Kokatu Testarossa & KUVIZM インタビュー|コラボEP『HAVOC』制作秘話を訊く

釈迦坊主との伝説的ユニットCPCPCでも知られるKokatu Testarossaと、DÉ DÉ MOUSEが才能を認めるトラックメーカーKUVIZMによる『HAVOC』がリリース。作品についてメールインタビューを敢行した
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2020.05.28 08:00

ラッパーKokatu Testarossa(コカツ・テスタロッサ)とトラックメーカーKUVIZM(キュビズム)によるコラボレーションEP『HAVOC』が5月27日(水)リリース。制作や新型コロナウイルスによる自粛中の生活についてメールにてインタビューを敢行した。





Kokatu TestarossaとKUVIZMによるコラボレーションEP『HAVOC』がリリース。両者にメールインタビューを敢行


釈迦坊主との伝説的ユニットCPCPCでも知られるKokatu Testarossaと、DÉ DÉ MOUSEもその才能を認め、多数のラッパーのオーダーに応える気鋭のビートメイカーKUVIZMの2人がタッグを組んだコラボレーションEP『HAVOC』がリリースされた。


Kokatu Testarossaはこれまでに電波少女、Jinmenusagi、HAIIRO DE ROSSIらの作品に参加。長いキャリアがありながらも、そのマイペースさとシーンから距離をおいたスタンスから、これまでに自己名義でのまとまったリリースをしてこなかった。


一方で、元々インストゥルメンタル主体のビートを作っていたKUVIZMはDOTAMA、堂村璃羽、LEAP、RICK NOVAなどのラッパーからのオファーで引っ張りだこのトラックメイカーだ。そんなKUVIZMが10年来の付き合いのあるKokatu Testarossaに声をかけ、実現したというのがこの『HAVOC』である。



あえて長い時間をかけて制作された渾身のEPのタイトル、『HAVOC』は「HAVOK神」と呼ばれる、3Dゲームにおける物理演算のバグから取っており、人生におけるバグともいえる狂気や悦楽をテーマにしている。


リードトラック「Looper」を筆頭としてKUVIZMによる緻密な計算に基づく深いアンビエンスを湛えた端正なビートと、今もなお数々のクラウドラッパーに影響を与え、歌とラップの間を自在にスイッチするスタイルの源流とも言えるKokatsu Testarossaの類まれなるスキルが交錯する。そんな2人にメールインタビューを敢行し、作品について聞いた。





「コカツくんに何か詐欺や勧誘的なものなのではないかとしばらく勘繰られていた」(KUVIZM):2人が語る作品への思い、モチベーション、不安




—Kokatu TestarossaさんとKUVIZMさんがコラボレーションEPをリリースするに至る発端として、KUVIZMさんがKokatsuさんに声をかけた理由を教えてください。


KUVIZM:“ずっと前から知っていて、かっこいいラッパー”を考えたときに一番最初に思い浮かんだのが、コカツくんでした。僕から声をかけて、一緒に曲を作り始めて何曲かできたときに「EPとして出そう」という話になりました。


—アルバムタイトルの『HAVOC』は「HAVOK 神」と呼ばれる、3D ゲームにおける物理演算のバグから取っている、とプレスリリースにありますが作品の世界観に影響を与えたゲームタイトルがあれば教えてください。


Kokatu Testarossa(以下:Kokatu):今回タイトルは後付けなので作品を作るときにゲームの世界観を意識はしてないですね。

ただゲームは昔からずっと好きで、今も毎日何かしらプレイしています。単体の作品だと自分の力量が上がって行くのが実感できるゲームが好きで、「ぷよぷよ」「Call of Duty」シリーズなどはひたすらネット対戦に明け暮れた時期もありました。ゲームに熱中して音楽のこと忘れていたり、むしろ音楽キャリアにはマイナスな影響を与えてるかもしれないです(笑)。


