【フジロックレポート】自分らしく自由にーJanelle Monáe、SIAら女性アーティストからのメッセージ

1日目からMVPのパフォーマンスを見せてくれたJanelle Monáe、過去最大級の嵐の夜に出現したSIA、そのほかAnne-Marie、MITSKI、Yaejiなど、女性アーティストを中心にステージをレポート。
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2019.08.09 06:00

今年は前夜祭を含めた4日間で述べ13万人が訪れたという「FUJIROCK FESTIVAL’19(以下:フジロック’19)」。2日目の台風による大雨も話題となった嵐と熱狂うずまくフジロック’19を振り返る。




ウーマンパワー、苗場の地で輝く。「FUJIROCK FESTIVAL'19」Janelle Monáe、SIAほか、ステージレポート


台風による大雨も今となってはいい思い出だ。それでも音楽を楽しむことをやめなかったフジロックのオーディエンスのパワーは本当にすごい。自分を含め大変な思いをした人が多かったと思うが、命に関わるような事故もなく終了して良かった。




タフな環境のなかで、取材の名のもとに音楽ファンとして純粋に楽しませてもらったわけだが(去年に増して終わってからの喪失感がすごい)、今年は“女性アーティスト”のステージが特に印象に残っている。実際のところ性別など気にも留めず、観たいアーティストを観ていったら、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた女性アーティストが多かったのだ。せっかくなので“女性アーティスト”中心にフジロック’19を振り返ろうと思う。記事末にはオフィシャルのダイジェストムービーとともに個人的な総括を添えている。


注釈として、今や性のカテゴリは男性、女性の2択ではなく多様で複雑に枝分かれしている。アーティストそれぞれの性別はアーティスト自身によって決められることが望ましい。ここで書く“女性アーティスト”とは僕の判断する一方的な視点であり、便宜上そう書かせてもらっているので御理解いただきたい。


Janelle Monáeは自由と愛の夢を見る




1日目のGREEN STAGE、Janelle Monáeは「Crazy,Classic,Life」で登場した。


私はアメリカの悪夢じゃない

私がアメリカン・ドリーム


ダイヤの指輪なんていらない

若さを無駄にしたくないし

わたしは自分自身の足で生きていきたい

ベイビー、真実を伝えないと


「こんにちはジャパン!!」と、ダンサーを従えたJanelle Monáeの声がGREEN STAGEへと高らかに響き渡る。待ってましたとばかりに応えるのは彼女を待ちわびたオーディエンスの大歓声だ。レオタードに軍服のようなコートと帽子。「人間に恋をした未来から来たアンドロイド」という、彼女が当初より打ち出しているSF設定の世界観から飛び出してきた愛の戦士が苗場に降り立った。バンドメンバーを率いて、ステージにセットされたスタンドマイクには煌びやかな装飾が施されている。


「Crazy,Classic,Life」に続いてZoë Kravitz(ゾーイ・クラヴィッツ)との「Screwed」を披露。使い古された表現ではあるが、作り込まれた衣装に身を包み、クールにダンスする姿はMichael Jacksonを彷彿とさせる(残されている映像以外でMichaelのライヴを直接目にしたことはないけど、登場してほんの数分でそれくらいの神々しさと圧倒的なパワー、スター性を感じた)。


羽織っていたコートを脱ぎ、タンクトップ姿になると、ダンサーが新たな衣装を手渡す。アフリカンな模様が描かれたロングコートにキャップ。ステージ中央の階段上には玉座が用意され、そこに鎮座するJanelle Monáe。冒頭の「Crazy,Classic Life」で歌っているように、誰からも支配されず、ルールは自分で決めると言う彼女にふさわしい姿で「Django Jane」を堂々とパフォーマンス。続けて、アルバム『The Electric Lady』からErykah Badu(エリカ・バドゥ)をフィーチャーした「Q.U.E.E.N.」、Solange(ソランジュ)とのダンサブルなアルバムタイトルトラック「The Electric Lady」と、豪華な客演トラックを続けて披露しGREEN STAGEを沸かせた。




