受け継がれるハウスミュージックのバトンとは?Kentaro Takizawaが「原点回帰のハウス」を語る

デビュー当時から、メジャーレーベルへの移籍と洗礼、転機になった海外移住、そしてカムバックまで。ハウスミュージックの先駆者が熱い想いを文字通り赤裸々に語ってくれた
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2018.05.21 22:43


block.fmのハウス専門チャンネル「Haus it Feelin' ?」のパーソナリティーを務めるKentaro Takizawa。主宰するレーベル「Haus it Feelin' Records」から新曲「Back 2 Back Bay」を5月22日リリースしたばかりの彼は、20代前半でのデビューからアンダーグラウンドとメインストリームを行き来しハウスプロデューサーとしてメジャーリリースも果たすなど、日本のハウスシーンを形成する牽引役の一人としてその実力を証明してきた。


そこで今回Takizawaには、2000年代前半から現代まで続く自身のDJキャリアを振り返ってもらった。トークの中心となったのは、彼を待ち受けていた「メジャーの洗礼」や初の海外移住生活そしてカムバックからのレーベルの始動など、今まで語られなかったキャリアのエピーソードを文字通り赤裸々に語ってくれた。


自分らしい作り方って、好きな音楽を自分の出したいタイミングで出すってことだったからそういう意味でレーベルを始めたって理由もある


- まずはじめに、レーベルを始めたキッカケについて教えてもらえますか?


Kentaro Takizawa 22歳でデビューしてから、今までいくつかのレーベルを渡り歩いてきました。定期的にアルバムを出してたんだけど、2011年に出した最後のアルバムで、ちょっと一区切りしたんだよね。その時は自分がレーベルをやるなんて全く思ってなかった。それに「ハウス」をやりきったなという想いもあった。だから自分の中で次にやりたい音楽が見つからなくなっちゃって。で、そのタイミングで海外に少し滞在してみたんだ。色んな刺激を受けてカルチャー的な要素もそうだけど、「1DJ、1レーベル」みたいなアーティストも結構向こうでは当たり前だった。だから個人でレーベルを持つってことの可能性を感じられた。それが2012年くらい。まぁ、そこから色々時間が経っちゃって...笑。その間に自分の新しい音楽の方向性も固まってきて今に至るって感じかな。


制作的な部分でいうと、やっぱり人のレーベルだと、自分の作品を好きなタイミング、好きな内容で出すのが難しくなってくるんだよね。特にメジャーで制作すればするほど。例えばメジャーだと「編成会議」みたいなのがある。作品の内容やリリース日がすでに決まってて、そこから制作に入るみたいなところもあって、割と今までと手順が逆だったりするのがよくあった。


それも間違いの無い作り方なんだけどね。でも、やっぱり自分らしい作り方って、好きな音楽を出したいタイミングで出すことだった。だから自分のレーベルを始めたって理由もあるな。


- 実際運営の手応えはどうですか?


Kentaro Takizawa まず世の中の目線がすごい変わった。「レコードレーベルのボス」っていう認識が通ったから、言葉が浅いかもしれないけど「格」が上がった感じ。とはいえ別に何が変わったって訳じゃない。だけど自分の中で世の中の変化を感じるようにはなったかも。


- サウンド的にはどんなコンセプトなんでしょうか?


Kentaro Takizawa まずやっぱり自分の中でカッコイイと思った曲。もちろん手を抜かずに作った曲でね。あとはソウルフルでエモーショナルで男らしい感じかな。よく自分は女々しいとか言われるけど(笑)なんか男らしいエモさってあるじゃん?俺の中ではKerri Chandlerとかがそれに近くて、コトバにするのは難しいけどそういうハウスを追求したいな。




当時の日本のシーンしか見てない自分の狭い視野だけで19歳からずーっと活動してたからもうやることないかもな?って


- キャリアを通してずっとハウス一筋ですが、過去のインタビューで「ハウスを文化として残したい」という発言もありました。その気持ちは今も変わって無いってことですよね?


Kentaro Takizawa そうだね、それはずーっと変わらないな。ある意味そのインタビューのあった2009年のメジャーデビューから今まで同じ気持ちで活動してきたかも。ちょうどその時期に、ハウスがメジャーになって行ってクラブの現場でかからないようなハウスがチャートの上位に上がって、逆に自分たちがクラブでかけてるハウスがチャート外になることが多くなった。あの時は特にその差が激しくて、それを打破したいと思っての発言だったのかも...


- 2000年代後半の状況はどんな感じだったんですか?


Kentaro Takizawa その時は若いハウスのプロデューサーでバンバンリリースしてたのは何組かいたけど、特に俺かDJ KAWASAKIさんくらい。カワサキさんも同期だけど年齢的には先輩だった。先輩たちが「カッコ良さ」でみんなを納得させてた中、俺は若気の至で「お前らハウス聴けよ!」みたいに チョット尖ってた部分もあったから昔のインタビューも結構強気な感じだったんだと思う。


 
2007年リリースの代表曲「Kentaro Takizawa Feat. Lisa Shaw - Can't Stop」


- 今になって後悔とかしてますか?


