DJ Premierが語る、Gang Starr16年ぶりのアルバム『One of the Best Yet』の制作秘話とは

相方であるGuruが他界して9年。突如としてリリースされた奇跡のアルバムはいかにして作られたのか
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2019.11.08 01:00

「まだオレ達がベストだ」。アルバムのタイトル『One of the Best Yet』にはそんな想いが込められているであろう。ラッパーの故Guru(グールー)、DJでありプロデューサーのDJ Premier(DJ・プレミア)によるGang Starr(ギャング・スター)はこれまでに6枚のアルバムをリリース、今作は2003年の『The Ownerz』以来16年ぶりのアルバムであり、Guruが癌で亡くなってからは9年の月日が過ぎていた。


アルバムリリース後からDJ Premierは精力的にラジオやメディアに出演し、プロモーション活動を行なっている。しかしそれはアルバムを宣伝するためだけでなく、Guruのレガシー。さらには90年代ヒップホップの基礎を作り上げたグループとしての使命感にも感じられる。果たして『One of the Best Yet』の制作に至った経緯、アルバムへの想いとは。






Guruの声が聞こえたんだ


『One of the Best Yet』はDJ Premierによる新しいトラックに2005年から亡くなる前年の2009年までにレコーディングされたGuruのボーカルが使用されている。DJ Premierは実に30曲分にも及ぶGuruのボーカルを、亡くなる直前に親しかったDJ Solar(DJ・ソーラー)から購入した。ある曲にはフックがあり、ある曲にはバースだけ。それらを何度も何度も聴き直し、曲にしていったと話している。


「Guruはまるで2 Pac(2・パック)のように次から次へとレコーディングをするタイプだった」


それらの遺された作品を世に出すことには一種の使命感も感じていたようだ。アルバムの制作期間は18ヶ月だが、今年9月になるまで一切その情報は知られることがなかった。DJ Premierが最後にGuruに病室で会った時すでに言葉が返ってくる状況ではなかったが、生前に彼が語りたかった言葉がボーカルを通して聞こえてきたと語る。





「Family and Loyalty」はリードシングルではなかった


アルバムのリリースに先駆けて公開されたJ. Cole(J・コール)をフィーチャリングに招いた「Family and Loyalty」はJ. Coleの人気とそのラップスタイルがGang Starrとどう交わるのか期待が高まり、結果としては最高のリードシングルとなったが、これはJ. Coleからの希望によるものだったそうだ。最初に完成した曲はアルバムの最後に収録されている「Bless The Mic」でその後セカンドシングルとしてリリースされた「Bad Name 」と続き、“Gang Starr感”が強い「Bad Name」をリードシングルとする予定だったが、参加しているJ. ColeがDJ Premierに直接電話をかけてきたとインタビューで話している。


プロモーションのスケジュールもほぼ決まっていた中、J. Coleは「この曲を書いた後、オレはもうフィーチャリングで曲に参加することはない」とDJ Premierを説得し、直前でリリース曲が入れ替わった。今のヒップホップを代表する人気ラッパーの一声でアルバムの予定が変わるとは驚きだが、それだけJ. Coleにとっても思い入れの深い曲なのだろう。実際にJ. ColeはDJ Premierが彼に曲を送った5分以内に返事があったという。


DJ PremierはJ. Coleに連絡を取る前になんとDrake(ドレイク)とKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)にもオファーしたようだが、ツアー前で多忙を極めていた2人は実現できなかったようだ。J. Coleの参加には大満足だが、仮に他の2人が参加していたらどんな曲になっていたのか。想像するだけでも心が踊らされてしまう。




スタジオに置かれたGuruの魂


アルバムにはJ. Coleの他にM.O.P.、Q-Tip(Q・ティップ)、Group Home(グループ・ホーム)、Royce Da 5’9”(ロイス・ダ・ファイブ・ナイン)、Jeru The Damaja(ジェルー・ザ・ダマジャ)といった90年代から2000年代初期のヒップホップファンにとってはたまらないアーティストが参加している。いずれもDJ Premierがプロデュースしたこともあり、Gang Starrとも親交の深いアーティスト達だ。


特に「What’s Real」におけるRoyce Da 5’9”のバースはどのインタビューでも注目を集めている。その理由にはレコーディングする際にGuruの遺灰がスタジオ内に置かれていたことに関係しているようだ。DJ PremierはRoyce Da 5’9”とのユニット、PRhyme(プライム)のツアーの為リハーサルをしている際にフィーチャリングの話を持ちかけたと話す。スタジオに遺灰が置いてあることも知ったRoyce Da 5’9”はその事からインスピレーションを受け、リリックにも採用している。


「煙を眺めると、ブードゥーを感じる。実際にそこにはGuruの遺灰もあるからな」

(ブードゥー教とは奴隷貿易とともにアフリカから持ち込まれた宗教観念のひとつ)


実際にリリックに使われるとはDJ Premierも思っておらず、より身近にGuruの魂を感じるためにスタジオ内に置いていたようだ。しかし結果としてアルバム内で最も印象に残るリリックのひとつになった事は間違いない。




Gang Starrの物語は終わらない


今年を代表するヒップホップアルバムとなった『One of the Best Yet』だけにファンとしては次なる動きも気になるところ。DJ Premierはツアーに対して前向きな姿勢を示しており、さらにはGang Starrのドキュメンタリーも制作中だと語っている。これまでに何度も来日しているDJ Premierだけに近いうちに国内でもツアーが開催されることを期待したい。


さらにオフィシャルサイトではGang Starrのマーチコレクションも展開されており、それらの売り上げもGuruとその家族の元に届けられるようになっているおり、まさに「Family and royalty」。気になるファンは下記のリンクからチェックして欲しい。


Gang Starr Official Web Site




大ヒットを記録するようなアルバムではないかも知れない。ここ数年ヒップホップを聴き始めたリスナーには古臭く感じることもあるだろう。しかしJ. Coleが参加していることにより、若いリスナーにもGang Starrの存在が認知され、他の多くのフィーチャリングアーティストによって当時の空気感を思い起こさせる。そんなアルバムになった事は間違いないはずだ。Guruの残した意思が奇跡を起こしたアルバム『One of the Best Yet』。いまだにベストのひとつだと言い切る彼らの作品を聴き入っていただきたい。



written by BsideNews


source

https://www.complex.com/music/2019/11/dj-premier-interview-gang-starr-one-of-the-best-yet

https://hiphopdx.com/news/id.53366/title.interview-dj-premier-felt-gurus-spirit-every-day-while-crafting-new-gang-starr-album


photo: facebook





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