韓国2大ヒップホップレーベル「Hi-Lite Records」&「H1GHR Music」 オンラインライブレポート

レーベルカラーと個々の魅力を堪能した3時間。韓国2大ヒップホップレーベルによる、フルボリュームのオンラインライヴの様子をレポート。
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2020.10.20 08:00

Written by Tomohisa Mochizuki


9月23日(水)、配信アプリ『ミクチャ』が韓国のヒップホップレーベル「Hi-Lite Records」と「H1GHR MUSIC RECORDS」の配信ライブイベントを敢行した。日本では貴重な、韓国の重要ヒップホップレーベルの配信ライブの様子をレポートする。


イベント詳細についてはこちらの記事を参考にしてほしい。


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「Hi-Lite Records」と「H1GHR MUSIC RECORDS」、韓国2大ヒップホップレーベルによる「ミクチャ」アプリオンラインライヴレポート



レーベル設立10周年。Paloaltoと仲間たちが『Legacy』を紡ぐパフォーマンス


「Hi-Lite Records」はPaloalto(パロアルト)を筆頭に構成されたヒップホップレーベルで今年10周年を迎えた重鎮。Paloaltoの存在感に負けない個性豊かな面々が集まりストリートの匂いを残しながらも絶妙なポップセンスをブレンドした幅広い音楽性、キャラクターを豊富に取り揃えているレーベルである。




レーベル設立10周年のコンピレーションアルバム『Lagacy』収録の「Trynna Be」からスタート。Swervy(スワーヴィー)とともにレーベルのボスであるPaloaltoがさっそく登場し挨拶代わりのバースをキックした。


日本向けの配信ということで、日本語で挨拶。続いてHuckleberry P(ハックルベリー・P)とReddy(レディ)、Jowonu(チョ・ウォヌ)が一堂に会しポッセカット「U Dunno」を披露した。ジャジーサウンドに乗せ、リラックスした雰囲気で繰り広げられる個性豊かなマイクリレーが豪華だ。それぞれが『Lagacy』のアートワークでもありレーベルを象徴したブルーのオリジナルバンダナを着用し、その一体感が見てとれる。






ReddyとHuckleberry P、今回のライヴには参加していないがjerdの楽曲「Bad Bad Bad」では、ギターサウンドが特徴的なメロウな曲をムードたっぷりに歌い上げる。両者はラップもできる上にキャッチーに聴かせる歌モノまでその懐の広さを見せつける。


ゲームサウンドとトラップが融合した個人的にも大好きなアンセムソング「Ooh La La」でシンガロンすれば、インディーロックのアンニュイでエモーショナルな世界観を彷彿とするノイズがかったベースサウンドが特徴的な「L.A.F.S.」をYunB(ユンビ)が披露。続いてYunBとSwervyがグロテスクでアクロバティックなホラートラップ「Organization」でステージを席巻する。


一転してR&BとHOUSEをミックスしたダンサブルな「D.R.E.A.M」、毒々しいキャラクターを活かしたラップとトラックが満載されたアルバム『UNDER COVER ANGEL』からキャッチーなフックが印象的な「Mama Lisa」をSwervyがキック。畳みかけるように獣のようなベースラインの禍々しいGlitch トラップ「ART GANG MONEY」でReddyとともにその存在感を示した。






後半は怒濤の展開でアブストラクトなコーラスのカットアップが耳の残る「Been Through」、シンプルなトラックに緩急が際立つラップを展開する「 적셔 (Thanksgiving) 」でHuckleberry Pと Reddy、Paloaltoが貫禄を見せつけ、ブギーでラウドなロックサウンドにラップを載せた「Baby Driver」、Paul Wallよろしくのダーティ・サウス的な泥臭さを漂わせる「Break Bread」、G-Funkを彷彿とさせるメロディとビートの「DNA Remix」、ファンキーなブレイクビーツとトラップビートを融合させ「Air」と「한라산(Hi-Lite Sign)」のRemixを披露し、まさにライヴのハイライトを演出した。


