Justin Bieber、ファンに対するいき過ぎたストリーミング再生呼びかけが物議を醸す

最新シングル「Yummy」をリリースし、注目を集める中、チャート1位獲得のためにある呼びかけを行なったが…。
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2020.01.15 03:00

テン年代の音楽リスニング体験のあり方を変えた音楽ストリーミング。アメリカレコード協会(RIAA)によると、音楽ストリーミングサービスの売上は、2019年には全体の80%に到達。これにより音楽ストリーミング売上は、2010年の7%から10年間で音楽市場のシェアを書き換えるほどの成長を遂げたことが明らかになり、現在のアメリカにおいて音楽ストリーミングがこのビジネスの主流になっていることが改めてよくわかる。



Justin Bieberがファンにストリーミング再生を呼びかけるも...  


それだけにアーティストにとっても音楽ストリーミング再生数の結果は、リリース作品のチャートアクションにおいて重要な要素になるわけだが、このほど、最新シングル「Yummy」をリリースし、話題になっているポップスターのJustin Bieberがファンに向けて行なった呼びかけが物議を醸している。 


「Yummy」は、1月3日にリリースされたJustin Bieberにとって久々の新曲で、1月4日にはMVがYouTubeで公開されたばかり。この記事を執筆している時点で、MVの再生回数はすでに6300万再生を突破。またSpotifyでも5500万回以上再生されており、大ヒットシングルと呼ぶにふさわしい再生回数を記録している。



しかし、Justin Bieberは久々のシングルでどうしてもチャート1位を獲得したいようで、先週、自身のInstagramで5枚の画像を使って、ファンに「Yummy」のダウンロード購入やストリーミング再生を呼びかけ(現在は削除)。ここまでは多くのアーティストがリリース時に行なっていることとなんら変わりはないが、物議を醸したのは、”ストリーミングサービス上でプレイリストを作って寝ている間も繰り返し再生してほしい”、”ダウンロード購入を複数回してほしい”、さらには”アメリカ以外のファンは、BillboardチャートにカウントされるようにVPN(仮想専用線)を使ってストリーミング再生してほしい(アメリカ国内の再生回数をチャートアクションに反映させるため)”などと呼びかけた部分だ。





ストリーミング再生数操作的発言が物議を醸す  


この呼びかけに対し、ファン以外からは当然のごとく批判をされているわけだが、一方、ファンの中にはVPNまでサポートするのか? と困惑するものもいたものの、熱心なファンは概ねこの呼びかけに応じる構えを見せているのは非常に印象的だ。



現在の海外ポップスターの活動には、熱狂的なファンが支える”スタンカルチャー”(スタンの語源はEmimenの名曲「Stan」からといわれている)が強い影響力を及ぼすことが以前から報告されている。それだけにJustin Bieberのファン以外からすると一見、むちゃくちゃな要望のように思えるが、ファンたちからすると特別突飛な要求とは思えないため、先述のようなリアクションが生まれるのだろう。  


しかし、こういったストリーミング再生数の”操作”行為は、現在のストリーミングサービス界隈では非論理的だと考えられており、事業者側からすると少なくとも表向きはあまり良い印象はないはずだ。また月額会費を支払っている有料ユーザーで、特にJustin Bieberファンでない場合からしてもあまり好意的には受け取れない行為だといえる。  


音楽ストリーミングサービスのアーティストへの収益分配についてSpotifyを例にすると、ストリーミング再生によるアーティストが得る収益は、有料ユーザーが支払う月額サブスクリプション料金と広告収入で得た収益から、Spotifyが得る30%分を差し引き、再生回数に応じて分配される形になっている。(昨年、海外メディアのMidiumが公開した記事によるとSpotifyの収益の91%は有料ユーザーからの月額サブスクリプション料金で残りの9%を広告収入から得ていることが報告されている)  


それだけにこういった行き過ぎたストリーミング再生の呼びかけにより、本来ならば自分がサポートしたいアーティストに分配されるはずの収益が手元に届かないケースが生まれた場合、非ファンからすると心情的にもあまりおもしろくないだろう。また収益を受け取る側のほかのアーティストも当然、実入りが少なくなることが考えられるため、同じくおもしろくないはずだ。そして、こういった呼びかけは広告主に損害を与える行為でもあると同時にチャートの公正性に対するユーザーからの疑念も生みかねない。



アメリカでもたびたび物議を醸す”おまけ付き”音源  


現在のアメリカの音楽シーンにおいても、Tシャツやライヴチケットといったおまけ付きのバンドル音源のリリースが近年行われており、それがチャートアクションやアーティストの収益にも影響を与えていることが度々報告されている。こういったリリースに対して様々な意見はあるものの、ある意味でアーティスト側のビジネス戦略のひとつであるため、一概にNoとは言い切れない部分が少なからずある。


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しかし、今回のJustin Bieberのケースの場合、ファンが自らの意思で彼に”課金”する行為であるダウンロード音源の購入呼びかけはまだしも非ファンからの有料料金、広告主からの広告出稿料金も含まれる音楽ストリーミングサービスの場合は、非倫理的な行為にあたるのではないだろうか? 海外メディアのVergeによると、ファンにVPNを使ってまでストリーミング再生を呼びかけることは稀であるとのことで投稿後に削除された理由は、この呼びかけを問題として認識した可能性があるからのようだ。 


なお、Justin Bieberは、これまでに「Yummy」のリリックビデオ、MVのほかにアニメ版やファンのリップシンク動画など5種類の別バージョンMVを公開しており、ファンに対して「Yummy」を再生させるための施策? を行なっている。


また先週はライム病を患っていることを告白。彼の病状や闘病の様子は、公開控えるYouTubeでのドキュメンタリーシリーズで明かされる予定だ。 

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written by Jun Fukunaga 


source: 

https://variety.com/2019/biz/news/music-streaming-soared-2010s-decade-riaa-1203454233/

https://www.theverge.com/2020/1/10/21060120/justin-bieber-yummy-instagram-spotify-itunes-youtube-song-chart

https://medium.com/dissecting-music-tech/how-spotify-makes-money-business-model-ca0a71a19163

https://www.rollingstone.com/music/music-features/album-merch-bundles-dont-make-much-money-but-rappers-like-them-anyway-776067/


photo: Justin Bieber YouTube 



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