Kダブシャインはなぜトランプを支持するのか?☆Takuに語る、ソーシャルメディアでの発言の真意

アーティストが語る“政治”。トランプ支持者としてSNS等で発信を続けるKダブシャインに☆Taku Takahashiがインタビュー。彼はなぜトランプを支持するのか、そしてフェイクニュースの捉え方とは。
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2021.01.11 10:00

はじめに


文:☆Taku Takahashi

今、米国だけでなく日本のTwitterが荒れている。震源地はドナルド・J ・トランプだ。初出馬のときから彼は過激な発言を繰り返し、気づけば注目の的となっていた。今回の大統領選の投票結果を見ても確かなのは米国の世論がほぼ半分にわかれていること。


日本にもトランプ支持者が存在している。自国のリーダーでもない人のためにデモをする人たちもいる。そこは僕にとって非常に興味深いものだった。明記しておくが僕はトランプ不支持者である。彼の言動、思想、道徳は僕の考え方や理念と正反対だからだ。ただ、日本のトランプ支持者はどういった考えで彼を応援しているのかに興味を持った。


同時に以前から、喉につっかかっているものが一つある。それは、日本ではアーティストやクリエイターなど影響力のある人たちが政治発言をするのはタブーとされていること。僕はもっとアーティストたちが自由に、そしてオープンに政治の話をする環境があっていいと考えている。そこで、トランプ氏について数多く発言をしているKダブシャイン氏からお話を聞けないかTwitter上でお願いしたら、快く受けてくれた。


このインタビューでは、彼がなぜトランプ氏を支持するのか?彼にとってのフェイクニュースとは何か?そしてアーティストの政治発言はありか?この3つに焦点において質問をしている。


今回はあえて自分と全く違う思想を持たれている方との対談となる。このコラムは自分の思想を彼に押し付けるものでもなく、逆にKダブシャイン氏が私に彼の考えをおしつけるものでもない。シンプルに彼の考えや価値観をお聞きするというものになっている。トランプ支持者も、不支持者もこれを読んで、自分なりの解釈をしてもらえたらと思う。


Kダブシャイン
日本語の歌詞と韻(ライム)にこだわったラップスタイルが特徴。
現在の日本語ラップにおける韻の踏み方の確立に大きく貢献したMCと呼ばれている。
その作品は日本及び日本人としての誇りを訴えかける歌が多く、日本人MCとしては「児童虐待」・「シングルマザー」・「麻薬」・「国家」・「AIDS」など様々な社会的トピックを扱う数少ないMCとして知られ、その洗練された文学的な韻表現と社会的な詩の世界は様々なメディアで高い評価を獲得している。
また、コメンテイターとしても、数々のメディアに登場している。
https://twitter.com/kw5hine



※今回のインタビューは2020年11月20日に行われました。



なぜトランプ支持者となったのか?


☆Taku:今回の対談ではKダブシャインさんに、トランプ大統領に対する見方と、今回の大統領選についての考えを聞いてみたいと思っています。その中でも最初に、なぜトランプさんを支持することに決めたのか、その理由を教えてもらえますか?


Kダブシャイン:個人的な理由としては、僕は16歳でアメリカに渡り高校と大学に通い、人格形成する時期をアメリカで過ごしてきたことが大きい。アメリカ人や彼らの理念に感情移入する機会が増えたし、感覚も生活スタイルもアメリカナイズされていった。だから今でも、身体の1/3はアメリカ人なんじゃないかなと考えることがあります。そういう意味で、自分がアメリカ人だったらどう思うのか、という考え方でトランプ政権や大統領選を見ている部分が大きいです。


それから、世界のリーダー的ポジションとしてのアメリカ大統領という現実を改めて考え直してみたんですね。日本人も世界市民として、アメリカの大統領から直接的な影響があるよね。そう考えていたら、どんどん引き込まれていったんです。


☆Taku:元々、トランプさんに対してはどういう感覚で捉えていましたか?そして、一番共感したポイントはどこだったのですか?


Kダブシャイン:2016年の選挙前は、ヒラリー・クリントンよりはマシだと思ってました。


☆Taku:そう思われた理由は?


