ドリーム・ポップ・デュオ=まこみなみんの「Ice Ice Baby」リミックス集がリリース

SATOSHI FUMI, Rick Wade, BRISAらハウス・クリエイターらが参加!
SHARE
2021.08.13 08:00

取材・文:Taichi Tsuji a.k.a House Violence


ドリーム・ポップ・デュオ=まこみなみんの「Ice Ice Baby」リミックス集が8月16日、各種配信プラットフォームよりリリースされる。






特異な作風のガールズ・ポップを練達のハウス・クリエイターらがREMIX


疾風迅雷の作品リリースを重ね、2020年に創設10周年を迎えたUNKNOWN season。今や国内のハウス・ミュージック・レーベルを代表する存在の一つで、SATOSHI FUMIやDazzle Drums、Soichi Terada、Gonno、Kuniyuki Takahashi、SEKITOVAといった日本の傑物、Rick WadeにFranck Roger、JimpsterにAlton Miller、KEENE、Sebastien Leger、Dan CurtinにNick Holder、Tigerskinなど海外の著名アーティストも擁する多士済々だ。世界中のシーンとの紐帯はそれこそ強みだが、作品のクオリティ・コントロールにも余念が無く、いずれも一貫して上品かつ端正。この独特のジェントルな作風にレーベル・ヘッド=Yoshi Horinoの感性がうかがえる。


来たる8月2日(月)にリリースされるのは『Ice Ice Baby(Incl. Remixes)』。東京のドリーム・ポップ・デュオ=まこみなみん(macominaming)の代表曲「Ice Ice Baby」を題材にしたリミックス集で、SATOSHI FUMIやRick Wade、BRISA、Yuki Tosayaといったレーベルおなじみのアーティストのほか、Gilb’RとSebas Ramisなるビッグ・ネームが参加する。なお、先述の“8月2日”はBeatportでの先行発売日だが、8月16日(月)にはTraxsource、そしてストリーミング・サービスのSpotifyやApple Musicなど各プラットフォームに展開されるので、関心のある向きはチェックしてみよう。以下は、その概要だ。




●作品タイトル:『Ice Ice Baby(Incl. Remixes)』

●アーティスト:まこみなみん(macominaming)

●レーベル:UNKNOWN season(Original licensed from OIRAN MUSIC)

●発売日:8月2日(Beatportエクスクルーシブ)、

8月16日(Traxsource、SpotifyやApple Musicなどを含む各プラットフォーム)


beatport リンク : https://bit.ly/3BZqkS2


●収録曲:

M① Ice Ice Baby (BRISA Remix)

M② Ice Ice Baby (BRISA Remix Instrumental)

M③ Ice Ice Baby (Rick Wade Remix Vocal)

M④ Ice Ice Baby (Rick Wade Remix Instrumental)

M⑤ Ice Ice Baby (Sebas Ramis Remix)

M⑥ Ice Ice Baby (Gilb’R Remix)

M⑦ Ice Ice Baby (Yuki Tosaya Acid Reflection Dub)

M⑧ Ice Ice Baby (SATOSHI FUMI Deeper Whisper Mix)

M⑨ Ice Ice Baby (SATOSHI FUMI Deeper Whisper Mix Instrumental)

M⑩ Ice Ice Baby(Original)


M⑪ Ice Ice Baby (House Violence & Yoshi Horino Thin Ice Bootleg Mix)  *promo only (Not for sale) - Bonus Track

※M⑪ SoundCloudフリーダウンロード : https://bit.ly/37kEyiv


リミックスの原曲「Ice Ice Baby」を歌う“まこみなみん”は道玄坂のDJバー、渋谷花魁をベースとするミュージック・ブランド/レーベルのOIRAN MUSICに所属し、都内のクラブ・シーンに軸足を置くが、その音楽性は極めて特異。“これはダンス・ミュージックだ”と認識させる記号性をギリギリでかわし、アイドルや文学的構造、オリエンタリズムなど、クラブの密室の彼方へと聴き手を連れ去る。


こうした一筋縄ではいかない音楽を手練れのハウス・クリエイターらがリミックスするところに一種の“おかしみ”があり、とりわけ日本のアイドル・カルチャーに我々ほどのなじみが無いだろう海外勢の解釈は見ものだ。もちろん国内アーティストたちも“ハードコアにハウスな”布陣なので、化学反応の結果は予測不能と言える。


