DJの未来を繋ぐ年鑑 ー「Japan DJ. net」創立メンバーが語るクラブカルチャーの現状と課題

Watusi、DJ EMMA、KO KIMURA、DJ WATARAI、Naz Chris、☆Taku Takahashiが集まり、DJとクラブを取り巻く現状や課題について対談を行った。
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2019.08.22 03:00

風営法が改正されてから早3年。あれから、私達のクラブとクラブカルチャーはどう変化したのだろう。東京都がナイトライフを支援するための助成金を提供するというニュースが話題になる一方で、経営が厳しい、若い人がクラブに来ない、といったあまり芳しくない話題を耳にすることも少なくない。

そんな中、国内最大級のウェブサイト「Japan DJ.net」のローンチが発表された。全国のDJを自由に検索、閲覧できるサイトになると言うが、“DJによるDJのための未来をつなぐ年鑑”とは一体どんなものなのだろう。


今回、Japan DJ.netのコアメンバーである、Watusi、DJ EMMA、KO KIMURA、DJ WATARAI、Naz Chrisとblock.fmの☆Taku Takahashiが集まり、クラブカルチャーとJapan DJ.netに関する対談を行った。





「現状を変えるには、DJが団体として声を上げていく必要がある」


☆Taku:まずは、この「Japan DJ.net」を立ち上げることになったきっかけを聞きたいのですが。


Watusi:改正風営法が施行される前にDJ集会をVISIONで開いた時、都内近郊のDJが200人以上集まってくれたでしょ。そこで話をしたときに「DJ協会みたいなものを新たに発足させるのはどうか?」という話も出て。そのときはすごく賛成意見が出たんだよね。ただ、実際に作ろうとすると個人的には多様なDJ達を団体にいきなりまとめるのは時期尚早だなと思うことも多くて。また、DJ Dragonがその頃既に独自に組織作りを進めていたりもしていて、そうした他の組織と拮抗するようなものは作りたくなかった。それで、まずは全国のDJたちを「DJ年鑑」っていうものにゆるくでもまとめて、繋がりと外に向けての顔みたいなものを作ろうと思ったんです。


☆Taku:みなさんから見て、今のDJはどういう状況にあるんでしょうか。


KO KIMURA:今はみんなバラバラな感じがするね。自分もそうだけど、DJって他の人と同じことをやってるのが嫌だっていう人が多いから、どうしても全体がまとまりにくい。


DJ EMMA:この数年、横のつながりを作るということに一番苦労してて。例えばハウスの中だけで言っても、自分と違うスタイルの人に対しては繋がりを作らないというか。みんな、自分の音楽に誇りを持っているのはわかるんだけど、そのプライドは自分のパーティーや作品に反映されるだけで十分なんじゃないかと。今はみんなで物事を変えるために、今までのスタンスを変えて集まらなきゃいけないと思うんです。


DJ WATARAI:僕に関してはもともと村が狭いところで始まってるので、先輩から僕ら世代まで割と仲がいいんですけど。今はヒップホップがメインストリームになってTOP40的にかかることも増えてるし、そういうかけ方をするDJも増えてる。だから僕自身が若い子とそんなに繋がってないし、若い子も僕のことを知らないと思う。だからヒップホップの状況も変わってきてますよね。もともと自由度が高いジャンルだから、それぞれがいろんなことをやってるし、現場も全然違う。だからそれぞれの居場所はあるけど、それら自体はリンクしてない感じはあるかもしれない。




Watusi:一番最初に開かれたDJ集会には様々なジャンルのDJ、40人くらいが集まってくれたんだけど、ヒップホップ30年やってるDJと、テクノ30年やってるDJがそこで“はじめまして”だったんだよね。この国はそのくらい分断されてるから。


☆Taku:そもそも全体がまとまる必要ってあるんですか?


