「このメンバーとしかできない“音楽の熱量”を表現したい」ナカムラヒロシが語る、i-depがバンドとして復活した意味

10年ぶりにバンドとしての活動再開が発表されたi-depのナカムラヒロシにインタビュー。再結成に至った経緯やバンドとしての変化とは?
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2019.03.05 03:10

先日、10年ぶりにバンドとしての活動再開が発表されたi-dep。10年という時間を経て、今復活する理由やバンドとしての変化をナカムラヒロシにインタビューした。




聞き手:☆Taku Takahashi(m-flo)



「この10年は、バンドにとって非常に重要な期間だった」



ーまずは10年前に遡って、i-depを辞めた理由は何だったんですか?


ナカムラヒロシ(以下、ナ):その当時のリーダーは僕だったんですけど、メンバーの心のリーダーはドラムの丈二さんだったんですよ。その心のリーダーが抜けるって言い出して。僕はそれでも続けられるって思ってたんですけど、抜けるって言われた3週間後には散り散りになってた(笑)。


ーそれがどうしてまたバンドとしてやろうとなったんですか?


ナ:実はメンバーの一人が事故を起こして。それで慌てて電話したのが全ての始まりですね。解散した後一言もしゃべってなかったのに、電話して「生きててくれてありがとう」とか自分でもよくわからんことを話して。事故がきっかけってのはどっかのユニットと一緒です。


ー 一緒ですねぇ(笑)。


ナ:その後に、人前で表現する機会が減った僕を見かねて、事務所がライブの提案をしてくれて。ナカムラヒロシの過去・現在・未来というコンセプトだったんだけど、それでi-depを呼ばないわけにはいかないから。メンバー一人ひとりに電話したら「やろうよ!」って言ってもらえたんだよね。それでいざライブをやったら同窓会的な感じで楽しかったんですよ。「やっぱりバンドって気持ちええなぁ、あんなに傷ついたけどまたやりたいな」と思って。


仕事として音楽をやるのもすごく大事なんですけど、その時間が増えれば増えるほど自己表現が減っていくというのがジレンマとしてあって。なぜ僕がこの音楽の世界に飛び込んだかっていうと、やっぱり自己表現をするためだっていうことに改めて気づいたんですよ。それでもう一度自分に立ち返ろうってなったときに、あのライブの時の感じ、「阿吽の呼吸」みたいなものを思い出すと、これは他では出来ないなと思って。


i-depってずっとインディーだからそんなにビッグなわけでもないし、かといってものすごくアングラなわけでもない。ヘンテコなバンドだけど、POPにもアングラにもなりきれないというのが「僕の個性」だなと思ったんです。それで去年の年明け、みんなで集まったときに提案したら、みんなにもやりたい!って言ってもらえて。


ーじゃあ去年の年明けくらいにはバンドとしての再始動が決まってたんですね。


ナ:でも「やりましょう」ってなったら次は、僕が曲を書けなくて。書くんだけど何回もボツにしたの。


ー何個もデモが上がってるのに。


ナ:そう。今の流行と全く違うことをしたいわけじゃないし、全く同じことをしたいわけでもないっていう変な感覚があるんですけど。子供みたいな感覚で音楽に向き合わないといけないと思って、だんだん見えてきたのが「ミニマルなファンクミュージック」みたいな音楽がバンドでやれたらなぁと。




ー今回の新曲「Beautiful Silence」を聴いて、i-depの過去の音色ではあるんだけど、ドラムのリズムだったりが初期のi-depとまたちょっと違うなという印象を受けたんです。この10年やってきたソロや他の人との曲作り、DJの経験が今のi-depにも入ってる感じなんですか?


ナ:基本的にi-depをやってるときは、「僕らの日記」に近いものでいいと思っていて。例えば誰かがやっていたことをかっこいいと思っても、同じことはやらずに封印しちゃうじゃないですか。でもi-depのときはそれを封印しない。自分がいいと思ったことに対してフィルターをかけずに、影響を受けたこと全てが積み重なって今のスタイルになってると思います。


もちろん自分だけでなく、メンバー個々のこの10年の変化が、まぁ大したもので。メンバー個々でできることが増えたから、彼らも対等に意見を言ってくる。前は僕がメンバーというよりプロデューサー的な立場だったのが、今は一緒にセッションして曲を作り上げていってる。


この空白の10年で自分たちが感じたことや、その人柄を音にしていくという意味でも、バンドにとって非常に重要な期間だったと思うんです。僕的にはまだまだ準備期間だとは思っているんですけど、もうこの準備から見せていくのが今は楽しい。


あの新曲も実は一発録りなんですよ。しかもノンエディットで。


ーMVを撮るために演奏したわけじゃなく、あれが作品になってる?


