新作アルバムを引っさげての来日公演も大好評だった才人プロデューサー、Jon Hopkinsにインタビュー

インタビューだけでなく3年ぶりの来日を果たしたJon Hopkinsの東京でのライヴもレポート。
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2018.08.10 10:00

7月27日(金)にフジロックにも出演していたイギリスのプロデューサー・John Hopkinsが、その前日7月26日(木)に東京のWWW Xにて単独公演を行った。 


最新アルバムを引っさげ、3年ぶりにJohn Hopkinsが来日  


John Hopkinsは、90年代後半からミュージシャンとしてのキャリアを開始。2001年にデビューアルバム『Opalescent』をリリースして以降、これまでに4枚のスタジオアルバムを発表していたが、今年5月に5枚目となる待望の新作アルバム『Singularity』を約5年ぶりにリリース。ファンの間で注目を集めていた。 







繰り出される全ての音に酔いしれた東京公演  


そして、2015年のHOSTESS CLUB ALL-NIGHTER以来となる今回の東京での来日公演は、先述の新作アルバムを引っさげての来日ということもあり、ライヴのチケットはソールドアウト。当日はWWW Xに多くの日本のファンが詰めかけた。 


『Singularity』収録曲を中心に構成したライヴセットは、彼の音楽の持ち味である音のレイヤーが重なることで厚みを感じさせる心地よい新曲「Singularity」からスタート。同曲では、アルバムそのままに前半のアンビエントムードとは打って変わる後半の重厚なビートが観客の身体を揺り動かし、それが合図になったかのように一気に会場はヒートアップしていった。




そんなライヴでまず印象的だったのは、ユニークなアニメ風MVも公開されている新曲の「Emerald Rush」、そして前作アルバム『Immunity』収録曲で多幸感のある「Open Eye Signal」の2曲だ。特にこの2曲はステージのスクリーンにMVと同じ映像が映し出されており、ファン的には馴染みのある映像と音を生のオーディオビジュアルライヴとして楽しむことができたのではないだろうか?





また放出されるようなシンセ音の洪水とテッキーなビートのコントラストが素晴らしいレフトフィールドなダンスチューン「Everything Connected」がプレイされた時には、一斉に観客からの大歓声が上がり、会場内の”全てがつながる”ような雰囲気に包まれていた。



そして、個人的に絶対的なハイライトとして挙げたいのが新曲の「Luminous Being」がプレイされた時だ。この曲は柔らかいシンセとピアノの音が絶妙なバランスで溶け合う”ドリーミー”という言葉がよく似合う曲になっており、ライヴでは絶対に聴いておきたい曲だった。おそらく会場にいた観客たちの多くもそうだったのだろう。自分の周りの観客の表情は、皆一様に恍惚の表情を浮かべていたことでそれを確信した。



ライヴを観るまでは、アルバム自体が、前作『Immunity』と比べ、収録曲のおよそ半分がゆったりとした深いノンビートのアンビエントで構成されていたことから、どちらといえば、そのアルバムの構成を踏襲したものになるのではと考えていた。しかし、実際は良い意味で見事に予想を裏切られ、次々に繰り出される疾走感のあるビート、分厚いベース、心地よいウワ音という絶妙のバランスで構成された三位一体サウンドに耳も心も奪われ大満足のまま会場を後にした。 







そんな素晴らしいライヴパフォーマンスを披露してくれたJon Hopkinsだが、block.fmではライブ当日に彼を訪ね、久しぶりの来日の感想や新作アルバムに関するインタビューを行った。 


Jon Hopkins インタビュー  


▷前回の来日は2015年のHOSTESS CLUB ALL-NIGHTERだったかと思いますが、久しぶりの日本はどうですか? どこかしら以前とは違った印象を受ける部分はありますか? 


Jon Hopkins(以下J):2015年に前作のリリースツアーが終わってしまってからはここにはしばらく帰ってくることができなかったけど、日本は1番エキサイティングな国だし、毎回行くのが楽しみな国なんだよ。でも住んでいるロンドンと例えば東京は全然違う街だということもあるし、毎回どこに滞在するとか何をするかによって全く印象が変わってくる気がするんだ。だからそういった多面性を感じる部分が興味深いと思っているよ。 


▷新アルバム『Singularity』本当に素晴らしい作品だと思いました。今作は前作『Immunity』から約5年ぶりのリリースとなりましたが、前作リリース以降はどのように過ごされていたのでしょうか? 


J:前作の『Immunity』リリースツアーを2年かけて行ったこともあって、ツアー終了後に6ヶ月間の休暇を取ったんだ。そして、その間にAbleton Liveの使い方を勉強したんだ。そして、そこから2年かけて、新作の制作に取り組み、さらにそこから8ヶ月間かけてマスタリングとかリリースの準備をしていたんだ。大体5年かかったんだけど、毎回、アルバムリリースの前後はそんな感じで過ごしているかな。自分のアルバム制作については特に急ぐ必要はないかなと思っているし、自分のペースでやるのがベストかなって。





▷ちなみに今、Ableton Liveの使い方を学んだとおっしゃっていましたが、それに移行する前はどういった機材を使って音楽制作しておられたのですか? 