「Ice Ice Baby」のリリック内容がリミックスに適している理由


「Ice Ice Baby」は、115BPMの4つ打ちトラックにコケティッシュともアンドロイドライクともつかない女性ボーカルが乗る2020年作。ローファイ・ハウス以降のチルな感覚や90'sハウス・リバイバルといったクラブ・トレンドを匂わせつつ、同時にMaison book girl辺りのハイセンスなアイドル・ポップ、相対性理論のようなアイコニック・オルタナティブにも比肩する日本独特の色を持つ。COVID-19により世界が分断されつつある中、「今このタイミングであらためて、日本から自分たちの視点でハウス・ミュージックをプレゼンテーションしたかったんです」とはUNKNOWN seasonのヘッド=Yoshi Horinoの弁。その言葉の背景に「Ice Ice Baby」を題材とした理由が垣間見える。


また、渋谷花魁~OIRAN MUSIC~まこみなみんのプロデュースを手掛けるDJ/作詞家のカワムラユキとHorinoは20年来の仲。「彼女はストリート・カルチャーの塊みたいな人……音楽プロデューサーとしても鬼才だと思います」とHorino。言い得て妙とはこのことで、「Ice Ice Baby」のチルな音像の向こうには、カワムラの広範な知識に裏打ちされた仕掛けが多数ちりばめられている。「実はリミックスに向いている曲だと思っていて。だから題材にしてもらえて、とてもうれしかったんです」と語るのはカワムラ本人だ。


「この曲のリリックには、色々なキーワードを盛り込んでいます。例えば、1990年代のスーパーモデルを象徴する“Cindy Crawford”やオノ・ヨーコさんの曲のタイトル“Walking on thin ice”、ハウス・クラシックスと呼ばれるような曲に入っている“Lead my Lips”とか。引用には意味があって、“Walking on thin ice”であれば薄い氷(thin ice)の上を歩くという感覚が、一寸先は闇と言える今の世の中でリアリティをもって受け止められるのではないかと思ったんです。言葉の一つ一つに強度があるでしょうから、リミックスで詞がどんなふうに分解されても、あまり細かくチョップされない限りは原曲の世界観が伝わる気がしています」


このほかVanilla Ice「Ice Ice Baby」へのオマージュも感じさせるなど、聴くほどに多層的な広がりを見せる。そして曲の世界観は「冷えた高み」なるコンセプトに集約されるそう。


「制作中は、ここ数年、世界が熱くなり過ぎているんじゃないかという認識があって。ヘイト・クライムにしても、SNSで発露される怒りにしても、コミュニケーション・ツールが発達した反動なのか表に出さなくてよいものまで表出していて、ボルテージが上がっているなと。そして、自身を省みたときにも同じような部分があったので、熱くなり過ぎたエネルギーを瞬間冷凍する魔法みたいなものが音楽の中に作り出せたらといいなと思って。サウンドに関しても、曲を出す2年ほど前まではEDMなどのアッパーなものが流行っていましたが、“陽”の次には“陰”が来るもので、リリースするころには世の中的にも自分のテンション的にも、陰でメロウなタイム・ゾーンに入っていたのかもしれません」


チルな作風となったのは必然だったのかもしれない。


「まこみなみんの楽曲は、マーケットど真ん中の音楽ではないと思っています。合理性から放たれた作品制作というのは非効率かもしれませんが、そこにこそ“うれしい誤算”が生まれると感じていて。以前プロデュースしていたナマコプリから数えると10年近く実験のようなことを続けているものの、『サイバーパンク2077』の劇中歌をプロデュースさせてもらえたりしたのは、マーケティング脳でやっていたら無かったことだと思います。だから、私にとっては芸術。自分がやれるうちはトライし続けようと思っています」





レーベルを象徴する上品なサウンドからぶっ飛んだリミックスまで多彩“すぎる”解釈!


