テクノ、アニメ、DJ。「受け継がれるムーヴメント」 Ken Ishii × Carpainter <TREKKIE TRAX> 対談

テクノをルーツに持つTrekkie TraxのDJ/プロデューサーCarpainterが「東洋のテクノゴッド」Ken Ishiiと対面、音楽を始めたキッカケからアニメとの出会い、アルバムを作る理由、渋谷サウンドまで、音楽に対する熱い思いを語る
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2018.04.03 10:00

前作「Out Of Resistance」から約2年、「Carpainter」名義で活動するTaimei Kawaiのニューアルバム『Returning』が2017年末にダンスミュージックレーベル「TREKKIE TRAX」からリリースされました。2度のアメリカツアーを経て、DJ / プロデューサーとしてもさらなる成熟を遂げたCarpainter。彼のキャリアとサウンドのルーツは、意外にも「テクノ」が起源となっていたのはご存知でしょうか?


そんなCarpainterが尊敬してやまない「東洋のテクノゴッド」ことKen Ishiiとの対談がついに実現。お互いのルーツ、制作に対してのこだわり、そして過去〜現在〜未来のシーンまで、block.fm独占のインタビューで音だけでは伝わらない2人のアツい想いを語ってくれました。




クラブミュージックを作る上でWIREの存在は大きかった




Ken Ishii: SEKITOVAくん経由で紹介してもらったのが出会いの最初かな?Visionで開催していたテクノのイベントでも一緒だったけど、あの時は本当に挨拶程度だったんだけれどね。


Carpainter: 自分が初めて「クラブミュージック」を生で聴きに行ったイベントが「WIRE」だったんです。兄が中学2年生、僕も小学生だった時に行ったので、その時クラブミュージックを聴ける場所がWIREしかなくて。


Ken Ishii: 確かに、未成年じゃクラブに入れないもんね。


Carpainter: フェスだったら年齢関係なくみんな行くから。親も「それなら大丈夫」ってことで。小六から高校くらいまで毎年通ってたんです。それで夕方の6時から朝の6時までずーっと踊り続けるみたいな。


その時に感じた「デッカい音」に「踊る」って言う感覚が、自分の根底に生まれたんじゃないかな、と思います。だから自分の中にはテクノのノリが若い頃から染み付いてて。クラブミュージックを作る上でWIREの存在は大きかったです。


Ken Ishii: そう言ってくれるのはプレイしていた側としては本当に嬉しいね。


Carpainter: 小六の時に行ったWIREがちょうどIshiiさんがライブセットをやった時で。自分にとって「全く新しい音楽」と言う感じで衝撃でした。石野卓球さんやシン・ニシムラさんもすごく聴いていて。デトロイトだけでなく、当時の日本のテクノアーティストの曲にはたくさん影響を受けました。


だから僕は当時から、シンプルな4つ打ちテクノを聴いていたので「自分でも作れるかも?」と思って、持っていた電子ピアノを使って見よう見真似でシーケンサーを組んでみたんです。それこそモノマネで始めた感じですね。



アルバム『Returning』のコンセプト





Carpainter: 前回のアルバムリリースからの2年間でやったライブセットの内容をそのまま『Returning』というアルバムに落とし込みました。リリースしたレーベル「TREKKIE TRAX」でも、この2年間でアメリカでツアーに行ったり、アメリカのアーティストを日本に呼んだりして、かなりUSダンスミュージック・シーンに食い込んだ時期でもありました。


なので、曲の形態もヒップホップやトラップなノリも入れつつ、自分のルーツでもあるデトロイトのテクノや好きな質感も入っています。


Ken Ishii: まず曲の作りがしっかりしてると感じたね。ビートのバリエーションも、今のトレンドを入れつつも、レイブっぽい要素も入っていたり。僕もちょうどCarpainterくんと同じ歳の頃はDJする時も曲を作ってる時もなんでも楽しい!って時期だったから。青春の1ページみたいに聴いててニヤッとしちゃう要素が含まれてた。


あとは、僕もDJとしてはテクノをやっているからそう感じるんだと思うけど、今の細分化された時代の中では中々プレイできないサウンドでも自分が本当に聴きたいなぁという要素をしっかり入れてるなと思った。アルバムの中で。


Carpainter: アルバムの中にいろんな文脈やストーリーを入れて、ビートやアートワーク、全体のストーリー性にUKガラージやテクノや自分が今まで経験したサウンドを落とし込んだおかげで、色々な方面の方からいい感想がもらえましたね。