KO KIMURA:例えば風営法改正のときもそうだけど、集まっておけばDJという集団として自分たちの業界だけでなく、それ以外のマスの方にも意見が言いやすいってことはあると思う。海外だと「〇〇ユニオン」とかがあるじゃないですか。そこで自分たちの業界に向けては最低賃金の問題とか、ギャラの問題とかを発言できたり、マスに向けても色々DJという職業としての発信できるかと。


☆Taku:団体として意見できる力が強くなると。


DJ EMMA:何か起こってから集まろうとしても難しいから、その前に結びつきを強くしておけば、いざというときに国に対して意見が言えるんじゃないかと思うんです。


Naz Chris:海外だと、アーティストやミュージシャンが政治的なことに関して積極的に発言しますが、日本ではあまりそういう人がいない。なんなら発言しにくい状況。それならば「団体」として形をつくってしまったほうが、何かを発信しやすかったり、現状を変えていくという意識を持ちやすくなるのかなと。


☆Taku:団体になるとどういう変化が起きるんでしょうか?名前を集めて年鑑を作れば、「このDJは信頼されているDJです」っていうブランドはつく。でもそれ以外に何をしようとしてるのかがまだ漠然としていて。例えば、FDJ(日本ダンスミュージック連盟)やiFLYERと機能的には何が違うのかとか。


Naz Chris:クラブ経営者の方やレコード会社が立ち上げた団体だと、例えば自分たちがお世話になっている箱やレーベルの経営者が団体の代表だったりしたときに、遠慮したり言いにくいことが出てくるかもしれませんよね。でもアーティスト主体の団体であれば、アーティストやDJももっと自主的・積極的に声を上げやすいんじゃないかと思っているんです。


☆Taku:なるほど。じゃあ例えば、箱の環境がDJにとって良くないと思ったときに、現状言いづらいものが言いやすくなったり。しかも、個人で言うのではなく団体として意見が出せる。それって特に若手のDJにはすごく重要なことなのかもしれませんね。


Watusi:さらに言うと、僕らDJの情報を集めて価値を持たせたいんです。DJの情報が1万人集まればそれは僕らの財産になる。団体としてアワードやイベントができたり、協賛もつきやすくなる。年鑑ができた先には、もっといろんなことができると思っていて。例えば、DJが選ぶ「ベスト・ベニュー・オブ・関西」とか「ベスト・オーガナイザー・オブ・九州」とか。期待の新人DJを選んで、イビサに連れて行ってDJを体験させるとか。


☆Taku:そういうところまで考えているんですね。年鑑は、そのうち協会ができたらいいなというための階段というか、ファーストステップだと。


Watusi:自分の孫の代には、日本からでも世界に出ていけるDJになれるよって言える、足がかりの1mmでも作っていきたいなと思ってるんです。





「小箱がなくなったら、僕らのルーツが消えてしまう」


☆Taku:先程も「物事を変えていく」という話が出ましたが、今みなさんが考えるクラブ業界の課題点についてざっくばらんに話していきたいのですが。


DJ EMMA:まずは、DJで音楽を作る人があまりにも少ないっていうことですね。みんなDJはやるんだけど、音を作るってことが欠けている。


☆Taku:4つ打ちとヒップホップとでまた変わってくると思うんですけど。ヒップホップって日本のアーティストで面白い人が今明確にわかるし、ファンベースもできてる。4つ打ちは「今年のアンセム」っていうのが昔はわかりやすかったけど、今はテクノもハウスもいろいろ出てるから、飽和状態で難しいっていう感じもします。


DJ EMMA:その中でも日本って少ないんじゃないですか?単にパーッと聴ける1枚のアルバムじゃなくて、フロアキラーアンセムを作れる人が。EDMが日本で流行ったときも、日本人でヒット曲を作ってる人が誰もいなかった。これだけDJがいるのになんでだろうと思いましたね。


Watusi:90年代、カセットテープを海外に一生懸命送っていた時代のほうが、物事の風通しが良かったっていう話をFROGMANのKengo君と以前話したんだ。その頃って僕らはインディペンデントなところでやってたのに、毎月いろんなメジャーレーベルの人とも「ヨーロッパのテクノってどうなってるの?」「どういう子が遊びに来てるの?」「今度こういう話があるんだけど」みたいな話も多かった。そういう中でソニーテクノTVとかが生まれていくんだけど。でも、クリエイトする力がメジャーもアンダーグラウンドも弱くなっていっちゃったんだよね。風営法の摘発による衰退と、日本のレコード会社、音楽を出す方と両方で一気にトーンダウンしちゃって、そこにデフレも少子化も入って厳しい状況になってる。


☆Taku:アーティスト自身も音楽を作らないし、作品が出しにくい状況にもあると。


DJ EMMA:あとは、箱側にも課題があると思ってる。


☆Taku:クラブが海外みたいに栄えていない大きな理由?