現代のテクノロジーが生み出した副作用……それが人間に潜む闇の現出、または“再生回数”などの数字へ近視眼的になるものの見方だったとして、「Ice Ice Baby」ほど静かに提言している曲はあるだろうか? そのオピニオンを多様な形に再表現し、さまざまな価値観や文化を持つ世界中の人々へより伝わりやすくするというのも、UNKNOWN seasonのリミックス集がなせる業かもしれない。筆者の元へ試聴用音源が届いたので、ここからは収録曲のレビューへ移ろう。


●BRISA Remix

このコンピレーションでは希少な“多幸系”のアンサンブル……それがあのBastard Jazz(アメリカ)やIRMA(イタリア)をはじめ、73 MUZIK(スペイン)、King Street(アメリカ)、Jazzy Sport(日本)などからもリリースを重ねる国内アーティスト=BRISAのサウンドだ。冒頭の端正なドラムで安心感を誘うやいなや、続けざまに入るベースの存在感たるや。直裁に言えば聴感上の音量が大きいのだが、それがグッと聴き手の気持ちを高ぶらせる。原曲のアイドルライクなボーカルを爽やかに、まるで南方の海辺に合うようなテイストに聴かせているのが新鮮で、トラックの音数のコントロールやコードのリハーモナイズに腕前を感じる。オリジナルの持つ“湿度”のようなものを全く感じさせないのは、このリミックスだけなのではなかろうか? ボーカルを過度に加工したような爪痕も見当たらず、むしろストレートに使っている印象とあって、ナチュラルにガラッと雰囲気を変えてくるセンスに脱帽だ。


●Rick Wade Remix

UNKNOWN seasonのサウンドを象徴する存在と言えば、Rick Wadeがその一人。約30年に渡りデトロイトを拠点に活動し、主宰するharmonie parkをはじめ、Moods & Grooves(アメリカ)やYore(ドイツ)、Shall Not Fade(イギリス)、Piston(ポルトガル)、ELYPSIA(ベルギー)などからも作品をリリース。多作家としても誉れ高い。


今回のリミックスは、心地良くも緊張感に満ちた和声が支配的で、Rhodes系のコードをフルートやブラスのパッセージがさりげなく、それでいてくっきりと彩る。絶妙だと感じたのは、声の料理のしざま。原曲では2~3声の“Ice Ice”というフレーズを単声で用いつつ、リフレインさせないことでキッチュな香りを抑え、アダルトなトラックに何の違和感もなく溶け込ませている。“Cindy Crawford”などの言葉を含むナレーションの使い方も技ありで、オリジナルのロリータ・テイストを微塵も感じさせないほど大人っぽく昇華。聴き込むにつれ、息の長い練達の実力を見せつけられる仕上がりだ。


●Sebas Ramis Remix

スペインのハウスDJ/アーティスト、Sebas Ramis。Sub_UrbanやPuro Musicといったレーベルの創始者/A&Rでもあり、Tutsi Girl Play Houseではバンド形態のライブ・パフォーマンスを行っている。彼のリミックスは、収録曲の中では最も原曲に近いナチュラルな仕上がり。控えめな感じに聴こえるかもしれないが、オリジナルの印象をキープした上でトランスフォームさせるというのは思いのほか技量を要することで、それをサラッとこなす辺りに経験豊富なアーティストらしい“余裕”を感じる。


サウンドの演出や味付けに過剰なところが無く、全体的にあっさりとしていつつも不思議と飽きがこない。“スウィンギンなサブベース+低音の芯の成分を主体としたキック”から成る低域が絶対的に心地良く、声の抜き差しやアトモスフェリックな上モノの追加により、フル・レングスを聴かせ切る説得力を創出している。


●Gilb’R Remix

このリミックス集の中で最もエクストリーム……つまり原曲を“書き換えた”解釈と言えるのが、フランスのレジェンダリー・ハウス・クリエイターGilb’Rによるサウンドだろう。何しろあの印象的な“Ice Ice”という歌のフレーズが見当たらないのだから。なんなら、原曲からのサンプリングはナレーションくらいか? 