Miguel(ミゲル)とのデュエットチューン「Prime Time」では「セルフォンのライトを掲げて」とオーディエンスを促し、夕暮れの苗場をLEDの光の粒が彩った。バンドによるバックトラックに乗せ彼女は言う。


「人生は小さな思い出が重なって作られてる。私が願うのは、今日のライブがあなたたちの思い出になれること。明るい気持ちのときも、落ち込んだときでも思い出せる、子供や、愛する人に今後何年もシェアできる思い出に。なぜなら、あなたたちの存在は私にとっての思い出だから。一生忘れられない思い出、愛と自由に溢れた思い出を作りましょう」


全12曲のステージ中4回衣装を変えたのだが、女性器のかたちを模したパンツで登場しGrimes(グライムス)をフィーチャーした「Pynk」のイントロがかかったときはひときわ大きな歓声が上がった。


『Dirty Computer』をリリースする際、Janelle Monáeはパンセクシャルをカミングアウトしている。その中性的な魅力はもちろん、差別を否定し臆することなくセクシャルマイノリティをサポートする姿勢が、彼女が支持される理由のひとつでもある。「Pynk」に続き「Yoga」を披露。合間のMCでは自分を愛することの大切さを説いた。


「今夜は自分を愛そう。他人を不快にさせたとしても、自分らしくいさせてくれるものを受け入れるんだ。髪型から、服装、肌の色から、出身地まで。この曲はあなたたちへ」


そう言ってGREEN STAGEに集まった人々に向けて「I Like That」を贈り、続く「Make Me Feel」では自らギターをかき鳴らし、オーディエンスを扇動する。「Cold War」を経て、最後はBig Boiを客演に迎えた「Tightrope」。誰に何を言われても、綱渡りのように厳しい道でも、自分を信じてリスクを乗り越え突き進もう。ということが歌われているポジティヴな楽曲である。人間に恋をしたアンドロイドであるオルターエゴ、“シンディ・メイウェザー”は自由と愛のメッセージを苗場に響かせる。


「世界中の女性の権利のために戦わないと。トランスジェンダー、性と生殖の権利、LGBTQIAコミュニティーの権利も。アメリカ出身の黒人クィアの女性として、わたしはここに立っていることを誇りに思うよ。障害を持つ人々、労働者階級の人々、低級所得の人々のために戦わないと。世界中にいるブラックやブラウンの人々のためにも戦わないと。そして移民のために戦わないと。人はケージ(檻の中)にいるものじゃない。世界中にいる、権利を悪用する人とも戦わないと。


大事なことをひとつ言い忘れてた。ドナルド・トランプを弾劾しなければならない」


序盤、ステージに映し出された「IM DARTY,IM PROUD SAY IT LOUD.」というメッセージがJanelle Monáeのスタンスを物語っている。人と違うことを恐れずに、自分を誇り、自身の持つ愛を彼女は叫び続ける。そしてアートの持つ批評性を行使する。ポリティカルな発言を恐れない。表現の不自由など彼女のなかに存在しないのだ。あるのは限りない自由と愛である。ブレることのない信念とともに音楽を創作してきたJanelle Monáeだからこその説得力といえよう。




最後の最後までエンターテイメントしながらオーディエンスを楽しませる姿は、MVで観るよりも愛らしく、その佇まいとボーカル、言葉、ダンス、演出に釘付けだった。フジロック’19直前に行われた、単独来日公演での評価も高かっただけに期待はしていたのだが、正直期待を上回る衝撃だ。そのライヴを目撃したオーディエンスにとって、一生忘れられない大切な思い出となったのは間違いない。