Watusi:経営の部分は仕方ない面も多いよね。だってついこの間までグレーだったんだから、そもそも真っ当な経営がしづらい。そこが無かったら真っ当なエージェントやマネジメント組織と仕事なんてできないでしょ。


☆Taku:法律が改正される前は、僕らは違法労働者ですもんね。


Watusi:ただそこは、これからはもう新しい体制になるべきだと思う。ヒップホップの箱はどう?90年代って今話に出たことが全部上手くまわってたじゃない。トラックメイカー、リミキサーとして90年代ヒップホップのDJたちの名前がたくさん上がってきて。それでDJとしての仕事がだんだん増えて、HARLEMみたいな箱ができて、お客さんでパンパンになるっていうような。


DJ WATARAI:HARLEMは今、1/3くらい外国人なんですよ。若い子はクラブに遊びにこないので。日本人でも30前後の人がほとんどです。ぶっちゃけ今、HARLEM以外には 「ヒップホップ箱」って言えるところはあまりないですよね。


Watusi:そうなんだ。例えばATOMでもヒップホップが流れてるもんね。


☆Taku:そこで回してるDJって順応型だから、EDMが流行ってたらEDMをかける。ヒップホップがTOP40に入ってるからそうなのかもしれませんね。


DJ WATARAI:僕らの時代はヒップホップっていう大きいカルチャーがあってそこに魅力を感じてみんなが集まって頑張ってた。今はラップをする子は増えたけど、シーンが多様化したように感じます。


Watusi:ラップはするけど必ずしもヒップホップは聴いていないと。


DJ WATARAI:トラックメイカーもそうで。今の中高生から20代前半が聴いてるトラップと言われてるものって、僕らからするとヒップホップなのかな?って思うんです。やってる本人たちもヒップホップだと思ってない人が多いですし。


☆Taku:ひょっとしたら2年後、彼らはテクノを聴いてるかもしれないですよね。


DJ WATARAI:Post Maloneが「俺はラッパーじゃない、ロックスターだ」って言ってるくらい、TOP40に入るラップスターが「俺はラッパーじゃない」って言っちゃう時代なので。


☆Taku:若手のヒップホップとカテゴライズされるイベントは若い子が多くないですか?


DJ WATARAI:その人達はヒップホップが好きなんじゃなくて、そのアーティストが好きで来てる。「ヒップホップが盛り上がってる」と言われてるんですけど、僕的にはそういう風にはあまり感じないですね。フリースタイルダンジョンも、クラブ文化とはまたちょっと違うブームだと思うので。


Watusi:だからこそZeebraも今、WREPを立ち上げて新たな土台作りを並行してやっているんだと思う。


☆Taku:箱の経営者は自分たちが好きなジャンルとかやりたいことがありつつも、箱を潰したくない、従業員を食わせていかなきゃいけないというのもある。ほぼ週末しかお客さんが入らず黒字にするのはかなり難しい中、いろいろと試行錯誤してると思うんです。VIP席を設けて固定客から少しでも多くお金を取ろうとか、EDMだろうがヒップホップだろうが確実にお客さんが入るTOP40を入れていくとか。彼らも選択肢を狭められちゃってる状況なんじゃないかなと思うんですよね。その結果、DJが新しいカルチャーを紹介できるイベントがどんどん少なくなってきてる。それについてはどう思いますか?


Naz Chris:大箱はオーバーグラウンドのものというか、とにかく流行ってるもの、一般の人も来やすい場所であることは、ひとつのカルチャーとしていいと思っていて。それと同時に、飛行機の両翼のように小箱やアンダーグラウンドのカルチャーも息づいているのが東京のカルチャーの在り方のはず。今はそのバランスがとても悪いと思うんですよ。カルチャー同士のバランスが崩れている。




KO KIMURA:DJからすると、ブッキングの基準が音楽じゃなくなってるところもあるよね。例えば、若いDJが何かのイベントで50人呼べたとなったら、どこの箱もそのDJをブッキングする。月に1回なら50人呼べるけど、毎週いろんなところに呼ばれてってなると、やっぱり1回に呼べる人数も減ってくる。どんなにいいDJだったとしてもね。そうやって呼べる人数が減ってくると使い古された感じになってしまい、DJのセンスはあっても途端にどこにも呼ばれなくなったり、そういうことが多すぎる。


