【レビュー】星野源『Same Thing』EP PUNPEEらとのコラボで引き出された新たな魅力

オリコンチャート、Billboard Japanチャートでともに1位を獲得した『Same Thing』EPをレビュー。Superorganism、PUNPEE、Tom Mischとのコラボで引き出された星野源の新たな魅力を深堀り。
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2019.10.25 11:00

星野源がSuperorganism、PUNPEE、Tom MischとコラボしたEP『Same Thing』をレビュー。今もっともノリにノってるアーティスト、星野源の意欲作『Same Thing』EPを繰り返し聴いて感じたこと。





全方位ステルス能力で何にでもなれる男が「私」へと辿り着く。『Same Thing』EP レビュー


かねてより話題の星野源のEP「Same Thing」EP。客演・制作陣との個性と見事に調和した、星野源の新たな魅力を存分に感じられるEPだった。国内では、すでにオリコンランキングとBillboard Japanチャートで1位を獲得している。




リリース当日には星野源によるNHKの特番「おげんさんといっしょ」を生放送。豪華ゲストを迎えての音楽特番にはPUNPEEも登場して、「POP VIRUS」エクスクルーシヴ版を披露。PUNPEEは往年のMAKI & TAIKI ft. Mummy-D, ZEEBRA「末期症状」やK DUB SHINEの「渋谷が住所」をリリック中でサンプリング。星野源フォロワーだけでなく、日本語ラップファンをも歓喜させた。


今、日本のアーティストで星野源ほど好きなことをかたちにしながら、コアな音楽ファンだけでなく一般層にも大きな影響力を持つアーティストはいないのではないだろうか。




Gen Hoshinoがキュレーションするワールドスタンダード


『Same Thing』EPはPUNPEEを始め、Superorganism、Tom Mischといった世界で活躍するアーティストとコラボした4曲入りの作品となっている。アーティストの持つ個性に溶け込み、かつ星野源であることをキープするポップモンスターの真骨頂だ。星野源ほどのキャリアを持ちながら、新しい表現を常に模索し、食指を伸ばしてカタチにしていくその貪欲さには脱帽である。


進化し続けるポップモンスターは、回遊魚のように泳ぎ続けることでそのタフな心臓を動かし呼吸しつづけているのだろうか。『Same Thing』は世界へ“Gen Hoshino”を発信すると同時に、世界の素晴らしいアーティストを日本のファンに紹介する役割も果たしているように思えた。若者世代にとってその認識は薄くなっているかもしれないが、一定の世代には未だに根強く存在し続ける、“邦楽”と“洋楽”の分断。それを繋ぐ架け橋となりえるのはこの人なのかもしれない。





Same Thing(feat.Superorganism):メロディーの中、共存する愛と憎しみは表裏一体


意欲作とはいえ、肩肘張らず自然な流れでやりたいことをやってたら出来上がったEPなんだろうなあ。というのはこのSuperorganismとのタイトルトラック「Same Thing」を聴けば嫌でもわかる。“晴れの日”と“雨の日”、“天使と悪魔”、“クソ食らえ“と“愛してる”を対比しながら、全部そんなもん一緒だと、とびきりのウィットをカマし、サビで「I’ve got something to say To everybody, fuck you」と言い放つ。


こんなに爽快な“Fuck You”を星野源から聴けるとは。オロノとともに「めちゃくちゃにしちまおう」とコーラスするのも痛快だ。決してルールにとらわれず、自分たちのスタイルを貫く2人が、愛を込めて中指を立てる1曲。


コメント欄にも多く寄せられていたけど、星野源は毎年バナナマン日村にバースデーソングを「オールナイトニッポン」でプレゼントしており、47歳を迎えた日村へプレゼントした曲とこの曲のサビのメロディが酷似している。そんな遊び心も星野源らしい。




さらしもの feat.PUNPEE:“さらしもの”たちが歌う、普遍のメッセージ


ポップスにブラックミュージック的なアプローチを持ち込んだ星野源。ヒップホップに古今東西のポップカルチャーをブレンドして独自のスタイルを築いてきたPUNPEE。STUTSというキーマンで結ばれた2人が、今まで交わらなかったのが不思議なくらいだ。いや今のタイミングだからこそいいのかもしれない。自分たちの血肉となってきたトピックや、思考という臓腑をさらけだし切り売りしてきた“さらしもの”たちがスタジオで相まみえたのだ。


この歌はそんな2人のスターゆえの孤独と葛藤が歌われているのかな。と思いきやそんなこともなく(暗喩されている部分はあるだろうけど)、「君も僕も、誰しもが人の目にさらされているさらしもの」という普遍的なメッセージソングに仕上げているのがニクい。


山に入って『Ye』を完成させたKANYE WESTの「No Mistakes」を聴いて、琵琶湖のほとりで涙したというエピソードをラジオで明かした星野源に「さらしものだよ“ばかのうた”(※星野源のソロとしての最初のスタジオアルバム)語りき”埼玉のツァラトゥストラ”(※哲学書「ツァラトゥストラはかく語りき」を参照のこと)」とラップさせるPUNPEE。そのPUNPEEの独特のフロウや歌い回しを見事フィットさせる星野源。この人たち、マジでただもんじゃねえ。リリックビデオのイースターエッグや、楽曲制作の経緯はみやーんZZさんのJ-WAVE「SOFA KING FRIDAY」の書き起こし記事が詳しい。