Kダブシャイン:まずはメール問題が大きかったかな。そして大統領選の討論会の時、ヒラリーはトランプの質問や指摘に全然答えてなかったことも大きい。自分のアジェンダをずっとカメラに向かって喋ってた。一方でトランプは、ヒラリーが指摘した点を受けて返していたのね。それを見た時、ヒラリーは政治家の皮を被ったセレブリティだと感じて信用できなくなった。それでトランプがいいかなと思うようになった。自分には投票する権利がないしアメリカ人でもないけど、もし自分がアメリカ人だったら選べないな、と悩むように見ていたんです。



☆Taku:そこは事実ではなくて、Kダブさんの主観ですよね。


Kダブシャイン:自分の目で確認したものを事実とすれば、それに基づいた主観です。


☆Taku:以前はバーニー・サンダース支持でしたよね?


Kダブシャイン:そう。民主党氏名争いで、バーニー・サンダースとヒラリーの一騎打ちになった時、ヒラリーが先に勝利宣言したんだよね。CNNの生放送とか、メディアが全部彼女の発言に乗っかって、バーニーがまだ敗北宣言をしていなかったのに、負けが決まったかのように世論がヒラリーに傾いた。あのやり方は卑怯だと思った。そういうのを見ているとあまり印象が良くなかったね。


サンダースが落ちた時点で落胆した。だけど、トランプもサンダースと似たようなことを言っていたんですね。南部の労働者層に向けて雇用を復活させる話とかを聞いて、似ているなと気付き始めたんですよ。



トランプはバーニー・サンダースに似ている?


☆Taku:どういった部分でそう気付いたんですか?


Kダブシャイン:2011年に起きた「ウォール街を占拠せよ」(Occupy Wall Street)活動を含めて、アメリカで2010年代に続いた上位1%の富裕層が富を独占していることに対して、貧困・格差の是正を求める戦いで考えると、サンダースは反エスタブリッシュメント側、99%側の人間。富の分配問題を改善しようと、サンダースは声高にずっと言ってきた。でもよく話を聞くと、トランプも同じ意味の話をしているんですよ。当時、演説を見てそう感じました。


☆Taku:バーニー・サンダース支持者が聞いたら激怒する話ですよ。


Kダブシャイン:根底は違うと思います。ただ、1%に集中している富を、99%側にできるだけ配分したいという考え方は同じだと思う。2008年と2012年に共和党から立候補した(テキサス州の下院議員)ロン・ポールっていう政治家がいるんですよ。彼も当時、中流層を助けたいと訴えていた。サンダースが立候補する以前からね。それで「ロン・ポール旋風」みたいな動きも起きて、若い層から人気を集めた。だけど結局は候補には残れず。その時には「ロン・ポールがよかったのにな」と思った。主張が民主党の政治家みたいだけど(ロン・ポールはイラク戦争やアフガニスタン戦争にも反対してきた)。


今は、彼の息子のランド・ポール(ケンタッキーの上院議員)が政治家になって、父親の思想を受け継いでやっているんです。だからサンダース支持者が激怒しても、僕は構わないけれど。


☆Taku:トランプさんは明確に1%と99%の話もしていますか?


Kダブシャイン:してる。僕ね、演説をくまなく見たの。就任演説から国連の演説や一般教書演説も見た。前回の一般教書では「ブルーカラーブームが来た!」と伝え、2019年の国連では「グローバリストの時代は終わりだ!」と宣言したのは紛れもない事実ですね。就任演説でも「ワシントンの力を君らに戻す」と訴えていた。パンデミックが始まってからの記者会見も細かく見てきた。その中では完全にその話をしてますよ。色々なところで「中流層を大きくする」ということを言っているんですね。それって正しいなと思うし、理想だと思うんです。就任時のスローガンの中で「The Forgotten Men and Women of Our Country Will Be Forgotten No Longer」と言っているんですね。



☆Taku:もう見捨てないよ、という意味ですね。


Kダブシャイン:今までスポットライトが当たっていなかった米国内で困窮していた人たちに向け、脚光を当てる政策を就任以来この4年間、トランプ大統領が実現してきたというのは自信を持って言える。



支持されるべき政策


☆Taku:4年間の政策の中で、具体的にはどんな部分を評価されますか?


