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80KIDZ、TAAR、Shin Sakiuraが語る、音素材の録音から始まる楽曲制作の苦労と醍醐味
“家の中にある音を使って曲を作ろう”というお題で3組のアーティストが楽曲制作。その過程や通常の制作との違いを語る。
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“家の中にある音を使って曲を作ろう”というお題で80KIDZ、TAAR、Shin Sakiuraの3組が新たに楽曲を制作し、制作時のエピソードなどを語った特別ラジオ番組「FEEL SOUNDS GOOD」。
この企画は、企業の中に眠る個性的な音を音の資産と捉え、アーティストとのコラボ楽曲などのコンテンツとして提供しているブランデッドオーディオレーベル「SOUNDS GOOD®」とblock.fmとのコラボレーションにより生まれた番組だ。
番組アーカイブ視聴はこちらから。
番組冒頭にはSOUNDS GOOD®代表・安藤紘氏より、この番組を企画した意図が語られた。
安藤:外出自粛期間、家で過ごすうちにだんだんと僕自身も寂しさやつまらなさを感じるようになったんです。ずっと同じ場所にいる状況を楽しめる方法はないかとを考えたときに、“家の中”という場所はその人の個性が出る場所だと改めて思い、家の中の音・ノイズとしても個性が出るのではないかと考えました。アーティストの方々が家の中のどんな音をサンプリングするのか、それをどう楽曲にするのかを知ることができたら面白いなと考えて、この「FEEL SOUNDS GOOD」を実現することになったんです。
「楽曲制作に関していつも新しいことに挑戦している」という理由から、80KIDZ、TAAR、Shin Sakiuraの3組に今回の企画をオファー。レーベルメイトでもある彼らが、“ホームサンプリング”というお題に対して、家の中のどんな音を使って楽曲を仕上げたのか、その過程や通常の楽曲制作との違いを、80KIDZ・ALI&の進行でざっくばらんに語ってもらった。
***
ALI&:今日はみんなが作った楽曲を聴きながら、制作過程を紐解いて行きたいと思ってます。制作は大変でした?
JUN:最初はすんなりできるかなと思ってたんだけど、実際初めてみると意外とうまく行かなくて。いろんな工夫も必要だし、割と大変だったなぁ。でも面白かったですよ。
TAAR:僕は作り始めから書き出しまでずっと楽しかったです。TAAR個人としての作品もけっこう久々だったこともあって、楽しかったなぁ。
Shin:僕もめちゃくちゃ楽しかったです。音を一つひとつ録って素材にしていく過程で、この音がハイハットに似てるな、この音はキックに似てるなって最初は意識して音を録ってたんですけど、途中からその枠組みを気にしてるせいで逆に面白くない曲になっちゃってて。なるべく素材の音をむき出しで使おうと切り替えてからはもっと楽しくなりました。
ALI&:ではみんなの楽曲を順番に聴いていきましょう。
Shin Sakiura「Do It Myself -Sampling “SOUNDS GOOD at Home”-」
ALI&:どんな音を使いました?
Shin:ティッシュ、ペットボトル、キーチェーン、水、水道、ガスコンロ、空き缶、コップ、ビニール袋です。最初は机の周りにある、コップやペットボトルとかだけで作ってたんですけど、もっと生活音っぽい感じの音、例えば水の音やガスコンロの音をどんどん足していきたいなと思って。途中で入ってる「グツグツ」っていうノイズはカレーを煮込んでる音だったりします。
音選びのテーマは、「自分の生活で無意識に触れている音」。曲のテーマは「この曲を作ることにまつわる全てを全部自分でやった」という意味で、タイトルも「Do It Myself」にしました。
ALI&:どういうシチュエーションで聴いてほしいですか?
Shin:いつ聴いてもらっても嬉しいです。あんまり意識してなかったんですけど、意外とハッピーな感じの明るめな曲になったので、天気のいいときとか合いそうだなと思いながら作ってました。
ALI&:聴いてて気分が良くなる感じですね。外歩きながら聴いても気持ちいい感じ。録音機材は何を使いましたか?
Shin:iPhoneのボイスメモと、コンデンサーマイクと、一眼レフのマイクで録りました。
ALI&:JUNさん、TAARさんは聴いてどうでした?