Kentaro Takizawa いや。その時は若かったんだけど、それがあるから今まで生き残って来れたなと思うんだよね。まぁそれなりにトラブルとか、色々あったけど...。20歳代から30歳代に進むタイミングで、この業界で生き残るって実はとても大変な事だったから、結果オーライだね(笑)


- メジャーとインディース、共に活動を経験してますが、良かった部分、難しかった部分ってありますか?


Kentaro Takizawa メジャーで活動して圧倒的に宣伝効果があるってことを知れたかな。何十、何百倍って人に認知されるキッカケになった。例えば今までTシャツばっかり着ていた友達とつるんでた。でも、急にスーツとか、キラキラワンピの人に囲まれたり(笑)。地方の人との繋がりもたくさん増えたよね。雑誌やテレビにも出させてもらった。自分のステータスが一気に上がったと思う。


当時ファンがメチャクチャ増えてさ。男女問わず「一生ついて行きます!」みたいに言われて。それこそiPhoneにサインしたり、写真もたくさん撮りまくって。俺も有頂天になっちゃったりしたんだけど。3年ぐらいして、急にその広がった波がバッっと引いちゃったんだよね。ついて行きますって言ってた人はほとんどいなくなっちゃったし(笑) 活動がうまく行かなかったとか、色々理由があると思うし、ずーっとメジャーに残り続ける人が沢山いるからなんとも言えないけど。まさしく「メジャーの洗礼」を受けた。


- それは当事者にしかわからない衝撃な体験ですね...


Kentaro Takizawa ファンって純粋だから。もちろん自分の責任でもあるし。裏切られたとかは思ってない。だけど、人ってこんなもんなのか...と思ったよね。それはインディーズでは絶対に体験できない経験だったな。


- その3年間が自分の中での一括りになったんですか?


Kentaro Takizawa 2011年の『Love & Happiness』が最後にリリースしたメジャーアルバムだったね。世の中的にも当時あった「ハウスブーム」が一区切りついてたと思うんだよね。それからはエレクトロ寄りの波がグワーって来て、そういう音のリクエストが増えたよ。今思うと全然ハウスをやりきってなんかいないんだけど、当時は日本のシーンしか見てない自分の狭い視野だけだった。19歳からずーっと活動してきたから、もうやることないかもな?って制作は一度ストップしたね。


 
「Kentaro Takizawa - Keep Love Together feat. The BIG ROOM Family a.k.a Mika Arisaka & Ryohei with SAWA,Mika Sawabe」


- 冒頭でも触れていましたが、その後海外に少し移住したんですよね?


Kentaro Takizawa それまでずーっとアウトプットばっかりだったから。単純に音楽を吸収しようと思って。ちょっと燃え尽きてた部分もあったから、音楽の楽しさをまた発見できればいいかなーって気持ちもあった。当時ダンスミュージックが一番盛んなところどこかな?と思ったらやっぱりイビサがダントツで、イビサに住もうと思ったんだ。だけど、とにかく物価が高い。だからイビサから船で1時間くらいで行けて物価も安いバルセロナに住むことにしたんだよね。


- それから海外にはしばらく滞在してたんですか?


Kentaro Takizawa いや、夏限定で帰って来たよ。そこからは、なんて言うか、完全に海外かぶれみたいになっちゃって。「日本だせえぞ」みたいに(笑)。 


滞在中に『Def Mix』(90年代のニューヨークハウスの中で最もワールドワイドで大成功を収めたレーベルの一つ。「ハウスの父」ことフランキー・ナックルズを中心に、デヴィッド・モラレスや日本人プロデューサーのサトシ・トミイエなども所属)のパーティーに行って、自分の中ではイビサ、ハウス、Def Mixと自分の求めている最高の内容のはずだったのに、なぜか全然楽しめなくて。その時に自分の中で「ハウスは死んだな」と思った。逆に、ルチアーノのようなテクノやトライバルな要素のあるハウスがすげーカッコよくなってきた。





※Kentaro Takizawaスペイン滞在中の写真


- 完全にそっちのサウンドに持ってかれちゃったんですね。


Kentaro Takizawa それにルチアーノはパソコンでDJをしていて、彼のミックスの技術もメチャクチャ画期的だったから、「ただレコードやCDをかけてるだけじゃダメだ、ハウスは進化しないといけない!」と思ったよね。日本に帰ってすぐパソコンに切り替えて、ルチアーノの真似事ばっかりしてたんだよね。


- 周りの反応はどうだったんですか?


Kentaro Takizawa 正直「かぶれてるなー」って感じだったと思うよ(笑) 。俺はカッコイイと思ってやってたけどね。多分、当時の自分のお客さんが求めいた音楽と、自分のやりたい音が離れすぎちゃってたんだよ。そこでまた一気に下がっちゃって...。それでも声をかけてくれる人がいたからDJ活動は細く続けてて、それが「Bass House」に繋がって行った。


- 具体的にBass Houseをやり始めたのはいつ頃なんですか?