Kダブシャイン:「オポチュニティゾーン」っていう税制プログラムが作られた。貧しい地域を復興するために低所得地域に投資をすると、税優遇を受けられる仕組みなんです。貧しい地域に雇用と生産力を高めて、少しずつ繁栄させるという経済政策をやってきた。


参考記事:銃殺された人気ラッパーが温めていた意外な夢 (東洋経済オンライン)


あとは「ファースト・ステップ・アクト」という司法改革法案も作った。これは軽犯罪でも捕まって有罪判決を受ければ、数十年の刑期や終身刑を受けることになるアメリカで、受刑者に対する判決や刑罰を緩和させるという刑務所改革の法案。それによって、トランプ政権は、服役する人たちの経歴を見直して、4000人以上が恩赦で釈放されたんです。その釈放された人の95%以上は黒人だったんですね。


参考記事:91 Percent of Inmates Freed By First Step Act Were Black


そもそもそんなに大勢の黒人が収監された理由は、スリーストライク法(三振法)と呼ばれる法律ですが、これを支えてきたのが、1994年にクリントン政権が作った「クライム・ビル」という法律なんです。で、このクライム・ビルを推していたのは当時上院議員だったジョー・バイデン。これによって、収監される人がどっと増えた。


「ファースト・ステップ・アクト」は、カニエ・ウェストとキム・カーダシアンがトランプに進言して、応援して進んだんですよ。そういう部分からも、僕も政策を詳しく見るようになっていった(キム・カーダシアンは刑務所改革のロビー活動も行っている)。



☆Taku:なるほど。


Kダブシャイン:その他にも、薬の価格を下げたり。退役軍人が優先して受けられる病気の治療システムを改善したり。「Forgotten」な人たちに対してやってきたことは多いんですよ。


あとは、人身売買被害者の支援と捜査です。イバンカ・トランプと司法長官のビル・バーが解決に向けて動いて、犯罪組織との戦いと支援活動のための追加予算を決めたんですね。それが全然ニュースにならない。



例えばオハイオ州の捜査では、犯罪組織の179人が人身売買で逮捕され、109人の被害者が救助された。ルイジアナ州や、バージニア州でも犯罪組織を逮捕できた。でも起きた事実を、各地方のCBSやABC放送局は自分たちで報道しているんですが、それが全国放送になると一切出てこない。ニュースサイトにも掲載されなかったりするんです。



☆Taku:どうしてトランプはそれを指摘しないんでしょう?


Kダブシャイン:指摘はしてるけど、メディアが載せないのだと思う。FOXニュースではやってますよ。イバンカ・トランプと司法長官が記者会見をやっていた。捜査だけじゃなくて、人身売買で保護した子供を社会復帰させるプログラムを作って、各地域の団体に助成金を出しているんです。でもほとんど報道されていないですよね。


☆Taku:一方的な反対意見の報道があまりにも反トランプ派メディアは多いと。


Kダブシャイン:そう。7月6日に、報道官のケイリー・マケナニーが、BLMの運動が起きた同時期に暴力事件が色々起きていたことに触れてるのね。BLMが直接の原因かどうかは分かりませんが。ニューヨークでは44件の銃撃事件で11人が死亡したり、シカゴでは75人が撃たれて13人が死亡した事件がアメリカ各地で起こった中で、その中の5人が子供だったと、結構強めに発言していたんですね。でも記者会見の場で記者たちは子供や家族、コミュニティについて質問をしないんですよ。ジャーナリズム精神はどこに行ったのか?




FOXニュースが機能する理由とは?


☆Taku:Kダブさんは、FOXニュース以外は全部フェイクニュースだという風にも言われていました。


Kダブシャイン:メインストリームなメディアがフェイクニュースのメディアで、それに対するオポジットエディトリアル(Op-Ed)みたいな立場としてFOXニュースが機能していると言っている。


☆Taku:フェイクニュースとおっしゃられる理由は何ですか?


Kダブシャイン:トランプ政権で国民に支持されている政策について、多くのメディアは報道しないですよね。フェイクニュースが編集した情報を見ると、トランプを狂った暴君のように見せようとしているとしか感じられない。切り取られて放送されるニュースを見ると、やっぱり偏向しているなと思うんですよね。


☆Taku:逆に、FOXニュースがフェイクニュースではないという根拠はどこにありますか?


