スターク家の後継者はサンサかジョン・スノウか?GoTの王位継承制度とは 丸屋九兵衛の七王国まで何マイル? 「GoTの歴史学」第14回

シーズン8好評放送中!日本で唯一の『GoT』☓ファンタジー連載!今回のテーマは「王位継承者」だ
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2019.05.09 11:00

最終シーズンも大詰めを迎えて、デナーリス・ターガリエン(Daenerys Targaryen)とジョン・スノウ(Jon Snow)との間に暗雲が立ち込めつつあるように思われる『ゲーム・オブ・スローンズ』。最大の問題はもちろん、王位継承権である。


なぜモメるのか?■デナーリス&ジョン写真挿入


ターガリエン家(House Targaryen)が生んだ(今のところ)最後の七王国、ウェスタロス(Westeros)の王、「マッド・キング」ことエイリス・ターガリエン2世(Aerys II Targaryen)との血縁関係で説明しよう。


デナーリスはエイリス2世の娘。


それに対してジョン・スノウことエイゴン・ターガリエン(Aegon Targaryen)は、エイリス2世の長男レイガー(Rhaegar Targaryen)の息子である。


先王の娘と、先王の長男(生存時は王位継承順位第1位だった)の息子と。鉄の玉座に近いのはどっちだ?!


■最終シーズン写真挿入


さて本コラムは「髪型がジョン・スノウ(第5シーズンまで)で髭はカール・ドロゴ、趣味はドラゴングラスいじり」の丸屋九兵衛がお届けする、GoTこと『ゲーム・オブ・スローンズ』連載である。


「エッグ」というキャラクターをご存じだろうか?


GoTに登場したことはない。だが、ドラマ内で言及されたことならある。





覚えているだろうか? ナイツ・ウォッチの面々が住むキャッスル・ブラック(Castle Black)に勤務していた盲目のメイスターことエイモン・ターガリエン(Aemon Targaryen)が死の床でリトル・サムのことを「エッグみたいだ」とつぶやくシーンを。


この「エッグ」とは、エイモンの弟、エイゴン・ターガリエン5世(Aegon V Targaryen)のことなのだ。


■エゴン5写真挿入


参考記事:《氷と炎の歌》はコレから読め!|『七王国の騎士』訳者あとがき出張版|酒井昭伸


現実のヨーロッパ史と同じく、GoTの世界では往々にして王や貴族にニックネームがつく。現実世界に「禿頭王」や「失地王」、「ブラックプリンス」や「太陽王」がいるのと同様に、七王国には「征服王」「狂王」「ブラックフィッシュ」「血鴉卿」がいる。


エッグことエイゴン・ターガリエン5世のニックネームはAegon the Unlikelyだ。「意外王」と訳すべきだろうか? つまり、「王位についた(つけた)のが意外」ということである。


彼が生まれたのは、GoTのストーリー開始の約100年前。当時はデイロン・ターガリエン2世(Daeron II Targaryen)の治世だ。エッグはそのデイロン2世の四男の四男だから、普通に考えたら王位につくことはありえない。


なのに、王位継承権上位の親戚たちが思いがけずに死ぬ事件が2世代にわたって頻発!


●彼の父メイカー・ターガリエン(Maekar I Targaryen)の場合:


長兄が決闘で死んだために次兄が王位を継いでエイリス1世(Aerys I Targaryen)に。メイカーのすぐ上の兄(三男)はヤツメうなぎパイ(独特の風味がなんとも)で喉を詰まらせて死んだ。王位に就いた次兄——童貞説あり——エイリス1世が子供を残さず世を去ったので、彼はメイカー1世となった。


●メイカー1世の四男エイゴンの場合:

エッグの長兄(ハンサムだが性格が悪く頭も悪い)はワイルドファイアーの一気飲みで死亡、次兄は娼婦からもらった病気(梅毒?)で死亡。すぐ上の兄であるエイモンは「わたしはメイスターなので」と固辞したうえにナイツ・ウォッチ入りを断行してしまったので、エッグがエイゴン・ターガリエン5世となった。


※ちなみに、かつてメイスター・エイモンがジョン・スノウに言った「自分の中の少年を殺せ。そして男になれ」は、もともとエイモンが王位につく弟エッグに向かって与えた忠告なのだった……。


100年前のことを振り返らずとも。すぐそこにいるスターク家(House Stark)の相続だって、すでに難しい。


■スターク家写真挿入


●ジョン・スノウ=最年長だがバスタードである兄貴……まあ表向きは

●サンサ(Sansa)=長姉。エダード・スターク(Eddard)の嫡子の中では最年長

●ブラン(Bran)=男子としては唯一生存しているエダード・スターク嫡子


現在はデ・ファクトでジョン・スノウがリーダーシップをとっているが、法的にはどうなのか?


そういえば原作『氷と炎の歌』では、「ブランもリコンも死んだ」と聞いたロブ・スターク(Rob Stark)が——ラニスター陣営の人質状態だったサンサが政治利用されることを恐れ——母キャトリンが泣いて反対するのも無視して、異母兄弟のジョンを後継者に指名する……という展開があったっけ。


ああ、ややこしい。だが、現実世界における王位や帝位の継承にまつわるアレコレも、実にややこしいのだ。


長男相続がベースにしても。その長男が早く死に次男が王となった場合、その次の王位は次男の息子が継ぐのか、それとも早逝する前に長男が残していた息子が継ぐのか。


そもそも、ここまで「長男優先」が当たり前のように語ってきたが、君の常識が「世界の非常識」であることはままある。例えば、かつてのモンゴルでは末子相続が主流だった。年上の子供たちは、早くに独り立ちして出て行くからだ。だからモンゴル帝国でも——帝位は親族会議で決まるのだが——むしろ若い連中が有利だったとか。