雨の苗場、SIAが見せる美しき幻影




台風直撃の大雨の中Daniel Caesarのライヴを観終え、一目SIAを見ようとぬかるんだ足下、水たまりをものともせずGREEN STAGEへ急いだ。ほんの少し予定の時間よりも押したようで、なんとかスタートに間に合う。大雨にも拘わらず、GREEN STAGE正面に向かう丘の傾斜までポンチョ姿のオーディエンスでぎっしりだ。さすがはフジロック。オーディエンスのタフさを見せつけられる一幕である。


「Alive」のイントロが流れ、SIAのコーラスに入ったときに初めて本当にSIAが苗場の舞台に立っていることを認識した。「Alive」といえばMVで圧倒的な型を披露していた空手少女、高野万優(タカノマヒロ)ちゃんとの共演があるのでは? なんて予想もされていたけれど、舞台の上でSIAの纏う巨大なスカートから解き放たれたのはMVでお馴染みの天才ダンサーMaddie Ziegler(マディ・ジーグラー)だった。その他、数名の男女のパフォーマーがMaddieを中心にSIA劇団をかたちづくり、曲に合わせてコンテンポラリーな演舞を展開する。


ひとつの曲が終わると演出が始まり、次の曲へと繋がっていく。ほんの少しの静寂、雨の音と混じってSIAがほんの少しだけ喋ってくれた。


「ありがとう。フジのために歌うわ」


セットは「Reaper」、「Cheap Thrills」などアルバム『This is Acting』からの楽曲が中心だが、「Big Girls Cry」や「Elastic Heart」、「Chandelier」など『1000 Forms Of Fear』からの楽曲もパフォーマンスした。




雨はやんだり降ったりを繰り返す。「One Million Bullets」で月が見えなかったのは残念であるが(歌い出しの歌詞が「Under the moonlight」だからね)、僕がSIAを知る大きなきっかけとなった曲、David Guetta(デイヴィッド・ゲッタ)との「Titanium」をピアノ独唱スタイルで披露。その歌声は暗闇のGREEN STAGEと雨に濡れるオーディエンスの心を奮わせる。


最後の曲は、Kendrick Lamarとの「The Greatest」。


Don’t give up, I won’t give up

(諦めてはいけない、私は諦めないわ)

Don’t give up, no no no

(諦めてはいけない、決して)


2016年にフロリダのゲイナイトクラブで起きた銃撃事件を受けて作られた歌である。シリアスな社会問題に対する楽曲だが、「誰だって最高の自分になれる。だから諦めてはいけない」というシンプルで力強いメッセージは、複雑な現代社会を生きる誰しもが共感しやすい歌詞ではないだろうか。その歌詞と歌声に背中を押されつつ、昨年も台風の中だったKendrick Lamarのショウケースを思い起こしながら、SIAの壮大な劇場型ライヴを堪能した。


楽曲が終わったあとにはステージは暗転。ライヴと演出を結ぶエピローグの映像が流れる。思わず呆気にとられた人も多いのではないだろうか。90分間観つづけた、観ていたはずのライヴは果たして現実にそこにあったのか。と。


左右のモニターにはステージ上で展開されている様子が鮮明に映し出されていた。この大袈裟に作り込まれた映像こそが、SIAのステージ演出の鍵だ。ステージ上を映していると思しき映像は、実は別の場所で収録されたもの。それをステージ上で映像を忠実に再現している、という演出トリックになっていたのだ。




ステージで踊るMaddie Zieglerが、臨場感溢れるカメラワークでモニターに映し出されている一方、90分間直立したまま舞台袖で歌うSIAは作り物のようだった。自分の目で見ている実像が本物なのか、ボヤけて見える。ライヴパフォーマンスはアーティストの存在を際立たせるのが普通だ。しかし、SIAに関して言えば、その存在をあえて曖昧にする異質な演出だったように思う。逆を言えば、その圧倒的な声こそが唯一のSIAの証明となっていた。


観客を強烈に惹きつけながら、黒子のようにただそこに佇み、SIAは歌い続けた。そのミステリアスな存在感と演出の妙にしてやられたという感じ。大雨に見舞われた苗場が見せる、美しき幻を見た気がする。