Kentaro Takizawa 特に「コレがBass House」って決まりが無いから、曖昧だけど今から3~4年前。でも海外にいた時に、すでにBass Houseに近い感覚の音を吸収してたと思う。グルーヴ感のあるUKのハウスシーンはヨーロッパでは当時から流行ってた。テンスネークとか、最近だとディスクロージャーとか。UKチャートをShazamで追いかけたりした。とにかく無我夢中で音楽を追いかけてた時期だった。


- EDMとかは行かなかったんですか?


Kentaro Takizawa もちろん聴いてた。実際ちょこっとやってみた時期もあったんだよね。それこそ亡くなってしまったアヴィーチーも好きな曲はあった。でも自分の中では「アヴィーチーよりもルチアーノ」って感じだった。EDMもテクノも聴いたけど結局自分の中ではハウスだったのかな。まあ、考えるより進んで触れると大事なものって分かる事が多いよね。



「ハウスのバトン」というか、俺も先輩から受け継いだモノがあって、それをさらに若い世代に託していきたいなって気持ちもあるからね


- そして満を辞してレーベルがスタートしたということですね。


Kentaro Takizawa そうだね。レーベルの「Haus it Feelin' Records」は原点回帰的な部分もある。今回リリースする新曲「Back 2 Back Bay」も90'sハウスのエッセンスもすごく取り入れてる。

    

   

- 紆余曲折して、ある意味原点回帰とも言えるハウスに戻ったような印象を受けているのですが、ずっとハウスをやられている人たちからのリアクションってどうですか?


Kentaro Takizawa 活動を一周して俺に諦めてる人って、もう曲を送っても聴いてくれないんだと思うんだよね。でも今回のリリースは幅広く送ったりして、それこそ中田ヤスタカくんからハウスの先輩のゴトウトシユキさんだったり。他にも海外の人にも曲を送ったら、それぞれちゃんとメッセージが返って来たり。やっぱり幅広く聴いてもらえる自分の立ち位置が重要。ずーっと同じジャンルだけも視野が狭いと思う。色々と意見を言う人がいることも、理解できるけど、最近は特に気にして無いかな。29歳くらいの時は超気にしてたけどね(笑)



photo by Ki Yuu


- 最近はレーベルの他にパーティーも精力的ですね。若いDJからの指示も厚い印象ですが、下の世代との交流は意図してやっているんですか?


Kentaro Takizawa うーん、2つ理由があって、意図してというのは答えになってないかもしれないけど、1つは「若いからダメ」っていう風潮もたまにあるよね?俺はそうじゃなくて「若いから凄い」っていう考え方。自分も19歳の時に先輩にフックアップされた経験があるから、できる限り若い世代にいろんな経験をして欲しいなって気持ちがある。二つ目は、精力的に活動してたら意外に若い人たちから自然と寄ってくることもある。運って言うか、ポジティブなパワーが相手にも伝わって何か開くってことがあるじゃない?


ハウスって幅広い世代に聴いてもらえる音楽だと思う。だから、あまり小さく考えないで、できる限り幅広い世代で活動した方がいいよね。


それに、音楽ってチームプレイもあるけど、結局個人の力が強くないとやっていけない部分もある。若いうちに色々経験して欲しいなと思うんだよね。それに「ハウスのバトン」というか、俺も先輩から受け継いだモノがあって、それをさらに若い世代に託していきたいなって気持ちはあるからね。


- 最後に、今後のリリース予定など、教えていただけますか?


Kentaro Takizawa 夏にかけてヴォーカルのトラックとかバンドとコラボした曲も作ったり、トロピカルな感じの曲もやってるよ、改めて、今自分で好きな曲を好きなタイミングで出せるようになったから、マイペースだけど、どんどん新しい曲を出していくつもりだよ。いつか曲が溜まったらレーベルのコンピレーションにもチャレンジしていたいね。





Kentaro Takizawa & monolog
 - Back 2 Back Bay EP


Track List
 

01.Back 2 Back Bay (Original Mix)


02.Back 2 Back Bay (Radio Mix)


Label: Haus It Feelin' Records


Forma : Digital Download


Catalog Number: HIFR004


Release Date: 2018.05.22

https://www.hausitfeeling.com/releases




Kentaro Takizawaのツアー情報はコチラ。

6/9(土) 金沢 DOUBLE

6/30(土) 姫路 Niji Bar

7/1(土) 姫路 Pigeon+

7/14(土) 滋賀 MOVE

8/19(日) 那覇 Music Bar ON


毎月第4火曜日20:00~21:00放送の「Haus it Feelin' ?」ハウスを中心に、今まで以上に幅広く独自の視点でお届けするプログラム。

https://block.fm/radios/148


今回のインタビューの撮影は渋谷の新しいカルチャーの発信地「MAGNET by SHIBUYA 109」

ここにしかない「渋谷のシゲキ」を発信中。block.fmパーソナリティー等も毎週DJで参加している噂の新スポットに遊びに行こう!

https://www.shibuya109.jp/MAGNET/




written / photo by M.A

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