Ain't Nobody Know:Tom Misch色に染まった星野流エロ文学


Tom Mischとのコラボ曲。オールナイトニッポンにゲストとして出演し、Tom Mischの「Disco Yes」を聴いた松重豊さんいわく、“ロンドンの星野源”といわしめた、気鋭のアーティストである。今年Tom Mischが来日した際、両者は音楽メディアRolling Stoneの記事で対談を行った。以後親交を深め、ロンドンの天才と埼玉のツァラトゥストラはクロスオーバーすることになったという。




夜の匂いが香ばしく漂うシンセとハイハットのリズム打ちがいかにもTom Mischワークを感じさせ、星野源のハスキーなボーカルと、色気のあるメロディが絶妙に混ざり合う。歌詞、タイトルともに説明するまでもなくエロエロのエロ。知っての通り、星野源はポップな楽曲に歌詞やタイトルでエロ要素を盛り込んだりする。しかし、この曲のようにムーディな雰囲気の直球なエロソングを歌っているのが新鮮だった。持ち前の無邪気でヤンチャなエロポップが、Tom Mischの音楽性によって大人のアーバンエロへと変貌を遂げている印象を受けた。


さらに、星野源の十八番である文学的な言い回しがロマンチックなエロティシズムに拍車をかける。ジャパニーズポップスターでありながら、「スーパースケベタイム」の名でラジオ投稿するなど、みうらじゅん的な変態の権化でもある星野源。この曲はその真髄に迫りつつ、夜霧漂う湿ったロンドンの街のような(知らんけど)深い味わいを醸している。


私:アコースティックで語る、圧倒的な「私」の存在感


Superorganism、PUNPEE、Tom Mischと三者三様の表情を見せてくれた星野源。最後を飾るのは、タイトルも楽曲もシンプルなアコースティックチューン。このEP全体を通して感じたのは星野源は何者にでもなれるのだということ。それはもちろん膨大な音楽的引き出しと、ノウハウ、何よりも持ち前のポップセンスが無ければできないことである。まるで、星野源を透過して、共演する人の個性、特徴を見ているような面白い感覚を覚えた。馴染んでしまって見えづらいけれど、そこに圧倒的な星野源の存在を感じるのだ。まるで映画「プレデター」でのステルス擬態みたいな不気味さすらある。


星野源は、何者にもなり得る。しかしそれは星野源にしかできないし、それが星野源になる。そこに来て、この曲では自ら「私」とは誰かをもう一度俯瞰して見つめ、ギター一本で歌い上げる。作詞・作曲も全部1人。いわば、今までの星野源なのだけれど、収録の3曲を聴いてからだと印象が全く変わる。いちばんスタンダードな「私」が異質にすら感じる。


『Same Thing』EPには4曲というボリューム以上に、星野源というポップモンスターの持つ膨大なエネルギーが集約されている。このEPって、まさにKANYE WESTの『Ye』みたいに、星野源のセラピー的な意味合いもあるんじゃないだろうか。いろんな星野源になれる星野源が、他者との関わりを楽しみつつ、「私」という存在を再確認するような。


星野源とGen Hoshino


ここ数ヶ月、いわゆるベテランと呼ばれるアーティストたちが、続々サブスク解禁の流れ(まだしてなかったのかという印象が強いが)に傾き、嵐までもがサブスクで音楽を配信するに至った。長年、“ガラパゴス“的な揶揄をされてきた日本の音楽シーン。しかし、日本の音楽とそれを取り巻く環境には今、いちリスナーにとっても分かるくらいの大きな変化が起こっている。世界的に、いわゆる“和モノ”の歌謡曲、シティポップがVaporwaveやFuture Funkの影響によって発掘され、主に海外の音楽ファンから再評価されている。


Tyler, The Creatorのアルバム『IGOR』収録「GONE,GONE/THANK YOU」では山下達郎の「Fragile」のメロディーがTylerによってリメイクされ、クレジットにもTatsuro Yamashitaの名が表記されたことが話題となった。(この曲はblock.fmのヒップホッププログラム『INSIDE OUT』に星野源が出演した際にも『POP VIRUS』のコーラスに山下達郎が参加していることから共通する楽曲として紹介された)


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最近ではONE OK ROCKやCHAI、Perfumeが積極的に海外ツアーを行い、BABY METALは3rdアルバム『METAL GALAXY』が米Billboard アルバムチャートで初登場13位をマーク。日本のアーティストとしては56年振りの記録更新を果たした。


さらに海外を拠点に長年活動し、グラミー賞ノミネートという快挙を成し遂げたstarRo。HIPHOPアーティストで言えばKOHHが88risingの北米ツアー全公演に帯同するなど、ソロ、グループともに日本のアーティストが世界の舞台で輝かしい功績を挙げている。


そんな中で、星野源はApple Musicの展開するBeats1で初めて日本人ホストとして「Pop Virus Radio」プログラムを主催。Netflixでは「DOME TOUR "POP VIRUS" at TOKYO DOME」の映像を世界配信した。11月からはワールドツアー「Gen Hoshino POP VIRUS World Tour」をスタートさせる。




アーティストとしてだけでなく、作家、俳優とマルチな才能を有し、マスメディアに対し大きな“力”を持つアーティストが、このように本格的に世界進出することは日本の音楽を海外へと輸出する動きの追い風となるのではないだろうか。


ポップなメロディと親しみやすいキャラクターとは裏腹の、貪欲な捕食者Gen Hoshinoが世界の音楽シーンで大暴れし、米Billboardチャートを蹂躙する様を見てみたい。




▶星野源 『Same Thing』EP

Produced by Gen Hoshino


01. Same Thing (feat. Superorganism)

02. さらしもの (feat. PUNPEE)

03. Ain’t Nobody Know

04. 私


ダウンロード/ストリーミング配信URL:https://jvcmusic.lnk.to/samething


written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki


photo:星野源 オフィシャルサイト





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