☆Taku:DJの集客力に関しては度々議論になりますよね。


KO KIMURA:実際に僕とかEMMA君、Watusiさんの時代は、「一晩いくら」で仕事してたからいいんですけど。僕がDJを始めた30年以上前の頃って、バーは働いている人に時給でしかお金を払ったことがなかった。だからバーテンと同様に「時給750円でいい?」とか言われたこともありました。「せめて3000円くらいもらわないと」っていう交渉から始まったけど、3000円はもらえたんですよ。でも今のDJは歩合とか言われて「ディスカウントに何人入れたからいくら」みたいな。ディスカウントに名前を入れるために「DJ互助会」みたいなものを作って、DJ同士が小さいグループを作って助け合ってる子達もいる。誰かが回す現場にディスカウントで他の互助会メンバーのDJが皆遊びに行く、その代わりに別のメンバーが回す日には自分が行かなきゃいけないっていうような感じにして、辛うじてそのグループの頭数だけの人数だけは集めて自分達がDJを続けられる環境を存続していく。みたいな。


☆Taku:若手DJたちが集客の部分で苦しんでる状況がある。その発端は、箱自体が客を呼べないということ。僕も好きじゃないです、その感じ。この負のスパイラルはどうやったら抜けられるんですかね?


DJ EMMA:僕が思うに、大衆クラブ・大衆ディスコと、クラブ・アンダーグラウンドのカルチャーは別のもの。比べるものでもない。ディスコ箱がすごく入ってるから音箱でも同じように、なんて到底無理。昔、GOLDなんかができる前からクラブの経営は大変なものですよ。その代わり、損するかもしれないけど、かっこいいアイデア・新しいアイデアを出していくことがクラブとして価値があった。ちょっと実験的な場所だったはずなんです。そこで何かができあがっていく、それが面白かった。人数だけじゃないんです。


☆Taku:その刺激を求めて、DJだけじゃなくてフォトグラファーとかアーティストが集まったり。


DJ EMMA:そう、集まってる人の濃さだったり。1000人入ってるから偉いとかそういうものじゃない。


☆Taku:アンチテーゼとしてのヒップホップ箱やテクノ箱があって、そのアンチテーゼを求めてる人が集まってた。今はそのアンチテーゼを求める人達が少なくなっちゃったのかな。


DJ EMMA:何もかもマスに近づけようとしてる。そもそもクラブのカルチャーってそういうものじゃないんじゃないかな。



Watusi:僕の所属している会社はライブハウス経営もしてるから、別の立場からの意見を。老朽化の問題で新宿JAMっていうライブハウスを移転しなきゃいけなくなって、予算もない中なんとか西永福に移転したんだよね。JAMの歴史をどう引き継ぐか、今までのカルチャーをどうしたいのかっていうことを店長と話し合ったんだけど。JAMという場所を残すために、JAMを愛して残ってくれたメンバーを食わせるために、JAMの色とは違う営業も入れながら、そんな中でもJAMらしさを守る日を少しずつ増やしていこうっていう話になって。


☆Taku:それは生き延びるために必要な多様化じゃないですか。クラブも今その多様化を求められてるし、外国の人たちのニーズもある。でもそこからは、カルチャーの匂いはあんまりしないんですよね。


Watusi:経営とカルチャーの発信が両立できてるお店は、店長自身がカルチャーになってたりするんだよね。やりたいことが見えてるから、これは稼ぐため、これは自分のやりたいこと、っていうのをわけて考えられてる。


KO KIMURA:例えば昔はクラブでも、昼間は学生のイベントとか大衆的なもの、夜はカルチャーっぽいもの、っていう風にうまくやってたところもあったけど、いつの間にかそれも曖昧になって。何がやりたいのか見えてこない箱もある。箱が発信するやりたいことがわからなければ、どこの箱に行っても同じというか。


Watusi:文化っていうと大きいけど、結局は顔が見えるかどうかだったりするよね。


☆Taku:確かに通いやすいクラブって、行ったら知り合いの店員や友達がいるとか、共通の趣味の人がいる、同じ音楽が好きな人がいる、っていうクラブですよね。


KO KIMURA:平日は3人くらいしか人がいないけど、そこにいること自体がかっこいいんだって思えるような店も昔はあったし。


Watusi:そこで仲良くなって話したりとか、バーテンダーが自然に繋げてくれたりとか。


KO KIMURA:そういった空気感があるからその店にも行きたくなるというか。最近はそれがなくなっちゃって。特に大箱、中箱はマンスリースケジュールを確認してからじゃないと行けない。