Kダブシャイン:トランプの言葉を信じて、そのままの言葉を載せるからかな。自分を引きずり下ろそうとするメディアよりは、応援してくれるメディアを信用したくなるのは心情じゃないですか。なんで、みんなそんなにFOXを信用しないのかな?反トランプ派のメディアはフェアじゃない。


☆Taku:フェイクニュースかどうか判断する基準の一つは、どうメディアがトランプを報道するか、そのスタンスによって決まっていると考えているということですね。


Kダブシャイン:そう。トランプに関する報道だけだから。それに対するカウンターエディトリアル的なポジションにFOXニュースは入っている。何かをメディアで言われると、それを鵜呑みにするのが今の時代。だけど本当は、個人が自分の中で情報を熟成させて、今まで生きてきた感覚や歴史観などで考えた答えを見つけるべき。


「ポートランドは火の海になっています」と暴動の動画をリアルタイムでポートランドから配信してくれる人がいれば、その情報は局地的な内容かもしれないけれど、現実に起きているという事実を証明してくれる。そういう形で情報はどんどん出てくる。でも、それをメインストリームメディアが報道しない。逆に僕が出すと「それはフェイクニュースだ」と言われるし。フェイクニュース合戦みたいだよね。自分が信じたくない情報は全てフェイクニュースみたいに捉える人が多い気がする。両方の意見を報道するのがメディアの役割だけど、それを怠っていると僕は感じている。





選挙に不正はあったか?


☆Taku:大統領選挙に不正があったと思いますか?


Kダブシャイン:それは、はっきり言ってわからないです。僕は一次情報しか信用しないようにしている。だからロイターやAPの報道も信じない。もうちょっと時間をかけて、現場で検証している人が判断しないとわからないんじゃないかと思う。


☆Taku:KダブさんのTwitterを読むと、不正があったと考えているという風にも受け止められませんか?


Kダブシャイン:不正だったら良いなと思っている。希望的観測。なぜならあと4年間、トランプに居て欲しいから。不正があれば、選挙が無効、または再投票。不正ではないという証拠が出るまで、僕はどちらか分からない。


☆Taku:根拠はどこにありますか?


Kダブシャイン:僕が見ているメディアやニュースソースは、不正が行われた点を掘り続けている。逆に、フェイクニュース・メディアは、この4年間で社会を劣化させて、酷くなってきたから、メディアに対しても疑いを持っているんですよ。


ギャラップ調査だとね、(2016年の)4年前より生活が楽になったかという調査で、56%が楽になったと答えている。2020年選挙前にそういう統計がでているのに、この選挙結果だと納得いかない部分がある。


☆Taku:なるほど。


Kダブシャイン:不正が無いアメリカ、と考えるのは聞いてて爽やかだし理想的ですよね。だけどアメリカの政治や政策を見ていると、理想や正しいことばかりでは無いと思う。だから今回の選挙も、怪しい部分があれば追求すべきだと思っているんです。


☆Taku:僕もアメリカの政治家はクリーンじゃないと思っています。でも不正に関しては、共和党が出している論調やエビデンスに信憑性を感じることもないです。


Kダブシャイン:僕も100%自信はないですよ。分からない。でも完全否定もできない。なので僕は、一番大事なことはトランプ本人が発言するか、ホワイトハウスのスタッフ、例えばイバンカ・トランプや、報道官のケイリー・マケナニーとかが発言するべきと思っている。


☆Taku:世の中に出てくる情報の本質をどう読み解くか、重要になってきますね。


Kダブシャイン:元々民主党の地域、ブルーステート(青い州)から出てくる情報に関しては、そっち寄りなんだなと思って見ますね。レッドステート(赤い州)は以前と変わってないと思うけど、若い人や黒人層で以前は民主党支持だった人たちが、今回の選挙では共和党支持に変わったことは興味深いですよね。以前はそういう人たちは「民主党から共和党に鞍替えしました」って発言してこなかった。でも今回は大勢出てきて、ソーシャルメディアで発言したり、メディアでも発言した。そういう人を見る機会が増えたってことが大きな変化だと思う。



ハッシュタグ「#walkaway」が流行っていたのね。これは元々民主党側にいた人や、無自覚で民主党寄りだった人が、嫌気が指して共和党に鞍替えしたというムーブメントなのね。


他には、イギリスでBrexitがあったでしょう。アメリカでも黒人が民主党から出ていくということで「Blexit」というムーブメントが生まれた。その周りの人たちは、僕はある意味一番ヒップホップを体現している人だと感じている。




日本人アーティストはなぜ政治的発言をしないのか?


