グラミー賞最優秀ダンス/エレクトロニックアルバムを受賞したジャスティスは、なぜ評価されたのか?

今年4月に来日を控えているジャスティスが昨年リリースした『Woman Worldwide』でグラミー賞を受賞した。
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2019.02.11 12:00

グラミー賞最優秀ダンス/エレクトロニックアルバムを受賞したJusticeの歴史を振り返る  


日本時間2月11日(現地時間2月10日)に行われた第61回グラミー賞授賞式で、今年4月に来日を控えているJusticeが、昨年リリースしたアルバム『Woman Worldwide』で最優秀ダンス/エレクトロニックアルバム(Best Dance/Electronic Album)を受賞した。



エレクトロの名作中の名作『Cross』(2007) 


フレンチエレクトロを代表するアーティストであるJusticeは、2003年にGaspard Augé(ギャスパール・オジェ)とXavier de Rosnay(グザヴィエ・ドゥ・ロズネ)によって、結成されたユニットで、活動初期に発表したSimianの「Never Be Alone」で注目を集め、その後、世界的なエレクトロブームの立役者の1組として活躍。


2007年に元Daft PunkのマネージャーだったBusy Pのレーベル「Ed Banger」からリリースしたデビューアルバム『Cross』(別名:Justice)には、今ではJusticeのクラシックとして知られる「Waters of Nazareth」、「D.A.N.C.E」、「DVNO」などが収録されている。その後、彼らのシンセにディストーションをかけたヘヴィーでノイジーなサウンドは、瞬く間に世界中を席巻。それまでのダンスミュージックシーンのトレンドを塗り替えたエレクトロの名作中の名作だ。また同作は今回、彼らが制した最優秀ダンス/エレクトロニックアルバム部門にもノミネートされたこともあるJusticeのリリースにおける正真正銘のクラシックだ。





Daft Punk一派由来の"フレンチタッチ"マナーも踏襲


Justiceのサウンドのイメージといえば、先述のとおり、ノイジーなシンセが印象的なエレクトロといった感じだが、実は90年代のDaft Punk一派以来の"フレンチタッチ"のマナーも踏襲。例えば、『Cross』収録曲の「Newjack」では、80年代のディスコチューンであるThe Brothers Johnson「You Make Me Wanna Wiggle」を、Daft Punkよろしくな感じでサンプリングしており、彼らはフレンチタッチの肝であるディスコネタのサンプリングスタイルを自らのノイジーなエレクトロにもうまく取り入れているといえる。そのあたりは「SAMPLE RECOVERY #2 // Justice - Cross (2007)」というサンプリングネタ解説動画を見ていただければよくわかるはずだ。




プログレッシヴ・ロックが持つ雰囲気を彷彿させるような『Audio, Video, Disco』(2011)  


2011年には2ndアルバム『Audio, Video, Disco』をリリース。この頃にはJusticeが中心にいた世界的なエレクトロブームも落ち着きを見せ出していた頃だけに、今にして思えばそんな状況の中でJusticeがどんな形の最新系をリスナーに提示するかに注目が集まっていたように思える。そんなアルバムは”プログレッシヴ・ロックが持つ雰囲気を彷彿させるようなアルバム”がコンセプトになっており、ゲストボーカルを迎えた「Civilization」や「On 'n' On」、「New Lands」に見られるように歪んだサウンドはありながらもどこかポップで、まるで王道のロックアルバムに近い雰囲気が醸し出されているのが特徴だ。




約5年の沈黙を破ったJusticeの復活作『Woman』(2016)  


そして、2016年には現時点ではJusticeのオリジナルアルバムとしては3作目にして最新作となる『Woman』がリリースされた。同アルバムでは、アルバム情報のアナウンス前にSonnerにて後に先行曲としてリリースされたファンキーなベースラインが特徴的なポップナンバーの「Safe & Sound」をBusy Pがプレイしたことで一気に注目を集めるなど、『Audio, Video, Disco』以来、約5年ぶりとなるJusticeのアルバムリリースに世界中が注目したことも記憶に新しい。