ナ:あれね、録音も自分でやってるんですよ。で、MIXも自分でやって。ビデオは友達に撮影してもらって。「ミニマムなPV、だけど演奏はキレキレ」っていうのを武器にしていきたいと思って。


去年の夏頃、レコーディングをポータブルでできるようにするっていうコンセプトを決めたんです。例えば、公園でもレコーディングができてビデオも撮れるみたいな、すごくミニマルな動きでやったほうが自分たちが面白いなと思って。「自分たちが好きでやってる」ってことをリスナーのみんなに伝えたいので。






「バンドでしか感じられない熱量・一体感は、人生においてのかけがえのない出会い」



ー「自分たちが楽しんでいることをファンに伝えることが大事」っていうのは以前から強く思っていたんですか?


ナ:昔、☆Takuちゃんに「俺DJ辞める!」って言ったの覚えてる?その頃感じたことが大きなきっかけになってるかな。


あの当時、今思うと人間として壊れてて。勉強と思ってやった仕事で、否定され続けてたんだよね。自分がいいと思ってる曲が受け入れてもらえなくて、それが続いて自己否定に陥って。


ー自分がダメなのか、みたいな。


ナ:ダメなのかじゃなくて、ダメだ!っていう感じだった。でも☆Takuちゃんが優しくてさ、「大丈夫、大丈夫」って言ってくれて。で、結局音楽を諦めなかったという(笑)。


ーあははは(笑)。


ナ:自分で自分を傷つけることが努力だと思って、それぐらいなんとしてでも手に入れたいと思ってたんだよね、音楽の技術とか発想とかを。その時求められたことは、完璧なデモを作って採用してもらうっていうこと。でも僕がしたいのは実験なんだよな、って2,3年後に気づいたんですよ。


人によるとは思うんですけど、自分が良いと思ったものが良い、でいいと思うんですよ。音楽を作ることはすごく神聖なものだと思ってて、心に膜が張ってるとできないものがたくさんある。でも「楽しいな」と思うときって、心に膜なんてないでしょ?子供が初めてゲームやる時の感覚。知識を得た上でその状態にどう近づくかっていうのが大事なんだなと。


「ツマミいじったら音変わるやん!」「こんなメロディー出来たやん!」っていう楽しさが、知識を越えていかないとな、と思って。だからこそ熱量が必要で、興奮が必要。それがリスナーにも伝わるんだと思う。


ーその熱量を表現するためには、やっぱりバンドなんですね。i-depとして一人で活動してきた間、バンドに戻りたいなって思ったことはあったんですか?


ナ:その当時は音楽を続ける、i-depはなくさないってことだけが重要で、僕が頑張ればいいんだって思ってた。でもライブをするときに比べるんですよ。バンドだったときと、一人の自分の熱量との差みたいなものを。それでいうと、何回かしか(バンドの時の熱量に)勝ててないっていう感覚はあった。バンドのみが持ちうる一体感、それが上手いか下手かもわからないくらいの一体感で、それは人生においてのかけがえのない出会いとも言えるな、と思って。超一流のミュージシャンを呼んでライブしたら超一流の演奏になるんですよ。でもi-depにはならない。


ーそれぞれの味が強いんだ。


ナ:音楽家の強みをレーダーチャートにしたら、一流の人はみんな丸に近くなるんだけど、うちのメンバーはガタガタ。ある1つの部分が突出して秀でてたりする。でもそこを生かしていく音楽がしたいんだよね。


「Beautiful Silence」をやるときは、一人ずつ家に呼んで曲を聴いてもらって、個々にディレクションさせてもらって。元々シンプルなものをやってたのに、急に「人柄出してよ〜」みたいなディレクションになったから「人が変わったみたい」とか言われて。


以前は自分が頑張ってた感じだったけど、今は隙だらけで、メンバーに全てさらけ出してる。僕自身もすごい変わったんだと思う。


ーそうやって自分が変化するきっかけとかはあったんですか?