☆Taku:Kダブさんは、日本の音楽シーンでもいち早く政策を批判する発言や音楽をされてきた先駆者でもあります。「さんピンCAMP」では、厚生省に向かって「薬害エイズ」と叫ばれたり。


Kダブシャイン:政治理念とかそこまで立派なものじゃないよ。「みんなの共通の敵だぞ」ということを指摘していたつもり。


☆Taku:日本人アーティストや俳優さんたちは、どうして政治的発言することに躊躇すると思いますか? 以前、きゃりーぱみゅぱみゅさんがSNSで政治の話題に触れた時、めちゃくちゃ叩かれたということもありました。


Kダブシャイン:叩いたのはアーティストのファンじゃない人たちでしょう、きっと。アンチは何でも叩くからね。そういう状況に萎縮してしまうアーティストも良くないと思うよ。アーティストはアーティストである前に、市民であって、個人だからね。お金払ってライブに来てくれたり、グッズ買ってくれるファンがいるアーティストは、ファンの考えを代弁することができると思っている。ファンの人たちが普段生活する中で、「もう少し給料が増えて欲しい」とか「仕事がこう変わって欲しい」とか感じることがあるとして、それが社会構造的な問題に原因があるとすれば、アーティストはファンのために社会に対して問題提起すべきだと思う。アーティストの仕事も順調で裕福な生活もあったとすると、「私の音楽をいつもサポートしてくれるファンのみんなが、普段の生活が幸せじゃないとすればそれは問題だ」と感じるアーティストはいるはず。テイラー・スウィフトとかはそういうスタンスで発言しているんじゃないかな。


☆Taku:アーティストも市民ですから、発言の権利はありますよね。


Kダブシャイン:権利の前に、僕は、民主主義は政治家に任せっぱなしでは駄目だと思う。市民レベルでコミットが必要。投票で政治参加するとか、地域に対してとか、自分が参加しないと民主主義じゃない。


☆Taku:影響力のあるアーティストが政治的発言をする時、アーティストはどれほど責任があると思いますか?


Kダブシャイン:僕はあまりないと思ってる。ただ、市民としての責任はある。発言して、それが間違っていたら、みんなでその間違いを共有すれば次の間違いには繋がらない。それが良いと思うな。現状を少しでも打破してくれる存在がいてくれるなら、僕なら藁にもすがる思いで応援したい。


☆Taku:アーティストでも自分のスタンスを発言する人がいる中で、間違った情報や偏ったスタンスで意見を言ってしまう人もいると思います。


Kダブシャイン:僕はポリティカル・コレクトネスにも疑問を持っているところがあります。どんな議論もポリティカル・コレクトネスで話を進めていくと、表現や言論の自由がだんだん狭まっていくと思う。そうなっていくと、思考の自由も遠慮がちになってくる。思考停止に近づいていくんじゃないかと。ケースバイケースだったり、ゆっくり議論を進めて考えてもいいんじゃない。


☆Taku:世の中が結論を求めすぎですか?


Kダブシャイン:結論を出すより、議論する方がいい。もし言論の統制が20年も30年も続けば、30年後の世界だと、口に出すのも憚られる言葉ばかりで、発言できなくなってしまう。ボキャブラリーはその人の現実。ボキャブラリーを少なくすれば、その人が見える社会が狭められる。特定の言葉をずっと使わなければ、思考から消えていく。嫌なものでも見ておけ、という感覚も大切だと思う。


☆Taku:差別的発言はポリティカル・コレクトネスの話の中ではどう扱われるべきだと思いますか?