Anne-Marie、等身大のパワフルなパフォーマンスに好感




Janelle Monáeに先駆けてGREEN STAGEに登場したAnne-Marie(アン・マリー)はMarshmello(マシュメロ)との「FRIENDS」を始め、さまざまなアーティストとのフィーチャリングワークで広く知られているUKのシンガーだ。少なくとも僕にとってはそういったイメージがあるので、ソロとしてパフォーマンスする姿は新鮮に思えた。


フェミニンなピンクのフリルドレスを着て、首と手元にはドレスと好対照なゴツめのアクセサリー、足下はチャンキーなスニーカーを合わせている。ファッションスタイルも支持される彼女はオフィシャルのインタビューで、必ずツアーに持って行くものとしてスニーカーを挙げている。ステージに立つ彼女は、想像していたよりも小柄だった。Superfly(スーパーフライ)の越智志帆は小柄ながら迫力のある声量と高い歌唱力でフジロック中もSNSで話題となったが、Anne-Marieのボーカルもまた、可愛らしい見た目とは裏腹にパワフルなものだった。


セットはアルバム『Speak Your Mind』の楽曲を中心に構成されており、「Ciao Adios」、「Do It Right」、「Bad Girl Friend」とバンドを従えステージを駆け回り、ジャンプキックをカマすなど、運動能力の高さを感じさせる身体性を存分に活かしてパワー溢れる歌声を惜しみなく披露した。


モニターに「What does perfect mean to you? 」という文字が映し出された。続いてAnne-Marieと交流のある人々がビデオインタビューに応えるかたちでそれぞれの“完璧”について話をする映像が流れる。そのインタビュイーの中には「2002」を共作したEd Sheeranの姿も。映像をひととおり、オーディエンスと同じように見守ったAnne-Marieが口を開く。


「完璧って何だと思う? 大事なのは自分がいいと思えるかどうか。人と比べてどうとかそんなこと気にしなくていいよ。完璧じゃなくたっていい。」


体型にコンプレックスを持っていたという自身の経験を経て、ありのままでいいと人々にエールを送る、「Perfect(Perfect To Me)」をパフォーマンス。この曲はスーパーモデルのような体型じゃなくても、自分を好きになることが大切ということと、愛に性別は関係ないということが歌われているポジティヴなメッセージソングだ。


RUDIMENTAL(ルディメンタル)とMAJOR LAZER(メジャーレイザー)、MR.EAZIとの「Let Me Live」や、Clean Bandit、Sean Paulとの「Rockabye」、David Guettaとの「Don’t Leave Me Alone」といったフィーチャリングワークも次々に披露。ラテンな雰囲気がブレンドされたアッパートラックの「Trigger」ではオーディエンスとのコール&レスポンスで盛り上げた。


最後はMarshmelloとの「FRIENDS」でシメ。オーディエンスは後半の「F-R-I-E-N-D-S」のパートやフックをシンガロンしながら、Anne-Marieに大歓声を送った。彼女のありのままの自分を表現するキャラクターは魅力的だし、少しハスキーで伸びのあるボーカルは聴いていて気持ちがいい。さまざまなアーティストからラブコールを受ける理由が分かった気がする。




MITSKI、Yaeji 個性溢れる表現者たち


RED MARQUEEに登場したこの2組にも触れておこう。MITSKIはアメリカ人の父親と日本人の母親を持ち、NYを拠点に活動する日系シンガーソングライターミツキ・ミヤワキのソロプロジェクトである。昨年リリースした『Be the Cowboy』はPitchforkの年間ベストアルバムに選出され、その他、海外音楽メディアの批評家たちから軒並み高評価を得た。今、もっとも音楽ファンから愛されているインディーミュージックのミューズである。