KUVIZM:実は、ゲーム会社で会社員として普段働いているので潜在的な影響は受けているかもしれません。




—Kokatu Testarossaさんがキャリアにおいて自身初名義のEPを今回のタイミングでリリースされることに、特別な思い入れや理由があれば教えてください。


Kokatu:きっかけはKUVIZMさんの熱意に押されたところなのですが、前までの自分であれば断ってたと思います。それが今回は「そろそろ流石に一歩ぐらい踏み出しておくか」みたいな気持ちになりました。そういう気持ちになった理由は自分でも整理できてないんですけど、やっぱ年齢が関係しているのかもしれないですね。


—プレスリリースでは約2年におよぶ対話の末に出来上がったとありますが、制作の中での印象に残っていることを教えてください。


KUVIZM:僕とコカツくんが知り合ってから10年くらい経って、何年かぶりに突然僕からコカツくんに「曲作ろう!」と連絡をしたら、コカツくんから「何か詐欺や勧誘的なものなのではないか」としばらく勘繰られていたことです(笑)。


—「Looper」「Today’s Traitor」「いつも素でいいんじゃない」の前半3曲と、「Fuan」「ISTUSKA SHINU」「Fadeout」の後半3曲、例えるなら昼と夜のような、シチュエーションのコントラストを感じましたが、EPの構成で意識したことはありますか? 


Kokatu:構成は直感的に自分がしっくりくる順番で並べてみたらこうなったという感じですね。その中で自然と前半は明るい雰囲気で後半は暗めみたいなコントラストが生まれたんだと思います。曲自体も繋がりを意識して作ったわけではなく、今回のEPは単曲の集合体ですね。


—トラック制作のプロセス、意識したことなどを教えてください。


KUVIZM:「トラックがボツになることを全然気にしない」ことでしょうか。ミュージシャン同士は、音で対話することが一番だと思うので、トラックがボツになることも、最良の曲作りのプロセスだと捉えています。コカツくんがイマイチだと思っているトラックでラップをしてもいい曲にならない気もするので。


トラック制作における具体的な話としては、今回のEPの収録曲で、最初に作ったトラックから最後に作ったトラックまで1年ぐらいの時間的な開きがあります。その期間で自分のスキルや気分も変わった部分があるので、それらのギャップをなくすように、EPの仕上げの際のトラックの調整ははかなり時間をかけました。


トラックの曲調としてはメロディアスなものが多く、Trapの要素を取り入れたりしています。自分の好きなように、自然体で作ったトラックが多いですね。




—Yohji Yamamoto、Yves Saint-Laurent、草間彌生、現代アーティストやファッションデザイナー、ブランドの名前を引用しているリリックがありますが、制作にあたりインスピレーションを受けた作家、アーティスト、デザイナーがいたら教えてください。


Kokatu:リリックにも出てくる方々は結構影響を与えてるのかもしれないです。作品が好きというのもありますが、どちらかというと人生色々ありながらも創作に情熱を燃やし続けてる姿勢に感銘を受けましたし憧れましたね。

僕は結構モチベーションの波があるというか、やる気が無い時期が多い人間ですが、そういったエネルギーのある方の言葉や作品に刺激を受けてやる気が出る、ということはあったと思います。


—「Fuan」のリリックがすごく印象的でKokatsu Testarossaさんの内面が赤裸々に描かれていると思ったんですが、今不安に思うことってなんですか? 


Kokatu:不安は尽きないですね。常にある不安は「この先も心折れずに生きていけるのか」です。

日々様々な嫌なこと面倒なこと逃げたいことがある中で、今まではなんとか乗り越えてきたもののこの先も本当にずっと乗り越えていけるのかは不安になります。

直近の不安だと、リモートワークが続き過ぎてるので元の生活に戻れと言われた時に戻れるのかは不安です。


—「ITSUKA SHINU」は達観した価値観が描かれています。今、日常に向けて世の中は動き出していますが、また、自粛の前後で価値観が変わったことはありますか? 


