忘れちゃいけないものもある。再評価される”忘れられた和製ハウスクラシック”、その3つの理由とは？

<p><strong>Written  by Jun Fukunaga</strong><autobr /><autobr />去年からBlock FMでも逐一その動向を報じる存在、日本のハウスオリジーネーターにして、ハウスミュージックの現人神”寺田創一”。1月にはBlock.fm / <a href="http://block.fm/program/shibuya_oiran/" target="_blank" rel="noopener">Shibuya OIRAN warm up Radio</a>にもゲスト出演し、ナビゲーターのVenus Kawamura Yukiとその魅力に触れるクロストークを繰り広げ、番組のためだけに作られたエクスクルーシヴなMIXが放送されたのも記憶に新しい。<autobr /><autobr />今年も<a href="http://block.fm/news/RainbowDiscoClub2016_redbull.html" target="_blank" rel="noopener">RDC</a>、<a href="http://block.fm/news/fujirock_3rd.html" target="_blank" rel="noopener">FUJI ROCK</a>など、国内の有名野外フェス出演から、欧米などへのツアーを行い、その人気と知名度は増すばかりで、今週公開された海外人気音楽メディア”Resident Advior”での<a href="http://block.fm/news/terada_ra_podcast.html" target="_blank" rel="noopener">和製ハウスクラシックを中心に選曲したDJ MIX</a>は、すでに国内外のハウスミュージックファンの心を鷲掴みにしている。<autobr /><autobr />この寺田創一の世界的な再評価によるブレイクは、すでに数多のメディアによって報じられている、オランダの老舗レーベル兼ディストリビューター「Rush Hour」から昨年発売された、寺田による初期作品コンパイル集である「Sounds From The Far East」のヒットによるものだが、それに呼応して、ヨーロッパを中心に日本人による”忘れられた和製ハウスクラシック”再評価の機運が高まりつつある。<autobr /><autobr /><autobr /><strong>【日本の外からの再評価の波】</strong><autobr />音楽通の間で話題になった去年11月末にリリースされた、もはやDiscogsにすら、その名前が掲載されないレベルの90sカルト和製ハウスクラシックなどを豪華3枚組アナログ盤に収録した”<a href="http://www.amazon.co.jp/ハウス-ONCE-JAPAN…-analog-Analog/dp/B016DDJE7C" target="_blank" rel="noopener">VA/ONCE UPON A TIME IN JAPAN…</a>”はすでに入手困難となる程のコレクター間でのヒット作となった。こちらはフランスのディープハウスシーンにおけるトップアーティストであり希代のヴァイナルフリークである ”BRAWTHER” と、2008年から日本を拠点にし、和製ハウスコレクターとして、知る人ぞ知るDJであり、レーベルJAZZY CONSCOUSを主宰する ”Alixkun” の二人による監修作だ。<autobr /><autobr /><center><div class="iframe-wrap"><iframe loading="lazy" width="640" height="360" src="https://www.youtube.com/embed/DDDNkUzpXOs" frameborder="0" allowfullscreen></iframe></center><autobr />収録されている曲は先述のこのシーン再評価の立役者である寺田創一が手がけた作品の中でも相当レアな部類に当たると言われるAkiko Kanazawa - Sawauchi Jinku (Terada mix)、レジェンドハウスプロデューサーである福富幸宏、寺田創一との共作が再発された永山 学が率いったJAZZDELIC、そして寺田のDJ MIXにも収録されている「Hiroshi Matsui - Crazy Miracle Dub」、現在は滋賀県を拠点に活動する日本の忘れられたハウスヒーローと度々形容される福島武司 aka武茶による「GWM - Deep Loop (edit)」、さらにカルトすぎる収録曲として、あの「ナゴムレコード」からも学生時代にリリースした経験を持つ、故漫画家・中尊寺ゆつこのMagic Wareによるリミックスなど、どれをとってもまさにほとんどの日本人ですら、知らない ”忘れられた和製ハウスクラシック” となっているのだが、二人のハードディガーによる選曲は一貫して、和製ハウスサウンドの基礎であるディープなグルーヴや日本人らしい情緒を感じるメロディラインを軸に選曲されているので、20年以上の時を経ても錆びつくことがなく、今聴いてもその良さにハウス好きならすぐに気がつく作品ばかりだ。<autobr /><autobr /><center><iframe loading="lazy" width="640" height="360" src="https://www.youtube.com/embed/ji2BIaUR46c" frameborder="0" allowfullscreen></iframe></center><autobr />実はこういった日本人が忘れてしまったクラシックスは海を越えて、海外レーベルに発掘され、アナログ盤として再発されることが近年では珍しくない。