七王国まで何マイル? 〜ゲーム・オブ・スローンズの歴史学 chapter-4

bmr編集長、丸屋九兵衛氏が『GoT』を鋭く考察する好評連載、第四章。日本での初ブレイクはここから...!
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2018.09.10 08:57

A「貴様は外国の血を引いているな?」

B「私たちはみな、元はと言えば海の向こうから来たのではありませんか?」

A「黙れ! 我が建国の父たちがこの地に住み着いたのは大昔だ! それ以来、侵略者と戦ってきたのだっ!」


 頭に血が上った白人右翼に捕まり、理不尽な尋問を受ける、不運なラテンアメリカ系移民2世。ああ、反動と不寛容の嵐が吹き荒れるトランプ時代のアメリカ合衆国を象徴する一コマだ……。


 ……のように見えるが、実はこれ、リトルフィンガー(Littlefinger)とロイス卿(Yohn Royce)の会話である。もちろん、尋問しているAがロイスで、Bがリトルフィンガー。だから、尋問されているほうに同情は禁物なシーンなのだった。だってリトルフィンガーだから。



 というわけで、またしても板橋のオベリン・マーテルこと丸屋九兵衛だ。本連載は、そんなわたしがドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』(通称GoT)に関する周辺知識を語っていくものである。


連載第1回:https://block.fm/news/gameofthrones7_1

連載第2回:https://block.fm/news/gameofthrones7_2

連載第3回:https://block.fm/news/gameofthrones7_3






GoTの世界は、原作者が現実の歴史を参照しながら作り出したもの


 さて。先に挙げた尋問場面のポイントは、「ウェスタロス大陸(Westeros)に住む人類は全て、東のエッソス大陸(Essos)からやって来た」と教えてくれること。


 この大陸の先住民はエルフっぽい種族「チルドレン・オブ・ザ・フォレスト(Children of the Forest)」。そう、ウェスタロスは本来、人間不在のヒューマンレスな大陸だったのである。誰よりも地元感溢れるスターク家(House Stark)と「北」の住民ノースメン(Northmen)にしても、あくまでもエッソスからの移民第一波「ファースト・メン(First Men)」の子孫だ。


 ファースト・メンは当初、先住のチルドレン・オブ・ザ・フォレストと争ったものの、のちに和解。しかし、そのあとで来航した移民第二波「アンダル人(Andals)」はチルドレン・オブ・ザ・フォレストを殺し、信仰の対象である聖なる白い木(Weirwood)を切り倒し……と暴虐の限りを尽くす。彼らに圧迫されたファースト・メンは北に移動、より深刻なピンチに追い込まれたチルドレン・オブ・ザ・フォレストはさらに北方へと逃げるのだった……。




 ブリテン島&アイルランド島の歴史や神話に詳しい者なら、このあたりの設定に既視感を覚えるだろう。GoTの世界(というか原作『氷と炎の歌』という物語)は、原作者ジョージ・R・R・マーティン(George R.R. Martin)が現実の歴史を参照しながら作り出したものだから。GoTとブリテン&アイルランドの関係については、またの機会にな。




 さて、オベリン・マーテル(Oberyn Martell)の故郷の話をせねばならない。七王国の最南部に位置するドーンだ(Dorne)。




 ここも、ウェスタロスに位置するからには、エッソスからの移民が築いた国。ただし、ドーン人(Dornishmen)が特異なのは、「ファースト・メン」でも「アンダル人」でもない先祖の血と文化を色濃く受け継いでいることである。

 その先祖とはロイナー(Rhoynar)だ。



 ロイナーとは、エッソス大陸西部を北から南へと流れる大河ロイン(Rhoyne)の流域に開花した諸都市国家に住んでいた人々の総称である。彼らは特に、商人、職人、哲学者として名高かったという。




 繁栄を極めたロイナー都市国家群だったが、やがて一大勢力「ヴァリリアン・フリーホールド(Valyrian Freehold)」の領土拡張によって脅かされようになる。やがてロイナー人は、ロイナー諸都市の一つ「Ny Sar」の女王ナイメリア(Nymeria)に率いられて大移動を開始。船団でロイン河を南下してエッソスを脱出、西の大陸ウェスタロスへと向かい、その最南部、ドーンに住むことになる。これが、GoTで描かれる出来事のおよそ1000年前の出来事だ。


 まず、さらっと出てきた「女王」という言葉を見逃してはいけない。そうなのだ、この時点で七王国の基準からすると異常である……デナーリス(Daenerys Targaryen)やサーセイ(Cersei Lannister)といった女性君主の存在は、あくまで例外なのだから。


 また、戦う女王ナイメリアが率いる軍団には、同様に女性戦士も多かったと言われている。



 そもそも、彼らロイナーが崇めていたのは大河を神格化した女性神「母なるロイン(Mother Rhoyne)」。ウェスタロスの最大宗教「七神教(Faith of the Seven)」が、あくまで男性神を主神としているのと大違いだ(のちにはドーン人も七神教を受け入れるのだが)。



 ロイナー人は、高度にアーバナイズされた都市国家民だった。だからこそ、農業マインデッドなアンダル人等に比べて土地の相続に執着せず、そこから男女平等相続が生まれたのではないか、とするセオリーもある。


 商業が盛んだから、さまざまな地域、さまざまな文化圏出身の人々と交流する。こうしたアーバンなライフスタイルからコスモポリタンなアティテュードが生まれた……というのがもっぱらの噂だ。


オベリン・マーテルの故郷にも、現実世界のモデルがある


 ドーンの首都サンスピア(Sunspear)が描かれるのは、第5シーズンに入ってからだ。



 印象的なのは……照りつける太陽の中、暑さをしのぐために水を巧みに使う建築技術。そこには、ウェスタロスの他の地方とは違った服装や習俗があり、豪華かつ洗練された文化が開花しているのだ。




 さて、スターク家が治める「北(The North)」がスコットランドをモデルにしているように、このドーンにもモデルがある。

 

 それは、イスラム支配時代のイベリア半島(スペイン&ポルトガル)だ。


 実際、サンスピアの宮殿(Water Gardens)のシーンは、スペインはアンダルシアに残るイスラム式建築アルカサル(Real Alcazar de Sevilla)で撮影されている。



 第4シーズンでティリオン(Tyrion Lannister)に迎えられたドーン人の一団を見て、我々が「イスラム的」「中東っぽい」と感じたのも偶然ではなかった、ということか。




 そして、我らがオベリン・マーテルのセクシュアリティも、そこに起因しているかもしれないのだ……。



▷『ゲーム・オブ・スローンズ』視聴はこちら


https://warnerbros.co.jp/tv/gameofthrones

https://www.happyon.jp/game-of-thrones

https://www.star-ch.jp/drama/gameofthrones

https://www.amazon.co.jp/dp/B017S14BBW/ref=cm_sw_r_cp_ep_dp_WGxuBb34GA673



written by 丸屋九兵衛( @QB_MARUYA ) 


photo:YouTube , Nerdist


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