クライマックスはメロディアスなPaloalto「Good Times」、ラストはメロコアなメロディがポップなアンセムソング「Kid Rock」でフィナーレ。「じゃあね」、「愛してる」、「バイバイ」とメンバーそれぞれ日本人のファンに愛溢れるメッセージを贈った。Hi-Liteらしい音楽性の引き出しの広さ、バラエティ豊かなキャラクターの個性を存分に炸裂させたショウケースとなった。






Paloaltoはコロナ禍が本格化する以前、日本でライヴする予定があった。新型コロナウイルスの状況を鑑みて、来日公演は中止に。その際はイベントの興行はもとより、渡航が制限されるような状況が長期化することになるとは想像していなかった。そして今回ライヴ配信によってPaloalto率いる「Hi-Lite Records」の面々による、日本のオーディエンスに向けたパフォーマンスが実現しそれを見られたことは感慨深い。


「Hi-Lite Music」は設立10周年を振り返るアルバムと同タイトルのドキュメンタリー『Legacy』を3チャプターにわたって配信。チャプター3では、韓国のヒップホップカルチャーを日本向けに発信するメディアBLOOMINT MUSICを主催、翻訳家・イベントオーガナイザーとしても活躍するSakiko Toriiが登場し、その魅力とヒストリーを語っている。






ハイクオリティな個と個が繋がり、ジェットエンジンのようなパワーを生む強烈なライヴ


パク・ジェボムことJay Park、Cha Cha Maloneを共同代表としたヒップホップレーベル、「H1GHR MUSIC RECORDS」は、アジア地域を始め世界的に活躍するアーティストを輩出する名門である。Jay Park、Cha Cha Maloneを始め、アメリカにルーツを持つアーティストが多いこともあり、アメリカにも拠点を築き、音楽性もグローバルなポップセンスを持っているのが特徴だ。




そんな「H1GHR MUSIC RECORDS」から華麗な歌声で登場したのは、BIG Naughty(ビッグ・ノーティ)。 「시발점(Where It All Started) Remix」から、スタンドマイクを自ら持ってきて、アコースティックな「잠깐만(LIVE)」をしっとりと歌いあげた。Jason Deruloの「It Girl」を彷彿とさせるホイッスルとピアノリフが心地イイアッパーな「문제(Problems)」で盛り上げ、上機嫌なBIG Naughtyは「コロナウイルス、サヨナラ」とつぶやき、Woodie Gochild(ウーディー・ゴーチャイルド)をステージに迎え「바다(BADA)」を披露。Woodie Gochildも「コロナバイバイ」とシャウトし、「YATA」と続く。序盤は徐々にH1GHRの面々が登場してくる構成のようだ。ライヴDJを務めるDJ SOMINへのプロップスも忘れない。


「今日は元気に行こうぜ」と日本語でモニター越しのリスナーに投げかけつつ怒濤のラップとアグレッシヴなボーカルが交差するWoodie Gochildが「Roll Cake」、「Loli pop」をキックした。






威勢のいい若い衆の二人に呼び込まれ、登場したのはGolden(ゴールデン)。ステージ上の椅子に腰かけ、極上のバラードソング「Hate Everything」を歌う。圧倒的な歌唱力でオーディエンスを引き込む素晴らしい歌声を響かせ、一気にムーディな雰囲気に。立て続けに最新のレーベルコンピレーションアルバム『BLUE TAPE』から「Selfish」で透き通るようなハイトーンボイスを披露。思わず聴き惚れる。後ろで一緒に熱唱する素振りをするWoodie Gochildがかわいい。きっと彼らも歌はうまいし、歌ってラップもできるメンツが多い印象のH1GHR。その中においても、H1GHRの歌うま番長として君臨するGoldenの歌唱力は頭抜けている。


続くのはHAON(ハオン)。情熱的なアルペジオとラテンハウスビートに載せてJay Parkをフィーチャーした「NOAH」を堂々とパフォーマンス。再び熱気を帯びるステージ。静と動のコントラストが効いた絶妙なセトリである。ミステリアスでローファイなエレクトロサウンドが響く「No Rush」のあとに、H1GHRのコンピレーションアルバムの宣伝。H1GHRは9月にレーベルのコンピレーションアルバム『RED TAPE』と『BLUE TAPE』の2枚をリリース。今回のライヴはそれぞれのソロ曲とこの2枚からの楽曲で主に構成されている。