Kokatu:今回みたいに急に世の中が大きく変わるようなことがあると、不確定な未来のことばかり考えて一喜一憂するよりもとにかく今を感じて生きるのが大切だなと改めて思いますね。本当に世界も個人の人生も何がどうなるかわからないなーと実感しました。


—Kokatu Testarossaさんはいわゆる“ネットラップ”黎明期から活動しているアーティストなのでお聞きしてみたいのですが、キャリアにおいてインターネットの恩恵、または逆に弊害もあったかと想像します。コロナウイルスによる影響で、その距離はさらに近くなり、ネットを通じた人間関係の在り方(コンテンツの配信者と視聴者アーティストやリスナーの関係性など)や、それに付随する問題点が浮き彫りになった部分が多いと感じていますが、現在のオンライン配信、SNSやネットゲーム、インターネットにおけるコミュニケーションについてどのように見ていますか?


Kokatu:SNS等のネットのコミュニケーションツールを上手く使える人が個人でビジネス的に成功する世の中になってきていて成功したい人はSNSが必須科目みたいになってきてると思います。ただSNSは使う時の負担も大きいと思っていて、昔に比べて個人が中傷に晒されることが増えてると思いますし、そういったことがなくてもSNSによって増えたコミュニケーション自体が負荷になってる人も多いのではと思います。


個人的には昔から人とのやり取りが増えないようにというか、自分の中の許容量を超えないように管理しています。自然とSNSの利用頻度は少なくなっていますね。ビジネスと割り切って活用する人でなければ、距離感を保つことが大切なのかなと思っています。







▶『HAVOC』/Kokatu Testarossa & KUVIZM


発売日:2020年5月27日(水) 

発売元:Ourlanguage

収録曲: 


M1. Looper

M2. Today’s Traitor

M3. いつも素でいいんじゃない

M4. Fuan

M5. ITSUKA SHINU

M6. Fadeout


配信リンク:https://fanlink.to/havoc-ep


ArtWork by Shintaro Kamei




▶Kokatu Testarossa


東京在住のラッパー/シンガー/プロデューサー。ネットラップ黎明期より活動を始めたカリスマ。電波少女、Jinmenusagi、オロカモノポテチ、シマダカズユキなどの実力派MCや、MichitaやEsdotなどの個性派ビートメイカーの作品への参加を経て、HAIIRO DE ROSSIやTAKUMA THE GREATを擁する伝説のグループBLUE BAGGY HOO RE:GUNZのメンバーに。そしてEccy主宰のSlye Recordsから念願のアルバムリリースが予定されるも白紙に。その後もマイペースな活動が続く中、2016年頃より釈迦坊主とのユニットCPCPCでEP1枚、アルバム2枚をリリース。2020年に入り[…]サンテンリーダーの初の全国流通シングル「Good bye Nancy」に参加。そして旧知の仲のビートメイカーKUVIZMとのタッグにより自己名義としてはキャリア初となるEP「HAVOC」をOurlanguageよりリリース。


https://twitter.com/kokatutest




▶KUVIZM


新潟出身、東京在住のビートメイカー。術ノ穴のコンピレーションへの参加や、LOW HIGH WHO?での配信アルバムを経て、2019年よりラッパー/シンガーへのビート提供を本格的に開始。ゲーム「モンスターストライク」の公式リミックスコンテストでのDÉ DÉ MOUSE賞の受賞をきっかけにオファーが急増し、ここ2年で手掛けたアーティストは、DOTAMA、堂村璃羽(「たばこ」は再生回数200万回超え!)、LEAP、RICK NOVA、haruru犬love dog天使、k-over (City Your City)、uyuni、Saint Vega、ハハノシキュウ、アマテラス、シラフ知らズ、日高大地、nate、yuhei miura、tip jam、noma、tella、runpa、CHARLESなど多数に渡る。ピアノやシンセなどコード感のある上モノを駆使してTrapやLo-Fi Hip HopからFuture Bassまで幅広いアプローチで今最も注目されるビートメイカー。


https://twitter.com/kokatutest


Written by Tomohisa Mochizuki


photo:Shintaro Kamei





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