Ken Ishii: アルバムをリリースしたことでのいいフィードバックだよね。それこそ、EPやシングルリリースだと、その音楽が好きな人だけにしか届なくて、範囲が狭まってしまうことが多いけど。


自分のやりたいことや思っていることを色々と落とし込んでアルバムを制作することで、たくさんの人に聴いてもらえるチャンスを作れると思う。作品としての評価以外にもアルバムを努力して作るという制作過程も含めてね。アーティストとして大きなプロジェクト全体を評価してもらえることはとてもいいことだと思う。


アートワークはリアルじゃない





Ken Ishii: 僕が楽曲をリリースをし始めた頃は、まだダンスミュージックが「西洋の音楽」という印象が強かった。


だから、いかに自分がこの世界に入っていくかを考えた時、自分にしかないものを探した結果、音楽以外に他にも武器があった方がいいんじゃないかと。そこからラッキーな人の縁で森本(晃司)さんと繋がって、リリースまでたどり着いて。。。


元々自分はDJ上がりのキャリアが起点じゃない。本格的にリリースがスタートしてからDJ活動が活発になった。「現場感」で自分をプッシュするよりも、音楽があって、ヴィジュアル、そしてストーリーがあって。オールドスクールなアーティスト像をキープしたいなという想いから常にヴィジュアルにも力を入れてきた。そうなるとアートワークもクリエイティビティの大きな柱だし、実写というよりもアニメーションだったりCGだったり何か自分の音楽に結びつきやすい形で常に表現していたと思う。


*森本晃司:日本のトップアニメーター。クリエイティブチーム「phy」主宰。アニメ映画『AKIRA』をはじめ『MEMORIES』『アニマトリックス』などに参加、国内外で高く評価される。Ken Ishiiの「EXTRA」PVはヨーロッパにジャパンアニメブームを起こす程の話題作となった。



Carpainter: 僕のアートワークはオーストリア人のアニメーターのBahi JDにお願いしました。僕もアートワークは人の縁です。


TREKKIE TRAXのリーダーを務めるfutatsukiがアニメーターをやっていた繋がりもあって、Bahi JDとはすでに友達だったんです。なので、アルバムのアートワークも誰かに描いてもらおうとなった時にも、ごく自然な流れでお願いすることになりました。


僕の中でお願いした理由は「実写ではない」という表現の部分なんです。僕がテクノで好きな部分は、踊れるとかコンピューターで作るだけではなく、テクノの奥の中にある「リアルじゃない」っていう質感。それがすごく好きなんです。現実世界では無いような質感。それをアートワークで表現するのは実写ではなくてアニメーション、という感覚を持っていたからこのようなビジュアルになりました。


Ken Ishii: そもそも、僕らは音楽をやる上で「バンド結成!」とかっていう道を選ばなかったわけで。。。バンドならバンドのカッコいい見え方ってのはあるよね?ライブで迫力ある見せ方したりとか。そういう部分を通らなかったから、逆に二次元世界や現実世界にない質感に対してオープンなのかもしれないね。


メインストリームと言われているポップスとは最初から離れた位置からスタートしてる。だから自由に表現できるという意味ではアニメやCGと結びつきやすいのかもしれない。


僕が森本さんと仕事をした時はアニメーターの方でテクノを聴いていたなんて人は本当に少なかったけど、この20年間でクリエイター全体の環境もかなり変わってきたと思うし。




Ken Ishii TomorrowlandでのDJ (photo by Tomorrowland)




同じ目標やヴィジョンを持って切磋琢磨できる仲間が近くにいるのが大事


Ken Ishii: 自分がアーティストとしてキャリアを作り始めた時、憧れの存在がデリック・メイやジェフ・ミルズだった。なんとなく「ONE AND ONLY」なスタイルがカッコいいなと思ってテクノを始めたというのはあるかな。


もし自分がヒップホップをやっていたら、チームを作ったりしたかもしれない。DJだったらアシスタントや弟子をとってたかもしれない。でも僕は常に自然な形でソロで活動することが多かった。


Carpainter: 「TREKKIE TRAX」を始めた時、僕たちはネットからフリーで曲をリリースし続けようとスタートしたんです。ですが、現場のパーティーやイベントが本当に好きで。半年間リリースもなくひたすらパーティーやDJばっかりという時期もありました。