<autobr /><autobr /><iframe loading="lazy" width="100%" height="166" scrolling="no" frameborder="no" src="https://w.soundcloud.com/player/?url=https%3A//api.soundcloud.com/tracks/172258491&amp;color=ff5500&amp;auto_play=false&amp;hide_related=false&amp;show_comments=true&amp;show_user=true&amp;show_reposts=false"></iframe><autobr /><autobr />その証拠に2014年にロンドンで設立された、「History has a tendency to repeat itself」という言葉の頭文字をレーベル名とする「Hhatri」が、Rush Hourより先に”The Far East Transcripts EP”なる寺田関連の編集盤をリリースしており、今春には第3弾リリースとなる第３弾には1991年にリリースされたトラックでありかつRush Hourの楽曲集には収録されなかった音源が収録されている。<autobr /><autobr /><iframe loading="lazy" width="100%" height="166" scrolling="no" frameborder="no" src="https://w.soundcloud.com/player/?url=https%3A//api.soundcloud.com/tracks/252362066&amp;color=ff5500&amp;auto_play=false&amp;hide_related=false&amp;show_comments=true&amp;show_user=true&amp;show_reposts=false"></iframe><autobr /><autobr />このように日本人よりも海外のバイナルディガーにとって、その他の欧米産などのハウスにはない魅力が彼らの心を掴み、それがダンスミュージックの本場から輸出される形で、和製ハウスクラシックの再評価へとつながっている。<autobr /><autobr /><autobr /><strong>【Dubstep、EDM以降のディープハウス回帰の流れ】</strong><autobr />そして、もうひとつ言えるのが、2011年頃から始まったロンドンなど、ダンスミュージックの聖地で起こったディープハウス系ダンスミュージックへの回帰の流れだ。例を挙げると、ロンドンを拠点とするエクスペリメンタルなテクノ、ハウスのリリースで人気のレーベル、Aus Musicでは、それ以前にScubaのHotflush Recordingsで、レーベルの特大ヒットとなったDubstepの名曲「Joy Orbison - Hyph Mngo」なポスト ”Hyph Mngo” を制作していたGeorge Fitzgeraldが突然、クラシックなディープハウス路線にその制作を切り替え、ヒットを飛ばした。<autobr /><autobr /><center><iframe loading="lazy" width="640" height="360" src="https://www.youtube.com/embed/Wh0H_j9IZVA" frameborder="0" allowfullscreen></iframe></center><autobr />それ以降、レーベルは、現在では配信系音楽販売サイトでも上位に顔を出すようになったDusky、Deep House色が強い、Youandewanらの作品をリリース。それと同時期に、ポストDubstep系リリースをしていたJulio bashmoreも英国レーベルFutureBoogieなどからディープハウス系作品をリリースするなど、Bass Musicを経由した新種のディープハウスが世に発表される流れが発生した。<autobr /><autobr /><center><iframe loading="lazy" width="640" height="360" src="https://www.youtube.com/embed/BnigNbYVQJE" frameborder="0" allowfullscreen></iframe></center><autobr />その後、今では世界が注目するDisclosureのようなPopsシーンと共鳴するアーティストなども現れ、このBass Musicから派生した亜種は広く認知されていくことに。またEDMシーンでも総本山のひとつ、オランダから世界を席巻する「Spinnin' Records」も「Spinnin' Deep」、Armin van Buuren主宰「Armada Music」も「Armada deep」なるディープハウス系のサブレーベルを設立するなど、ヨーロッパを中心にディープハウス回帰の流れが出来上がることに。<autobr /><autobr /><iframe loading="lazy" width="100%" height="166" scrolling="no" frameborder="no" src="https://w.soundcloud.com/player/?url=https%3A//api.soundcloud.com/tracks/248650458&amp;color=ff5500&amp;auto_play=false&amp;hide_related=false&amp;show_comments=true&amp;show_user=true&amp;show_reposts=false"></iframe><autobr /><autobr />さらに最近では、EDM主流のバンギンなトラックとは真逆のチルでレイドバックな作風が特徴の「トロピカルハウス」といったジャンルがKygoなどの活躍により、知名度を高めつつある。