また同アルバム収録曲からはハリウッドの名女優スーザン・サランドンをフィーチャーしたMV「Fire」も注目を集めた。キラキラしたディスコエレクトロナンバーである同曲のMVは、砂漠の中をオープンカーが走るロードムービー風のものになっているが、この元ネタスーザン・サランドンの代表作のひとつである『テルマ&ルイーズ』。見事にその雰囲気が再現されていることにも注目したい。



これは余談だが『Woman』リリース以降には、エレクトロ全盛期の有名ユニット、バンドが続々と復活する流れも生まれ、昨年は新作アルバム『Little Dark Age』をひっさげMGMTがフジロックに出演したほか、2017年に『Haiku from Zero』をリリースしたCut Copyも来日している。さらに「Emaerge」の大ヒットで知られるFischerspoonerもアルバム『SIR』を2018年にリリースしたことなどを考えると、『Woman』のリリースは、密かにエレクトロ勢復活の狼煙になっているという見方もできる。


過去のライヴアルバムとは一味違う”ライヴ・スタジオアルバム”『Woman Worldwide』(2018)  


このようにJusticeはこれまでに3枚のオリジナルアルバムを発表したが、今回、グラミー賞で最優秀ダンス/エレクトロニックアルバムを獲得した『Woman Worldwide』は、オリジナルアルバムではなく”ライヴ・スタジオアルバム”だ。ちなみにJusticeは同アルバム以前に2008年に『A Cross the Universe』、2013年に『Access All Arenas』といった2枚のライブアルバムをリリースしている。しかし、『Woman Worldwide』は、先述の過去2作が「ブートレグのような作品」を目指していたことに対し、『Woman』ほか過去のアルバム収録曲の新バージョンをパリのスタジオで制作したものになっているのが特徴だ。



収録されている曲は、いずれもJusticeの人気曲だが、そこにはライブ・パフォーマンスを通して発見した楽曲の新たな側面を再びライブに反映させるという彼らのアイデアが反映されており、いずれの曲もおなじみの曲であはあるものの、再構築にとどまらないJusticeの創意工夫が感じ取れる。そのあたりの部分が今回のグラミー賞で評価され、彼らに最優秀ダンス/エレクトロニックアルバムをもたらしたのではないだろうか?



なお、『Woman Worldwide』からは「Love S.O.S.」のMVが公開されているが、昨年のグラミーのノミネート発表のタイミングでJusticeは『Woman』収録の「Heavy Metal」のMVも新たに公開。アメリカ・ノーフォーク州立大学のスパルタン・レギオン・マーチングバンドをフィーチャーした220名ものダンサー、演奏者が動き回る映像はまさに圧巻だ(制作の裏側を明かすメイキング動画も公開されている)。



今年4月に東京・渋谷ストリームホールでJusticeがDJセットを披露 


2008年の第50回グラミー賞最優秀ダンス/エレクトロニックアルバムに『Cross』がノミネートされて以来、実に11年ぶりの同部門を制したJustice。4月26日(金)、4月27日(土)には東京・渋谷ストリームホールでのDJセット出演も控えているだけに、今回のグラミー賞での結果は、日本のファンからしても間違いなく朗報だ。来日を楽しみにしている人は是非、この機会に『Woman Worldwide』をもう1度チェックしてみてはいかがだろうか?

▶︎イベント情報

JUSTICE


日時:2019年4月26日(金)、27日(土)

会場:渋谷ストリームホール http://stream-hall.jp/

開場 21:30 / 開演 22:00

出演:JUSTICE(DJ set)

チケット価格:10,000円(5Fパーティーエリアでのウェルカムスパークリングサケ付)

(最速先行販売 11月14日 / 一般発売 2月14日)

お問い合わせ先・ECS(ecs_jpn@ecsc.tokyo)

https://ecsc.tokyo/liveschedule/justice/


written by Jun Fukunaga


photo: Bertrand




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