Kダブシャイン:見る側、聞く側のリテラシーが高ければ、何も怖くないと思う。


☆Taku:そのリテラシーは高いのか、低いのかで考えれば、僕は高くないと考えちゃうんですよね。


Kダブシャイン:もしTwitterがマスメディア化してきたなら、それはマスメディアとしてはいいんじゃないですか。ただ、フリーメディアみたいなものは存在するべき。自由な言論空間は、蓋をされた空間よりも必要かなと僕は思いますね。


☆Taku:差別発言は受け入れられるべきだと思いますか。それともダメですか。


Kダブシャイン:人種差別は絶対無しですよ。性差別も絶対ダメでしょ。


☆Taku:補足ですが、なぜこの質問をしたかといいますと、言論の自由の中でヘイトや差別が流れてもいいと感じた人たちに、Kダブさんが差別主義者だと思われる可能性があったので。


Kダブシャイン:自分の意思でどんな人種や肌の色に生まれるかは決められない。自分で決められないことを指摘して、憎しみの対象にするのは分かってない人だと思う。


☆Taku:TwitterやYouTubeでの発言も、結論を誰かに押し付けたりするのではなく、情報をもっと議論しようという感覚でしょうか?


Kダブシャイン:バイアス無しで、トランプの素顔を汲み取って理解したら、もっと好きに慣れるし、政策もいかに頼もしいものかも見えてくるはず。だから僕はTwitterやYouTubeで、トランプをよく知ればこの選挙が楽しくなるという意味でやってきたんですね。選挙の裏側が分かるとか、そういうことが狙いじゃない。


☆Taku:メディアが流している情報を受け取るんじゃなくて、違う視点があるよということを見せたかったということですね。


Kダブシャイン:1番伝えたかったことは、世の中のトランプ像があまりにもトランプ支持者の見方とかけ離れていた。その事実を知ってもらいたかった。それを押し付けるわけでもない。理解しろと命令しているわけでもない。「そういう風に見ている人もいたんだ」という事実を知ってもらいたかった。


☆Taku:その話を今日は直接聞けてよかったです。



おわりに


文:☆Taku Takahashi

フェイクニュースかどうか?これは今の時代、ますます判断するのが難しくなっていると僕は感じている。11月に行われたこのインタビューも公開されるまでに時間がかかったのは、意見以外のファクトチェックとソース収集を行わないといけなかったからだ。


FOXニュースの報道に僕自身疑問を感じることはあるが、他のニュースメディアも全てを語っていない。Kダブ氏が指摘した点でそこは間違いないと思った。中立であるべきニュースメディアですら、バイアスがかかってしまっているのが今の現場だ。そして個々が発信できる昨今、ジャーナリズムの仁義を無視したら誰でもメディアになれる。そんな時代でもある。そうなると情報に信憑性があるかの判断はますます難しくなるだろう。


そんな中、影響力のあるアーティストのSNSによって嘘のニュースを拡散してしまう危険性が増々高まっているのも事実だ。一歩間違ってしまうと、拡散することによって犠牲者も出てしまうリスクがあるということを、ここで再認識した。


かといって、アーティストが自由な発言を自粛しなきゃいけない社会も違うと思う。何故ならアーティストとは自分の考えたものや価値観を発信する職業でもある。その発信のしかたは慎重にならないといけないのは間違いない。


「自由に判断し決定する事が可能で、自己決定権を持つ。」


一般的にリベラリズムはそう定義されている。ある価値観に対して同意や否定をしなくとも、そういった考えが存在することを理解する。それこそがリベラリズムの真骨頂だと考えている。Kダブシャイン氏の言っていること全てに同意はしていないが、彼なりの考え方がどこから来ているのかが見えたのは大切なことに感じた。


僕は政治に対して関心は持つべきだが、カッカしてもしょうがないと考えている。違った価値観の人と罵りあっても何も生産性がないからだ。むしろ違った価値観を共有していき、分かち合えるところを見つけていく。それが民主主義を機能させるたった一つの冴えたやり方だ。


SNSもヘイトや憎しみが飛び交う場所でなく、違った価値観の交差点になっていくことを切望する。そして今後もアーティストならではの政治の見方を模索していきたいと考えている。



text: Jay Kogami


photo:https://www.flickr.com/photos/whitehouse/49499142227/in/photostream/





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