この”トロピカルハウス”はEDMの亜種的な認識ではあるが、こういったジャンルが持つ、メロディックな音楽要素も、和製ハウスクラシックが持つ”日本人らしい情緒を感じるメロディライン”とどことなくリンクし、欧米のファンの耳に突き刺さり、再評価の要因のひとつになっているのかもしれない。<autobr /><autobr /><autobr /><strong>【忘れ去られた日本のハウスヒーローの復活の可能性】</strong><autobr />上記のような背景、理由もあり、すでにバイナルディガー、その供給元であるレコード店などでは、オリジナル和製ハウスの黄金期の忘れ去られた日本のハウスヒーロー関連作の再評価は高まるばかりだ。(現在このジャンルのレコード盤の市場価格を高騰させた原因を作ったのは先ほど紹介したJazzy Couscousのコアメンバー、Alixkunだと音楽メディア”<a href="http://www.ele-king.net/news/004386/" target="_blank" rel="noopener">ele-king</a>”は報じている。) また、アナログ盤が高騰して手に入れることが仮に不可能だとしても、現在では、例えば、寺田創一が手がけたクラシック中のクラシック、”島田奈美 - Sun Shower”のレジェンド、Larry LevanによるMIXなどは、Youtubeでも聴くことが可能だし、その気になって探せば、配信サイトからデジタル盤で購入することが可能な音源も見つけることができる。<autobr /><autobr /><center><iframe loading="lazy" width="640" height="360" src="https://www.youtube.com/embed/lCRx5Pog-JI" frameborder="0" allowfullscreen></iframe></center><autobr />また、先ほど紹介した福島武司 aka武茶の音源のいくつかはiTunesで購入できるだけでなく、なんと本人が自身のクラシックのProjectファイルを公開・販売していたりもするので、以前に比べて、少しの情報と興味さえあれば、この忘れ去られた音楽を掘り起こすことも可能だ。<autobr /><autobr /><center><iframe loading="lazy" width="480" height="360" src="https://www.youtube.com/embed/L7uRkEbVztw" frameborder="0" allowfullscreen></iframe></center><autobr /><autobr />このように元々マニアックというか、コアな要素に関心を持つ、音楽好きが情報を拾い集めて、それを拡散していくことができれば、第2、第3の寺田創一の出現も実際に起こるかもしれない。<autobr /><autobr />なんにせよ、今、世界で起こっているこの機運を見逃すのは、日本の音楽シーンにとっての損失に他ならないはず。センスと少しばかりのDTMの知識があれば、10代でも世界のトッププロデューサーになることが可能なこの時代だからこそ、センスも知識も、実績もある”忘れ去られたヒーロー”が復活するその時を音楽ファン、ダンスミュージックファンの一人として、夢見ずにはいられない。<autobr /><autobr />世の中には忘れちゃいけないものもある。今、日本のダンスミュージックファンにとっては和製クラシックハウスがそのひとつと言えるだろう。<autobr /><autobr /><autobr /><strong>【この記事に関するおすすめはこちら】</strong><autobr /><iframe src="https://widgets.itunes.apple.com/widget.html?c=jp&brc=FFFFFF&blc=FFFFFF&trc=FFFFFF&tlc=FFFFFF&d=&t=&m=music&e=album&w=250&h=300&ids=385684456&wt=discovery&partnerId=&affiliate_id=&at=11lRqF&ct=" frameborder=0 style="overflow-x:hidden;overflow-y:hidden;width:250px;height: 300px;border:0px"></iframe></div><autobr /><autobr /><autobr />Block FMでは以前、寺田創一氏をゲストに迎えたshibuya OIRAN warm up Radioを配信中。<autobr /><autobr /><strong>▶︎shibuya OIRAN warm up Radio by Venus Kawamura Yuki</strong><autobr />*毎週金曜日20:00-21:00放送中<autobr /><a href="http://block.fm/program/shibuya_oiran/" target="_blank" rel="noopener"><a href="http://block.fm/program/shibuya_oiran/">http://block.fm/program/shibuya_oiran/</a></a></p>


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