TAAR:普段の音使いとは少し違う編曲になってるけど、音符一つひとつにShin Sakiuraがいるな、って感じました。Shinくんの他の曲と「Do It Myself」を聴き比べて、「こういうところがShin Sakiuraっぽいんだな」って気付ける指針みたいな曲。家の中の音を録るという企画によって、何がShin Sakiuraらしさなのかに気づけるというか。とにかくすごくかっこよかったです。
JUN:制作する上で“サンプリング”っていうルールは一緒でも、どの程度サンプリングを使うか、楽器を使うか使わないか、そういうルール設定はなかったので、「ここまではサンプリングで、ここはギター弾いたのかな」とか自分のルール設定との違いが見えて面白かったです。結局Shinくんらしい曲になってていいなぁと思いました。
Shin:ギターだけ楽器を使ったんです。ベースはティッシュの音をめちゃくちゃスローにしたものをループさせて、さらに加工して。シンセの音もそうやって作りました。
ALI&:でもその音って他でもできるんじゃない?なんでティッシュの音にしたの?
Shin:いろんなもので試したんですよ。でも素材によってかなり低音の出方が違って。50〜80Hzのところがモリッと出てたのが意外とティッシュだったので、これを採用しました。
ALI&:普段耳で聞いてると低く聞こえる音が、マイクを通じて録ってみると意外と低くないとかってあった?
JUN:あるある。録音機材にもよると思うけど、携帯のマイクで録ったらlowが切れてたりとか。
TAAR:あと、倍音が足らないってずっと思ってた。倍音がある音って少ないなって。
ALI&:全部がタイトになっちゃうってことね。
TAAR:そうそう、全部アナログシンセみたいな正弦波だったりする。ティッシュって実は上の方まで倍音が出てて、それを下げるから、下げた瞬間モリっとmidが出るのかな。
ALI&:普通にダイナミックマイクで録っちゃだめなの?
Shin:それでもいいと思います。僕は、ティッシュの音をコンデンサーで録って、ピッチを2オクターブ下げたものと1オクターブ下げたものを重ねて作りました。それが一番ネットリしたベース感がありましたね。
TAAR「a Glass of Space -Sampling “SOUNDS GOOD at Home”-」
ALI&:グラスをメインの音にしようと思った理由は?
TAAR:音の前に曲のテーマについて話したいんですが、今回お話をくださった「SOUNDS GOOD®」さんの持つコンセプトにおける音楽の役割って何だろうと考えたときに、任意の場所や物を想起させる役割を担うのが音楽なんじゃないかと思ったんですよ。鉄道とか工場の音を使って、その場所やその情景を想起させるような目的が根底にある。ただ、今回のテーマって“家”じゃないですか。そうなると、音楽が担う役割がいつもとは違うなと。だから家で録れる音を使って作る曲は、どこかに連れていってあげるような曲にしたいなと思ったんです。
昨今の自粛してる感じが、窓から外を羨ましげに見てるようなイメージがあって。抽象的なんだけど、グラスの中から外を見てるみたいだなと思って、グラスをメインにして音を作ってみようかなと思いました。音楽を聴けば、どこにいようがその音楽が表現してくれる世界へ連れてってくれるっていうのを、音楽を聴く上で大切にしていて。そのことを再認識させてくれるような曲になればいいなと。
ALI&:普段の制作と違って苦労したことや面白かったことは?
TAAR:“サンプリング”って、家にある音を使って曲として成立するものを作ることがゴールになりがちだと思うんですよ。でも“曲として成り立ってる”をゴールにしたくなくて、ちゃんとTAARしての音楽表現にしたかった。それをこの限定された手法でどうやって表現するかってことに頭を使ったのが苦労した点かな。
ALI&:でも逆に、縛りがあるとやるべきことがぶれないっていう面もありますよね。
TAAR:そうそう。身近にある音をプロデュースするのは、プロデューサーの腕の見せ所。ボーカリストやドラマー、ギタリストだったとしても、やってることは一緒だなと思って。しかも、録る、弾く、編集する、鳴らす、っていう作曲の基本かつ原理的な部分を改めて丁寧にやれたというか。初心に立ち返るじゃないですけど、作り手として根っこの部分を改めて磨かれた気がして。それがすごく楽しかったです。
曲の中で鳴ってる音は全部録音した音で、楽器も使ってません。誕生日にもらったリーデルのコーラグラスを鳴らしたり。僕のインスタのハイライトに、音を録ってるビデオがあるので、それも見てもらえば。
ALI&:キックとかも録ったの?
TAAR:キックはね、NIKEの靴の箱なんですよ。靴の箱をマイクに向けてボンボン叩いたんです。NIKEとSupremeがコラボしたエアマックスの箱。
Shin:その箱に開いてる穴がいいんですね。
ALI&:コラボだとその箱なんだよね。ちょっといい箱…ってなんちゅう話を…(笑)。
TAAR:(笑)。しかも、今まで作った曲の中で一番気に入ってるキックなんですよ。4つ打ちとかには今後も使おうかなと思ってるくらい、すごい好きなキックができた。SOUNDS GOOD®さんありがとう!