最近はリリースだけじゃなく、海外アーティストのネットワークも最終的に「どれだけ楽しいパーティーをするか?」という要素が根底にあると思ってます。クルーがいて、イベントがあって。それって曲を作ることと同じくらい僕は想い入れがありますね。


インターネットやSNSが普及して同じ趣味嗜好の仲間が見つけやすいってことが僕らの活動の助けになってるのかな?と思います。


Ken Ishii: 僕らの時なんかイベント会場でもらうチラシの下に電話番号が書いてあって、それをちぎって情報をもらう時代だったから。それに比べたらコミュニケーションの取り方も随分違うよね。


Carpainter: 逆に1人でやっていくぞというスタイルで音楽活動していく人はこれから滅多にいないかもしれませんね。


Ken Ishii: とはいえ世界的に見ても昔からレーベルのショーケースやフェスティバルはたくさんある。何か大きなムーヴメントができるときは仲間の存在がすごく重要。


同じ目標やヴィジョンを持って切磋琢磨する仲間が近くにいるっていうのはすごく大事。デトロイトでもホアン・アトキンスからデリック・メイやケビン・サンダーソンに受け継がれて、さらに多くのデトロイト出身アーティストたちに影響を与え続けたおかげで、現在もシーンとしてものすごい歴史と影響力を持っている。


イベントやレーベルをやっていくのが前提とすると、仲間を集めるのは必須だよね。


ロックスターみたいにもの凄く飛び抜けたアーティストが出て来て、カリスマが人を惹きつけるってことは、今の時代ではよっぽど稀なケース。一方で誰でもDJができるっていうシーンになったからこそ音楽をやりたい人たちが自然と集まって仲間を作ってパーティーやレーベルを通してローカルなスターが世界に羽ばたいていく形が出来ているかもしれないね。



TREKKIE TRAX CREW


Carpainter: アトランタって言うとサグいトラップ、ベルリンだとダークなテクノとイメージがありますよね。都市を例えた時に「東京」「渋谷」の音といったら「TREKKIE TRAX」っていう風にしたいなと思ってます。僕らがパーティーをスタートさせたホームタウンでもありますし。


日本のクラブミュージックの根底にあるようなサウンドって、まだ内向的な気もします。だから、僕らがやっている音楽が海外から東京のサウンドって評価されたら嬉しいですね。


Ken Ishii: Carpainterくんたちの志は凄くいいよね。僕も中学くらいから渋谷に通ってたりしていたから、渋谷がなかったらこの音楽に辿り着けなかったし、ここまで続けられなかったと思う。昔「渋谷系」があったくらい、渋谷があったから活動できてるってアーティストも多いんじゃないかな?


Kenさんの次のアルバム楽しみにしてます




Carpainter: 今回のアルバムで自分のやりたいことはかなり詰め込めたなと感じてます。ライブセットと比較して聴いてくれているオーディエンスもいて、いいフィードバックがあったのは嬉しかったですね。


まだ次にコレと言って固まっているものはないんですが、レーベルと話してもっと歌モノの楽曲を作ったりしようというアイデアは浮かんでますね。それからTREKKIE TRAXはヨーロッパで展開が少ないので、レーベルとしてまだ開拓できていないシーンに入って行きたいなと思ってます。


Ken Ishii: まだ20代なんだよね?その世代だったらなんでもできる。とにかくガンガン動いて、音楽のスタイルも色んなことにチャレンジしてほしいね。


僕も本格的にキャリアをスタートさせたのが23歳くらい。10周年、15周年の時に出したコンピレーションで昔の曲を引っ張り出してみると「こんな曲も作ってたんだ!」とか「こんなレーベルからもリリースしてたんだ!」とか積極的に活動してたのが思い出せる。今できるときに最大限やるってのをオススメするよ。歳を取るとだんだんスローになっていくからね(笑)


Carpainter: 僕はKenさんの次のアルバムリリースが楽しみです。

Ken Ishii: 今年作り始めるぞ!と言っただけで、出るぞ!といったワケではないんだよね。。。笑


とはいえ、ここ何年かでいくつかアイデアになるデモみたいなのは作っていたけど、アルバムにコラボレーションみたいなものも入れたいなと思っていて、いくつか一緒にやりたいアーティストに声をかけているよ。ただそれがアルバムの曲になるかどうかはまだ分からないので、ざっくばらんに進めているかな。アルバムに関しては何かを狙っているというよりも、ここまで来たら純粋に作りたいものを作ろうという感じで。具体的にどうこうって訳ではないけど、とにかく自分が作りたいもの、自分らしい音楽を作ろうかなと思ってます。