☆Taku:先週の土曜はヒップホップだったのに、今週は全然違うものが流れてるってことがあり得るってことですね。


Watusi:確かに。来日した外国人に「テクノ箱連れてって」って言われると困るんだよね。今、日本にジャンルに特化した箱ってほとんどないから。


DJ EMMA:専門店は増えて欲しいですね。そのほうが遊びやすいしカルチャーもできる。


☆Taku:でも大きいところでは難しいですよね。


DJ EMMA:4つの大きいクラブがあって、同じDJが今週はこの箱、来週はあっちの箱、みたいになってるけど、それならひとつのクラブでいいじゃないですか。お店自体をコンセプチュアルにしていって、そのコンセプトに合ったDJが毎週回すとか。


☆Taku:FM局と似てますね。昔はラジオ局それぞれのカラーがあったんだけど、今はみんな似たように聴こえちゃう。マーケティングによってそれぞれのカラーがなくなっちゃった。よく言うのが、マーケティングベースのプロダクトはダメだけど、プロダクトベースのマーケティングはありだよね、ってこと。プロダクトありきのマーケティングがされていないのが今の箱の現状なんじゃないかな。


Watusi:そもそも、よほど芳潤した社会じゃない限り1000人を超えたカルチャーってそう簡単にできるものじゃないと思ってる。カルチャーってカウンターのものだから。


☆Taku:アンチテーゼですよね。ハウスもテクノもドラムンベースも。


Watusi:だから、50人、100人箱からカルチャーが生まれて、そういう小箱がイキイキできればいいなと思ってるんです。


☆Taku:でも今、法律的には小箱はイキイキできないわけでしょ?


Watusi:そうだね。都がナイトライフを支援するって言っておきながら、下手すると特定遊興飲食店営業許可が取れていない小箱は全部なくなる危機感すら持っているよ。浄化作戦で。


☆Taku:検挙されちゃうってこと?


Watusi:そう。ロンドンオリンピックのときのロンドンのように。


DJ EMMA:大きい箱はネゴシエーションしてますからね。でも小箱はそこまでやってないから、早く動いたほうがいい。早く国、自治体といろんな話ができるようにしないと。


☆Taku:風営法を変えるにはすごくエネルギーが必要だったから、折衷案を取らざるを得なかった。小箱が切り捨てられちゃうけど、まずは変えるっていう事例を作るのが最初の段階だった。でも、良い小箱がいっぱい潰れちゃいましたよね。


Watusi:それは仕方ない部分もあるんだけど、小箱が団体化していく動きに当初消極的だったり、初動が遅かったという経営側の問題も大きかったと思ってる。


DJ EMMA:無許可をわかって営業してる人たちが逮捕されるのはしょうがないんだけど、知らずに働いてる子がいるお店もある。なにも説明せず働かせてるのは罪深いと思う。


Watusi:当時僕らも小箱の人たちに向けて、2ヶ月に1回ずつ勉強会を開いてたの。KO君も、どれだけ断られても来てくださいってオーナーたちに声かけ続けてた。でもそれでも大きく動いてくれることはなかった。


KO KIMURA:あと、法改正された新風営法を勘違いしてる人も多いんだけど、新風営法では特定遊興飲食店営業のライセンスを取得したお店は深夜〜朝までの営業が合法で許可される事になりました。でもその法律とは別に、営業できるかどうかの地域の制定はその地方自治体の条例によって決まってくる。営業可能な地域は渋谷区とかが個別で決めるわけ。


Watusi:変えられたのは国の法律だから、今度は区に言わなきゃいけない。


☆Taku:あとは対コミュニティのことになると。話し合えば変わっていくものなんですか?


Naz Chris:正直、国や都など行政にはたらきかけている方達は、すごく積極的な姿勢で現状を少しでも良くしようと動いている。目的や目標が明確にあって、“変えていこう”と何年もかけて根気よく努力しているんです。私たちにも自分達のことに対する当事者意識や積極的な努力がもっと必要だと思うんです。強い信念があればできることだから、それがクラブ経営者であれDJであれ事業者団体であれ、もっと努力するべきこと、できることはあるんじゃないかと。


KO KIMURA:実際は僕たちも切り捨てるなんてことは一切思ってない。全部がうまくいくようにと考えてる。



☆Taku:外から見てると切り捨てたイメージがついてるんですけど、実際はそうじゃないんですね。


DJ EMMA:今も声はかけ続けてる。でも小箱としてもひとつになってくれない限り、全然進まないんですよ。でも諦めてはいなくて、絶対にひとつにしないと。


☆Taku:だって自分たちの聖地ですもんね。


DJ EMMA:そう。小箱がなくなっちゃったら、自分たちのルーツみたいなものがなくなっちゃうんだから。


「DJに愛を持っていれば誰でも登録して欲しい」


☆Taku:いずれはDJ協会みたいなものを目指して、そのファーストステップとしてのDJ年鑑だということがわかりました。このDJ.netの登録に関して、「僕はDJです」と言えるための資格みたいなものはありますか?


