【フジロックレポート】Kendrick Lamar圧巻のステージから、知られざるSkrillexとYoshikiの共演エピソードまで。サプライズ満載のFUJI ROCK FESTIVAL'18

述べ12万5000人を動員した「FUJI ROCK FESTIVAL'18」をKendrick Lamar中心に、他の注目アーティストもレポート。
SHARE
2018.08.02 11:00

今年は7月26日(木)から29日の日曜日まで、前夜祭から延べ12万5000人を動員した日本最大の音楽フェスティバル「FUJI ROCK FESTIVAL'18」。今年20年の節目となるFUJI ROCKに、迫り来る台風をものともせず世界中から最高のラインナップのアーティストと音楽ファンが集結。苗場が熱狂の渦に包まれた3日間を振り返る。



photo:© 宇宙大使☆スター


Kendrick Lamar苗場に凱旋。圧巻のパフォーマンスで魅せたKung-Fu Kenny 劇場


Kendrick LamarがFUJI ROCKに帰ってきた。2013年はWHITE STAGEだったが、20周年を迎えた記念すべき今回は、2日目のGREEN STAGEに登場。


5年前と同じように雨が降っている。この5年でアーティストKendrick Lamar(以下:愛称のひとつであるK-DOTで表記)はWEST COAST HIPHOPのニューヒーローから世界でもっとも影響力のあるアーティストのひとりへと進化を遂げている。G.O.A.T.(Greatest of All Time)の王冠を携えて、いったいどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。時間が近づくに連れGREEN STAGEは期待の入り混じる、心地良い緊張感に包まれていた。


「Kendrick! Kendrick! 」どこからともなくまだ見ぬK-DOTに向け歓声が上がる。会場に当てられた照明が消え、爆発音とともに花火が炸裂。「D.N.A」でK-DOTが登場した。会場が沸く。と同時に自分の腕には鳥肌が立っていた。


K-DOTは黒いスウェット、黒いワークウェアを纏っている。洗練されたデザインのオーバーオールだ。これはどうやら18AWのN.Hollywoodのアイテムであるということがデザイナー尾花大輔氏のInstagramで明かされている。ただでさえクールなアイテムだけにますます完売必至である。



© Photography by:Christopher Parsons for Top Dawg Entertainment



photo:@daisuke_obana



バンドを両脇に引き連れ、巨大なステージ上から小柄ながら圧倒的な存在感を放つ。K-DOTとバンド。それも最低限のシンプルなセットでバックの大型スクリーンだけがステージを彩る。シンプルな構成が潔い。いや、極端な話そこにマイクとK-DOTさえいれば余計な装飾はいらないのかもしれない。音楽とリンクする映像のなか、まるで王様の謁見のように、あるいは高僧の説法のようにK-DOTは振る舞い、人々はリリックに聴き入りパワフルなパフォーマンスに声を挙げてレスポンスした。


ワールドツアーの動画でさんざん見てきたKung-Fu Kenny(カンフー・ケニー※Kendrickのキャラクター)劇場が日本の苗場で、目の前で観られる喜びを、GREEN STAGEに集まった人々は噛み締めていたことだろう。“WELCOME TO THE DAMN.”とスクリーンに映し出されたとき、「ああ本当に今年FUJI ROCKに来てよかった」と誰もが思ったのではないだろうか。


曲と曲の合間には往年のカンフー映画風味のイメージ映像が挿入される。ワールドツアーで使用されているものだ。師のもとで“Black Turtle Style”の拳法を体得し旅に出て、数々の困難を乗り越え強敵を倒していく成長の物語である。たいてい敵が女性というのも真理を突いている。人間は異性やパートナーの存在によって成長していく生き物だ。


演奏された楽曲は「ELEMENT.」、Rihanna(リアーナ)を迎えた「LOYALTY.」、長年の恋人に捧げたZacariとの「LOVE.」などアルバム『DAMN.』の楽曲が中心ではあるが、『To Pimp A Butterfly』『good kid, m.A.A.d city』から「Alright」「King Kunta」「Bitch Don’t Kill My Vibe」、レーベルメイトSchoolBoy Q(スクール・ボーイQ)に客演した「Collard Greens」など過去昨からの人気曲も惜しみなく披露。ライヴもまた、K-DOTの過去と今を繋ぐ成長のヒストリーが詰まっていた。