この連載を読むような物好きさんたちは知っているだろうが、七王国は文化的に決して一枚岩ではない。主要宗教だって3つ、文化/民族は少なくとも4つ。だから、相続に関する習慣・制度も一様ではないと思ったほうがいい。


ウェスタロスの南端、ドーン(Dorne)を見てみよう。




GoTでは早くも退場してしまったが、原作『氷と炎の歌』では健在なドラン・マーテル(Doran Martell)。彼はドーンの君主(プリンス)だが、それは彼の母親が君主(プリンセス)だったからだ。彼女には弟がいたが、それでも彼女が継承権第1位だった。

なぜならドーンの制度は「長子相続」であって、「長男相続」ではないから。つまりドラン・マーテルは「女系を通じて地位を継いだ男性君主」である。


GoTでのドランにはトリステイン(Trystane)という息子しか存在しないように描かれていたが、原作では娘1人、息子2人だ。年上から娘アリアンヌ(Arianne)、息子クエンティン(Quentyn)、そしてトリステイン。長子相続だから、ドランの次に君主の座を継ぐべきはアリアンヌである。


もっともドランは他家で修行中のクエンティンに宛てて「おまえをドーンの君主にしようと思う」という手紙を書いており、それをアリアンヌが読んでしまったがために話がややこしくなる……詳しくは原作を読んでほしいが、ドランには遠大な計画があり、アリアンヌを「ドーン君主」以上の存在にしようとしていた。「女だから」という理由でアリアンヌを軽んじていたわけでは決してない。




そもそもマーテル家は、正式にはナイメロス・マーテル家(House Nymeros Martell)という。


「ナイメリア(Nymeria)の血を引く」からナイメロスだ。GoTのストーリー開始時点より1000年前にエッソス大陸(Essos)から渡ってきた強烈な戦士女王ナイメリアが、ドーンの冴えない豪族だったマーテル家の当主と結婚し、メチャメチャ強大な家にしたのである。女性君主も女系君主も当たり前だ。


ここでもう一度、現実世界を見てみると。


UKことグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国の王位継承条件はこうなっている(抜粋)。

●継承者は国王の直系子孫

●2011年10月28日以降に生まれた者は、性別を問わずに長子優先(第1子→第1子の子孫→第2子→第2子の子孫……となるらしい)。それ以前に生まれた者は改正前の男子優先ルールを適用

●プロテスタント信者であること。カトリックはダメよ

●非嫡出子(庶子、私生児、バスタード like ジョン・スノウ or ラムジー・スノウ)は継承権ナシ

https://en.wikipedia.org/wiki/Succession_to_the_British_throne


一方、スウェーデンは一足早い1980年に「王位継承法」の改正を断行しており、それまでの「男子継承」ではなく、「男女を問わず出生順の王位継承権」へ移行。現在の王カール16世グスタフの長女ヴィクトリア王女が王位継承順第1位となっている。

https://en.wikipedia.org/wiki/House_of_Bernadotte


さて、次代の「国民統合の象徴たる地位」をめぐって「女性でいいのか」「女系でいいのか」あるいは「女帝なら、どうせ中継ぎだから生涯独身で」と議論百出する東アジア某国はどうなるのか。

ファンタジーから学べることも、たくさんある。



なお、そんなGoTを語るイベントはもうすぐ!


2019年05月12日(日)に開催される!

【最終シーズン真っ盛り! 『ゲーム・オブ・スローンズ』アカデミー feat. ☆Taku Takahashi(m-flo) 】


「鉄の玉座」の行く末に気を揉みながら、二人の物好きによる日本最高峰のGoTトークを聞け!


詳細:https://www.funity.jp/tickets/maruya/show/qb190512/1/1/


■イベント写真挿入


▷「ゲーム・オブ・スローンズ 最終章」は好評放送中




▷「ゲーム・オブ・スローンズの歴史学」バックナンバーはこちら


第1回:七王国まで何マイル? 〜ゲーム・オブ・スローンズの歴史学 chapter-1

第2回:七王国まで何マイル? 〜ゲーム・オブ・スローンズの歴史学 chapter-2

第3回:七王国まで何マイル? 〜ゲーム・オブ・スローンズの歴史学 chapter-3

第4回:七王国まで何マイル? 〜ゲーム・オブ・スローンズの歴史学 chapter-4

第5回:ホワイトウォーカーとワイトの違いって何? GoTビーストを一挙総括

第6回:ジョフリーの剣に込められたGoTファンタジーの意外な流儀とは?

第7回:衝撃の「別惑星」説! なぜGoTはファン心理をくすぐるのか

第8回:コスプレイヤー視点でGoTの服を考える 

第9回:ミリオタが「ゲーム・オブ・スローンズ」の”長槍愛”を語る 

第10回:GOTが「熱くなる瞬間」は何時?

第11回:あなたの大剣度は?ゲームオブスローンズの武器のチートシート

第12回:ゲームオブスローンズのドラゴンが一瞬で好きになる、見分け方とは?
第13回:GOTの大いなる伏線! スタークとダイアウルフで分かる重要設定とは?



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第1回:今からでもまだ間に合う!m-flo ☆Takuが解説「ゲーム・オブ・スローンズ攻略法」

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▷『ゲーム・オブ・スローンズ』はこちらで視聴可能

ワーナー・ブラザーズ

Hulu

スターチャンネル

アマゾン



written by 丸屋九兵衛(@qb_maruya) 

photo:YouTube, Amazon

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