ALI&:クラブで聴いたら、もっと低い帯域が出てるかもよ?クラブが営業できるようになったらクラブで聴いてみたいね。ShinくんとJUNさんは聴いてどうだった?
Shin:一つひとつの音が4つ打ちの音楽の中でどういう使われ方をすると一番キレイかっていう部分で、適材適所に当てはまってる感じがして。それが楽曲として高いクオリティに繋がってるし、なおかつ聴いた瞬間に「うわぁ、TAARさんだ」ってわかる感じがすごい出てて。前回のアルバムの感じを彷彿とさせる感じ。アーティスト性みたいなところにも繋がる作品で、素晴らしいと思いました。
JUN:まず最初にTAARっぽいなと思ったし、タイトルにもあるグラスの音がヒプノティックな感じというか、気持ちいい感じがいいなぁと。キックがいい音鳴ってるな、何使ってるんだろって思ってたんだけど、靴の箱なんだね。俺も試せばよかった。曲としてバランスもいいし、よく出来てるなと感心しました。
ALI&:TAARさんはクラブミュージックとして使える感じで作ったんだ、って思いました。普通に考えたら生活音って、クラブミュージックじゃないほうが作りやすいじゃないですか。特にTAARさんはクラブミュージックも、メロウなベッドルームの音楽も作れる人だと思うので。どっちでくるのかなと思ってたらクラブミュージックだったので、おおっ!と思いましたね。
80KIDZ「Granular -Sampling “SOUNDS GOOD at Home”-」
JUN:音をどう録ろうかなと考えたときに、いろんな場所で録りたいから手軽なツールで録ったほうがいいと思って、iPhoneで録りました。どうせなら映像も一緒に撮ったほうが面白いなと思って、iPhoneのムービーで。なので、最終的には映像と合わせて見れるものを仕上げようというコンセプトで作りましたね。
ALI&:面白かったことや苦労したことはあった?
JUN:普段ならサンプル素材を入れたらキックの音とかがバチっと鳴るじゃん。それをいちから録って音を作っていくことによって、どういう音が鳴ってるのかなと深堀りできるというか。欲しい音に対して向かっていく感じが普段よりも探求できる。それが面白かったですね。普段なら、ある程度のイコライジングとかはするけど、最初からいい音が鳴るわけじゃないですか。だけどそこを、いちから録った音で作ってくのが大変だけど面白い。みんなも試してみてほしいなと思います。
ALI&:全体的に何の音を使いましたか?
JUN:ボトルを叩いたりとかパーカッション系が多いです。身の周りの物の音を叩いたら、パーカッションは作りやすいけど、シンセ系は作りづらくて。結局はサンプリング素材を断片的にしたものをループしてシンセっぽい音にしたり。
タイトルの「Granular」っていうのは、最近のシンセサイザーのツールなんですが。サンプル素材を細かくしてループして、フィルターをかけたりエンベロープをつけたりする。それで作っていったんだけど、素材を入れても「この波形でなんでこの音が鳴るのか?」みたいな、入れた音からは想像できない感じで。ベースっぽい音を入れたからって、ベースの音になるわけでもないし。
ALI&:キーを上げると意図しないような雰囲気に変わることがよくあるじゃない?そういうのに近いってこと?
JUN:それよりももっと予期しない感じ。ループのスタートポイントをちょっと変えるだけでも、すごい音が変わる。どの状態で自分が納得するかも自分のさじ加減だし。
ALI&:常に実験的に音を探していく感じだ。奇跡的というか、二度と同じものは作れないような。
TAAR:80KIDZの制作って、シンセやドラムマシンをどういう風に鳴らすかっていうワークフローだと思っていて。例えば初期の作品ならディストーションがかかってるシンセとか、最近だとピアノとか。その80KIDZサウンドを作るワークフローと、今回の企画のワークフローって真逆だから、どういう曲が出来上がるのかなってすごく楽しみにしてて。それで出来上がってきた曲はもう80KIDZのサウンドになってた。Shinくんもそうだし、みんなそれぞれのアーティスト感が出てて、よかったなって思います。
Shin:企画として生活音を取り入れて作っているということを抜きにして聴いてしまうぐらいのかっこよさでした。シンプルに楽曲としてめちゃくちゃかっこいい。
JUN:みんなそれぞれのアーティストの色が出てよかったよね。
ALI&:僕はこの企画に制作では関わってないんですけど、リデューを使ってるじゃないですか。それがすごくエモいなって思いました。好きなんだけど最近使わないので、こういう企画だったら絶対使うべきだなって。最初聴いたときに「俺が作っても絶対使ってるな」って思いました。あと、今はツールが身の周りに色々あるからなんでもできる状態だし、キャリアもある程度積んできたから器用でもある。でもこの曲は、最初にJUNくんがDaft Punkのリミックスをしてみました、みたいなときのディティールに似てた。80KIDZとして2つある軸のひとつが出てて、いいなと思いました。
JUN:俺もそうなったような気がする(笑)。結果としてね。昔の手法じゃないけど、シンプルな感じ。
ALI&:みなさん、今後録ってみたい音とか、取り入れてみたいことはありました?