© Photography by:Christopher Parsons for Top Dawg Entertainment


今年、グラミー賞でのK-DOTのパフォーマンスで鬼気迫るダンスを披露したCharm La’Donna(チャーム・ラ・ドンナ)も出現。2017年の『DAMN.』ツアーにおける唯一の女性メンバーであり、出身はK-DOTと同じくコンプトン。そんな彼女はK-DOTと入れ替わるようにして、美しく苗場に舞いオーディエンスを魅了した。


HUMBLE.」が演奏され会場は最高潮に。いよいよ幸せな時間が終わりに近づいている。最後に披露されたのはSZA(シーザ)をフィーチャーした「All The Stars」。「雨の中観に来てくれてありがとう。感謝してるよ。みんなでこのステージを照らしてくれ」というK-DOTの声に数万人がスマホのLED、ヘッドライトなど各々の灯りを掲げた。宇宙に散らばる無数の星のような輝きに包まれるGREEN STAGE。集まったオーディエンスはK-DOTとともにSZAの代わりに歌う。


This may be the night that my dreams might let me know

今夜は夢に近づく夜なのかもしれない

All the stars are closer, all the stars are closer, all the stars are closer

すべての星たちがすぐそこに近づいてきている


そういえば今年は15年に一度の火星大接近が話題だ。吹きつける風、時折強さを増す雨、台風が来ている。天文学的事象や自然現象に至るまでがK-DOTのためにお膳立てされているようだ(そんなわけないんだけど)。そう思えるほとに目の前に映る全てがドラマチックだったのだ。



© Photography by:Christopher Parsons for Top Dawg Entertainment


めちゃくちゃに騒いで盛り上がるというよりは、何か凄いモノを観てしまったという余韻が終演後の会場の空気に満ちていた。K-DOTの姿、声、音は深く人々の心に刻まれたはずだ。繰り返すが、FUJI ROCKは20年の節目となる。K-DOTのライヴパフォーマンスは歴史に新たな1ページが加えられたとともに、21年目の幕開けに相応しいステージだった。




もうひとつの事件。SkrillexとYoshikiの繋がりとは




2日目はK-DOTのショーから少し遡り、もうひとつ事件が起きていた。同じくGREEN STAGEで行われたSkrillex(スクリレックス)のステージである。


K-DOT同様FUJI ROCKには2013年以来となる苗場の地を踏んだSkrillex。最近はトレードマークだったゴツい黒縁メガネもなくなって大人になった印象だ。K-DOTと年齢も一緒なんだよね。


彼はさすが、日本への愛情に溢れているというかヘッドライナーだっけ!? と思えるくらい最高に盛り上げてくれた。追悼の意もあったのだろう。AVICII(アヴィーチー)「Levels」やXXXTENTACION(XXXテンタシオン)の「Look At Me! 」をかけたときは感動して涙が溢れそうになった。オリジナルではなくSkrillexがBrostepに魔改造した凶悪ベース仕様だがこれがまた最高なんだよね。



photo:© Masanori Naruse


目の前でモッシュピットサークルが同時多発的に出現するほど(ここはマイアミか!? )超絶ブチアガLitなステージのフィナーレに奇跡は起きた。皆さんすでに速報でご存じの通り、X JAPANのYoshiki(ヨシキ)とSkrillexが共演したことは今回のフジロック史上もっともセンセーショナルなニュースだったのではないだろうか。 block.fmではInstagramでリークされたふたりの姿をもとにこの共演を事前に予想していたわけだが、まさか本当に夢の共演が実現するなんて! (最後の最後までにわかに信じられなかったのだ)。


参考記事:X JAPANのYoshikiとSkrillexが夢の共演、フジロックでコラボすることを明かす


Skrillexは「WORLD, KYOTO」とつながりが深い。来日の度、京都のクラブ「WORLD, KYOTO」でギグを行い、「WORLD, KYOTO」も彼らのアテンドを行うといった親交が続いている。



photo:@nakamotoworld


YoshikiとSkrillexは「WORLD, KYOTO」の中本氏が間に入る格好で、Yoshikiデザインの着物「Yoshikimono」の加納圭悟氏を通じて繋がった。当初、SkrillexからYoshikiに会いたいと願い出たらしい。これが2017年の秋頃。時を経て、大舞台での共演となった。