Watusi:何をもってDJとするかは、DJが100人いたら100通りあると思うんです。だから、先ずは「志」があればOK。誇りを持ってDJをやってると自分で言えれば大丈夫です。


KO KIMURA:どんなジャンルのDJでも大丈夫。


Watusi:場所もクラブでやっている必要はない。不特定多数の相手に曲をセレクトして、時間軸に沿った空気を作れる人はみんなDJだと思ってる。


DJ EMMA:線引きは大変すぎるので、自分の音楽ややってることにプライドを持っていればそれでいいです。DJになりたい人はどんどん名乗って、DJとクラブと音楽を広げて欲しい。DJとしてのスタンスも個人それぞれでいいと思ってる。僕は僕の道を行くし。


Watusi:あとは、国やいろんなところと真っ当に渡り合える団体にしたいので、違法滞在者や反社会勢力者はNGです。


☆Taku:DJに愛を持っている人ということですね。


Watusi:登録してもらえば営業ツールのひとつにもなります。ベテランDJのレコメンドがすぐに届いたり、レコードプールから自分の楽曲が広まりやすくなったり。全国規模で繋がれるから、オーガナイズやツアーを組むこともやりやすくなると期待してる。


☆Taku:今日話しを聞いていて一番に感じたのは、やっぱり団体にする意味があるなということ。ブランディングとはちょっと違うので、すぐにブッキングが増えたりはしないと思うんです。でも、みんなで集まってDJという職業をどうやって守るか。それがしっかりと固まったら、そこでブランディングができるかもしれない。自分たちの好きなことをどうやって続けていって、どうやって自分たちの声を発信するか、そのためにはやっぱりユニオンを作る必要があるなと感じました。


Watusi:1000人でもムーブメントは起こせると言う人がいる一方で、国側は「1万人のDJが集まれば話を聞くよ」というスタンスだったりもする。だからとにかく繋がる必要がある。その先のことは、僕は逆にDJのみんなに聞きたいよね。本当は何をしたいのか、どう思っているか、どうなってほしいか。それを意見しあって、ノウハウを積み上げていくことに意味があると思う。


KO KIMURA:連絡網ができるだけで全然違いますよね。


DJ EMMA:なにかあったら全国で共有できるし。


DJ WATARAI:海外は連絡網がめちゃくちゃリンクしてますもんね。


☆Taku:日本の場合はスーパーマイノリティーになっちゃうから、アンダーグラウンドっていうカウンターカルチャーを出すリベラルな場所なのに、保守的な人も多い。そこが日本らしいというか。


DJ EMMA:今回話したことに関してもそれぞれいろんな意見があると思う。僕らの意見に対して違うと思ったら、意見を言ってくれるのは全く構わない。だけど、自分にとって大事なことであれば、ちゃんと調べてから意見を言って欲しいと思います。否定されるのが嫌なわけじゃなくて、否定するならそれなりの理由をきちんと調べて発言して欲しい。


☆Taku:この年鑑というのは、ソリューションを目指すものではあるけど、ソリューションではないと思うんですよね。みんながソリューションをどうやって作るかっていう。国連と一緒。国連が世界の平和を守ってくれるわけじゃなくて、国連を機能させて世界の平和が保たれる。年鑑を作るっていうのは、みんなが集まって、どうしたらもっと良くできるかと考える場を作るってこと。これがあるから全部うまく行くわけじゃなくて、でもこれがないと変わらないんじゃないかとすごく感じさせられました。


Watusi:DJ.netを作るって言ったとき、一番最初に送ってくれたのは大沢君なんだよ。☆Takuもすぐに送ってくれたよね。みんな想いは一緒なんだって嬉しかった。DJの未来はまずDJ達みんなで考えていきたいね。





【Japan DJ netとは】


“DJによるDJのための未来をつなぐ年鑑”


全国のDJをジャンル/活動地域などで自由に検索・閲覧できる国内最大級のWebサイト。

国内で活動するDJ達の活動環境やその表現や職業の未来を創造し合うことを目的とし、2020年4月に立ち上げを予定。


詳細:http://dirty30pro.com/japandjnet/



Photo by KiYuu

Written by Moemi



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