“自作の未発表曲しかドロップできないパーティ”に出演。本場UKのドラムンベースシーンでリリースを続けるDJ、Ittiインタビュー

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東京で活躍するドラムンベースアーティスト・DJのItti。2018年はUKのレーベル「Different Music」からEPをリリースし、現地のドラムンベースパーティ「NOISE TEST」にも出演を果たした。2019年も前回に続きUKのレーベル「Ronin Ordinance」からEPのリリースが決定。海外での活躍の幅を広げるIttiに、海外レーベルからリリースすることになった経緯や現地のパーティについて話を聞いた。
UKでは、DJやプロデューサーが「皆で」ドラムンベースを追求している感じがある
ー2018年12月に「NOISE TEST」というディープ・エクスペリメント系ドラムンベースパーティに出演されたということですが、そもそもどういう経緯でこのパーティに出演されたのでしょうか?
Itti(以下、I):NOISE TESTのプロモMixに、昨年UKのレーベル「Diffrent Music」からリリースした僕の曲が使われていたんですね。それを聴いてFacebookでお礼のメッセージをしたら、中の人がMedikaという「Diffrent Music」のアーティストであることがわかったんです。そこからチャットを重ねているうちに、「今年はあと4回開催するけど来れない?」とオファーをいただき、出演が決まりました。
ー海外のパーティには何回か出演されているのですか?
I:今までベルリン(ドイツ)、バンコク(タイ)、ウラジオストック(ロシア)、ソウル(韓国)でDJをしたことがありますが、100%ドラムンベースのパーティではありませんでした。今回出演した「NOISE TEST」は出演者全員がドラムンベースシーンでリリースを重ねているアーティスト、お客さんのほとんどはブリストルに住んでいるドラムンベース好きというパーティ。やはり自分のキャリアにとって特別なものでした。
ブリストルの街に貼られていた「NOISE TEST」のフライヤー
ーそんな特別なパーティに出演が決まったときは、どう感じられましたか?
I:ドラムンベース発祥の地であるUKでついにDJができる、という嬉しさが一番でしたが、お客さんは自分の曲で踊ってくれるのだろうかという不安もありましたね。なぜかというとこのパーティのコンセプトは「The tracks have to be yours and unreleased!」というもの。DJ中かけていいのは自分の未リリース音源のみなんです。ブッキングされたとき、未リリース音源は5曲くらいしかなかったので、2ヶ月で20曲以上作りました。普通に仕事もあるので今思えば無茶苦茶なスケジュールでしたが、人間追い込まれたら何とかするものですね(笑)。
ーパーティに出演して印象的だったことはありますか?日本のパーティとの違いなど感じることはあったんでしょうか。
I:自分のDJ中に歓声が沸き起こったことが一番印象的ですね。今までやってきたことが報われたと思えた瞬間でした。
日本のパーティとの違いといえば低音の出方でしょうか。日本のクラブのほとんどは腰くらいの高さで低音が鳴りますが、UKではウーファーがフロアの下から上まで積み上がっており、耳ではなく体で聴くことができるんです。ちなみにお客さんの男女比は男性率が高めでした。これは日本と一緒ですね(笑)。
I:「NOISE TEST」には世界中からディープ・エクスペリメント系ドラムンベースのトップアーティストが出演していて、今回はShiken Hanzo、Antagonist、Fuj、Mauoq、Medikaなどが一緒でした。もはやパーティというよりも大きなコミュニティーで、そこで出会ったアーティスト同士が仲良くなって、パーティの後もチャットで曲の交換や世間話をしています。
彼らは年齢とか関係なくリスペクトし合いながら、皆でドラムンベースを追求している感じがあるんです。例えばプロデューサーやDJ間で楽曲をシェアしていたり、リミックスやリリースの企画について話をしたり。ドラムンベースを通じて、色々と「気軽に遊んでる」感じが日本と違うなぁと。
あとは、いいアイデアに対しては「それ最高!やろう!」と数段テンションを上げてリアクションしてくれます。言われた方も「よし、じゃあやってみようかな」と思えますよね。そういう環境を皆で作っているのもいいなぁと思います。
左からオーガナイザーのMedika、Itti、Ronin OrdinanceのオーナーChimera
ーUKのように日本のドラムンベースシーンがもっと活性化するにはどういったことが必要だと感じましたか?
I:正解はわかりませんが、プロデューサーがもっと増えて、日本から世界に発信する曲が増えれば活性化する可能性はあると思います。
例えば海外アーティストがゲストとして日本のパーティに出演して盛り上がるのと同じように、日本のアーティストがゲストとして海外のパーティにもどんどん出演していけるといいのかなと。そのためには僕ら出演者がより魅力的になることが必要ですよね。僕は魅力的になる方法の一つが曲作りだと思っています。
海外も、日本から発信される音に興味を持ってくれている
ー今回のEP『Nakids』はUKのレーベル「Ronin Ordinance」からのリリースということですね。
I:このレーベル「Ronin Ordinance」との出会いもNOISE TESTがきっかけなんですよ。僕が出演した回がちょうど「Ronin Ordinance」とのコラボパーティーで、事前にオーナーのChimera(Benjamin)にメッセージであいさつと一緒にデモを送ったんです。その流れでリリースしようという話になりました。
ー「Ronin Ordinance」からリリースが決まったときの心境は?