Yoshiki登場で雨はやみ、「Endress Rain」を弾き始めると再び雨が降り出すという神展開。スーパースターは天候をも操れるというのか。そしてSkrillexの「Scary Monsters&Nice Sprites」をYoshikiが叩くなんて最高すぎるぞ! 演奏後はSkrillexをリードするYoshiki(年上だしね)。今まで観ていたのはこのYoshikiのショーの前座だったのかと錯覚するほど衝撃的なステージだった。



photo:© Masanori Naruse




アゲるSkrillexと好対照。魅せるODESZA


ちなみに、途中ステージに登場し「日本のファミリー」とSkrillexに紹介されていたのはSkrillex専属通訳を務める方の子供さんと、アパレルチームらしい。


Skrillex関連のトピックでは2日目深夜のRED MARQEE(TRIBAL CIRCUS)のChaki Zulu(チャキズールー)のステージにテンションあがったSkrillexが、クルーごと乱入するというサプライズも起きている。



またSkrillexと同じくEDMアーティストで抜群の盛りあがりを見せたのはODESZA(オデッザ)だ。1日目のWHITEステージに登場。バチバチにアゲまくったSkrillexとは別ベクトルの音楽性で、壮大なSF映画作品を思わせる美しいステージを演出。オーディエンスを魅了した。


大型スクリーンと台座に美麗な映像を投影し、マーチングバンドとともにライブセットを展開。宇宙と地球をテーマとしたイントロダクション映像からガッツリ世界観に引き込まれてしまった。ひょっとしたらギャラよりもお金かかっているんじゃないかというくらい、ステージングの気合いの入れようは今年のFUJI ROCKにおいて随一のクオリティであった。


事件はRED MARQEEで起こる!? 深夜帯もアツイ


FUJI ROCK唯一の屋根付きステージRED MARQEEはMAC DEMARCO(マックデマルコ)やMGMT(エム・ジー・エム・ティー)、Superorganism(スーパーオーガーニズム)など注目のアーティストが多数登場。


MAC DEMARCOのステージにはErol Alkan(エロール・アルカン)のレーベルPhandsyに所属するSOFT HAIR(ソフトヘアー)のメンバーがサプライズで登場。水原希子のInstagramによると、Post Malone(ポスト・マローン)もステージでチルしていたみたい。




Superorganismは結成1年にも関わらずFUJI ROCKに出演するということだけでもその勢いの凄まじさを感じることができるが、当日のRED MARQEEには後ろまでパンパンになるほどの人が押し寄せた。その人気ぶりは予想以上。ボーカルのオロノと不思議な仲間たちによるウェイビーでポップなバンドサウンドは中毒者をさらに増加させたに違いない。アンセム「Everybody Wants To Be Famous」でオーディエンスは大合唱だった。


RED MARQEEは日によってコンセプトの違う深夜ステージとしても稼働。2日目の“TRIBAL CIRCUS”では嵐のなか、K-DOTの余韻さめやらぬ間に孤高のリリシスト5lack(スラック)が登場。BACK DJはお兄ちゃんPUNPEE(パンピー)。それだけでもアツイけど、kZm(カズマ)が登場し「Wolves」を披露。盟友GUPPER(ガッパー)も現れ、PSG「愛してます」を歌うなんてファンは泣けるじゃないですか。


続くPRINCESS NOKIA(プリンセス・ノキア)は新世代のフィメールラッパー。往年のヒップホップマナーを踏襲したバウンシーな楽曲「Tomboy」で知られるが最近サウンドクラウドラップよりのEmo TrapなEP『A Girl Cried Red』をリリースし、この日のライブでもEPからの楽曲が披露された。自ら、ステージから客席に降りるなど楽しみながらのライブを展開した。


続くChaki Zuluはおそらく2018年のFUJI ROCKにおいての最大瞬間風速を記録したDJパフォーマンスだろう。MARZY(マージー)、kZm、PETZ(ペッツ)MonyHorse(モニーホース)らYENTOWN(エンタウン)の面々がステージに総出演。クイーンAwich(エイウィッチ)も「WHORU? 」で降臨し、先述したようにChaki ZuluのDJにブチアガLitしたSkrillexクルーも入り乱れ、ステージ上はカオスの極みとなった。リアルスーサイドスクワッド状態である。Chaki Zuluを中心にYENの揺るがぬ鉄の結束がうかがえる一幕だ。