J:そうだね、『Immunity』の時はLogic 9がメインのDAWだったね。最初に音楽を作り出した時に使っていたのはCubaseだったということもあったし、この2つはすごく似ていると感じていたから、僕にとってはLogicは使いやすい機材だったんだよね。でもLogicはどちらかと言えば、ヴォーカリストとかを使った曲作りには適していると思うんだけど、インスト主体のエレクトロニックミュージックを作る場合はちょっと違うなと思っていた。だからこの機会にという感じでAbletonに移行してみたんだ。でもやっぱり使い方はLogicとは全然違ったからしっかり勉強する必要はあったかな。 




▷なるほど。そういった機材面での変化も前作から今作の間にはあったのですね。では、それに関連することだと思うのですが、例えば2001年にリリースした『Opalescent』や2004年にリリースした『Contact Note』など、初期の作品から今では十数年を経ています。その間、音楽制作の手法や音楽的な嗜好の変化もあったかと思います。その過程であなたの音楽が以前と比べて進化したなと思う部分はどういったところにあるとお考えですか?  


J:サウンド的な面で言えば、初期作品の頃は今よりももっとピースフルなテイストだったかもね。それと逃避的な音楽を作っていた気がするな。でも段々とキャリアを重ねるにつれてもっとエナジーを感じるものとかアグレッシヴなものであったり、一方ではダークなものであったりとまるで人生を表現するかのような明るさと暗さみたいなコントラストを感じる作風に進化したと思っているよ。あとは瞑想的な部分が加わったかな。まあ21歳の頃から十数年が経って、何も学ばない、進化しないままだったら、今、ここに座って君からインタビューを受ける資格はないよね(笑)。





▷『Singularity』収録曲では「Emerald Rush」のMVがアニメ風のものになっていて日本人からしてもとても興味深いです。これらのMVのコンセプトについて教えて頂けますか?  


J:ありがとう。でも残念ながら僕はMV制作には関わってはなくて、このアイデアは監督の提案なんだよね。実は彼は日本からインスピレーションを受けてそれを作ったんだよ。まあ、僕としてもこのMVの出来は気に入っているし、何より抽象的なものを作りたかったという僕の考えや音楽のイメージともマッチングしていたこともあってこういった作風のものに落ち着いたよ。



▷あなたの音楽は繊細かつ綿密にプログラミングされたものという印象を受ける一方、有機的で人間的な温かみも強く感じます。音楽を制作する際は、感覚的に作業を始めますか? それともあらかじめ全体像を考えてロジカルに組み立ていくように作業されるのでしょうか? 


J:とにかく自分にとって大事なのは作り始めるということなんだ。だから、いつも音楽制作は全くアイデアがないとこから始める。あと自分が好きだと思うサウンドが作れた時点から一気に作業がスタートする感じだね。そこから脳に従うというか、直感だったり、自分がこれまでに無意識に受けてきた影響のようなものがどんどん溢れてきて、曲が完成するというのが僕の音楽制作のスタイル。だから僕は論理的にプロダクションを組み立てるというよりかは即興的にやっていくタイプだね。 


▷そうなんですね。聴いた限りではあるのですが、作品は綿密なプランを立てた上で制作されていると思っていたので、その答えは本当に意外です。では、次の質問で最後になりますが、一言であなたの音楽の魅力を簡潔に伝えるとしたらそれはどのようなものになりますか?  


J:そうだな、ざっくりと僕の音楽を聴いて”テクノ”だと思う人は、多いかもしれない。でも正直に言って、典型的なテクノではないと思っているし、ひとつのカテゴリーに収まるというよりは、色々な音楽の要素が混ざり合っているというのが僕の音楽なんだと思う。だからテクノの要素もあるし、アンビエントの要素もある。それにポストロック的な部分だって含まれている。でも重要なのはそういった色々なジャンルの要素を使ってひとつのストーリーを作りあげるということなんだよね。だから、お決まりのダンスミュージックではないんだけど、曲を聴いて踊りたければ踊ることだってできる。それが僕の音楽の魅力だろうね。 




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▶︎Jon Hopkins

HP:http://www.jonhopkins.co.uk/

Twitter:https://twitter.com/Jon_Hopkins_

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Instagram:https://www.instagram.com/mrjonhopkins/


▶︎最新アルバム『Singularity』国内CD盤発売中

発売日:2018.05.23

品番:HSE-1302

レーベル:Domino Recording Co. / Hostess

価格:2,400円+税

※ライナーノーツ(小林祥晴)付

http://hostess.co.jp/releases/2018/05/HSE-1302.html





written by Jun Fukunaga 

all photos by tatsuki nakata



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