I:海外レーベルから定期的にリリースすることは難しいと思っていたので、前回のリリースがまぐれではなかったのかなと思い素直にうれしかったです。それと同時に、これからも定期的にリリースしてやろうという気持ちも湧きました。
ーご自身の楽曲のどういったところが評価されてリリースに繋がったと感じていらっしゃいますか?
I:大きくは3つあると思っていて。
1つ目はシンプルに自分が表現したい音に共感してくれたこと。2つ目は日本から発信されるものに興味を持ってくれていたからなのかな、と思います。ヨーロッパから見る日本はまだまだ謎に包まれていて、関わりたいけど関わるきっかけがほとんどないのが現状なんです。「Exit Records」や「Samurai Music」などの有名レーベルは日本をフューチャーしており、その影響は少なからずあると思います。
最後はタイミングと運かな(笑)。NOISE TESTへの出演がなければRonin Ordinanceとは繋がれなかった、そう考えると「何事もご縁を大切に」ですね。
ー今回リリースされるEPはどういった楽曲になりましたか?
I:「1つの音だけ聴いてもアンバランスだけど、全体で聴くとバランスが取れている」そんな絶妙なグルーヴを見つけるようにこのEPを聴いてもらえると嬉しいです。
まだまだですが、最近ようやく自分の好きな音が表現できるようになってきたと感じているんですね。言葉で表現するのは難しいんですが、一言で言うと「表裏一体」な音を追求していて。曲中一つ一つの要素が変化していって、最終的には相殺されてゼロになる。例えば「美しいと汚い」「大きいと小さい」「長いと短い」は反対の意味だけど同時にイコールだと思っているんです。その汚い音が美しい音に変わる瞬間を表現できるように作っていますね。形になるまで5年以上かかりましたが、追求したい音を明確にすることで以前感じていた音に対する迷いが減り、制作スピードが上がりました。
そうやってできた曲のおかげで、今では世界中のアーティストと対等な立場で繋がることができているので、悩んだ経験も自分の活動や表現の幅を広げてくれているんですよね。
ー同じように曲作りをしている人にアドバイスはありますか?
I:「自然と音が連れて行ってくれる。」これは、僕自身が曲作りで行き詰まった時にHospital RecordsのMakotoさんがくれたアドバイスなんです。本当にその通りだといつも感じているので、ここでも紹介させていただければ嬉しいです。
今年はあと2つEPのリリースが予定されているというItti。SNSなどでキャッチアップしていこう。
ここからは、Ittiが実際に会ったアーティストの中からチェックしておきたいアーティストをご紹介していく。
Shiken Hanzo
日本人のようなアーティスト名ですがイギリス人のアーティスト。Hojo Clan Audioというレーベルを運営しつつ、Cyron Recordings、Samurai Music、Renegade Hardwareからも過去リリースしている実力派です。アンビエントかつダークなスタイルでとてもかっこいい。
Fuj
オランダ在住、日本人とラオス人のハーフで幼少期は千葉に住んでいたそうです。Commercial Suicide 、Flex Audio、Ronin Ordinanceからリリースを重ねており、要チェック。いつか日本でも一緒にプレイしたい一人です。
Mauoq
自分の中でハーフステップのアーティストといえばこの人。Different Musicのコアアーティストで、自身のレーベルMauoq Musicも主催しています。いつかコラボしたい。
Medika
Critical Music、Different Music、Ruffcutからリリースしており、ソリッドなサウンドがとてもかっこいい。またNOISE TESTのオーガナイザーでもり、シーンへの貢献度は計り知れず、とても尊敬しています。
Paracusia
今ディープドラムンベースシーンの中で最もアップカミングなアーティストの一人。彼の世界観は自分も大好きで、実は今お互いの曲のリミックスをし合ったりして遊んでいます。
リリース情報
【Nakids EP 紹介文】
Itti - Tokyo, Japan born and bred, DJ and sonic artist exploring a very groove based take on the deeper minimal drum & bass sound that we love here, Following up his fantastic 2018 release ''Ritual EP'' in Diffrent Music he comes to join the clan with this 4 track filth-fest that is his Nakids EP
Touching upon classic sound design This EP explores a blend of bouncy rhythms, chilling ambient soundscapes, suspenseful moods and pumping bass.
Welcome to the future sounds of Japan.
Ittiは日本の東京で活動するディープでミニマルなサウンドをベースとしたドラムンベースアーティスト・DJである。2018年にDifferent Musicからリリースし、シーンで話題となった”Ritual EP”に続き、今回”Nakids EP”には4ト曲が収録される。
このデビューEPの中で彼は躍動感あるリズム・アンビエント要素・オリジナリティあるサンプリング音・サスペンスな雰囲気、そして力強いベースの融合を探求している。
日本の新しい音へようこそ。
【Nakids EP リンク】
Bandcamp - https://goo.gl/uE3pLg
Juno - https://goo.gl/ufwbD3
Spotify - https://goo.gl/ghyfqo
+ All Worldwide Outlets
【Ronin Ordinance リンク】
sound cloud:https://soundcloud.com/roninordinance
Bandcamp:https://roninordinance.bandcamp.com/
【Itti リンク】
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written by 編集部