きる若者たちにも、すっかり30を過ぎても相変わらずにバカをやっている筆者にも優しく響く。楽曲で、映画のような情景を映し出すリリックも見事。




Rusty Man feat.鋼田テフロン


哀愁漂うギターのメロディとともに鳴る、ヘビーなベースラインに声を載せるのはKvi Babaと鋼田テフロン。SALUやZORNらすでにさまざまなヒップホップアーティストとコラボしているKvi Babaだが、アルバムの中で客演を迎えたのはこの曲のみとなっている。鋼田テフロンはBACH LOGICのシンガー/ラッパー名義。SEEDAの『花と雨』を聴いてきた人たち、SALU、AKLOといったラッパーがまだ話題のルーキーだったころをリアルタイムで知っている人たちにとって、BACH LOGIC、鋼田テフロンというのは絶対的なブランドで憧れだった。そんな名プロデューサーが、全面的にバックアップしているのを観れば、それだけでKvi Babaという才能、アーティストとしてのポテンシャルの高さを説明するには充分すぎる。そしてそのBACH LOGICブランドは未だ健在である。2人の声の相性もすごくいい。


Cheat on Me


アルバム全体の流れとしては主に3つ。自身のこと、他者との関わり、そして周囲の環境とだんだんと視点の広がりを感じさせる曲順になっているように思えた。もちろんサウンド的な流れもあるのだろうが。4曲目「Nobody Can Love Me」と、6曲目「Humanity」、5曲目に収録されたこの曲は他者との関わり、痛みや孤独を感じさせる。どうして分かってもらえないのだろう、どうして嘘をつくのだろう、人間性、協調性ってなんだ。苦悩しながら少しづつ答えのようなものを導きだしていくKvi Babaの姿が描かれる。ディストーションのかかったフックがより退廃的で、グランジのイメージを感じさせる。自身、他者、社会、いずれにしろアルバム全体が抱えているテーマは愛なのかもしれない。


Decide


さまざまな痛み、傷を乗り越えて、あらためてKvi Babaの決意が語られている。「何が答えなんて 誰も分からないんだ だけど それでいいんだ 俺が俺で俺といれば 向きは 決まってんだ」答えを探しさまよっていた男は、カタチだけの答えじゃなくてより本質的な大切なものに気づいたのだ。全ては自分がこの手で選び、自分が決める。と力強く言い放つのは痛快。地獄に生きていても、それは自分が決めたことだし、生き抜いてやるぜっていう、強い意志を感じる。そしてバースの最後には「何か答えなんて ほんと欲しくないんだ  皆が皆で皆と それぞれの道を行けば 寂しくなんてきっと僕らない 本来の君が君と君の道を行くのなら」と他者に対しても自分らしく生きろとメッセージを投げかける。


All Things are Fate


アルバム中、このラストトラックが個人的にはいちばんのお気に入り。『KVI BABA』の全てを締めくくるこのトラックでやっと暗雲が立ちこめていた世界に少し光が射すような感覚を覚える。起こりうることは全て運命なんだと、若干20歳にして達観してしまっているのヤバくないか。でも、決して難しい言葉を用いて、大きなことを言っているわけではなく、等身大の言葉だからこそ聴く人に伝わりやすい。クセのあるギターサウンドと優しく、あたたかみを感じるメロディの調和が見事。最後のライン「耕された地に咲く花 荒れた地の上に咲く花 同じ空の下の園の中 愛し合える世の中」はエモトラップ版“世界に1つだけの花”という気さえしてくる。「All Things are Fate」での終わりに、今後もまだまだ広がっていくであろうKvi BaBaの音楽性と次回作に期待と希望を抱く。


Kvi BabaセレクトのAWAプレイリスト公開中。リリースイベントが11月開催


音楽配信サービスのAWAではKvi Babaがセレクトしたプレイリスト『Color Of My Eyes』を配信しており、さまざまなJ-POPからオルタナまで幅広いジャンルの音楽をパッケージしている。このアルバムの世界観のソースになっている曲もあるかもしれない。




そして、11月1日(金)には渋谷HOTEL KOEにて『KVI BABA』のリリースパーティが開催される。エントランスはフリーとのこと。フライヤージャケットはKvi Babaと同い年の盟友、Jun Inagawaが手がけている。







▶『KVI BABA』

リリース:2019年9月25日(水)

CD:2,100円+税

収録曲:

01. Crystal Cry

02. Life is Short

03. Rusty Man feat.鋼田テフロン

04. Nobody Can Love Me

05. Cheat on Me

06. Humanity

07. Decide

08. Hope

09. All Things are Fate


Words by Kvi Baba | Music by Kvi Baba & BACHLOGIC

Produced by BACHLOGIC | Mixed by Hayabusa | Mastered by BACHLOGIC


ダウンロード・ストリーミング:https://linkco.re/2dyyuzzq




▶Kvi Baba(クヴィ・ババ)


1999年生まれ20歳、大阪・茨木出身のラッパー / シンガーソングライター。2017年よりSoundCloud上で立て続けに楽曲を発表し音楽活動をスタート 。トラップ 、クラウド・ラップ 、オルタナティブ・ロックから影響を受けたというメロディックなラップスタイルと、内省的かつ鬱屈した心情を歌ったリリックが特徴。2019年2月に新鋭トラックメイカーKMと手掛けた1st EP『Natural Born Pain』とBACHLOGICが全ての楽曲を手掛け、SALU、Minchanbaby、KLOOZ、BACHLOGIC等が客演で参加した2nd EP『19』を立て続けにリリース。Apple Music『今週のNew Artist』やデビュー曲『Feel the Moon』のミュージックビデオがスペースシャワーTVの『Power Push』に選出されるなど業界内でも高い注目を集めている。エモーショナルという言葉が ジャストにフィットしたアーティストである 。http://kvibaba.com/


Written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki





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