七王国まで何マイル? 〜ゲーム・オブ・スローンズの歴史学 chapter-2

bmr編集長、丸屋九兵衛氏が『GoT』を鋭く考察する好評連載、第二章。日本での初ブレイクはここから...!
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2018.08.11 09:34

 やあ、板橋のオベリン・マーテルこと丸屋九兵衛だ。本連載は、そんなわたしがドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』(通称GoT)に関するアレコレを、ああでもないこうでもないと語っていくものである。まだ第2回。


連載第1回:https://block.fm/news/gameofthrones7_1






そう、本日2018年8月11日は、新月である


 前回、「今後は毎月2回ペースで更新予定」と宣言したのに、微妙にずれて今日の更新となった。というのも、block.fmとわたしで協議した結果、「新月の日と満月の日」という——ややもするとイレギュラーに聞こえる——更新頻度に決定したのだ。そう、本日2018年8月11日は、新月である。


 月の満ち欠け周期は29.5日だから、「毎月2回」よりも僅かに速いペースだ。事実上、「旧暦の1ヶ月に2回」ということになる(日本でも明治まで使われていた旧暦は、29日の月と30日の月が交互にやってくる仕組。月初はいつも新月、15日が満月)。


 こう決めたのはなぜか?


 ジョン・スノウ(Jon Snow)率いるナイツウォッチ(Night's Watch)志願部隊が、クラスターの家(Craster's Keep)を占領した反逆ナイツウォッチをとっちめる直前のこと。志願部隊のメンバーであるグレン(Grenn)が「今夜は新月だ」と宣言するシーンがある。つまり、「月明かりがないから、夜陰に紛れて近づける」の意味だが、そんなセリフがサラッと口から出るということは……GoTの登場人物たちは「月の満ち欠け周期コンシャス」と申しましょうか。旧暦で過ごしていた我々の先祖同様に、生活のリズムの中で「夜の光源としての月」の明暗を常に意識しているのだと思う。電気はもちろん、ガス灯もないんだから、当然といえば当然だが。






 もう一つ思い出してもらいたいのは、父タイウィン・ラニスター(Tywin Lannister)に「そういうお前はいつ再婚するんじゃい」と問い詰められた時のサーセイ(Cersei Lannister)のセリフだ。




 彼女は「息子トメン(Tommen Baratheon)の結婚式からフォートナイト後に」と答えるのである。


 このfortnightという単語、アメリカではほとんど使われないが、ブリティッシュ・イングリッシュでは時おり使われる「14日/14夜」の意味だ。本来はfourteen nightsだったのだろう。


 現実世界では「2週間」と訳されるが、GoTの世界には「1週間(7日)」という概念など存在しない(ウェスタロスの最有力宗教が七神教であることを踏まえると意外だが)。


 では、なぜ「14日/14夜」という単位が使われるのか? いろいろな意味で異世界であるGoTワールドだが、月の満ち欠け周期は我々の世界同様に29.5日なのではないか。そして、ゆえに「14日/14夜」はその半分、つまり「半月」の近似値として機能しているのではないか、と思う。


 と、長々と書いてきたが……つまり、この「新月の日と満月の日」という連載更新ペースは、だな。読んでくれる皆さんもGoT世界に没入し、彼らの生活リズムというものを意識してもらいたいがゆえなのだ!


 ……またしても前置きが長い!


※ところで、「女性のリズムは月の満ち欠けに同調してウンヌン」と語られることが多いが、迷信である。だってチンパンジーの生理周期は35日前後だぞ。本当にホモ・サピエンスの女性が月の周期とシンクロしているなら、その近縁種の雌がシンクロしないのはなぜだ?




今回も、オベリン・マーテルについて語ろう


 今回も「板橋のオベリン・マーテル」と言って書き始めたのだから、オベリン・マーテル(Oberyn Martell)関連について説明しておこう。


 前回は「南部の貴族マーテル家」とアッサリ書いたが、この表現、あまり正確ではない。


 GoTの主な舞台となる大陸はウェスタロス(Westeros)。これはあくまで大陸名であって、政治的には「七王国(Seven Kingdoms)」という国家である。




 この七王国は封建制。つまり、全体は——七王国というくせに——9つの国に分かれている。それらの国にはそれぞれ領主がいて、彼らは自分の領土では事実上、王のような存在である。南に位置するドーン(Dorne)という国を治めるマーテル家も、そのような領主ファミリーの一つ。こうした領主たちの上に君臨し、鉄の玉座に座る王は、むしろ、王の上に位置する「皇帝」の概念に近い。


 とはいえ、話がややこしくなるので、鉄の玉座に座る王を「王」、それ以外は「領主」と呼ぶことにする。何にしても、この王が直接支配するのは、王都キングズランディング(King's Landing)を取り巻くクラウンランズ(The Crownlands)のみ。彼の財源は、そのクラウンランズから上がる税金だし、彼が直接動員&指揮できる兵士も、クラウンランズの住民に限られているのだ。他の領主も同様で、財源は自国領の税収が頼り、その軍隊は所領出身の男たちで構成されている。


 この状況は……中世ヨーロッパをゆるく支配した「神聖ローマ帝国」や古代中国をゆるく束ねた「周王朝」に近いが、ここでは徳川幕府体制を思い浮かべよう。当時の日本はあちこちに幕府直轄地があったが、国土の大半は他の大名たちの領地だった。徳川家は幕府直轄地でこそ直接の領主だが、その他の大名の領土では主権を持たない(はず)。「領主の上に君臨する領主」でしかなかったのだ。


 GoTでは、七王国の各地領主たちが、折に触れて王都を訪れる。同様に、江戸時代の大名たちも江戸にやってきた。大名たちの場合は、好むと好まざるとにかかわらず。


 というのも、当時の日本には「参勤交代」という過酷な制度があったから。大名は領地で過ごした1年の後は江戸で1年を過ごさねばならなかった。反乱予防として、大名たちを経済的に疲弊させるシステムだ。


 この参勤交代という制度の痕跡は、現代日本のそこかしこに残っている。例えば、我がネイバーフッドである板橋区に加賀という地名があるのは、かつてここに加賀・前田藩の下屋敷があったからだ。


 加賀・前田藩の始祖は前田利家。そう、あの前田利家だ。


 利家といえば! 槍の名手としてのみならず、織田信長の恋人としても、この数百年間語り継がれる伝説的存在ではないか……と、ようやくオベリン・マーテルやロラス・タイレル(Loras Tyrell)やレンリー・バラシオン(Renly Baratheon)のセクシャリティを語る準備が整ったところだが、そろそろ字数も限界と思われる。



 

次回こそ、美青年の股間をワシづかみにするくらいの勢いで核心に迫りたいものだ。




▷『ゲーム・オブ・スローンズ』視聴はこちら


https://warnerbros.co.jp/tv/gameofthrones

https://www.happyon.jp/game-of-thrones

https://www.star-ch.jp/drama/gameofthrones

https://www.amazon.co.jp/dp/B017S14BBW/ref=cm_sw_r_cp_ep_dp_WGxuBb34GA673



written by 丸屋九兵衛( @QB_MARUYA ) 


photo:bustle , wallhere , YouTube


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