Dua Lipa「Studio 2054」が示す新たな”リアルライヴとMVの中間”にある配信ライヴの可能性

全世界に届けられた配信ライブではテクノロジーを駆使したXRライヴとはまた違ったフィジカルな部分での没入感があった。
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2020.12.01 11:00

先週、発表された2021年(第63回)グラミー賞では、主要3部門を含む全6部門でノミネートされ、自身過去最多ノミネートとなったイギリスが誇る次世代ポップアイコン、Dua Lipa。そのノミネートに注目が集まる中、11月28日に行われた配信ライヴ「Studio 2054」では、ポップスターとしての存在感が存分に発揮されただけでなく、配信ライヴの在り方としてもまた新しいものが示されていたように筆者は感じている。





「Studio 2054」が示した新たな配信ライブの可能性


「Studio 2054」は、昨今の配信ライヴ、特に大物アーティストがこれまでに取り入れてきたVRやARのような最先端のXR技術を駆使したバーチャルライヴとは異なり、巨大ウェアハウス・スタジオを舞台に、本公演のために制作された様々なステージセットが用意され、配信ライヴではあるものの、バックバンドによる生演奏、ダンサーとのパフォーマンスといったフィジカルなパフォーマンスにもこだわったものになっていたことが特徴だ。



photo: Dua Lipa Facebook


そんなライヴでは前半、Due Lipaは複数のダンサーとともにブギーな「Levitating」、「Pretty Please」、「Break My Heart」といった『FUTURE NOSTALGIA』収録曲を披露したかと思うと、ステージセットが移り変わり、ゲストのFKA twigsが、お得意のポールダンスとともにDua Lipaとの未発表コラボ曲を披露。


次に『Club FUTURE NOSTALGIA』のキュレーターを務めたThe Blessed Madonnaが登場し、ステージセットはそれに合わせてクラブ風に。その際にはThe Blessed MadonnaをバックDJにワークアウトビデオも公開された『FUTURE NOSTALGIA』収録曲の「Physical」や『Club FUTURE NOSTALGIA』収録曲の「Boys Will Be Boys(Zach Witness Remix」といったアップリフティングな曲でクラブムードが演出されたほか、ムーディーな80sディスコチューン「Cool」にあわせてローラースケートディスコが再現される場面も目を引いた。その後、クラブフロアから自宅のセットに舞台が映ると、そこに設置されたテレビからMiley Cyrusとのコラボ曲「Prisoner」の映像がスタート。続いてJ Balvin、Bad Bunnyらとの「Un Día (One Day)」、Angèleとの「Fever」といったコラボ曲が披露された。


その後、再びクラブフロアに向かったDua Lipaは、そこでCalvin Harrisとの「One Kiss」でライヴのムードを再びクラブ化。続いて、Kylie Minogueが登場し、彼女の新曲「Real Groove」とDua LipaとSilkcityとのコラボ曲「Electricity」をデュエットする様子はライヴのテンションは一気にピークまで到達したかのような雰囲気に。



photo: Dua Lipa Facebook


そして、終盤ではリモートで登場したElton Johnによる「Rocket Man」パフォーマンスのほか、Daft Punkの「Technologic」、Cassiusの「I <3 U SO」といったフレンチエレクトロの名曲と人気曲の「Hallucinate」、Madonna「Hung Up」と「Don’t Start Now」といった『FUTURE NOSTALGIA』を象徴する2曲がマッシュアップされるなどこのライヴだけの特別なアレンジも披露された。



こういったマッシュアップは、『Club FUTURE NOSTALGIA』を彷彿とさせたが、特にライヴでのマッシュアップという点では、同作でも影響が伺えた00年代のMadonnaのライヴ盤『The Confessions Tour』が窺え、Dua Lipa自身もそれを意識しているように感じた。

関連記事:Dua Lipa『Club Future Nostalgia』から感じる懐かしくも新しい”00年代感”の正体を探る


「Studio 2054」における配信ライヴとしての”リアルライブとMVの中間”さとは? 


最近の配信ライヴは、リアルライヴともMVとも違う、そのちょうど中間のものを目指す傾向にある。そのひとつの形として、XR技術によって、例えばフルCGで現実ではあり得ない水中や宇宙空間などをステージに再現したり、現実のライヴパフォーマンスにバーチャルのレイヤーを加えることで配信ライヴならではのバーチャルによる強化演出が試みられることも少なくない。


しかしながら、今回の「Studio 2054」では、そういったバーチャルライヴとはまた別の形で”リアルライヴとMVの中間”を目指した配信ライヴだったように思える。作り込みという点では他のバーチャルライヴ同様に綿密にライヴは構成されていたが、その一方で、”リアルライヴとMVの中間のもの”であるために必ずしもバーチャルな要素は必要ないということを改めて感じさせられたことが今回の配信ライヴの最大の発見だ。


ライヴでは、映像的にはリアルライヴでは難しい複数のライヴステージシーンが用意され、それらが数曲ごとに切り替わっていく点はMV的な作り込みを感じた部分だ。しかし、その一方で披露される楽曲は全てがライヴバンドによる生演奏ではなかったものの、先述のとおり生演奏ならではのアレンジが多々行われ、原曲の音源もしくはMV音源と異なるライヴ仕様の音源になっており、その2つの要素が「Studio 2054」では作り込まれてはいるが、ただの再生ライヴではない”リアルライヴとMVの中間”さを感じさせる部分になっているように筆者的には感じた。



photo: Dua Lipa Facebook





フィジカルに配信ライヴを楽しめるからこそ感じた没入感


また『Future Nostalgia』は、コロナ禍による最初のステイホーム期間中に在りし日のクラブ体験を想起させるものとして、ファンの間で話題になった作品だが、「Studio 2054」ではそのことを踏まえつつ、MCなしで『Club Future Nostalgia』のようにDJミックス的なノンストップのライヴ構成にすることで、映像を見ながら、クラブにいるかのように自宅で踊りながらライヴを体験することができた。こういったフィジカルに配信ライヴを楽しめる要素は、バーチャルによるイマーシヴな体験とはまた別の形で配信ライヴに没入できる大きな要因になっていたはずだ。



そういったことを踏まえて考えると「Studio 2054」は、”リアルライヴとMVの中間にあるもの”としての配信ライヴの在り方をテクノロジーを駆使した演出とはまた異なるアプローチで示したチャレンジングな配信ライヴだったともいえるだろう。


written by Jun Fukunaga


photo: livenow.com





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