* * *



Ken Ishii、Carpainterの最新リリース情報はコチラ


Ken Ishii:KIYD - DUAL REALITY


'90年代からKen Ishiiのアートワークを手がけてきた山下ヤスノブ氏とのプロジェクト「KIYD」。第一弾として、実験的スタイルの音楽+オリジナル・デザインUSBメモリを限定リリースする。タイトルは「DUAL REALITY」。

収録曲は、いわゆる4つ打ちのテクノではなく10分を超える エクスペリメンタルなスタイル。オリジナル・バージョン3つ(ハイレゾ 24bit 48kHz、CDクオリティ 16bit 44.1kHz、320kbps MP3)、リバースト(逆回転)・バージョン、左サイドのみからの出力、右サイドのみからの出力、国際標準ピッチである440Hzから上の周波数のみの出力、そしてそれ以下の周波数のみの出力、の8バージョン構成。

また、音楽ファイルの他に 3D eBooklet 、ウォールペーパーを収録。通常のCDや配信リリースはなし。Ken Ishii主宰レーベル 70 Drums の直営オンラインストア「70 Drums Web Store(https://70drums.stores.jp/​​)」のみにて限定発売中。価格は ¥3,980 (税・送料込み)。 


Ken Ishii「山下さんとの何気ない会話から1年半、音楽もその音楽を乗せるモノも完全にオリジナルなものを作ろうと二人で幾度となくアイデアを煮詰め、ついに完成しました。二人のこだわりと遊び心を感じてもらえれば嬉しいです。」


 

その他にも4月、5月はリリースが続くKen Ishiiのプロジェクト。勢いの止まらない活躍にますます注目だ!

Ken Ishii release info April & May

Ken Ishii - Dual Reality / KIYD1 [70 Drums]

Ken Ishii - LC Circuit [Devotion] (Incl. remixes by Frank Biazzi, Takaaki Itoh, A.Mochi)

Ken Ishii feat. Jazztronik - After The Rainstorm (Hideo Kobayashi Remixes Remastered) [70 Drums]

Van Czar & Ken Ishii - Kitai [Bonzai] (Incl. Robert Babicz Remixes)

Uncertain - New Jack Swing (Ken Ishii Remix) [Advanced]




Carpainter - Returning Remixes




『仮面ライダーエグゼイド』オープニンテーマである「三浦大知 - EXCITE」を共同作曲・編曲し、オリコン1位を獲得するなど、着実にそのキャリアを歩んでいるDJ/トラックメイカーの「Carpainter」。2017年12月に発表した自身の2ndアルバム『Returning』のRemixesが登場!


イギリス・グラスゴーを拠点にFool's GoldなどからもEPをリリースする「Nightwave」や同じくイギリス・ロンドンを拠点にGrimeやUK Garageを基調とするサウンドメイクが人気の「Gundam」そして日本を代表する奇才ビートメイカー「食品まつり a.k.a Foodman」、HVNS & KOSMO KATによる新ユニット、iivvyyやTREKKIE TRAXからは同レーベルの創設者であるSeimeiをはじめ、Amps、gu^2なども参加している。


Carpainter - Returning Remixes


発売日 : 2018/03/28

Track List

1. Changeling Life (iivvyy Remix)

2. Much More (gu^2 Remix)

3. Sliver Glass (Foodman Remix)

4. Returning (Nightwave Remix)

5. Returning (Amps Remix)

6. Returning (Seimei Remix)

7. Blue Carllion (Gundam Remix)


iTunes : ​https://itunes.apple.com/jp/album/returning-remixes/1362556186

Bandcamp : ​https://trekkietrax.bandcamp.com/album/returning-remixes

Spotify : https://open.spotify.com/album/6yYzXxq6PPLLtG6SwpDTdQ


 


そしてインタビューは渋谷道玄坂のミュージックバー「BPM Music bar」で敢行。ハイクラスのサウンドシステムと、毎週テクノ、ハウスを中心としたブッキングでカジュアルにお酒を楽しめるグッドプレイス。

http://bpm-shibuya.com




Carpainter、そしてTREKKIE TRAXがリリースする最新の音源は毎週水曜日放送の「TREKKIE TRAX RADIO」でもチェック!





written by M.A

Photo by Trekkie Trax, M.A



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