自身の、孤独、葛藤、恋慕、といったパーソナルな心模様を赤裸々に歌う歌詞が共感と人気を集め、海外のライヴでは大合唱が起き涙を流す人続出なんだとか。しかしそんなオーディエンスに対して反応がドライなのもMITSKIの魅力だったりする。“わたしのためのわたしの歌だけど、勝手に共感してくれてありがとう”という感じなのだ。


そんな彼女は9月以降の公演を最後にライヴ活動を当面休止するとあって、少なくとも日本ではもうしばらくパフォーマンスが観られそうにない。このタイミングでMITSKIを観られたのは貴重な体験だった。同じくそう思っていたであろう人々がRED MARQUEEに押し寄せていた。


ステージにはバンドセットとともにテーブルセットが置かれ、MITSKIはそのテーブルとイスと身体を使って表現する。「テント住まいの方、お疲れ様です」と飄々とユーモアまじりにオーディエンスをねぎらった彼女は「今日はこんな感じでどんどんやっていきます」と抑揚のないMCをしつつテーブルの上でポーズをとる。


琴線に触れる芯のある歌声とともに、テーブルに登ってみたり寝転んでみたり。ヨガみたいに足を伸ばしたり、開いたり閉じたり。曲の展開に合わせ、大胆に繊細に、ころころと変わる心境の変化によってテーブルとの関わり方も変わっていく。


僕は英詞をヒアリングすることが出来ないので歌詞に感情移入することはできないのだが、黒いショートパンツ、白いトップス、ヒザにはサポーターを付けた姿で淡々と行われる、そのテーブルを介した運動(「Geyser」では最終的にテーブルをひっくり返す荒技も披露)と、物悲しさを帯びたボーカルとのギャップに、自分でも良く分からない感動を覚えた。


『Be the Cowboy』から「Nobody」を披露すると歓声が上がりシンガロンが起こるも、MITSKIの感情はそこにないようにも見える。人形のように美しく踊り、歌い続ける。オーディエンスにとっては、最後かもしれないMITSKIのライヴに思い入れはあっただろうが、彼女にとってはただ自分のすべきことをするのみなのだ。「今日は何曜日だっけ? 」なんて本気ですっとぼけてみせながら、自身の世界観に徹するその迫力に息を呑んだ。




Yaeji(イージ/イエージ)も意外なアプローチを見せてくれた。彼女は韓国人の両親を持ち、NYで生まれる。アメリカ各地、日本、韓国と過ごして、再びアメリカに戻りNYを拠点に活動するエレクトロニックアーティストである。同時に押しも押されぬ人気DJであり、プロデューサー、シンガー、MVも自ら制作するという、メガネがトレードマークのアンダーグラウンドヒロインだ。


てっきり、2017年末から2018年の年始にかけて、 WWW/WWW Xで行われたカウントダウンイベントに出演したときのようなDJ SETしながらのパフォーマンスだと僕は勝手に勘違いしていた。この日のセットでは自らDJブースでトラックをかけ、マイクを持ち、ダンスをしながら歌うというパフォーマンス行ったYaeji。過去のBoiler Roomでの映像にイメージが引っ張られすぎているのか、考えてみればこのようなスタイルのライヴを行っても何らおかしくはない。




曲が終われば自分でブースに行って、次の曲をかける。控えめなMCと裏腹に、大胆にライヴは進行していく。歌詞を知られたくないからと韓国語だけで歌詞を書いていたとは思えないほど、Yaejiはイキイキとパフォーマンスしていて、観ているこちらは自然と笑顔になり、身体を揺らしてしまう。


Yaejiの楽曲は韓国語と英語がミックスされているのが特徴だ。「クゲアニヤ(そうじゃない)」という音としてキャッチーなフレーズが印象的な「Drink I'm Sippin On 」やスウィートなアレンジを加え、ボーカルのリフレインが特徴のDrake(ドレイク)「Passionfruit」カバーを演奏するとオーディエンスは大きな盛り上がりを見せた。さらにノってきた彼女は「特別な曲を」と新曲をプレゼント。「デモだけどかけてもいい?」と素直に打ち明け、最後の曲でデモ音源まで披露してステージを爽やかに去っていった。予定よりも早く終わってしまったけど、まだ正規にリリースされていない音源を聴けて得した気分で大満足。