だが、オリジナル素材の登場頻度が低いからと言って躍起になるのは無粋。VersatileやFuture Talkといった名門レーベルを主宰し、フランスRadio Nova主宰のNova RecordsやイギリスのIdjut Boys主宰U-Star、オランダのDekmantelなどから多数の作品をリリースしてきた才人とあって、恐らく原曲のイデアにインスパイアされ、そこから受けた印象を完全なる自作としてアウトプットしたのだろう。大胆なやり方だが、これもまたリミックスの一つの形。実際に、音のムードとしてはクールな質感を引き継いでいるし、どこか原曲のプロデューサー=カワムラユキのDJセットに入っていそうな雰囲気にも、オリジナルからの影響を感じる。


●Yuki Tosaya Acid Reflection Dub

約11分という強気な尺、3分42秒辺りから叙情性を帯び始めるドラマティックな展開、80Hz前後に低域の中心を据えるというエキセントリックな(?)周波数バランス……面白い! そう思ったが早いがバイオグラフィをさらってみると、Futureboogie(イギリス)やNIGHT NOISE(オランダ)、Emerald & Doreen (ドイツ)、Melóman(スペイン)など、各国のレーベルからエモーショナルなモダン・アシッド・ハウスを発表しているのがYuki Tosayaだ。


いわゆるローエンド=50Hz以下を絞り、スーパー・タイトに仕上げた本作がクラブの音響でどういう表情を見せるのか、そしてなぜこのバランスにしたのかは本人にインタビューしたいところだが、そういう思索に耽る間にも“Ice Ice Baby Woo Baby”という原曲のボーカルとリミックスのコード進行のハマり方が胸に迫る。音数が少なくない割に耳あたりが良いのは、ミックスの奥行きの作り方に長けているからだろう。


●SATOSHI FUMI Deeper Whisper Mix 

ジェントルかつセクシー……それがUNKNOWN seasonの象徴的なサウンドだとしたら、先鋒を担うのはSATOSHI FUMIであろう。国内ハウス/テクノ・シーンで長年、リスペクトを集め、Bedrock(イギリス)やWe Play House Recordings(ベルギー)、Sudbeat Music(アルゼンチン)、King Street(アメリカ)にGET PHYSICAL(ドイツ)など欧米の人気レーベルにも作品を残している鬼才だ。


「Ice Ice Baby」の女声ナレーションをこれほど艶に、都会的に聴かせているのは彼のリミックスが随一。ラウンジーなピアノとストリングスの音色(ねいろ)は、異国のハイアットで無限の夜を謳歌しているような心地だ。ミキシングなどテクニカル面の安定感もさすがで、一体どんなふうにして音を紡いでいるのか気になるところ。このリミックス集をはじめ、マスタリング・エンジニアとしてもUNKNOWN seasonに携わっているので、アーティスト/トラック・メイカー諸氏にはサウンドのディテールにまで耳を澄ませてほしい。


●Ice Ice Baby (Original)

本編のフィナーレを飾るのは原曲「Ice Ice Baby」。筆者がこの曲を初めて聴いたのは、プロデューサーのカワムラユキがホストを務めるblock.fmのラジオ番組『shibuya OIRAN warm up Radio』の収録現場だった。当時、不勉強ながら“まこみなみん”のアーティスト名さえ知らぬまま耳にしたのだが、曲の持つ情報量だったりバックグラウンドの厚さみたいなものを、しかと感じたことをはっきりと覚えている。


“これはきっと、経験豊富なプロデューサーがフレッシュな女性ボーカリストをフィーチャーして作った曲だ”……その漠とした前知が確信に変わるまでに1カ月と待たなかったのは、ひとえにカワムラのDJミックスや著作へ俄然、夢中になったから。往年のハウスからBaltraなどの新世代系、そしてハウス以外の様々な音楽の語法をユニークな美意識でまとめ上げた「Ice Ice Baby」。トラック・メイクを担当したichi takiguchi、マスタリングを手掛けたKoyasといった名手らにも、あらためて賛辞を述べたい。


文章で表現できる限り『Ice Ice Baby(Incl. Remixes)』を紐解いてきたが、原曲という一つの素材から、これだけ多彩な解釈が生まれることに面白さを感じずにはいられない。先述の通り8月2日(月)にBeatportで、8月16日(月)からはTraxsourceや各種サブスクリプション・ストリーミング・サーブスでもリリースされるので、音楽ファンからDJ、そして自ら曲作りをする人にまで、一度は聴いていただきたい。



「shibuya OIRAN warm up Radio」

毎週金曜日20:00-21:00放送

https://block.fm/radios/17





SHARE