PUNPEEのDJにはアルバムをリリースしたばかりのBiM(ビム)が登場。PUNPEEは先に登場した5lackやYENTOWNの面々にシャウトアウトを捧げ、板橋のダメじゃない“ダメアニキ”がきっちりとTHE AVARANCHES(アヴァランチズ)へとたすきを繋いだ。


このように今年RED MARQEEで多く見られた出演アーティスト同士の共演や、ラインナップされていないアーティストのサプライズ出演もFUJI ROCKの魅力である。


1日目の“PLANET GROOVE”にはサカナクションのICHIRO YAMAGUCHI(山口一郎)、JON HOPKINS(ジョン・ホプキンス)PEGGY GOU(ペギー・グー)、TAKKYU ISHINO(石野卓球)などエレクトロ・テクノアーティストがラインナップ。


JON HOPKINSは途中機材トラブルで音が止まってしまうも会場の歓声はなりやまず。無事機材が復帰すると、どうなることかと思われたステージを見事乗り切り、濃密な世界観を展開した。ノイジーかつエレクトロニックなサウンドと、リンクするアブストラクトな映像にオーディエンスは首ったけ。


グルーヴ感溢れるテクノなDJセットで踊らせてくれたPEGGY GOU。ミックスしているときの仕草やノリ方がたまらなくセクシーである。同行した友人は四つ打ち、特にインストゥルメンタル楽曲を聴かない人物だったが今回のPEGGY GOUのプレイに惚れたらしく、さっそく音源を掘っているようだ。最後に自身の曲「It Makes You Forget (Itgehane)」をプレイし、TAKKYU ISHINOにバトンを渡した。


深夜テクノの帝王TAKKYU ISHINOのステージでは相方というか半身、ピエール瀧も登場。やっぱりFUJI ROCKに電気は欠かせない。最終日の“SUNDAY SESSION”では、A-TRAK(Aトラック)やBERHANA(バハナ)などメイン級のアーティストが出演。FUJI ROCK寝る時間ほんとないじゃん。やばいよ。


FUJI ROCKで見る新世代のヒップホップアーティスト



photo:© Masanori Naruse


初登場となるAnderson .Paak(アンダーソン・パーク)は自身でドラムを叩きながらのボーカルをこなし、陽気なパフォーマンスを披露した。Anderson .Paakを中心にグルーブ感溢れるステージを演出。バンドメンバーのキーボードもヤバすぎだ。


Post Maloneは若いのにすでにベテランの風格。お酒片手にへべれけでWHITE STAGEに登場。熊のような体格から独特のPostyボイスを苗場に響かせた。『Stony』、『Beerbongs&Bentleys』から惜しみなく楽曲を披露。ギターの弾き語り楽曲も演奏し、その才能と音楽性の広さを見せつける。


オーディエンスからスニーカーが投げ込まれると「Thank You」と履きたてホヤホヤ、泥だらけの汚スニーカーに自分の酒を流し込み、一気飲み。最後は自前のアコースティックギターをたたき割り、粉々になった残骸にお酒をまいて笑顔でバイバイ。マジでロックスター。K-DOTは別枠として、ド級の大物感漂うPost Maloneが個人的にはベストアクトだった。


photo:© Masanori Naruse


実は、どうしてもPost Maloneを見たくて大好きなPharrell Williams(ファレルウィリアムス)率いるN.E.R.D.(エヌ・イー・アール・ディー)のステージをブッチした。ごめんPharrell。



photo:© Tsuyoshi Ikegami


N.E.R.D.やPharrell自身も革新的なサウンドアプローチやステージング(今回もすごかったんでしょ? 泣)を展開しているけれど、それほどにAnderson .PaakやPost Maloneのような新世代、しかもHIPHOPをベースにしながらもジャズやカントリー、メタルといった独自のバックボーンを持つアーティストを、せっかくだから苗場で見たいという思いが強かったのだ。苦渋の決断だったが、総じて満足!! 





苗場で21年目。新たな歴史の時計を刻み始めたFUJI ROCK FESTIVALは来年いったいどんな光景を見せてくれるのだろうか。夢の続きをまた苗場の地で見られることを願いながら、すでに胸が高鳴っている。


written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki


photo:© FUJI ROCK FESTIVAL'18

© Photography by:Christopher Parsons for Top Dawg Entertainment(Top Image)


SHARE