日本のマスメディアに映るアーティスト像と比較すると、見た目的には地味に映るかもしれないが、あなどるなかれ、その人を惹きつける素直なキャラクターと持ち前のセンスにやられてしまう。世界中のクラブカルチャーの第一線で活躍するYaejiは、表現力とカリスマ性の高さを見せつけてくれた。

彼女たちのように日本や韓国をルーツのひとつに持つアジア系アーティストが世界中の耳の肥えたリスナー、批評家、クラブキッズたちの憧れの的となり、こうして熱狂を引き起こしていることを考えると同じアジアンとして誇らしい。本人たちからすれば、そんなことは周りが騒ぎ立てているだけで、意にも介していなさそうだが。




自分の好きなことを好きに表現しつづける。これはシンプルだけど難しい。結局は、それこそが言語や人種を越えて世界の音楽ファンに受け入れられる秘訣と言えるかもしれない。フジロック’19でライヴを披露してくれた彼女たちは人種も見た目も年齢も表現も音楽性も何もかもが違う。共通していたのは、徹底的に自分らしく振る舞うことだ。“誰かのように”ではなく、自分自身の言葉と身体をフルに使って、自分自身の音楽を鳴らしていたのが印象的だった。


2020年の開催はイレギュラーな8月


フィジカルのライティングとオリジナルのライヴ映像を組み合わせながら、コックピットのような機材を駆使し、圧倒的な音圧とともに新旧の楽曲を繰り出したThe Chemical Brothers(ザ・ケミカルブラザーズ)の貫禄のパフォーマンス。外は大雨にも関わらず、穏やかな空気に包まれたRED MARQUEEで、その歌声に酔いしれた初来日となるDaniel Caesar(ダニエル・シーザー)の美しいバンドセットライヴ。


KOHH(コー)とRhizomatiks(ライゾマティクス)によるテクニカルな演出にも注目が集まった。シンプルでありながら、ド級の低音と独特の語り口と仕草が印象的だったVince Staples(ヴィンス・ステイプルズ)や、続くJames Blake(ジェイムス・ブレイク)はコンディションが万全でないのと雨によるトラブルで予定より早くライヴを終えることとなってしまったものの、映像演出は一切排し、神がかった演奏と歌声だけで観客を魅了した。







今年も全日程において、トピックが満載だった。特に、最終日となる3日目はラストスパートの様相を呈して注目アーティストが多く登場した印象だ。


シニカルなポリコレをファンシーなパッケージに詰め込んで、笑顔で世の中に中指を立てるニューヒロインStella Donnelly(ステラ・ドネリー)、昭和歌謡を現代にアップデートするレトロフューチャリスティックダンスグルーヴの伝道師Night Tempo(ナイトテンポ)、UKジャズシーンのキーパーソンでありジャズの未来からやってきた宇宙人Shabaka Hutchings(シャバカ・ハッチングス)率いるTHE COMET IS COMING(ザ・コメット・イズ・カミング)、THE INTERNET(ジ・インターネット)とともにアメリカにおいて東西2大ブラックバンドとして並び称され、人気を集めるPhony Ppl(フォニー・ピープル)など、今後更なる活躍が期待される、今観るべきアーティストのステージを苗場で観ることができたのは貴重である。





来年はいったいどんなアーティストが苗場の地にハイライトを残すのか。2020年、オリンピックイヤーのフジロックは8月21日(金)22日(土)23日(日)に開催される。


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written by Tomohisa “Tomy”Mochizuki


translation:amy


photo:FRF'19 PRESS(©宇宙大使☆スター ©Masanori Naruse)、Anne-Marie Instagram





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