ナ:自分一人で考えてやってるのもすごく楽しかったんですけど、メンバーから上がってきたアイデアをセレクトするのが一番楽しいことなんだなと思って。僕一人で曲を化けさす必要なんてないな、と。


ーバンドだからこそ生まれるところを、自分がディレクションしつつも想像以上のものが返ってくることが楽しいっていうことですかね。


ナ:「Beautiful Silence」のビデオ見てもらえばわかるんですけど、Sax藤枝君のソロが終わったあと、僕喜んで彼を指差してて。「あ、こんな感じの顔してんねや、すごい嬉しそうにしてんな」と思って自分でびっくりしたんですけど。一人だとそうはならないと思うんですよね。


ー 一発撮りで売られるものを演奏してるっていう風には全然見えなかったです。すごく楽しそうにリラックスしてて。


ナ:でしょ。一回解散したバンドって、家族まではいかないけど、従兄弟よりは近い感じがあって(笑)。


ーすごい比喩ですね(笑)。


ナ:兄弟でもないんだけど、でも家族な感じ。その感じがちょっとしたことで壊れるのもわかってる。それでもやるのがバンドっていうか、同じ宿命であるってことなのかな。







「子供も感動できる、最先端の音楽をやりたい」



ー興味深いのは、メンバーと一緒に作ってはいるけど、お蔵入りしてるデモもたくさんあるってところで。


ナ:曲が書けなかった当時は、僕の音楽感がたぶんシリアスだったんですよ。熱いんじゃなくて真面目。「i-depってこうだったかな?メンバーが待ってるし早く書かなきゃ」って感じで、書いては潰し書いては潰し。技術は向上してるのに自分が納得しないっていうのは、音楽的な背骨が違うんだということに半年くらい気づきませんでした。


ー音楽的背骨、というのは?


ナ:感覚的なんだけど、気持ちが悪い。これを自分がi-depとしてやる必要があるのか?っていう。いい曲なんだけど、産声を上げるという意味では興奮が足りないなと。


ー自分が高揚するものができるまで出したくないっていう感じね。自分がしっくり来てなくても、メンバーから「いいじゃん」って言われることはあった?


ナ:あった。けど、「ごめーん」って(笑)。でも、今できてるものを聴いてもらうと、「そういうことか」ってわかってくれてる感じだよね。新曲は1ヶ月に1曲ぐらいずつアップしていこうかな、と思ってて。年内にアルバムみたいなものが見えるようにはしたいですけどね。ふわっとしてるけど、動き続けるのは間違いないです。


ー今後の活動はどんなイメージで?


ナ:i-depとしては、子供も感動できる、喜ぶ音楽をやりたい。元々そうだったんだよね、子供でもわかる最先端の音楽を作りたいって思って始まったバンドだから。それぞれ色んなことができるようになって戻ってきたので、ライブで大人も子供もわちゃわちゃ踊ってる景色が見たいな、とは思ってます。日本だけじゃなく海外も含めてね。


ー最後にファンの方にメッセージを。


ナ:ファンの方にはね、まずは謝罪からなんですよ。10年前に勝手に解散してソロになって。解散ライブもできないまま。それでまた10年経って勝手にバンドやります、って。まずは謝罪。どうもすみません、i-depはわがままをしておりますっていう。


バンドとして10年やってなかったら新人だと思うんですよ。だから、過去のi-depは大切なものとしてポケットに入れます。それを手に持って音楽を作るのではなく、今の自分達がこの6人でできることをきっちりと導き出して、みなさんに笑顔と涙と笑いをお伝えしていきたい。ライブでの感動、その喜びをみなさんと共有したいですね。




「子供みたいに楽しんで音楽をやりたい、それはi-depでしか叶わない」と語るナカムラが強く印象に残るインタビューだった。先日公開された新曲「Beautiful Silence」でも、10年を経たからこそ表現される“美しい沈黙”に胸打たれる。3月8日に行われる復活後の初ライブで、どんな姿をファンに見せてくれるのか楽しみに待っていよう。




【ライブ情報】




i-dep x Hubert Lenoir(ユベール・ルノワール)


日時 : 2019年3月8日(金) 開場18時 / 開演19時


会場 : 渋谷区文化総合センター大和田6階 伝承ホール


住所 : 150-0031 東京都渋谷区桜丘町23-21


最寄駅 : 渋谷駅


チケット : 前売4,000円 / 当日4,500円(税込)全席自由 / 2月9日(土)10:00発売開始


※整理番号順のご入場となります。


※未就学児入場不可。


チケット情報はコチラ: チケットぴあ / Peatix / LivePocket


written by 編集部



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