リラックスムードたっぷり、Emoっぽいしゃがれたボーカルとブラスサウンドが陽気な「꽃(FLOWER)」、ベースラインに身体揺らさずにはいられないウェイビーなFuture Bassトラック「바코드 (Barcode)」と続く。BIG NaughtyとWoodie GochildがHAONとともに3人でステージ上でジャレ合っている姿が尊い。レーベルメイトのGroovyRoomがプロデュースした「붕붕」ではフックのフルートの音が入るパートでBIG Naughtyがマイクを笛に見立てるなど愛嬌あるにぎやかしで盛り上げた。


満を持してph-1(ピーエイチワン)が登場。中性的なベイビーフェイスとメロウなラップとボーカルでファンを虜にするH1GHRの人気者。リラックスムードあふれる「Homebody」を挨拶代わりに、ダンサブルな「Cupid」をパフォーマンス。4人並んでのスクショタイムを経て、 キャッチーなフックの「iffy」ではモニター越しにコール&レスポンスをアピール。サービス精神旺盛でさすが、喜ぶ見せ方分かってるなあ。


ph-1による「Orange」から今回のライヴメンバーとして最後に登場したのはニューフェイスのTRADE L(トレード エル)。オートチューンを効かせたボーカルで『BLUE TAPE』収録「RSVP Remix」を仲間たちと堂々披露。バウンシーなトラックのドラムとベースの隙間にH1GHRメンバーのラップがハマっていくのが心地イイ。Sik-Kが兵役でいないことが悔やまれる。「イイ夜です」と自己紹介するTRADE L。僕もです。ビールが美味しいよ。






Goldenがカムバックして「Oscar」、「Gotta Go」、「Closed Case」とポッセカットを立て続けに披露。GroovyRoom名義の楽曲「Giddy Up」、『RED TAPE』収録「Teléfono Remix」、アルバムリリースに先駆けて公開されたど迫力のマイクリレー「도착 (Cypher)」などメンバーが勢揃いしてのお祭り状態。最後は「How We Rock」で大団円。徐々に高度とスピードを上げテイクオフするようなH1GHRらしいライヴパフォーマンスだった。




レーベルのカラーやギャップを楽しめたライヴ配信


際立ったキャラクターをPaloaltoがまとめ上げ、チーム全体でのステージングで盛り上げたHi-Lite。そして、スキルフルな個と個が集まり、最終的にひとつのかたちとなってエンターテイメントしてくれたH1GHR。それぞれ違った色を見せてくれた好対照なライヴ配信となった。2つの配信を観てみて、レーベル同士が同じフォーマットでライヴするというのは、同じステージセットであってもメンバーが持つ特色や、レーベルのカラーやギャップが顕れてくるのが面白い。今後国内のヒップホップレーベルやコレクティヴにおいても同様の形式で観てみたいと思わせてくれた。


国内で言えば、バラエティ豊かで幅の広いタレントを数多くラインナップするSummitや、田我流、ゆるふわギャング、LEXを擁するMary Joy Recordings、西の雄Hibrid Entertainment、東の横綱YENTOWN。などなど、マッチングをザッと妄想するだけでワクワクしてくる。


なにより、これだけのボリュームのライヴを日本向けの配信で観られるのは貴重な機会だ。合間のMCの内容も気になったのは事実。和気あいあいとしたムードを眺めているのは言葉が分からなくても楽しめた。それだけに韓国語が分かる人はもっと楽しかったんだろうなあ。リアルタイムで字幕を付けるのは生配信では難しい。しかし、チケットを購入した人向けのアーカイブで、字幕視聴できたらより楽しめる層が広がるかもしれない(MC部分だけでも)。熱心なファンには言わずもがな、生の現場で再び彼らの姿を目撃するその日まで、リスナーは韓国語を勉強する努力をしつつ、「Hi-Lite Records」と「H1GHR MUSIC RECORDS」の今後の動向に注目したい。






Photo:ミクチャ





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