TAAR:AMSRの頭の形したマイクがあるじゃないですか。ああいうバイノーラルマイクでいろんな音を録ってみたい。
Shin:僕も。AMSR自体もともと好きなんですよ。スナック菓子やカンジャンケジャンを食べる動画とかYouTubeで観るの好きで。だから、本当に立体的な音を録ってみたいなと思いますね。生活音ってありふれてるからこそ、それを再発見していろんな使い方をしていく面白さみたいなのは感じましたけど、よりいっそう家では録れないような音への魅力が際立ってきたというか。そういう音を録って使ってみたいなと。
JUN:今回は1曲ってことで80KIDZっぽい曲にしたんですけど、もっとアンビエントというか、環境音をそのまま使ったような曲も作ってみたいですね。80KIDZからはかけ離れた感じになるかもしれないけど、ヒーリング的な、普段とは違った制作もしてみたい。普段からいろんな音を録りためておくのもいいかなと思ったり。
TAAR:確かに。池田亮司みたいなの作りたい。アルヴァ・ノトとかね。
JUN:インテリな顔してやりたいね(笑)。
ALI&:今回は関われなかったんだけど、僕もいろんな音を録ってみたいなと思いました。今日、3人ともすごい楽しそうな顔でお話してて。すごい目をキラキラさせて話しているので、楽しかったんだろうなと。僕も普段から録ってみようかな。iPhoneでも全然録れるんだろうし。この番組を聴いてくれたみなさんもぜひ。あと、トラックメイクに興味ある人は、最初からある程度出来上がってる音で始めるより、こっちで始めてみるのも面白いかもしれないですね。ギターを弾くの人はギターと自分で録音した音を合わせてみるとか。できることが増えるんじゃないかなと思いました。
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番組の最後に「“どんなおうちなんだろう”と想像力をかきたてられるのも音の楽しみ方のひとつ」とSOUNDS GOOD®︎安藤氏は語った。
安藤:番組を聴いてくださったみなさんも、是非自分の家で面白い音を探してみてください。普段イヤホン、ヘッドホンをつけて生活する方も多いと思いますが、一度何もつけずに歩いてみてください。いろんな場所でいろんな音が響いていて、不思議と気持ちよくなると思います。SOUNDS GOOD®︎が提供する音も聞いてみてください。マニアックな音ではありますが、どこかで聞いたことがあるような、何故か落ち着く音がたくさんあります。SOUNDS GOOD®︎は今後とも音・ノイズの魅力をいろんな視点から引き出し、企業とアーティストとリスナーの新たな接点を生み出し続けていきたいと思っています。
今回の企画で制作された楽曲は、各配信プラットフォームからリリースされている。
コンピレーション・アルバム『FEEL SOUNDS GOOD』
配信リンク:https://linkco.re/arr6zRPy
また、各アーティストが家で録音したサンプリング素材は、SOUNDS GOOD®のYouTube、SoundCloudアカウントより公開されている。
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCfZVBAfrE2Z1W4mV4OCebHg
SoundCloud:https://soundcloud.com/soundsgoodlabel
番組アーカイブ視聴はこちらから。
【SOUNDS GOOD®】
SOUNDS GOOD®は、企業の中に埋もれている個性的な音を多くの人が楽しめる音へと昇華し、さらに“音の資産”としても活用していく「ブランデッドオーディオレーベル」です。工場の製造ラインで発生する特徴的な音や、製品使用時の音といった“ブランドを象徴する音”を企業やブランドの“音の資産”として捉え、音楽アーティストとのコラボレーションによる楽曲などコンテンツとしてリスナーに提供。企業とリスナー (生活者、消費者) の新たな接点を生み出しています。2019年3月5日の設立以来、参画いただいた企業とともに、BtoBイベントやラジオCMなど様々な形で“音の資産”を活用、その可能性を広げています。
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Text:Moemi